第2回大使を囲む懇談会開催
- 上薗駐マリ共和国大使を囲む懇談会
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2023年度第2回・上薗駐マリ共和国大使を囲む懇談会
4月26日午後、国際文化会館会議室において上薗英樹・駐マリ共和国大使をお迎えして、同国の近況について伺う会を開催しました(会員企業等からの出席者8名、オンラインによる出席者18名)。
上薗大使より以下の説明を行いました。
1960年仏から独立した同国は、面積124万平方キロ、人口約2,190万人(世銀2021)、1人当たりGDPは873.8ドル(世銀2021)であり、民族構成はバンバラ、プル、ソンガイ(いずれも黒人系)他、またトゥアレグ(白人系)、アラブ人などが北部に居住している。政府は北部武装勢力(CMA及びプラットフォーム)との間で和平・和解合意文書に2015年署名し(アルジェ和平合意)、権限を有する地域議会の設置、国民議会への北部住民代表の増加と北部の開発促進等を約したが、合意の履行は遅れている。治安情勢は、北部に上記のCMA及びプラットフォームが勢力を維持する他、中部ではマリ国軍および外国軍事要員(ワグネルの存在が指摘されている)による対テロ作戦が展開されており、南部では首都バマコ周辺での襲撃事件も起きている、近年2度にわたる武力政変が起きており、2021年にはゴイタ大佐(現・暫定大統領)が権力を掌握した。今後民政移管を予定に入れているが、外交面では仏との関係が悪化し、他方ロシアとの関係は強化されたと見られ、また和平合意は停滞している。昨年1月以降の主な動きとしては、MINUSMAの要員交替をめぐる緊張があり、部隊派遣国の相次ぐ撤退表明(独、英、瑞、ベナン他)があった。ゴイタ暫定大統領は、テロとの闘いを進める他、選挙法の改正、憲法案の起草を進めて選挙の準備をするなどの動きを見せている。民政移管スケジュールは、予定としては国民議会議員選挙を来年10月末に、また大統領選挙を翌2024年2月に行い、これを以て民政移管が完了することとなっている。経済面では、主要輸出品は金鉱石であり、南ア、スイス、豪州他が主要輸出先。15歳以上の識字率は31%となっている。文化面では優れた遺産を有している。次いで法人会員など参加者より、「ワグネルが駐留する国はスーダンなど金鉱山があるところが多いが、マリにも金鉱山があるのか?」、「MINUSMAは駐留人員数を減らしていると言われるが、実際に減らしたのか?」、「首都バマコ市内やその周辺で、最近テロは起こっているのか?」、「米国人はバマコに入っていると聞くが、G7諸国の一般人はバマコに新規に入って活動することが可能なのか?」(この質問に対する上薗大使の答えは、「どの国も、表現の違いはあるにせよ、自国民のマリ入国に関しては、概ね我が国と同様に厳しい勧告をしている」でした)、「同国の治安状況が安定しないため、日本からは大型プロジェクト等の実施ができないと承知するが、今後民政移管がなされれば、ODAは積極的に供与されるのか?」、「以前、仏は北部の反政府勢力を支援しているという噂を耳にしたことがあるが、そういう事実はあるのか?」、「マリは文化遺産に富む国と承知するが、治安状況が安定すれば、同国での考古学研究が可能になると思われるか?」、「ワグネルとMINUSMAの関係はどのようなものか?」、「北部と南部では言語も異なり、いつまでも和平が達成されないよりは、北を切り離すことも考えられるが、北を切り離せない理由は何か?」、「軍事政権の目標は何か?」、「北部には現在、小学校や簡易医療施設も無い状態なのか?」などの質問が出されました。
第1回大使を囲む懇談会開催
- 加藤駐ブルキナファソ大使を囲む懇談会
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2023年度第1回・加藤駐ブルキナファソ大使を囲む懇談会
4月11日午後、国際文化会館会議室において加藤正明・駐ブルキナファソ大使をお迎えして、同国の近況について伺う会を開催しました(会員企業等からの出席者12名、オンラインによる出席者27名)。
加藤大使より、「ブルキナファソの現状とサヘル地域の課題について話を進めたい」として、以下の説明がありました。
1960年に上ヴォルタとして独立後、1984年、「高潔な人々の国」という意味の現国名に変更。民族や宗教に肝要な国民性を持つ同国は、内陸国で厳しい自然環境にあり、国家財政は厳しく貧しいが、村落の共同体組織が活発に活動し、自助努力に努めている。教育に力を入れるなど、開発に政府は努力しているが、人口増加率が高く、雇用促進は大きな課題であり、持続的、包摂的な経済の構造転換が重要。治安の改善を前提に開発の潜在性としては、アフリカ大陸自由貿易圏、ECOWAS内の貿易振興など、域内市場の活用、インフラの需要拡大への対応、産業の高付加価値化などがあげられよう。他方、文化面での活動は活発であり、同国はアフリカにおける文化活動の中核的存在。また日本の武道への関心が高いなどの面もある。
治安面では、現在国土の40%以上が政府のコントロール下にない状況。国内避難民は今年
