フォーラム

第10回大使を囲む懇談会開催

  • 天寺駐リビア国大使を囲む懇談会
  •  2023年度第10回天寺駐リビア国大使を囲む懇談会

    2月16日、在リビア日本国大使館・天寺祐樹リビア特別調整官(前在リビア臨時代理大使)を国際文化会館にお迎えし、リビア情勢に関する懇談会を開催したところ概要次のとおり(会場参加13名、オンライン登録53名)。

    1.冒頭、天寺特別調整官より、概要次のとおり発言があった。
    (1)在リビア日本国大使館は、現地情勢の悪化を受け2014年から退避していたが、本年1月15日、10年ぶりに再開した。早速1月下旬にはラーフィ首脳評議会副議長(副大統領に相当)が訪日し、その機会に「第1回日リビア経済フォーラム」を東京で開催し、続けて2月1日には新村・駐リビア特命全権大使が着任し、二国間関係発展の機運が高まっている。因みに、日本大使館再開は、2022年8月、チュニジアでのTICAD8の際に実施された初の「日・リビア首脳会談」において、リビア側から正式に要請があったもの。

    (2)カダフィ政権の崩壊(2011年)以降、国内は第1次内戦(2011年~)、第2次内戦(2014年~)を経て、ようやく2020年10月になり停戦合意が署名され、2021年3月には「国民統一政府(GNU)」が成立した。この停戦合意は現在も有効である。東西を統一した政府として、2021年12月24日に国政選挙の実施をマンデートとしてスタートしたGNUであったが、選挙は直前になって延期され、2022年31月からは東の代表議会(HOR)が国民安定政府(GNS)を一方的に擁立したことにより再び二政府状態に戻った。GNUについては、2022年6月に一義的にはマンデートは終了しているが、その後もトリポリを中心に統治を続けている。日本を含む主要国も引続きGNUとの外交関係を維持している。2023年8月、GNUが反GNU民兵をトリポリ市内から駆逐したことにより、トリポリにおける現状は「GNU支配による安定化期」に入った。東西対立の文脈での民兵衝突から、トリポリ圏内での経済利権に基づく民兵衝突へとリスクの内容が変化。トリポリでは国際見本市や「エネルギー・サミット」などが定期的に開催され、ビジネス活動は活況を呈している。他方で治安面だけでなく、ビジネス面でもリスクもある。東西政治対立のあおりを受けて国家予算法案は成立せず、GNU政権は、緊急措置として公務員給与、各種補助金の支出を行っている。国庫収入の9割を占める石油ガス生産量の拡大は実現しておらず、収入が一定である中、政府支出は増加を続けており、これがリビア・ディナールの下落につながっている。

    (3)周辺国との関係でも、西(GNU政権)は、トルコ、カタール、アルジェリア等との関係が強いが、東(HOR及びリビア国軍(LNA))はエジプト、UAE、ロシアなどとのつながりが強い。このようにリビアは国内情勢とともに、周辺諸国との関係も単純ではない。このような中でリビアの複雑さを理解するためには、リビアを巡るいくつかの対立軸を押さえておくと良い。すなわち①国内の東西政治対立、②地中海のパワーポリテイックスによる対立(トリポリと海洋画定・海底開発を追求するトルコvs欧州諸国及び東部)、③ムスリム同胞団を軸とする対立、④ロシアのリビア進出を巡るロシアと欧米諸国の対立、⑤石油を巡る石油省と国営石油公社(NOC)との対立、また、仏・伊石油会社のライバル関係に基づく欧州諸国内での微妙な立場の違い、などである。

    (4)リビアの石油埋蔵量は484億バレルで、アフリカ第4位、世界では第9位、可採年数は107.9年と推計されている(2019年当時)。また天然ガスについては、埋蔵量が1.4兆立方メートル、可採年数は151年と推計されている。欧州にとってリビアは主要なエネルギー供給国であり、石油輸出の76%が欧州向けである。しかし、石油生産量は国内の政治・治安情勢に大きく左右される。2011年以降、内戦状況、ISの台頭時期(2015年頃)、さらには東部勢力(LNA)が石油施設の封鎖を、トリポリに対する政治経済圧力のカードとして使うたびに、生産量が落ち込んでいる。

    (5)日本では余りなじみがないかもしれないが、リビア東部地域では、西部地域とは異なり、ハフタル・リビア国軍(LNA)総司令官を頂点とする軍政が敷かれている。強権政治により自由は制限されているが、政治・治安情勢は比較的安定している。西部地域より部族主義の色彩が強い印象。東部および南部の油田を支配下に置いているので、「油田の閉鎖」をトリポリの政権への政治的圧力として使っている。また、ロシアの旧ワグネル部隊(アフリカ部隊)が、LNAの東部南部支配地域に駐留している。旧ワグネル部隊のサヘル地域への軍事的進出の拠点になっていると見られており、懸念される。なお、日本でも報道された2023年9月の東部での豪雨洪水災害は、自然災害以上にガバナンス上の問題もあって、同程度の災害に見舞われた周辺国と比べ、非常に多くの死者・行方不明者を出し、被害も甚大であった。これが「人災」であったと批判される所以であるが、日本政府はJICAを通じた緊急支援物資の供与と、国連機関を通じた人道支援を行った。

    (6)トリポリの治安リスクは、民兵の統合が進まず民兵間の衝突の可能性が残るため、引続き高いが、日本政府としては、国内の政治統合に向けての各種努力を引続き後押しすることとしている。また二国間関係についても、今後要人往来の活発化、経済貿易関係の構築、更にJICA研修など人材育成の分野での協力強化を目指したい。

    2.これを受けて会場及びオンラインで活発な質疑応答が行われた。質問の内容は多岐に亘り、参加者のリビアに対する関心の高さがうかがわれたが、天寺特別調整官からはひとつひとつに丁寧に回答があった。例えば、リビアにおけるロシアのプレゼンス強化の動き、石油収入は国内でどのように配分されているのか、東部地域(LNA)にはどのくらい回っているのか、韓国企業進出の状況、ミスラタ経済の現状、国営石油会社(NOC)の状況、電力・通信サービスの現状、初等教育の現状、中国の進出状況、日本のNGOによる人道援助に対する期待はあるか、といった質問が寄せられた。また、トリポリへの銀行送金できずに困っているがどうすればよいか、という実務的な質問、更に外務省の渡航情報の早期見直し(危険度引き下げ)への具体的な要望もあった。

主催イベント

  • 講演会イベント
  • 各国・地域情報バナー
  • 検索バナー
  • 外務省人事バナー
  • 在外公館一覧バナー