フォーラム

モーリタニア・イスラム共和国投資促進セミナー

    • モーリタニア・イスラム共和国投資促進セミナー報告
    • モーリタニア・イスラム共和国は、マグレブ地域・サヘル5ヵ国及び西アフリカを結ぶ地政学的に重要な場所に位置しています。人口は460万人、GDPも92.4億ドルと小さい国ですが、国内治安情勢は安定しており、一人当たりGDPも2,180ドルと西アフリカでは上位を占めています。
      今般、モーリタニア・イスラム共和国のアイサタ・ラム投資促進庁長官が、日本政府の招待で国際女性会議WAW!(World Assembly for Women)に出席する目的で来日された機会に、同国の投資促進のためのセミナーをJICA及びUNIDOと共同開催致しました。

      日時:2022年12月2日(金) 14時~16時30分
      場所:国際文化会館 別館2階講堂 (東京都港区六本木5-11-16)
      主催:一般社団法人アフリカ協会
      共催:独立行政法人国際協力機構(JICA)
      国際連合工業開発機関(UNIDO)東京投資・技術移転促進事務所
      講師:アイサタ・ラム モーリタニア投資促進庁長官 S. E. Mme Aïssata LAM
       (学歴)
      2016年 ハーバード大学大学院修了(金融、マイクロクレジット)
       (職歴)
        2012年 モーリタニア青年商工会議所(CCJM)創設
        2014年 モーリタニア青年商工会議所会長
        2021年 モーリタニア投資促進庁(APIM)初代長官(現職)
       (表彰歴)
        2019年 BBC『最も影響力のある女性100人』に選出
        2020年 モーリタニア国家功労勲章シュヴァリエ章受章
      開会挨拶
       草賀純男 一般社団法人アフリカ協会理事長、元外務省アフリカ部長、元外務大臣官房儀典長
      歓迎挨拶
       中村俊之   独立行政法人国際協力機構(JICA) 理事長特別補佐
      閉会挨拶
      村上秀樹   国連工業開発機関(UNIDO)東京投資・技術移転促進事務所 次長

      【開会挨拶】アフリカ協会 草賀純男理事長
      アイサタ・ラム長官の経歴として、ハーバード大学大学院修了、モーリタニア青年商工会議所会長を経てモーリタニア投資促進庁長官に就任したなど説明され、また同長官は2019年にBBCが選んだ「世界で最も影響力のある女性100人」に選ばれている、などの紹介をしました。
      さらにアイサタ・ラム長官が、今月日本で開催される国際会議「WAW!」への出席のため来日されたが、この機会に同国への投資促進を考えるセミナーを共催の2機関と協議の上企画したこと、同国と日本はこれまで水産面での協力が顕著であったが、本日は同国の詳しい開発の現状を伺い、今後の民間での協力・投資等の可能性について伺う機会としたい、と開会の挨拶を述べるとともに、共催団体からの出席者の紹介を行いました。

      【歓迎挨拶】JICA 中村俊之理事長特別補佐 
      ラム長官の今回の訪日を歓迎するとともに、本日の3団体共催によるモーリタニア投資促進セミナーへのご出席に感謝致します。
      日本とモーリタニアの開発協力は特に水産面においてJICA専門家により1960年代に始まり、この結果現在では、モーリタニアは日本への最大の「たこ」の輸出国となりました。
      今年のTICAD8の機会に、岸田総理は、今後3年間に日本はアフリカに対して総額300億米ドルの資金協力を行う旨発表したが、JICAは今後も貴国との協力、特に人への協力を重視しつつ協力関係を発展させていきたい。

      【駐日大使挨拶】サンバ・ママドゥ・バー駐日モーリタニア大使
      モーリタニアは若い国であるが、潜在性に富んでおり、日本からの投資を歓迎します。
      従来日本は特に我が国との水産面での協力を行ってきたが、より拡大された分野における日本からの技術移転や協力を歓迎致します。

      【講演】アイサタ・ラムモーリタニア投資庁長官
      モーリタニアの開発状況について述べる機会を得たことは嬉しいという挨拶の後、日本ではモーリタニアはあまり知られておらず、モーリシャスと間違えられたりすることもあるようであるが、本日はこの機会に我が国について説明を行いたい、と前置きされました。
      その後、同国の一般的な紹介と投資促進庁(APIM)の業務について概観する短いヴィデオを映写し、その後以下のように講演頂きました。(モーリタニア―新たな投資のフロンティア」という14ページの資料を卓上配布。)

