第7回大使を囲む懇談会開催
- 一方井駐コートジボワール大使を囲む懇談会
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9月24日、国際文化会館において一方井駐コートジボワール大使を囲む懇談会が開催されました。一方井大使の講演要旨は次のとおりです(会場参加24名、オンライン参加22名)。
1. コートジボワール概況(経済的側面を中心に)
(1)経済は好調である。GDPは約800億USD。経済規模は仏語圏サブサハラ・アフリカの中で最大であり、西アフリカ全体でも、最近ガーナを抜いて、ナイジェリアに次ぐ第2位となった。GDP成長率も、2012年以降ほぼ一貫して(2020年を除く)年率6~8%を達成。
(2)主たる産業は農業(GDPの20%)である。カカオ、カシューナッツの生産量は世界第一位、その他コーヒー、天然ゴム、綿花を合わせた5品目が主要作物である。カカオについては、世界の生産量500万トンのうち200万トンをコートジボワール産が占めているが、昨年は長雨の影響で収穫量が180万トンまで減少した。本年はもっと減少すると見込まれており、カカオの国際価格は高騰している。このためチョコレートの価格も高騰している。
(3)鉱工業の対GDP比は現在21.4%となっているが、最近油田・天然ガス田が発見され採掘が進んでいる。石油生産については2027年には20万バレル/日となる見通しである。他方天然ガスについては、2026年に2億立方フィート/日の生産を見込んでいる。なお、発電量は国内需要を満たしており、余剰電力(発電量の1割)は輸出している。
(4)通貨がCFAフラン建のため為替リスクが小さく、インフレも比較的低い(4.4%)。税収も順調に伸びており、S&Pによるソブリン債の格付けもサブサハラ・アフリカで第3位。こうした良好な経済パーフォーマンスを反映してIMFは35億USDの融資を決定し、日本政府も「電力、保健、農業」の3分野に総額520億円の円借款を供与(2022年E/N署名)。なお、累積債務についてはGDPの50%台後半と、やや高くなっているが、これは物価高騰対策として近年財政支出が増加したことが背景にある。2.「国家開発計画2021-2025」
この計画は、2030年までの「新興国入り」実現のために策定されたもので、内容に構造変換の加速を目指すものである。投資総額950億USD、うち74%は民間セクターからの拠出を予定している。実現すべき社会開発指標として「農村電化率100%達成」、「安全な水へのアクセス96%達成」などが掲げられ、そのための重点分野として、インフラ開発、地域開発、第二次産業の高度化、DX、GXなどが明記されている。これを受けて質疑応答が行われ、①水案件に日本企業が関与する可能性、②日本の同国向け援助は今後無償から円借にシフトしていくのか?③日本企業誘致のため、例えば工業団地の建設計画はないのか?③国家開発計画が重点分野とするGXの目標達成の見通し、④金不法採掘対策の現状、⑤近年クーデターの相次いだサヘル3か国の情勢、国境管理の現状、これら諸国のECOWAS脱退による影響など、多様な質問が寄せられ、一方井大使からはひとつひとつに丁寧に回答がありました。また、2025年10月に実施予定の大統領選挙に向けての最新の現地情勢や背景などについて貴重な情報の共有がありました。
学術研究会 第9回研究発表会
- 学術研究会 第9回研究発表会
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学術研究会 第9回研究発表会
今般、第9回研究発表会として、慶應義塾大学法学部政治学科の教授である杉木明子先生をお招きして、オンラインによる研究報告をお願いいたしました。
杉木先生は従来からアフリカの難民保護に関する研究を行われた来られましたが、今回は近年アフリカで多発するクーデターによる政権交代に関してのご報告です。特にクーデターに対して、アフリカの地域機構がどのように対応してきたかなどを中心に分析していただきました。報告者:杉木明子氏
所属・職階:慶應義塾大学法学部・政治学科・教授
専門:現代アフリカ政治、国際関係論、紛争解決・平和構築論、
難民・強制移動研究
タイトル:「アフリカで多発するクーデターに対して地域機構はどう対応してきたか-
『アフリカ人権ガバナンス』における地域機構の可能性と課題」
