第9回阿部駐マダガスカル大使を囲む懇談会を開催しました
- 阿部駐マダガスカル大使を囲む懇談会を開催しました
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11月14日、国際文化会館において阿部駐マダガスカル大使を囲む懇談会が開催されました。懇談会の概要は次のとおりです(会場参加19名、オンライン参加12名登録)。
(講演要旨)
1.内政
昨年11月の大統領選挙でラジョリナ大統領が再選された。電力・水不足に抗議する小規模なデモが散発しているものの、政情は概ね安定している。経済は年4%台で成長しているが、人口増加率が年2%台を越えており、現地では目に見える発展の実感はない。最近インフレ(9%)や停電、水不足などにより国民は我慢を強いられている。こうした中、ラジョリナ大統領は、政権の開発目標に①産業化、②人的資本開発、③良い統治の3本柱を掲げている。
2.日本政府による農業支援
主食は米であり、ひとり当たりの米の消費量は日本人の2倍と言われているが、自給できておらず、一部輸入に依存している。日本政府は米の生産拡大のため、無償・円借款による灌漑インフラ整備、無償による農業機械や種子の供与、技プロによる専門家派遣など一連の援助を展開しているが、これら援助は着実に成果を挙げている。
3.日本政府によるインフラ支援
インフラの状況は総じて脆弱である。道路や電力といった基礎的インフラも整備が追いついていない。日本政府は、資源積み出し港となるトアマシナ港の拡張事業(452億円の円借款)、国道2号線の橋梁整備事業(26億円の無償)など幅広く協力している。これ以外にも計画中の案件もある。社会インフラ整備事業として、廃棄物運搬車両などの供与が実施され、日本外交協会が実施している中古消防車などのリサイクル車両も多数供与されている。
4.アンバトビー・プロジェクト
日本企業が参画するアフリカ最大規模の鉱業投資事業であり、GDPの6~7%、約1万人の現地雇用に寄与している。ここで生産されるニッケル・コバルトは総輸出額の3割を占めている。これに次ぐ規模の鉱業プロジェクトとして、リオ・ティントによるチタン採掘プロジェクトがある。これら以外にも金やレアメタルなど、鉱物資源のポテンシャルは高い。
5.日本企業のマダガスカル進出に向けての参考情報
マダガスカルではコーヒーの他、日本企業がJICAの支援を受けてカカオ農家を技術指導し、チョコレートやバイオプラスチック製品の商業化に取り組んでいる。東アフリカにはインド系の移民が多いが、当国でもインド系移民が経済分野では存在感を示しており、エネルギー、通信など多くの分野で事業展開している。日本企業がこの地域でビジネスを展開する場合、こうしたインド系の現地企業と連携することも、ひとつの方向性としてありうると個人的には考えている。また文科省の国費留学生、ABEイニシアティブ留学生、特定技能の農業就労者がいるので、こうした枠組みを更に拡充して両国間の人的交流が深まることを期待している。
6.今後の対マダガスカル協力の方向性
来年はTICAD9(8月)、大阪関西万博(4~10月)が開催されるので、ラジョリナ大統領が訪日することになると思う。TICADが始まった30年前に比べ、日本のODAは半減しており、効率的な援助の実施が求められるが、現在実施中のトアマシナ港の拡張事業に加えて、上水道の整備、変電所改修などは優先度が高いと考える。また総人口の7割を占める30歳以下の若者のための職業訓練は喫緊の課題であり、特に鉱山人材の育成は急務。現在、支援の在り方について検討中。(質疑応答)
講演を受けて質疑応答が行われました。①2009年以降内政は停滞しているように見えるがどうなのか、②最近頻発している停電や断水の原因は何か、③農業分野での中国の進出状況如何、④大統領の任期は憲法上連続2期までとなっているが、今回時間を空けて再選されたラジョリナ大統領は次の大統領選挙に立候補できるのか? ⑤優先度の高い開発分野で、日本の民間企業の貢献が期待されるのはどんな分野か? ⑥鉱山人材の育成はどのように行われるのか? ⑦今後の発展シナリオ如何、特に国家開発のモデルとしている国はあるのか? など様々な質問が寄せられ、阿部大使からはひとつひとつ具体的かつ丁寧に回答がありました。
第10回大使を囲む懇談会を開催しました。
- 長島駐ブルキナファソ大使を囲む懇談会を開催しました。
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12月17日、国際文化会館において長島駐ブルキナファソ大使を囲む懇談会が開催されました。懇談会の概要は次のとおりです(会場参加15名、オンライン参加12名登録)。
