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  • 「2026年版世界投資報告:大荒れの時代における国際投資」
    • 【月刊アフリカニュースNo.166掲載】

UNCTADが毎年発表している報告書。世界の海外直接投資(FDI)の動向を分析し、政策提言を行っている。また国ごとのFDIのフローとストックに関する情報も掲載されている。2026年版は2025年の投資動向を扱っており、主な論点は以下のとおり。
■地政学的緊張や貿易政策の不透明さにもかかわらず、2025年の全世界のFDIは前年比6%増の1.6兆ドルに達した。しかし全投資額の80%は20か国(うち半数は発展途上国)に向けられており、分野も資本・技術集約的なデジタルインフラ、半導体、少数のエネルギー関連事業に集中した。
■先進国へのフローは11%増の7,320億ドル、その中心は欧州だった。一方発展途上国向けは2%増の9,010億ドルで、最大の投資先はアジアだった。アフリカでは前年の900億ドルから700億ドルに減少し、新規投資は多数の小規模プロジェクトに分散しており、分野はエネルギーインフラ、採取産業、再エネ、重要鉱物が中心だった。
■各国の投資政策はより活発かつ選択的となり229件の新措置がとられた。うち73%は投資に前向きな政策だった。その中心は優遇税制などのインセンティブだが、クリーンエネルギー、デジタルインフラ、先端的製造業など優先度の高いセクターや技術が対象となった。
■一方、投資抑制策も拡大している。先進国では、国家安全保障の観点からFDIの流入・流出両面でのスクリーニングが増加した。発展途上国では、機微な分野への参入制限に加え、現地雇用や現地調達への要求が増した。
■成長著しい戦略セクターの中で、AIは主要デジタル市場と技術のハブである米国から欧州への投資が中心だった。半導体は、生産能力のある少数の企業と製造ハブが中心だった。重要鉱物は、資源国と加工国を結びつけ、その中心である中国は投資家及びサプライチェーンの下流として重要な役割を果たした。
■産業政策に基づく介入(規制や促進措置)も増えている。先進国では経済安全保障、技術的リード、及び地政学的要素と連結した政策がとられている。発展途上国では、産業高度化、経済構造改革、雇用創出が中心となっている。
■複雑化する投資環境の中で少ない機会を捉え、外的ショックを緩和し、より選択的で強靭な生産市場に参入する能力を強化するためには、1)明確な優先度と現実的な参入経路の見極め、2)投資のボトルネックを減じFDIの開発効果を高めるための産業政策、3)国家安全保障の管理と開放的投資環境の維持、4)ショックの機会への転換、5)FDI誘致と開発促進のための地域統合の活用、が必要となる。

  • “World Investment Report 2026: International investment in a turbulent era”
    国連貿易開発会議(UNCTAD)、 2026年7月
    https://unctad.org/publication/world-investment-report-2026-international-investment-turbulent-era
    • 2025年のアフリカの気象状況
      • 【月刊アフリカニュースNo.166掲載】