アフリカでは1960代後半から1980年代末までクーデターが多発したものの、1990年代以降、クーデターは減少していった。しかし、2020年代以降、マリ、スーダン、ブルキナファソ、ニジェールなどでクーデターによる政権交代が頻発している。本報告では「アフリカ・ガバナンス・アーキテクチャー(AGA)」の枠組みで活動しているアフリカ連合(AU)などの地域機構に焦点をあて、クーデターが多発したアフリカにおいて、「アフリカ人権ガバナンス」がどのように機能している(又は、機能していない)のかを分析し、地域機構の役割と今後の課題を考察する。
日時: 2024年7月25日(木) 14時から15時30分
司会: 青木一能 アフリカ協会学術研究委員会委員長(日本大学名誉教授)講演概要は、機関誌「アフリカ」2024年秋号にて報告を致しますのでご参照願います。
また、講演内容は当協会HPに掲載しておりますので、ご視聴願います。
機関紙「アフリカ」秋号にて報告いたしますが、内容をご視聴されたい方々は協会HPにて講演内容をご覧いただけますので、ご参照願います。
第5回大使を囲む懇談会開催
- 鈴木アンゴラ大使を囲む懇談会
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7月19日、国際文化会館にて鈴木駐アンゴラ大使を囲む懇談会が開催されました。
鈴木大使による講演要旨は次のとおりです(会場参加14名、オンライン参加14名)。(内政・外交)
1.2022年の総選挙では与党MLPAが51%の得票率で勝利した。再任されたロウレンソ大統領の下、内政は安定しているが、目下最大の課題は汚職撲滅である。
2.大統領の首脳外交は活発である。2023年、米国を訪問し、バイデン大統領と二国間会談を行ったほか、ザンビア、フランス、ポルトガル、ブラジルなど多くの国の首脳がアンゴラを訪問している。マルチ外交の場でも、地域的枠組みの中で積極的にイニシアティブを発揮している。なお、来年(2025年)はAU議長国に就任予定なので、ロウレンソ大統領は来年横浜で開催されるTICAD 9にAU議長としても出席予定である。
3.2023年3月、ロウレンソ大統領は公式実務賓客として訪日し、10年越しの交渉を終えた「日アンゴラ投資協定」の締結について岸田総理との間で合意。同年8月には署名が行われ、2024年7月21日に発効予定。(経済)
4.経済の潜在力は高い。特に石油についてはアフリカ第二位の生産量(日産110万バレル)を誇るが、石油に過度に依存する経済構造(GDPの3割、税収の6割、輸出の9割)からの脱却を目指し、経済の多角化に取り組んでいる。なお、本年のGDP成長率は+4.5%とのことである。
5.債務問題はアンゴラ経済の足枷になっている。公的債務は、やや減って84.9%となったが、その4割を対中債務が占めている。この対中債務については、これまで石油の現物弁済(注:アンゴラ・モデルと呼ばれる)が認められていたが、2017年から中国がこれを認めなくなったので、アンゴラにとっては厳しい状況となっている。
6.ロビト回廊については、2022年7月、鉄道・物流サービス部門を欧州コンソーシアムが落札し、2023年5月、米国はG7の機会に2.5億ドルの融資を表明。その後2023年9月、G20の機会に米国とEUが、ロビト回廊拡張支援に関する共同声明を発表。2024年に入り英国、伊も投資を表明したが、ロビト回廊が地理的に遠いためか日本の名前はない。(経済協力)
7.対アンゴラ経済協力は、無償、技術協力、草の根無償が中心であるが、円借による「南部送電系統増強事業」については現在案件形成中。また日系企業9社が現地で事業展開中。
8.中国は、新国際空港、首都近郊住宅、カクロ・カバッサ水力発電所、ロビト製油所などのインフラ整備を手がけている。これを受けて質疑応答が行われ、①現地の電力事情、余剰電力の現状、②ロビト回廊については、米国・EUは今後も関与を更に強めるのか、③ロビト回廊に日本が参入するのは困難との印象を得たが、ならば日本が参入可能な分野は何か、④地雷の完全除去の見通し、ほか様々な質問があり、鈴木大使より、ひとつひとつに丁寧に回答がありました。
第4回大使を囲む懇談会開催
- 大森ボツワナ共和国大使を囲む懇談会
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2024年度第4回大森ボツワナ共和国大使を囲む懇談会
