
皆様に参考となる資料を紹介するコーナーです。
お忙しい方でも、手軽にデータやトピックスにアクセス出来るように
工夫しています。
ご興味のある資料は検索してみて下さい。
- 「2022 年版アフリカの気候の状況」
- 【月刊アフリカニュースNo.131掲載】
-
“State of the Climate in Africa 2022” World Meteorological Organization 、2023 年9月
State of the Climate in Africa 2022 (arcgis.com)
世界気象機関が地域ごとに発表している気候に関する年次報告書。アフリカに関する2022 年版報告書は、9 月4 日からナイロビで開催されたアフリカ気候サミット(アフリカニュース参照)の直前に発表された。主な論点は以下のとおり。
● アフリカ大陸の平均気温は上昇を続けており、1991 年から2022 年の間は、世界平均よりも上昇率が高い。
● 2022 年の地域別の異常気象は、11)北部:熱波と火災、22)中西部:洪水、特にサヘル地域、33)東部:干ばつ、特にアフリカの角地域、44)南部及び南西部インド洋:サイクロン。
● 気候に関連するリスクの社会的な影響としては、11)農業生産性の低下(北部及び東部)、22)避難民の増加(東部及び南部)。
● 政策面では、アフリカは炭素排出量の22~33%しか責任がないにもかかわらず、排出21を最小にするウィン・ウィン政策をとっている。気候に対して強靭な経済、特に農業、食料、インフラには巨額の投資が必要。また気象観測への投資や災害リスク軽減に関する能力強化も必要とされる。
● 今後の戦略としては、現在アフリカの人口の6060%が恩恵を受けていない早期警報システムの充実や、災害の被害軽減のための予防策(ハザードマップ作成、災害に強い施設建設等)が必要。そのためには革新的な資金メカニズムが求められる。
- 「アフリカのオペレーション・リスクの見通し:世界的に不安定さが増す中での備え」
- 【月刊アフリカニュースNo.131掲載】
-
“Africa’s operational risk analysis: prepare for challenges amid global instability”
Economist Intelligence Unit、8 月23 日
Africa’s operational risk outlook Economist Intelligence Unit (eiu.com)
各国でのビジネスのオペレーション上のリスクを10 のカテゴリーについてスコア化し、将来の予測を示すもので、20232023‐2024 年のアフリカの状況についての分析は以下のとおり。
● ウクライナ戦争やCOVID19 の影響はあっても、人口増加に支えられた経済成長により、大陸全体のマクロ経済状況は前年に比べて悪くなっていない。政治の安定と政府の効率性が、リスクに対して最も大きな影響を与える。
● 対象51 か国中、2022 年終盤よりもリスク見通しが悪化したのはガーナ、エジプト、スーダンを含む16 か国。好転したのは、タンザニア、中央アフリカ、エチオピアなどの11 か国。
● 2024 年に高い確率で起こり、そのインパクトが大きいと予想されるのは、11)資金ニーズが増大する中での債務負担(多くの国でユーロボンドが来年満期を迎える)、22)エル・ニーニョ現象による干ばつや水不足(中部、南部)と多雨(東部)、33)生活条件の悪化に伴う国民の不満の高まりと富裕な外国人への攻撃、44)インフラの未整備と劣化による地域内連結性の欠如(AfCFTA の進捗が遅れている原因でもある)。
● これらに加え、確率は中程度だが、スーダン内戦に象徴される避難民の増加やそれに伴う治安の悪化もビジネスへのインパクトが大きい。
- 「2023年版世界投資報告 - 万人のための持続的エネルギーへの投資」
- 【月刊アフリカニュースNo.130掲載】
-
“World Investment Report 2023, Investing in Sustainable Energy for All”
UNCTAD、2023年7月
World Investment Report 2023 | UNCTAD
国際連合貿易開発会議(UNCTAD)による年次報告で、10月に開催される世界投資府フォーラムでの議論の材料として提供されるもの。主な論点は以下のとおり。
● 2022年の世界全体の海外直接投資(FDI)は前年比12%減少し、1.3兆ドルにとどまった。エネルギー・食料価格の高騰やウクライナ戦争等の要因に伴うこの傾向は2023年にも続くと予想される。一方で、グリーンフィールド投資は増加した。
● 発展途上国全体のFDIの伸びは4%だったが、アフリカでは2019年のレベルに後退した。しかしグリーンフィールド投資は資金額にして15%増加した。
● SDGsに関する投資は増加したが、2030年までに必要な投資額とのギャップは2.5兆ドルに拡大した。再生エネルギーへの投資の伸びは鈍化した。
● 政策面では、安全保障の観点から投資のスクリーニングを行う国が特に先進国において増え、2022年のFDI投資残額の68%に相当した。また化石燃料への補助金が世界全体で1兆ドルとなり、エネルギー転換を妨げている。
● 資本市場においては、持続性をテーマとする投資が堅調で、債券やファンドなど全形態の合計で総額5.8兆ドルに達した。持続性への投資は環境・社会・ガバナンス(ESG)投資よりも好調だった。
● 温暖化の上限1.5度という目標を達成するためのエネルギー転換への投資ニーズは膨大で、2050年までに現在のGDPの1.5倍の資金を必要とする。資本コストの高さが障壁であり、発展途上国ではより効果的な方策、たとえば固定価格買取制度、電力料金の保証、需要予測に基づくオークションなどが必要だ。
- 「兵士と市民‐軍事クーデターとアフリカの民主主義刷新の必要性」
- 【月刊アフリカニュースNo.130掲載】
-
“Soldiers and Citizens: Military Coups and the Need for Democratic Renewal
in Africa”