    WMOが毎年発表している「グローバル気象状況」のアフリカ地域分冊。各国の気象水文機関、政策立案者、科学者、技術者、メディアなどのために最新かつ権威ある一般情報を提供することを目的としている。一方、気象の将来予測や科学的議論は含まないとしている。主な論点は以下のとおり。
    ■2025年のアフリカの平均地表気温は、記録上3番目から7番目の高い値となり、1991‐2020年平均を0.51°C上回った。特に乖離が大きかったのは北アフリカのアルジェリア・チュニジア沿岸、逆に最も乖離が小さかったのは南部アフリカ。
    ■前世紀中葉から、降雨のパターンには著しい多様性が見られるようになったが、全体的傾向として降雨量が減少している。2025年に平均以上の降雨があったのは南部アフリカ、平均以下だったのはアフリカの角地域だった。
    ■アフリカの氷河はケニア山、キリマンジャロ山の二つの火山及びウガンダ・コンゴ(民)国境のルウェンゾリ山系でのみ見られるが、その90%が消失した。最高峰のキリマンジャロ山では1990年の11.4㎢から近年には0.98㎢に減少した。
    ■海洋の平均温度は2023‐2024年よりも低かったが、海水の酸性化が進んでいる。1999‐2025年の間の海面上昇は世界平均の3.6㎜を上回り、大西洋沿岸で4.2㎜、インド洋沿岸で5.2㎜、紅海沿岸で5.6㎜となった。
    ■極端な気象が引き起こす自然災害で1,300万人が影響を受け、3,000人が死亡した。災害の中では水由来、特に洪水被害が多かった。災害は脆弱な地域や社会グループを脅かす。
    ■世界的に複数のハザード(災害の原因となる自然現象)に対する早期警報システム(MHEWS)の整備が進んでいるが、まだ十分ではない。特にアフリカでは、災害への準備と対応能力を報告した国は40%、うち十分な対応能力がある国は半数のみ。
    ■南アフリカ、ガーナ、ナイジェリアのケーススタディ(2025年の洪水への対応)からは、早期警報システム、省庁間の連携、及びインフラの整備の必要性が学びとれる。

  • “State of the Climate in Africa 2025”
    世界気象機関(WMO)、 2026年6月
    https://wmo.int/resources/publication-series/state-of-climate-africa/state-of-climate-africa-2025
    • 2026年度版「2026年の新興技術トップ10」
        • 【月刊アフリカニュースNo.165掲載】

      「新興技術トップ10」は、世界経済フォーラムが科学系出版社のフロンティアとともに毎年発表しているもので、2026年は14年目となる。新技術の選定基準は斬新さ、開発過程及びインパクトの可能性で、政府、産業界、研究機関などが実用化を決断する段階に至ったもの。2026年に選定された技術Love, grace and world peace: how an African saint has shaped Pope Leo’s worldviewの特徴は、1)より個人化され、2)普及の可能性が高く、3)少ない資源で大きな成果を生むもの、としている。10の技術の概要は以下のとおりで、いずれも実用化が始まっている。

      1) あらゆるものをグリッドのエネルギー源とする技術
      新化学物質を用いた、より迅速に充電でき、より長持ちするバッテリーを、効率的な調整ソフト及び最新のグリッド還流モデルと組み合わせる技術。これにより、建造物や自動車が、受動的な電力消費者から、グリッドの電源となる。
      2)リチウムの直接抽出技術
      アルミニウム複合体などの吸着剤を用い、リチウムイオンのみを抽出する技術。これにより、塩水蒸発池で数か月かかっていたリチウム抽出が、数時間で可能になる。また、抽出の場所も選ばない。
      3)受動的な放射線冷却技術
      ペンキ、屋根瓦、窓のフィルムなどに微細な空気の泡を用い、太陽光が熱に変わる前に分散させることにより冷却するシステム。エアコンによる電力消費を抑えることができる。
      4)有機フッ素化合物破壊技術
      安定性が極めて高く分解しにくい炭素・フッ素化合物を、超臨界流体、電気化学処理、紫外線光触媒により分解する技術。これにより水質汚染を防ぐことができる。
      5)精密発酵技術
      微生物がタンパク質、脂肪、その他分子を作り出すようプログラムし、産業化する技術。食料や薬草が土地、気象条件、家畜などに影響されずに生産可能となる。
      6)細胞外小胞による薬品運搬
      細胞外小胞を、薬品が身体の免疫機能に阻害されずに治療を必要とする部位に届けるように設計する技術。癌、神経疾患、COVIDなどに有効。
      7)カスタマイズされたメッセンジャーRNAによる癌ワクチン
      患者本人の腫瘍から合成したメッセンジャーRNAワクチンにより、細胞が癌を認識し、修正するように導く技術。患者それぞれの症状に対応できる。
      8)薬剤発見のための量子シミュレーション
      開発中の新薬がどのように身体に作用するかを、分子と原子の相互作用と同じ論理でシミュレーションする技術。コンピューターによる解析よりも正確性が増す。
      9)世界モデル
      世界がどのように動いているかを、未経験なものであってもデータに基づきAIが学習するモデル。
      10)格子暗号技術
      データを複雑な幾何学構造の中に隠し、ノイズを加えて暗号化する技術。攻撃を防御するだけでなく、データを表に出さずに解析が可能。