7月5日、国際文化会館会議室において、大森摂生駐ボツワナ共和国大使をお招きして同国の最近の状況について伺う懇談会を開催しました(会場参加者13名、オンライン参加者
13名)。大森大使より、同国について以下の説明を行いました。
ボツワナは面積約56.7万平方キロ(日本の約1.5倍)、人口はほぼ263万人、1人あたりのGNIは約7,350米ドル(2022年世銀)で、これはアフリカでは高いほうの高中所得国である。旧宗主国は英国であるが、同国は植民地ではなく、英国の保護領であった。1966年の独立後、クーデター等は起こっておらず、政情は一貫して安定している。2018年マシシ現大統領が副大統領から昇格の形で就任し、2019年の総選挙で再任。次回選挙は今年10月の予定(国会議員選挙であり、議員が大統領を選出する方式)。
外政面では、南部アフリカの経済的統合を目指すSADCの事務局を首都ハボローネに設置し、SADCのモザンビーク・ミッション(SAMIM)にも要員を派遣するなど、地域の平和と安全に貢献している。一時冷え込んだ時もあった中国とも現大統領は一定の関係を保ちつつ、国連等の多国間外交を重視し、かつ欧米諸国とも良好な関係を維持しようとしている。ロシアとは、ダイヤモンドの大産出国という共通点を有する。国連の場でのウクライナ情勢関連決議については、22年3月の「侵略非難」決議は共同提案国、22年10月の「領土一体性」決議及び2023年2月の「平和」決議には賛成、それ以外の3決議(22年3月「ウクライナ人道決議」、4月「人権理資格停止決議」、11月の「救済と賠償の推進決議」)は棄権した。
同国の経済は、1967年にダイヤモンド鉱脈が発見された後、世界の主要なダイヤモンド産出国の一つ(ロシアに次ぐ世界第2位の量)となっており、デビアス社との協力により継続的に産出しているが、同時に、ダイヤモンド依存型経済からの脱却、すなわち産業の多角化による貧困撲滅が今後の課題。ダイヤモンド以外の主要輸出品目は銅、塩・ソーダ灰、生体牛他となっているが、世界有数の自然公園を有し、観光分野も今後発展が期待される、重要な産業の一つである。
対日関係は安定的かつ良好に推移しており、同国はアフリカ初の地上デジタル放送日本方式を採用している。日本は同国に対しこれまで青年海外協力隊の派遣の他、経済協力を行ってきており(有償219.81億円、無償54.06億円、技術協力97.96億円(2021年度までの累計)、その他同国では日本車(中古)の輸入も多い。日本はザンビア国境の川の「カズングラ橋建設計画」への円借款供与も行った。なお在留邦人数は50名内外で推移している。
その後参加者より、「今年のエルニーニョによる干ばつなどにより、牧畜業にダメージがあるのではないか?」、「中国人が5千人程度在留しているそうだが、鉱山労働者が多いのか?」、「中国による同国の鉄道分野への協力計画はあるのか?」、「ダイヤモンドの生産国である点で同国はロシアと共通点があるが、ロシアとの2国関係はどのようなものか?」、「SADCの今後の動向をどう見るか?」、「ボツワナの援助国はときどき同国で調整などの会合を開いているのか?」、「牛は生体輸出が主であると伺ったが、同国内での牛の皮革の利用はあまり発達していないのか?」、「カズングラ橋の運営管理はどのようになっているのか?」、「同国の一般の人びとの日本への理解や期待はどのようなものか?」、「同国にセンターを有する日本のJOGMEC(金属鉱物資源機構)のリモートセンシングセンターは、(ダイヤモンドも鉱物資源の一つであることから)デビアス社との協力関係を有しているのか?」などの質問が出されました。
第6回大使を囲む懇談会開催
- 加藤ギニア大使を囲む懇談会
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7月30日午後、国際文化会館において加藤隆一駐ギニア共和国大使に同国の近況に関するお話を伺う会を開催しました。(会場の出席者18名、オンラインによる参加者10名)。
加藤大使より同国の状況について、以下の説明を行いました。