United Nations Development Programme、2023年7月
Soldiers and Citizens | United Nations Development Programme (undp.org)
2020年から2022年の間にアフリカで発生したクーデター6件と未遂3件という件数は、それまでの20年間から229%増加し、SDGs及びアジェンダ2063の達成を危うくしているとして、国連開発計画(UNDP)が報告書をまとめたもの。クーデターを含む憲法違反の政権移転が起こった国(UCG)であるブルキナファソ、チャド、ギニア、マリ、スーダンの市民5,000人、及び民主主義移行国(DTS)であるガンビア、ガーナ、タンザニアの市民3,000人、計8,000人に対する調査を元にしている。要旨は以下のとおり。
● チャドにおけるデビイの死など直接的要因に加え、クーデターには近縁の要因がある。それは、1)サヘル地域の安全環境の悪化、2)包摂的な開発や経済機会の提供ができない政府への不信感の増大、3)民主主義の機能不全、である。
● さらに構造的要因として、1)独立時からの、軍の政治への介入の伝統、2)国家の脆弱性とガバナンスの弱さ、3)天然資源偏重の政策と包摂的成長の欠如、がある。
● UCGの市民は、クーデターに関してプラスの変化をもたらすと楽観する傾向があるが、それは長く続かない。暫定政権における包摂性の欠如は市民の不信を増大させる。DTSの市民に比べ、UCGの市民は民主主義に懐疑的であり、今は変化の時だと感じている。そしてクーデターは域内に拡大する危険がある。
● 今後への提案は、1)クーデター防止に開発の視点を含めること、2)表面的な民主主義というこれまでのガバナンスを改め、市民との契約を結び直すこと。
● ここ数年、国際社会からのガバナンスへの支援が減り、安全保障への資金が増えたが、憲法の規範や民主主義の原則を守るべきだ。そして、1)AUや地域共同体の対応メカニズムの強化、2)クーデター防止のため、憲法違反に対する措置の強化、3)暫定政権への支援における包摂性と有効性の強化、4)構造的な要因への対処(真に公正な選挙、開発志向の指導者への支援、民と軍の分離、貧困削減への支援など)が必要だ。
● さらに国際社会は、サヘル地域との関わりを変更する必要がある。地政学的な判断から各種の軍の派遣が集中したが、それはクーデターの根本原因に対処しないばかりか、脆弱性を増強した。ガバナンスや、市民と政府との契約関係、といった側面への新しい開発支援が必要だ。
- 「2023年版世界ジェンダーギャップ報告書」
- 【月刊アフリカニュースNo.129掲載】
-
“Global Gender Gap Report 2023”
World Economic Forum、2023 年 6 月
Global Gender Gap Report 2023 | 世界経済フォーラム (weforum.org)
世界経済フォーラムが2006年から発表している報告で、①経済参加と機会、②教育の
達成、③健康と生存、④政治的エンパワーメントの4つの側面での男女格差を示すもの。2006年以来継続的にデータを収集している国は102か国で、現在は146か国をカバーしている。2023年版報告書の主な論点は以下のとおり。
● 世界の男女格差はパンデミック前のレベルに回復したが、完全な平等を達成するには131年かかる。2020年時点には100年かかると予測したが、そのレベルに達するだけも大いに加速する必要がある。
● 中でも経済格差を埋めるのには162年、政治格差を埋めるには169年かかる。一方教育格差は16年で埋められる。健康格差については予測できない。
● 男女平等達成には労働市場が大きな壁だ。女性の労働市場への参加は64%で、2006年以来2番目に低い。また上級幹部、とりわけC-Suite(CEO、CFOなど)の女性が少ない。科学技術・工学・数学分野に進む女性も少なく、特にAI分野への参加が遅れている。
● 2022年12月現在、女性が国家元首という人口は世界の27.9%に過ぎない。女性の経済活動への参加と、ビジネス及び政府双方での指導的地位の獲得が、家庭や社会での格差をなくすためのテコとなる。
● サブサハラ・アフリカの格差は68.2%(100%が完全な平等)で、世界で6番目。(南アジア、中東・北アフリカよりも高い)。ナミビアが初めてトップ10入りしたが、ルワンダは6位から12位に後退した。この2か国に加え南アのスコアが高い一方、コンゴ(民)、マリ、チャドのスコアが最も低い。
● 日本のスコアは以下のとおり
日本のスコア(NO.129)お役立ち情報
- 「2023年世界経済見通し:長引く脅威の中での低成長」
- 【月刊アフリカニュースNo.129掲載】
-
“Global economic outlook 2023 – Low growth amid persistent threats”
Economist Intelligence Unit、2023年7月
2023 Global economic outlook | Economist Intelligence Unit (eiu.com)
世界の経済・政治情勢について分析を行う民間企業EIUによる経済見通し。概要は以下のとおり。
● ウクライナ戦争と世界的インフレにもかかわらず、2023年の世界経済は強靭性を示した。暖冬の影響もあって欧州は景気後退に陥らず、米国の消費も予想以上に増えた。中国がゼロ・コロナ政策から脱したことも世界経済を助けた。とは言え、平均成長率は2.1%と低調だ。
● 商品価格は2022年のピーク時よりも下がるが、2021年のレベルには至らないと予測される。中国のゼロ・コロナ政策の停止は原油価格への圧力となり、2025年まで1バレル75ドル以上という価格が続くと予想される。
● 世界の需要が緩和され、商品価格も下がることで、インフレ率は2022年の9.2%から2023年には7.1%に下がると予測される。
● 一方、①ウクライナ戦争の激化、②インフレに対する社会不安、③台湾を巡る緊張の高まり、④米国の地銀やクレディ・スイスに続く金融不安の連鎖、⑤極端な気候によるインフレの亢進、のどれかが現実となれば、今年または来年に世界的な景気後退に陥るリスクが高まる。