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  • 「2026年版世界開発報告:人工知能(AI)の前途」
    • 【月刊アフリカニュースNo.168掲載】

世界銀行が毎年発表している報告書で、2026年のテーマはAI。低・中所得の68億人にAIが何をもたらすかを初めて評価したとしている。主な論点は以下のとおり。
■ AIは過去に発明されてきた蒸気動力、電気、コンピューターなどと同様、汎用技術だ。しかし蒸気動力が低所得国に到達するのに80年かかったのに対し、チャットGPTが中所得に到達するのに半年しかかからなかったように、普及速度が極めて速い。
■ AIは認知や分析を必要とする作業の代替が可能で、高技能人材が少ない開発途上国で、よりレベルの低い人材でも活用できる。また以前よりも速く生活水準の向上を達成できる。
■ 一方でAIの開発は米国と中国の企業に集中しており、開発途上国は自身がコントロールできない技術に依存することになる。しかしそれは開発に多大な費用をかけず、既存の技術をカスタマイズできるということでもある。
■ AIを活用するために、インフラ、技能、データシステム、良好なビジネス環境、そして機能する組織制度など、補完的要素が必要だが、開発途上国にはこれらが欠けている。
■ 開発途上国はAIを採用(adopt)、適用(adapt)、発展(advance)させることが必要だ。まずは既存の技術の採用だが、たとえばサブサハラ・アフリカの小学校の32%が無電化など、現地の条件で制約を受ける。次に、各国の状況に合う適用が必要で、民間企業の活躍が望まれる。一方発展には巨額の投資が必要で、難しい。とは言え、アフリカのラパラAI社はInkubaLMという多言語モデルを開発した。
■ AIがもたらす影響に関しては、先進国と異なり、AIが奪う職業は少ない。むしろ小企業のビジネス推進に役に立つ。但し先進国との関係ではアウトソーシングが減少し、また低賃金が有利に働かなくなる可能性もある。AIは行政における人材不足を補い、サービスを向上させるが、インターネットアクセス不足などが障害になる。AIは国民間の不平等を促進し、政府が国民を監視するのに用いられるリスクもある。
■ 政府は推進者、ユーザー、規制者としての役割がある。推進者としては、電力、ブロードバンド接続性、AIリテラシーの向上など、補完的要素の強化が必要だ。ユーザーとしては、AIを自国の状況に合うように改善していく必要がある。そのためには政府保有のデータのデジタル化や、AI製品の評価能力の向上が必要だ。規制者としては、国家戦略の策定が必要だ。現在80か国が国家戦略を持つが、AIで最も裨益するはずの25の低所得国中、国家戦略を持つのはルワンダのみだ。既存の法を用いてリスクに対処するとともに、国際標準作りへの参加も必要だ。