    • “Top 10 Emerging Technologies of 2026”
      世界経済フォーラム、 2026年6月
      https://www.weforum.org/publications/top-10-emerging-technologies-of-2026/
    • 2026年度版「2025年版アフリカ産業化指数」
        • 【月刊アフリカニュースNo.164掲載】

      アフリカ54か国全てに拡大し、分析方法も改善して2010年から2024年の間の傾向を示している。主な論点は以下のとおり。
      ⚫産業化はアフリカ経済の構造転換にとって最も重要だが、そのペースは遅い。製造業の生産高は2020年の2,850億ドルから2025年の3,510億ドルに増大したものの、その額は世界全体の2%に過ぎず、輸出額では1.4%にとどまる。
      ⚫2010年から2024年の推移を見ると、41か国で産業化の点数が上昇した。大陸全体の成績は6%上昇、特に成績の低い国での上昇率が高い。しかし全体として生産能力は低いままだ。
      ⚫その要因の一つは、域内貿易の低さで、全貿易の14.4%に過ぎず、産業化の最大の妨げとなっている。地域統合は、関税率低減や貿易協定などの「浅い」統合から、経済回廊や、規制及び技術水準の調和など、「深い」統合に移るべきだ。
      ⚫また中小企業を地域のバリューチェーンに組み込むことも重要だ。経済特区は1990年の20か所から2025年には230か所となった。しかし地域経済との連携不足などにより、その効果は限定的だ。
      ⚫経済の転換は一国の戦略だけでは達成できず、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)に基づく地域的産業統合、域内バリューチェーンや産業回廊の構築、経済特区や産業パークを含む産業政策の戦略性強化、インフラや技能などへの継続的投資、大規模な資金動員が必要だ。
      ⚫産業化指数は、成果(製造業の付加価値や輸出など)6項目、直接的要因(資本形成、海外直接投資額、雇用など)5項目、間接的要因(市場規模、デジタルインフラなど)6項目の計19項目に基づき算定した。
      ⚫その結果、モロッコがこれまで最高位だった南アフリカを抜き、1位となった。それは産業のレベルアップ、輸出多角化、産業政策の効果的実施によるものだ。地域的には北アフリカ、ついで南部アフリカの指数が高い。しかし産業能力は、少数の国に偏在している。

    • “Africa Industrialization Index 2025”
      アフリカ開発銀行、 2026年5月
      https://www.afdb.org/en/documents/africa-industrialisation-index-2025