(講演要旨)
1. 内政
ブルキナファソでは、2022年に2回クーデターが発生し、同年10月にトラオレ暫定大統領が就任したものの、その後もテロが頻発している。2024年版グローバルテロリズムインデックスによれば、テロの影響を最も深刻に受けているのはブルキナファソとされ、当国は世界第1位にあげられている。テロに加えて気候変動の影響などもあり、国内避難民数は2023年3月時点で200万人を超えた。当国は、ECOWASとは本年7月までの民政移管を約束していたが、1月にはECOWASからの一方的な脱退を宣言し、5月には民政移行期間の5年延長と、トラオレ暫定大統領の呼称を大統領とすることが決定した。2. 外交
トラオレ政権は反仏、親露色を強めた。この背景には、反仏、親露を煽るフェイクニュースがSNSで国民の間に拡散していたこともある。当国は、マリ、ニジェールとともに「サヘル諸国同盟(AES)」を結成した。その目的は地域の発展と安全を促進することであり、サヘル3か国(サヘル三兄弟)の「自主」、「自律」を確立することである。旧宗主国である仏の影響力が低下する中、今や露や中国だけでなく、トルコ、アルジェリア、モロッコ、ブラジル、ベネズエラなどが積極的に当地域への関与を強めようとしている。3. 経済
政治面では反仏の姿勢を強めており、経済面でも独自路線に進もうとの声はあるが、実際に仏系企業の排除や独自通貨の発行に至るといった具体的なステップは取られていない。特に通貨CFAフランは、ユーロとの交換レートが一定なため、当国にとっての経済的メリットが大きい。主要産業は農業であるが、金も採掘している。農産物のうち、胡麻、綿花、マンゴーは良質であり輸出もされているが、そもそも経済基盤が脆弱で、水資源も乏しいことから製造業が根付くのは相当難しいと思われる。港のない内陸国というハンディはあるが、アフリカ内陸国間の物流の拠点として成長する可能性はあると考えている。4. その他特記事項
国内避難民の現状や課題を正確に把握するため、日本政府はUNHCRと共同で、生体認証データを活用した国内避難民登録及びデータの認証を実施する基盤を支援するプロジェクトが進行中である。今後、正確なデータに基づく人道支援が実施されることが期待される。5. 安全保障の観点から留意すべき点
(1) 今後中東の混乱が激化し、ISやアルカイダ系の国際テロ組織が勢力を強める可能性がある。サヘル地域が国際テロの巣窟にならないようすべし。
(2) ロシア、中国といった権威主義的な国の動きを注視すべし。ウクライナ戦線に北朝朝鮮兵士が送り込まれているように、ロシアのアフリカ部隊に北朝鮮などの外国人兵士が送り込まれ、サヘルでの活動に加わってもおかしくはない。
(3) 気候変動により、水や食糧を求めて人々が移動する蓋然性が高まる中、国内避難民が難民として国境を越え、欧州などを目指す動きが更に活発化する可能性がある。
(4) こうした問題は、日本から遠く離れた地域の問題で日本とは無縁、と捉えるべきでない。直接的でないにせよ、グローバルな課題として日本の安全にも影響する可能性を忘れてはならない。(質疑応答)
講演を受けて質疑応答が行われました。内政の見通し、露のサヘルでの動き、ECOWAS・AES関係、金の生産見通し、現地住民の生活実態(なぜ高価なバイクが買えるのか?)、海外安全情報見直しの可能性、ワガドゥグ映画祭など、多岐に亘る質問がなされました(合計12問)。これに対して長島大使よりは、ひとつひとつ丁寧に回答があり、会場では非常に盛り上がった質疑応答が行われました。
学術研究会 第10回研究発表会
- 学術研究会 第10回研究発表会
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学術研究会 第10回研究発表会
今般、第10回研究発表会として、近畿大学農学部・大学院農学研究科教授である鶴田格先生をお招きして、オンラインによる研究報告をお願いすることになりました。鶴田先生は長年アフリカにおける農業イノベーションに関して研究をされてきました。今回は農業・農村の近代化を拒否するアフリカ農民のあり方と、未来への可能性についてご報告いただきました。
報告者:鶴田格 氏 近畿大学農学部・大学院農学研究科教授
報告タイトル:「アフリカ農民はなぜ国家に捕捉されないのか:比較文明史的視点からの考察」
日時: 2024年10月16日(水) 14時から15時30分
司会: 青木一能 アフリカ協会学術研究委員会委員長(日本大学名誉教授)講演概要は、機関誌「アフリカ」2024年秋号にて報告を致しますのでご参照願います。