  • 「2026年版アフリカの洞察:国境を越えて‐変化するグローバル秩序に関する市民の見方
    • 【月刊アフリカニュースNo.167掲載】

アフロバロメーターは、ガーナに本部を置く汎アフリカ研究ネットワークで、一般市民を対象に定期的に世論調査を行い、国別及びアフリカ全体の結果を報告書にまとめている。2026年の旗艦報告書は、2024/2025年の第10ラウンドの調査報告(対象は38か国)で、国際貿易や国際関係などをテーマとしている。主な論点は以下のとおり。
■ 国際貿易については、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の知識がある回答者は13%のみで、高学歴者に集中していた。しかし62%が自由貿易に賛同しており、5年前の51%から大幅に増加した。他の地域と異なり、アフリカでは経済的困難が自由貿易支持に向かっている。輸入依存の経済構造がその理由と考えられる。
■海外移住については、45%が考えたことがあると回答した。特に若く高学歴な回答者にその率が高く、主な動機は経済的要因だった。自国内への移民受け入れについては、77%が歓迎または気にしないと回答した。しかし他地域との相違は、最も高学歴で技能があり、富裕な回答者が移民受入れに抵抗を示したことだ。移民を競争相手と見なしているからだろう。
■大国への感情については、62%が中国に対して好感情を抱いており、5年前と変わらない。一方、米国に対しては30か国で59%から53%に減少した。ロシアへの好感度は増しておらず、旧宗主国への好感度は大幅に低下した。しかしこれはアフリカの人々が特定の相手を選ぶことを意味していない。中国と米国への好感度は正の相関関係にある。ウクライナ戦争に関しては、72%が中立を選んだ。(この調査は第二次トランプ政権発足前から行われた。)
■ 国際機関については、アフリカ連合に関しては55%が、地域経済共同体に関しては56%がプラスの影響を与えていると回答した。しかし最も強調されたのは、グローバルな場におけるアフリカの声の拡大で、71%が国連などの場でより大きな代表制を与えられるべきだと回答した。
■気候変動について、56%が聞いたことがあると回答したが、正しい知識を持つ回答者は43%だった。一方で51%が干ばつや収穫減少など気候変動の影響を実感していた。気候変動について理解する回答者の中で、富裕国が気候変動の責任を負うべきだという意見は5年前から14%増え、85%となった。一方、自国政府が緩和策を強化すべきという意見も81%となった。
 この調査は、アフリカの市民がグローバルな事案に対する受動的な傍観者ではないことを示した。アフリカの人々はより積極的な参加を求めている。政府はこれを念頭に、たとえばAfCFTAに関する知識の普及に努めるべきだ。

  • 「2026年版世界投資報告:大荒れの時代における国際投資」
    • 【月刊アフリカニュースNo.166掲載】

UNCTADが毎年発表している報告書。世界の海外直接投資(FDI)の動向を分析し、政策提言を行っている。また国ごとのFDIのフローとストックに関する情報も掲載されている。2026年版は2025年の投資動向を扱っており、主な論点は以下のとおり。
■地政学的緊張や貿易政策の不透明さにもかかわらず、2025年の全世界のFDIは前年比6%増の1.6兆ドルに達した。しかし全投資額の80%は20か国(うち半数は発展途上国)に向けられており、分野も資本・技術集約的なデジタルインフラ、半導体、少数のエネルギー関連事業に集中した。
■先進国へのフローは11%増の7,320億ドル、その中心は欧州だった。一方発展途上国向けは2%増の9,010億ドルで、最大の投資先はアジアだった。アフリカでは前年の900億ドルから700億ドルに減少し、新規投資は多数の小規模プロジェクトに分散しており、分野はエネルギーインフラ、採取産業、再エネ、重要鉱物が中心だった。
■各国の投資政策はより活発かつ選択的となり229件の新措置がとられた。うち73%は投資に前向きな政策だった。その中心は優遇税制などのインセンティブだが、クリーンエネルギー、デジタルインフラ、先端的製造業など優先度の高いセクターや技術が対象となった。
■一方、投資抑制策も拡大している。先進国では、国家安全保障の観点からFDIの流入・流出両面でのスクリーニングが増加した。発展途上国では、機微な分野への参入制限に加え、現地雇用や現地調達への要求が増した。
■成長著しい戦略セクターの中で、AIは主要デジタル市場と技術のハブである米国から欧州への投資が中心だった。半導体は、生産能力のある少数の企業と製造ハブが中心だった。重要鉱物は、資源国と加工国を結びつけ、その中心である中国は投資家及びサプライチェーンの下流として重要な役割を果たした。
■産業政策に基づく介入(規制や促進措置)も増えている。先進国では経済安全保障、技術的リード、及び地政学的要素と連結した政策がとられている。発展途上国では、産業高度化、経済構造改革、雇用創出が中心となっている。
■複雑化する投資環境の中で少ない機会を捉え、外的ショックを緩和し、より選択的で強靭な生産市場に参入する能力を強化するためには、1)明確な優先度と現実的な参入経路の見極め、2)投資のボトルネックを減じFDIの開発効果を高めるための産業政策、3)国家安全保障の管理と開放的投資環境の維持、4)ショックの機会への転換、5)FDI誘致と開発促進のための地域統合の活用、が必要となる。