    • 2026年4月版世界経済見通し‐戦争の影の中のグローバル経済
        • 【月刊アフリカニュースNo.163掲載】

      IMFが毎年2回発表する経済見通しで、4月版はIMF・世界銀行春季会合に合わせて発表される。主な論点は以下のとおり。
      ■ 2月28日に始まった中東での戦争は、安定的な成長が続くという見通しを突如暗転させた。紛争の直接的な影響はエネルギー関連商品の価格上昇で、それは賃金上昇を求める労働者や企業の圧力により増幅される。さらには資産価値の下落、リスクプレミアムの上昇などによる資本流出など、金融市場の混乱を招く。
      ■ 見通しが不透明なため、今回の報告では、紛争が短期間で終結するという前提の下での参考値を示す。この前提では、2026年の世界経済の成長率は1月時点から0.2%減の3.1%、インフレ率は4.4%となる。一方紛争が長期化した場合、経済成長率は2.5% 、インフレ率は5.4%となり、戦争が拡大した場合は経済成長率2%、インフレ率6%で世界不況に近づく。
      ■ 中央銀行は、国民のインフレ予想をコントロールし、状況に応じた金融政策をとる必要がある。エネルギーショックが長期化する場合には、金融引締め政策の国際協調が必要だ。一方避けるべきは、的を絞らないエネルギー補助金などの無駄な財政支出だ。財政出動を行うのであれば、対象が明確で、一時的で、出口戦略を伴うものでなければならない。
      ■ 国際秩序が根本的に変化する中、世界は多極化に向かっており、各国はますます内向きになっている。重要鉱物においてそれは顕著だ。たとえばレアアース関連製品の市場を支配している中国は、米国の貿易政策への対抗措置として2025年5月に輸出許可制を導入した。レアアース不足の懸念への対応としては、サプライチェーンの集中からの脱却が考えられるが、自給率を高めるのはコスト高だ。「デリスキング」は保険と考えるべきで、最善の措置は貿易における緊張緩和だ。デリスキングを行う場合、有効なのは政府による価格保証ではなく投資への補助金で、複数国がそれを同時に進めることだ。
      ■ 地政学的緊張に対応するための軍事支出の増は、短期的には経済活動を活性化するが、インフレ圧力を増し、財政の持続性を失わせ、社会支出の削減を招く。

    • “World Economic Outlook, April 2026: Global Economy in the Shadow of War”
      国際通貨基金(IMF)、2026年4月
      https://www.imf.org/en/publications/weo/issues/2026/04/14/world-economic-outlook-april-2026

    • 2025年版民主主義指数:8年間の後退の後、民主主義は安定した
        • 【月刊アフリカニュースNo.163掲載】

      英国のシンクタンクEIUが、165の国と2地域の民主主義の度合いを、1)選挙の過程と多党制、2)政府の機能、3)政治参加、4)政治文化、5)市民の自由、の観点から0点から10点まで点数づけを行うもの。点数に応じ、各国の政治体制を「完全民主主義」、「不完全民主主義」、「ハイブリッド政体」、「権威主義政体」に分類している。2025 年版の主な論点は以下のとおり。
      ■ メディアの報道が2025年1月以降の米国トランプ政権に集中したため、民主主義の後退が世界的現象だという認識が作られた。しかし実際には米国以外の地域では民主主義は安定し、8年間続いた後退の終焉を示唆している。
      ■ 米国の民主主義指数は市民の自由の制限により低下したが、多くの民主主義的制度は残っており、ビジネス上のオペレーションリスクは少ない。一方、中国や湾岸諸国を除く権威主義的国家では、恣意的な行政行動、政策の予見可能性の低さ、政治的暴力などによるオペレーションリスクが高い。
      ■サブサハラ・アフリカでは、大きく前進した国と後退した国があり、平均では変化がない。同地域には24の権威主義政体と、11のハイブリッド政体がある。地域平均では、政治参加と政治文化は強いが、政府の機能、選挙の過程と多党制、市民の自由は弱い。政治に関与する社会と弱い政府というギャップを示している。
      ■その中で、マラウイは2025年の大統領選挙で現職大統領が敗れたが、司法に従い平和的な政権交代がなされた。またセネガルは通報者保護法の決議など、制度面での強化を進めている。この2か国は不完全民主主義に新たに加わった。
      ■その反対に紛争による政府の弱体化、長期政権の不安定化の可能性、選挙における野党抑圧や暴力などの問題もある。その中で、ケニアやマダガスカルで見られたようにZ世代は無視できない存在となっている。彼らは上の世代ほど長期政党やエリートへの忠誠心がなく、失業や不平等などへの不満を抱えている。今後地域全体で政治を形成する一大要因となるだろう。

    • “Democracy Index 2025: democracy stabilizes after eight years of decline”
      Economist Intelligence Unit、 2026年4月
      https://www.economistgroup.com/press-centre/economist-enterprise/eiu-democracy-index-2025-democracy-stabilises-after-eight-years-of-decline

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