23年1月、ECOWASとの合意を経て、民政移管までの24か月の移行期間が始まったが、それ以降の動向を中心に説明。①民政移管に向けたクロノグラムは進捗が遅れ気味。当面は24年内に新憲法制定の国民投票が行われるか注視。②軍の動向。23年11月のコナクリ中央刑務所襲撃事件、24年6月のサディバ・クリバリ前参謀総長の死去により軍内部は動揺。③前述の刑務所襲撃事件以降、「国家の安全保障上の問題」を理由に3か月間にわたりインターネット、SNSへのアクセスが制限された他、その後も主要なテレビ・ラジオ局の免許剥奪等、言論・報道の自由に対する抑制的対応が見られることを懸念。④23年12月の石油備蓄タンク爆発事故の影響は財政負担増を中心に数年間にわたる見込み。一方で電力不足も深刻で折からの高インフレも継続、社会不安を招いている。⑤他方、世界最大級の埋蔵量を誇るシマンドゥ鉄鉱山開発計画は24年4月に契約はクロージング、2025年末の採掘開始に向けて着実に進捗。中国の宝武鉄鉱集団が本格的に参画。本プロジェクトによる経済的波及効果は大きいが、同国が「資源の呪い」に陥らないような支援が必要。⑥最後に7月31日に判決を迎える9月28日大虐殺事件裁判の概要について説明しました。
また、ギニアを含め、アフリカに多くみられる「UCG」(非憲法的政権交代)について、その定義(民主的に選出された政府に対する暴動またはクーデター他)と法的規範、アフリカにおけるクーデターの歴史の概観(クーデターを経験した国は45か国でそのうち37か国で成功している、他)、これらの国には2つの異なったベクトル(格差と分断の拡大)、すなわちシステム(継続)を求める派と、アンチ・システム(断絶)を求める派が存在し、前者は伝統的エリート層が中心であり、民主主義的価値の共有、国際協調主義などが見られる一方、後者においては、若者世代が中心であり、新植民地主義の清算、資源ナショナリズムなどが見られるという分析について説明した後、ギニアの現状について、当初は民衆の支持があったが、その後民政移管の動きの遅れ、長期化に伴い不安要素が増大している現状であり、国際社会、特にAUやECOWASの政治的関与が不可欠であると説明しました。次いで参加者より、「近接するマリ及びブルキナファソでクーデターが起こったとき、ECOWAS諸国は国境を閉鎖したが、ギニアはどのような動きをしたのか?」、「現政権は、年内に憲法改正について問う国民投票を行うとしたが、そのような流れが確実に今年末までに行われると考えてよいか?」、「現在の同国に対して、日本の民間として、ビジネス・チャンスがあるとしたら、どの分野と考えられるか?」(これに対して、加藤大使より、電力関係、水資源開発及び農業の分野等を挙げました)、「アフリカにおけるクーデターは旧仏植民地だった諸国に頻発しているが、仏の植民地政策に問題があったと考えるか?」、「初等教育では何語で教えているのか?」などの質問がありました。
「アフリカの感染症を知る」シリーズ第11回講演会
- 「アフリカの感染症を知る」シリーズ第11回講演会
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今回お話を頂く国連人口基金エリトリア事務所長の大橋慶太氏は、モントリオール大学
大学院にて人口統計学を学ばれた後、国連人口基金(UNFPA)に勤務され、セネガル、ニューヨーク本部アフリカ局、チャド、コンゴ民、ガボンでの活動に従事され、現在はエリトリアにて、政府機関への国別援助プログラムの計画、実施、評価のほか、家族計画プログラムの推進、性差に基づく暴力の削減、人口保健調査への技術援助など広く携わっていらっしゃいます。
エリトリアは、アフリカ大陸北東部に位置する国ですが、暑い半乾燥気候・砂漠気候・亜熱帯性高原海洋性気候など混在する、寒暖差が激しくまた降雨量の少ない風土です。
エリトリアでの感染症としては、マラリアを筆頭に肝炎、狂犬病、ポリオや腸チフスなどが
見受けられますが、他方近年世界的に流行したCOVID19に関してはあまり発生していないとの情報もあります。独裁国家としても知られている同国の感染症対策について、興味深いお話が聞けるものと期待しております。概要
日時: 2024年7月4日(木) 14時から15時30分
場所: オンライン(ZOOM)
テーマ: 「エリトリアの感染症対策」
講演者: 大橋 慶太 国連人口基金 エリトリア事務所長司会 : 池上清子 アフリカ協会副会長、 野口英世アフリカ賞選考委員、
公益財団法人アジア人口・開発協会副理事長講演会の概要は、機関紙「アフリカ」夏号に掲載致します。また協会HPにて講演内容を視聴できますので併せてご参照願います。