2月末に約200万人に達し、多くの学校が閉鎖に追い込まれるなど、人道支援が必要とされている。テロによる治安悪化を背景に、2022年には2度のクーデターが勃発したが、治安状況はその後も改善されていない。暫定政府は、仏駐留軍の撤退を決めるなど、他国軍を受け入れず自国民で領土を守る決意を固める一方、ロシアを含め外交面では多面外交を標榜。
しかしワグナーの同国内における存在は否定している。
経済面では、ウクライナ戦争などの影響で財政赤字や公的債務レベルでの若干の緊張はあるが、管理可能な状況と見られる。仏の対アフリカ政策面では、今年2月のマクロン大統領演説(「新しい仏・アフリカパートナーシップ」)に見られるように、バランスの取れた、互恵的で責任ある新たな関係を目指しているとしているが、今後その具体化が課題。
サヘル問題を世界の平和と安定の共通課題と認識し、支援を継続することが重要である。その上で、今後の課題は、現場のリアリティの理解と右に基づく、共感の得られるサヘル政策実現のための包括的アプローチの実現であろう。この際、民主主義や人権の理念到達までのプロセスに対する丁寧な対話や、サヘル諸国における情報戦への踏み込んだ対応は大きな課題である。AUやECOWAS等地域経済共同体の紛争解決に果たす役割も留意する必要があると思われる。その後、法人会員企業等の出席者から、「国内の治安を守るための外国勢力として、ロシアのワグナーが入っているのではないか?」、「国内避難民だけではなく、紛争地域のブルキナファソ国民が近隣諸国に出ていくこともあるのではないか、そういう状況から、ブルキナファソ国内の安定は、ギニア湾諸国にとって重要と思う」、「紛争地域における情報戦は、国内の安定への悪影響があり、暴力的なメッセージが広まる可能性があるので、何とか食い止めるべきと思う」、「平和な環境でのコミュニティの開発のため、例えばマンガを活用することなども含め、何か日本ができることは無いか?」、「現在ブルキナファソに大使館を設置している国はどのくらいあるか、また、世銀・IMFは同国に事務所を開いているのか?」、「金の生産に携わっている外国はどこか?」、「地方のテロリストの狙いは何か?また、仏のブルキナファソへの基本的な態度はどのようなものか?」などの質問やコメントが出されました。
学術研究会 第6回研究発表会
- 学術研究会 第6回研究発表会
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5月10日午前、アフリカ協会主催第6回学術研究会報告会を開催致しました。
講師 :稲田 十一 専修大学経済学部教授
テーマ:「民主的開発国家」は可能か-紛争後のアンゴラとルワンダの比較研究
稲田教授は、東京大学教養学部をご卒業後、野村総合研究所に勤務され、その後東京大学大学院総合文化研究科博士課程を取得、日本国際問題研究所研究員、山梨大学教育学部助教授などを経て、現在の教職で研究に携われていらっしゃいます。
稲田教授のご専門は、経済社会分析、ガバナンス研究、援助評価ですが、今回は、アンゴラと
ルワンダという二つの国を通して、紛争体験国のガバナンス状況の比較研究の成果を語って頂きました。
尚、本日の講演は、先生が米国Johns Hopkins大学-SAIS(高等国際関係研究院)の客員教授として渡米中(2024年3月末まで)であったため、米国ワシントンDCよりの講演となりました。概要は、機関誌「アフリカ」2023年夏号にて報告いたしますのでご参照願います。
また、講演内容は当協会HPに掲載しておりますのでご視聴願います。
アフリカの感染症を知る」シリーズ第6回講演会
- 「アフリカの感染症を知る」シリーズ第6回講演会
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「アフリカの感染症を知る」シリーズ 第6回講演会
前回は未だに世界中で2億4千万人が発症するというマラリアに関するご講演を国立国際医療研究エンターの狩野繁之先生に頂きましたが、今回はAIDS/HIV、マラリアと並んで3大感染症の一つといわれる“結核”に関するご講演を、国際医療研究センター国際医療協力局の宮野真輔先生にお願い致しました。
結核は、1882年にロベルト・コッホにより発見された結核菌により主として引き起こされる感染症で、WHOによると、結核は2020年には世界中で1,000万人が発症し、150万人が死亡したと推定されています。
死者の内、95%以上は低中所得国で、これらの国では、特に15歳から44歳までの女性の死因の5位以内に入っており、また世界で0歳から14歳児の50万人以上が感染していると推定されています。
宮野先生は発展途上国を中心に国際保健医療の課題解決に長年ご尽力されており、興味深いお話となっております。概要
日時: 2023年4月20日(木) 14時から15時30分
場所: オンライン(ZOOM)
テーマ:「結核:その終焉(End TB)をめざした動向と課題」
講演者: 宮野真輔 国立国際医療研究センター(NCGM) 国際医療 国際騎亜初専門職 医師
司会: 池上清子 公益財団法人アジア人口開発協会専務理事、アフリカ協会理事、野口英世アフリカ賞選考委員講演会の概要は、機関紙「アフリカ」夏号に掲載致します。また協会HPにて講演内容を視聴できますので併せてご参照願います。