  • “World Investment Report 2026: International investment in a turbulent era”
    国連貿易開発会議(UNCTAD)、 2026年7月
    https://unctad.org/publication/world-investment-report-2026-international-investment-turbulent-era
    • 2025年のアフリカの気象状況
      • 【月刊アフリカニュースNo.166掲載】

    WMOが毎年発表している「グローバル気象状況」のアフリカ地域分冊。各国の気象水文機関、政策立案者、科学者、技術者、メディアなどのために最新かつ権威ある一般情報を提供することを目的としている。一方、気象の将来予測や科学的議論は含まないとしている。主な論点は以下のとおり。
    ■2025年のアフリカの平均地表気温は、記録上3番目から7番目の高い値となり、1991‐2020年平均を0.51°C上回った。特に乖離が大きかったのは北アフリカのアルジェリア・チュニジア沿岸、逆に最も乖離が小さかったのは南部アフリカ。
    ■前世紀中葉から、降雨のパターンには著しい多様性が見られるようになったが、全体的傾向として降雨量が減少している。2025年に平均以上の降雨があったのは南部アフリカ、平均以下だったのはアフリカの角地域だった。
    ■アフリカの氷河はケニア山、キリマンジャロ山の二つの火山及びウガンダ・コンゴ(民)国境のルウェンゾリ山系でのみ見られるが、その90%が消失した。最高峰のキリマンジャロ山では1990年の11.4㎢から近年には0.98㎢に減少した。
    ■海洋の平均温度は2023‐2024年よりも低かったが、海水の酸性化が進んでいる。1999‐2025年の間の海面上昇は世界平均の3.6㎜を上回り、大西洋沿岸で4.2㎜、インド洋沿岸で5.2㎜、紅海沿岸で5.6㎜となった。
    ■極端な気象が引き起こす自然災害で1,300万人が影響を受け、3,000人が死亡した。災害の中では水由来、特に洪水被害が多かった。災害は脆弱な地域や社会グループを脅かす。
    ■世界的に複数のハザード(災害の原因となる自然現象)に対する早期警報システム(MHEWS)の整備が進んでいるが、まだ十分ではない。特にアフリカでは、災害への準備と対応能力を報告した国は40%、うち十分な対応能力がある国は半数のみ。
    ■南アフリカ、ガーナ、ナイジェリアのケーススタディ(2025年の洪水への対応)からは、早期警報システム、省庁間の連携、及びインフラの整備の必要性が学びとれる。

  • “State of the Climate in Africa 2025”
    世界気象機関(WMO)、 2026年6月
    https://wmo.int/resources/publication-series/state-of-climate-africa/state-of-climate-africa-2025
    • 2026年度版「2026年の新興技術トップ10」
        • 【月刊アフリカニュースNo.165掲載】

      「新興技術トップ10」は、世界経済フォーラムが科学系出版社のフロンティアとともに毎年発表しているもので、2026年は14年目となる。新技術の選定基準は斬新さ、開発過程及びインパクトの可能性で、政府、産業界、研究機関などが実用化を決断する段階に至ったもの。2026年に選定された技術Love, grace and world peace: how an African saint has shaped Pope Leo’s worldviewの特徴は、1)より個人化され、2)普及の可能性が高く、3)少ない資源で大きな成果を生むもの、としている。10の技術の概要は以下のとおりで、いずれも実用化が始まっている。