また、講演内容は当協会HPに掲載しておりますので、ご視聴願います。
機関紙「アフリカ」冬号にて報告いたしますが、内容をご視聴されたい方々は協会HPにて講演内容をご覧いただけますので、ご参照願います。
「アフリカの感染症を知る」シリーズ第12回講演会
- 「アフリカの感染症を知る」シリーズ第12回講演会
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今回お話を頂く世界銀行カンボジア事務所上級保健専門官の鈴木千穂氏は、学生時代から
始めた日本ユネスコ協会のボランティア活動を通じて、“女性の保健や社会的地位の向上”に取り組むことを目指されました。旧アジア経済研究所スクールや米国コーネル大学・チューレーン大学などで開発・家族計画教育・栄養改善・公衆衛生などを学ばれた後、国連人口基金(UNFPA)やユニセフ、さらには国際NGOなど現場での勤務を経て、2017年に世界銀行タンザニア事務所の上級保健専門官として赴任され、同事務所を拠点にタンザニア、マラウイ、南スーダンの母子保健・栄養問題を担当されました。
現在は、世界銀行カンボジア事務所に異動されていますが、今回タンザニアにて勤務されていた際の調査・研究から、マラウイの感染症状況を中心にお話を伺います。概要
日時: 2024年10月17日(木) 14時から15時30分
場所: オンライン(ZOOM)
テーマ: 「マラウイの感染症対策」
講演者: 鈴木 千穂 世界銀行カンボジア事務所 上級保健専門官
司会 : 池上清子 アフリカ協会副会長、 野口英世アフリカ賞選考委員、
公益財団法人アジア人口・開発協会副理事長講演会の概要は、協会HPにて講演内容を視聴できますので併せてご参照願います。
JOGMECとの懇談会開催
- JOGMECとの懇談会開催
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9月25日、国際文化会館において佐藤JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)金属企画部長との懇談会が開催されました。佐藤部長からの講演要旨は次のとおりです(参加者18名)。
1. JOGMECの支援機能強化
(1)JOGMEC金属部門では、基本的に①探査、②ファイナンス、③備蓄を3本柱に幅広い支援事業を行ってきた。以前は「資源探査」と「鉱山開発」という「上流」の事業が中心であったが、今日では経済安全保障の観点から、「選鉱・精錬」、「リサイクル」といった「中流」対策を強化している。
(2)レアアース、リチウムといった重要鉱物は、いずれも特定国への依存度が高く、これが日本の経済安全保障上の大きなリスクとなっている。こうしたリスクを軽減し、資源の国内への安定供給を確保するため、新たに「経済安全保障推進法」が制定された。JOGMECとしても総額2、000億円超を予算措置し、様々な事業への支援を強化できる体制を整えた。具体的には、①電動化・グリーン化に必要な鉱物を対象にプロジェクトへの出資比率の上限が引き上げられ(50%⇒75%)、②選鉱・精錬事業(単独)が新たに支援対象となった。また③探鉱、FS、開発、選鉱・精錬、技術開発などに要する事業費についても、1/2まで補助できるようになった。2. 国際情勢の変化とJOGMECの対応
(1)欧米諸国でも、経済安全保障の観点から鉱物資源の特定国依存脱却の動きが加速している。加えて、同志国連携による新たなサプライチェーンを構築する動きも進展している。他方、資源国側でも、「探査」、「選鉱・精錬」を実施するためのニーズに加えて、人材やインフラを含めたODAニーズが高まっており、中東の産油国でも、石油依存から脱却し、鉱業を推進しようとする動きが強まっている。
(2)こうした変化を受けて、JOGMECとしても、従来以上に案件発掘に主体的に関与して日本企業の参画を促し、国内外関係機関との連携を戦略的に進めている。また関係国の政策を把握しつつ、最終消費地までの最適なサプライチェーンの構築についても検討している。
(3)最近の動きとして、欧州委員会専門部局と2023年7月、「重要原材料サプライチェーンに関する協力取決め」を締結し、原材料サプライチェーンに関するプロジェクトやリスクマネジメント、技術、リサイクル等についての情報交換等を実施している。3.アフリカにおける取組み
(1)JOGMECは南ア・ヨハネスブルク事務所、ボツワナ・地質リモートセンシングセンターを設置し、SADC諸国を中心に16ヵ国と協力を進めている。具体的には衛星画像を用いた「リモートセンシング技術」に関する人材育成、共同画像解析・地質調査を実施している。