野口英世アフリカ賞受賞者講演会
- 野口英世アフリカ賞受賞者講演会
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野口英世アフリカ賞受賞記念講演会
アフリカにて黄熱病研究に生涯を奉げた野口英世博士を称え、アフリカで蔓延する感染症等の疾病対策に大きな業績を上げた個人や団体を顕彰する目的で2006年に創設された「野口英世アフリカ賞」ですが、2022年TICAD8に於いて第4回授賞式が行われました。
今回、受賞されました2組・4名の方々が日本政府の招待により来日された機会を捉え、アフリカ協会の主催にて、受賞記念講演会を開催致しました。尚、内閣府野口英世アフリカ賞担当室より共催を、また公益財団法人アジア人口・開発協会(APDA)より後援を頂いております。講演会概要:
日時:2023年3月14日(火)午後14時から16時
場所:如水会館(東京都千代田区一ツ橋2-1-1) 2階 オリオンルーム
司会進行:池上清子(アフリカ協会理事、APDA常務理事)
講演者:
医学研究分野受賞者
サリム・S・アブドゥル・カリム博士
カライシャ・アブドゥル・カリム博士
医療活動分野受賞者
アダム・ウエイス氏
カーターセンター ギニア虫撲滅プログラム・ディレクター
メ-ガン・マーツ氏
カーターセンター シニアアソシエイト・ディレクター
コメンテーター:
尾身 茂 結核予防会理事長
迫田朋子 ジャーナリスト、元NHK解説委員
歓迎挨拶:
武見敬三 参議院議員
野口英世アフリカ賞紹介
胡摩窪淳志 内閣府野口英世アフリカ賞担当室長
閉会の挨拶:
草賀純男 アフリカ協会理事長概要は、機関紙「アフリカ」夏号にて報告致しますのでご参照願います。
また、、講演内容は当協会HPに掲載しておりますのでご覧ください。
第14回大使を囲む懇談会開催
- 堀内アフリカ連合日本政府代表部大使を囲む懇談会
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2022年度第14回・堀内アフリカ連合日本政府代表部大使を囲む懇談会
3月24日午後、国際文化会館会議室において堀内俊彦・アフリカ連合日本政府代表部大使をお迎えして、アフリカ連合と日本との関係などについて伺う会を開催しました(会員企業等からの出席者16名、オンラインによる出席者17名)。
冒頭堀内大使より、本日アフリカ協会から戴いたテーマは「米・中・露の対アフリカ活動が活発化する中で,TICAD8以降、AUとの外交を日本はどのように考えるべきか」であるが、現時点で解を持ち合わせているわけではなく、(AU本部のある)アディスアベバにいて見聞きすること、考えることを中心に述べてみたい、として以下の説明がありました。
改めてなぜアフリカが大切かという点だが、アフリカの人口は2100年には約34億に達するという国連の推計もあり、今後AUの動きや考えがグローバル市場に影響を与える等の可能性もありうると考えられる中で、アフリカの在り方、そのガバナンスが世界を左右する可能性もある。また、アフリカは「グローバル・サウス」の主要な構成員としても注目が高まっている。ロシアのウクライナ侵攻をめぐる国連での投票行動においても、アフリカ各国は棄権する国が多いなど、特異の傾向を見せている。植民地支配などの歴史的な経緯に基づく欧米への反感(ルサンチマン)も根強く存在する一面にも注意が必要。日本が1990年代に開始したアフリカ開発に関するアフリカとの対話の場であるTICADは、その後追随する国やEUなどの地域機関が多くなり(ただし、TICADは国際機関など、日本とアフリカ以外の関係者も関与する「マルチ」性も売り)、アフリカも日本も変わっていく中で、今後TICADをどのような場とするかについても考えをさらに進める必要があろう。次回TICAD(2025年のTICAD9)に向けた新機軸などの考案も必要となるのではないか。いずれにせよ「アジェンダ2063」(2063年までにはこのような目標を達成していたい、とするもので内容はほぼSDGsと整合的)はAUの最重要文書であり、早くから日本はこの達成への道に向けて関与すべきと思われる。
この後、法人企業等の出席者より、「アフリカへの世界の関心が薄くなっていた1993年に日本はTICADを開催したが、その後先進諸国、中国、トルコなども同様のアフリカ開発を考える会合を主催し始めている現在、アフリカ諸国は日本のこのようなイニシアチヴをどのようにとらえているのか?」、「安保理改革の内容として、アフリカから2ヵ国を(常任理事国として)出すという案が従来からあるが、この案への日本の考え方はどのようなものか?」、「安保理改革へのアフリカ各国の期待はさまざまであり、この問題へのアフリカの統一した意見は見出しにくくなっているとも考えられるところ、現状はどうか?」、「アフリカへの2国間協力とマルチの場での協力のあり方をもっと検討すべきと思われる。」、「アフリカの中で、日本との関係をより緊密化したいと考えている地域の国々や、日本として一層の協力強化を検討したい特別の地域があるか?」、「AUの有効性については加盟国にも批判がある中で、希望が持てるのはアフリカ大陸自由貿易圏と思うが、この成功の見込みは?」などの質問や意見が出されました。