      1) あらゆるものをグリッドのエネルギー源とする技術
      新化学物質を用いた、より迅速に充電でき、より長持ちするバッテリーを、効率的な調整ソフト及び最新のグリッド還流モデルと組み合わせる技術。これにより、建造物や自動車が、受動的な電力消費者から、グリッドの電源となる。
      2)リチウムの直接抽出技術
      アルミニウム複合体などの吸着剤を用い、リチウムイオンのみを抽出する技術。これにより、塩水蒸発池で数か月かかっていたリチウム抽出が、数時間で可能になる。また、抽出の場所も選ばない。
      3)受動的な放射線冷却技術
      ペンキ、屋根瓦、窓のフィルムなどに微細な空気の泡を用い、太陽光が熱に変わる前に分散させることにより冷却するシステム。エアコンによる電力消費を抑えることができる。
      4)有機フッ素化合物破壊技術
      安定性が極めて高く分解しにくい炭素・フッ素化合物を、超臨界流体、電気化学処理、紫外線光触媒により分解する技術。これにより水質汚染を防ぐことができる。
      5)精密発酵技術
      微生物がタンパク質、脂肪、その他分子を作り出すようプログラムし、産業化する技術。食料や薬草が土地、気象条件、家畜などに影響されずに生産可能となる。
      6)細胞外小胞による薬品運搬
      細胞外小胞を、薬品が身体の免疫機能に阻害されずに治療を必要とする部位に届けるように設計する技術。癌、神経疾患、COVIDなどに有効。
      7)カスタマイズされたメッセンジャーRNAによる癌ワクチン
      患者本人の腫瘍から合成したメッセンジャーRNAワクチンにより、細胞が癌を認識し、修正するように導く技術。患者それぞれの症状に対応できる。
      8)薬剤発見のための量子シミュレーション
      開発中の新薬がどのように身体に作用するかを、分子と原子の相互作用と同じ論理でシミュレーションする技術。コンピューターによる解析よりも正確性が増す。
      9)世界モデル
      世界がどのように動いているかを、未経験なものであってもデータに基づきAIが学習するモデル。
      10)格子暗号技術
      データを複雑な幾何学構造の中に隠し、ノイズを加えて暗号化する技術。攻撃を防御するだけでなく、データを表に出さずに解析が可能。

    • “Top 10 Emerging Technologies of 2026”
      世界経済フォーラム、 2026年6月
      https://www.weforum.org/publications/top-10-emerging-technologies-of-2026/
    • 2026年度版「2025年版アフリカ産業化指数」
        • 【月刊アフリカニュースNo.164掲載】

      アフリカ54か国全てに拡大し、分析方法も改善して2010年から2024年の間の傾向を示している。主な論点は以下のとおり。
      ⚫産業化はアフリカ経済の構造転換にとって最も重要だが、そのペースは遅い。製造業の生産高は2020年の2,850億ドルから2025年の3,510億ドルに増大したものの、その額は世界全体の2%に過ぎず、輸出額では1.4%にとどまる。
      ⚫2010年から2024年の推移を見ると、41か国で産業化の点数が上昇した。大陸全体の成績は6%上昇、特に成績の低い国での上昇率が高い。しかし全体として生産能力は低いままだ。
      ⚫その要因の一つは、域内貿易の低さで、全貿易の14.4%に過ぎず、産業化の最大の妨げとなっている。地域統合は、関税率低減や貿易協定などの「浅い」統合から、経済回廊や、規制及び技術水準の調和など、「深い」統合に移るべきだ。
      ⚫また中小企業を地域のバリューチェーンに組み込むことも重要だ。経済特区は1990年の20か所から2025年には230か所となった。しかし地域経済との連携不足などにより、その効果は限定的だ。
      ⚫経済の転換は一国の戦略だけでは達成できず、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)に基づく地域的産業統合、域内バリューチェーンや産業回廊の構築、経済特区や産業パークを含む産業政策の戦略性強化、インフラや技能などへの継続的投資、大規模な資金動員が必要だ。
      ⚫産業化指数は、成果(製造業の付加価値や輸出など)6項目、直接的要因(資本形成、海外直接投資額、雇用など)5項目、間接的要因(市場規模、デジタルインフラなど)6項目の計19項目に基づき算定した。
      ⚫その結果、モロッコがこれまで最高位だった南アフリカを抜き、1位となった。それは産業のレベルアップ、輸出多角化、産業政策の効果的実施によるものだ。地域的には北アフリカ、ついで南部アフリカの指数が高い。しかし産業能力は、少数の国に偏在している。

    • “Africa Industrialization Index 2025”
      アフリカ開発銀行、 2026年5月
      https://www.afdb.org/en/documents/africa-industrialisation-index-2025

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