      1.投資促進庁の概要
      -ヨーロッパに近く、アラブ世界と西アフリカに隣接するモーリタニアは豊富な投資機会に満ちている。
      -投資可能性を整理した形で投資家に示し、その後の作業において投資家に情報を提供するなどのパイプラインの支援を行うための唯一の機関として、大統領の下に設置された国際投資カウンシルの監督の下に設置された。
      -投資促進に当たっては農業改革、投資規定、鉱業・ハイドロカーボンに関する規定などを投資者に紹介・説明する場合もある。
      ―また、モーリタニアでビジネスを開始するにあたり必要な知識、法律、税制度などを投資希望者に与える他、人の雇い方など細かい面まで助言している。
      ―その他、実際に投資を行った人や団体に対しては、開始時のみならず、1年後、2年後など事後においてもアフター・ケアを行っている。
      ―モーリタニアはビジネス環境が整備されており、また外国からの投資を制限はしていない。
      -同国において最小限の資本金でビジネスに参入することは可能であり、参入に当たっては投資促進庁の十分な支援を期待することができるので、ビジネスの登録は48時間以内で行うことが可能である。
      -その他、税制面での優遇措置もある、またNouadhibouにはフリーゾーンも開設しているので、投資家は、そこで事業を開始することが容易となっている。

      2.国内の産業の概況
      -農業:GDPの約6%を占め、50万ヘクタールに及ぶ耕作可能地を有するが、そのうち利用されている土地は約30%に過ぎないため、残りの土地において新たな耕作を行うことが可能。(農業面での投資を行いたい場合、投資促進庁が間に入り、投資希望者は地主との交渉や協議を行うことが可能である)
      -牧畜業:GDPの約10%。潜在力としての年間生産量は、赤肉18万トン、ミルク21.3万トン、ブロイラー2万7,000個等。
      -水産業:水産資源豊富な海岸を有し、現在GDPの5%、国の年間総輸出の25%を水産業が占めているが、水産資源の加工産業は未発達。水深の深い漁港の開発は企画中。
      -鉱業:2020年度はGDPの24.2%、輸出の75%を占めた。内訳は鉄鉱石が50%、金が43%、銅が7%。既に投資を行っているのはBP、トータル、コスモス、シェル他であり、当国の國愛収支に貢献している。
      -観光業:アラブ世界とサハラ以南アフリカの接点に位置し独特の文化的遺産を有する、歴史的な4つの町(いずれもユネスコ文化遺産であり、特色ある祭りも行っている)を有する他、大西洋に面する海岸線は750キロに達し、海の観光ポテンシャルも大。海港は3か所にある。国内の移動には道路開発も進められている。
      ―グリーン水素(Green Hydrogen)の面では、モーリタニアは2021年9月現在、世界で4位以内に入っており、今後の開発・利用が期待される分野である。
      その他、ハイドロカーボン(炭化水素)の潜在性も大であり、この開発は急務。
      なおモーリシャスには多数の異なる民族が住んでおり、多彩な生活習慣を有している。
      終わりに、モーリタニアは安定した、安全な国家であり、進出を希望する向きは安心してきてほしい。

      【質疑】
      次いで質疑に入りましたが、出席者からの質問と回答は以下のとおり。
      ①農業他について:(一部、ラメッシAPIMワンストップ・サービス課長が答えました。)
      (質問)「サービス業はどのような分野があるか?」「産業の発達に必要なエネルギー資源、電力やガスなどはどの程度普及しているのか?」「農業開発の現状について知りたい。特に現在の主要農産物と、今後開発が期待される農産物は何と考えるかについて知りたい。」「自分はモーリタニア出身であるが、自分のようなモーリタニア人が自国で投資を行うことを希望する場合、どのような支援がAOIMから期待できるか?」
      (回答)「国全体の現状は、零細な土地における農業である。ジャガイモ等も産するが、最も重要な主食はコメである。国内生産は十分ではないので、タイ他の国から毎年コメを輸入している。土地所有の形態は複雑であるが、農業分野で何かのビジネスを新規にスタートさせる希望投資者が有する場合、経済省、農業省などが関与しうる。また投資促進庁もF/S作成の過程で助言を行う。土地所有者との間に立って双方の意見を聞き、またローカルの有識者の意見も参考にしつつ、話を進める手助けをするなどのことが可能。我々としては、そのプロジェクトが国ないしその地方にとっても有益であるか否かなどに留意しつつ話を進めることとなる。」
      ②その他「先ほど『グリーン・ハイドロジェン(緑化水素)』についての話を伺ったが、『グリーン・アンモニア』の利用についてはどうか?」「ハイドロカーボンの現状はどうか?また、最近のガスのリザーブはどうなっているか?」などの質問が出されました。
      また、「モーリタニアは、諸外国とどのような貿易協定を結んでいるのか、また加盟している地域経済組織はあるか?」という質問に対しては、江原前駐モーリタニア大使より、「同国はECOWAS他、多くの地域機関に所属している」と説明がありました。

      【閉会挨拶】UNIDO東京投資・技術移転促進事務所・村上秀樹次長
      本日は貴重な発表・説明をいただき感謝する、モーリタニアについて多くのことを知る機会となったと思う、モロッコ、セネガル等の隣国、また西アフリカ全体や当該地域の中でモーリタニアが占める位置についても考えることが、同国への投資促進に資するのではないかと思われる」という挨拶をいただきました。

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