現地では、毎年専門家によるセミナーを開催(例年100名以上が参加)しており、これまでアフリカ各国から累計で2,403名が参加した。
(2)現在、現地民間企業との共同鉱床探査事業5件(ナミビア4件、ザンビア1件)の他、出資・債務保証事業4件(南ア3件、モザンビーク1件)、技術支援事業1件(モザンビーク)を実施中。
(3)2023年8月、西村経産大臣(当時)とJOGMEC理事長が、ナミビア、コンゴ(民)、ザンビア、マダガスカルを訪問し、各国との関係を強化するための合意文書に署名した。
また、2022年から2024年にかけて、コンゴ(民)、ナミビア、ザンビアから、それぞれ鉱山大臣が訪日したが、その機会にそれぞれラウンドテーブル・セミナーを実施した。以上の講演を受けて質疑応答が行われ、様々な視点から非常に多くの質問が寄せられ、白熱した時間が続きました。佐藤部長よりは、ひとつひとつに丁寧な回答がありました。
第8回大使を囲む懇談会開催
- 佐々山駐コートジボワール大使を囲む懇談会
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10月4日、国際文化会館において佐々山駐ウガンダ大使を囲む懇談会が開催されました。佐々山大使の講演要旨は次のとおりです(会場参加28名、オンライン参加12名登録)。
(講演要旨)
1.大統領選挙
ムセベニ大統領は、1986年以降大統領職にあるが、2026年2月に予定される大統領選挙にも7選を目指して立候補予定である。任期制限や年齢制限は、過去の憲法改正により既に撤廃されているので、合法的に立候補できる。国内で大統領選挙に向けた動きは徐々に活発になっており、選挙が近づくにつれ今後緊張が増していく可能性はある。
2.反LGBT法(Anti-Homosexual Act)
反LGBT法について、欧米諸国は問題視しており、世銀は新規融資を停止した。問題とされた条文の表現については、欧米諸国のコメントを入れて、修正されている。
3.日本企業の活動状況
ウガンダで活動する日本企業は多くはないが、いくつか成功例を紹介すると、①ヤマハ発動機(宅配用電動バイク販売)、②CFAO(豊田通商)、③サラヤ(消毒液などの販売)、④LIXIL(現地名SATOで簡易トイレを販売)のほか、WASSHA(充電式ランタンのレンタル)、SUNDA(井戸の管理・水の販売)といったスタートアップ企業がある。また、日本人でバニラやカカオの栽培を手がけている人もいる。規模の大きな事業はないが、いずれもミクロレベルまでウガンダ経済の現状を把握し、ファイナンスについても地元の人たちのスキーム(携帯電話の電子マネーなど)を活用している。
なお、ここ数年で在留邦人の生活環境も大きく改善しており、経産省や農水省支援を受けた日本料理屋や日本食材店がある他、仏の「カルフール」がUAE資本で開店した。
4.他国企業の活動状況
(1)中国の進出動向については、政府も「債務の罠」に陥らないよう、警戒し注視している。国内に10以上の工業団地があり、建設資材や日用雑貨などを生産している。HUAWEIも目立つ存在となっているが、奨学金給付など社会貢献活動(CSR)にも力を入れている。
(2)欧米企業についても、英国が植民地時代に綿花、コーヒー、銅のいわゆる3Cに注力してきた歴史もあり、現在は食品加工、花卉栽培、魚の養殖などの分野で活動している。
因みに、養殖されている魚は主としてナイルパーチなどの白身魚であるが、欧州の基準に合わせた厳しい品質管理が行われている。日本向けに輸出されたこともある。
5.新しい分野
(1)環境関連の新しいビジネスが生まれつつあり、排出権取引ビジネスを目指している人もいる。具体的な話として、Kiiraという国営企業があり電動バスを生産しているが、日本企業の協力を求めている。
(2)近年DRCとの国境付近で油田が発見された。2025年にパイプラインが稼働する予定。
(質疑応答)
講演を受けて質疑応答が行われました。①近年外貨準備高が急減しているが、石油パイプラインの予定通りの稼働に影響はないのか?②最近ケニアで若者による暴動が発生したが、これがウガンダに伝播しなかった理由如何 ③ウガンダは170万人の難民を受け入れているが、これに対する国民の受け止め如何、④ウガンダ政府は日本企業の進出をどの程度熱心に求めているのか?④DRCとの国境の現状如何、⑤ムセベニ大統領の長期政権に対する国民の受け止め如何、⑤本田圭佑のプロサッカーチーム“SOLTILO”の現地での活躍振り如何、⑥外国人材としてウガンダ人を受け入れる可能性、⑦反LGBT法に対する国民の受け止め如何など、様々な質問が寄せられ、佐々山大使からはひとつひとつ丁寧に回答がありました。