フォーラム

第9回大使を囲む懇談会開催

  • 南駐コンゴ民主共和国大使を囲む懇談会
  • 2022年度第9回南駐コンゴ民主共和国大使を囲む懇談会

    8月5日午後、国際文化会館会議室において南博之駐コンゴ民主共和国大使をお迎えして、同国の近況について伺う会を開催しました(会員企業等からの出席者12名、オンラインによる出席者23名)。

    先ず南大使より、内政面でのこれまでの経緯として、2018年12月に大統領をそれまで2期務めたJ.カビラが大統領職を降りて名誉上院議員になり、新たにチセケディ政権が誕生したが、組閣は遅々として進まず、半年以上経って、カビラ派とチセケディ派が合掌連合する内閣が組閣された。その後2020年12月にチセケディ大統領が突如として、カビラ派を政権から追い出し、自らが主導権を取るいわば革命を起こし、その結果チセケディがカビラの支援を得ずして単独執政する内閣が2021年4月に成立した。
    次期選挙の目途は来年12月であるが、これを日程どおり行うには準備が不足していること、法改正の必要があることなどの問題が存在する。また同国はかなり長い間国勢調査を実施しておらず、各地方別の人口、総人口などの正確な数字が把握できていないことも、公正な選挙を実施するための困難な点となっている。遅滞なく選挙を実施するための基盤が崩れかけている。その基盤とは主に経済面の基盤と外交安全保障面の基盤で説明できる。
    基盤1.は経済、特に財政の安定であり、2011年にパリクラブの負債を棒引きにしたが、その後、昨年IMFと拡大ファシリティの合意を見て、現在は3ヵ年計画の折り返し地点にあ
    る。現在までのところIMFとの約束が維持されているので、どうにかファシリティを得られ続けている。しかしながら、昨年の夏に比べればかなり経済の数字が悪くなってきており、今後も3年間のファシリティ計画の最後まで合意が実施され続けるかどうかについては怪しい部分も現れてきている。その懸念は内的要因と外的要因から説明できる。
    内的要因としては、内政の不安定と治安の問題などがあるが、これまで多くの政治家の腐敗等を摘発してきた財務省所属の監察組織であるIGFの機能不全(摘発のスピードが急に減速して、腐敗対策が逆行し始めた。腐敗対策が逆行する危険性は、有罪とされていた政治家たちが次々と復権していることに見て取れる。代表例は、多額の公金を横領した前初等教育大臣のバコンガとチセケディ大統領の官房長を務めていた大物政治家のカメレ)、東部情勢などが問題。
    外部要因としては、コロナ禍とウクライナ情勢がある。
    基盤2.は外交であり、まず近隣外交、特にウガンダ、ルワンダとの関係が崩壊状態である他、グローバル的には西側に回帰しようとしていると見られるも中国との関係が必ずしも切れておらず、アンビバレントな状態。他方で、DRCでは伝統的にロシアはモブツ時代から影響力が弱く、本年3月の国連総会におけるウクライナ問題での決議に、同国はいずれも賛成票を投じた、この他、同国は昨年、AU議長国を務めた。

    この他、MONUSCO(国連PKO活動であるが、正しくは「国際連合コンゴ民主共和国安定化ミッション」)について触れると、右はMONUC(1999年~)を継承して2010年に設立され、文民保護を支援する非軍事組織であるが、昨今は東部3州における「いわゆるテロリスト」対策が主要任務となっている。2021年以降のMONUSCOの縮小は「transition」と呼ばれているが、米・仏は成果の上がらないMONUSCOを財政上の「お荷物」視している。確かにMONUSCOはその前身時代から考えれば四半世紀に近い活動により多くのPKO予算を使ってきた割に成果が充分でないとの見方もあり、また近時東部情勢の悪化の中でDRCの要人のなかにも、学生や市民団体に混じって国連PKO部隊の悪口を言うものが増えてきている。しかしながら、MONUSCO無しにDRCの警察や軍隊が現在の状況を維持できるかといえば、全くその可能性はないと考えられる。アメリカ特に現大統領の性格を考えれば、アフガニスタンのように一刻も早く治安部隊を現地化することを想定するのではないかと考えられるが、国連の引き上げは第三次コンゴ戦争を惹起し、DRCを崩壊させる危険性があると懸念している。日本は、まもなく安保理の非常任理事国になるが、軽々しい決断でこれまでの経済協力などを無駄にすることが無いようにする必要があるのではないかと考えている。transitionとは「縮小」ないし「撤退」の準備に他ならないように見える、などについて説明しました。

    次いで出席者から、同国はAUの昨年度の議長国であったが、今年もAUにおいて、現議長国のセネガルなどと共に、ある種の役割を果たすことが考えられるか?今後同国への有償資金協力案件が形成されるとしたら、分野はどのようなものが想定されるか?ジュンヌ・アフリク誌が、チセケディ現大統領は来年の選挙に出馬しないのではないかという憶測を報道していたが、右は何らかの根拠があるものと考えられるか?ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー不足の中で、コンゴ(民)の食糧事情はどのようになっているか?ロシアからの同国への援助は、あまりないのか?ルワンダ、ウガンダ、タンザニアなどの隣国の政治状況と比べて同国は不安定な状況が続くが、構造的な原因が考えられるのか?今後重要性が増すと考えられる、同国のコバルト等の鉱物資源の国有化が将来考えられるか?同国に現在駐在し活動しているMONUSCOの兵士の出身国はどのようになっているか?資源を豊かに有する国に対して周辺国が資源の取り合いを画策することがこれまで見られたが、自国に産する鉱物が密輸で非公式に周辺国に流れるのを、コンゴ(民)政府はどれだけ阻止できているのか?等の質問が出されました。

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