第11回大使を囲む懇談会開催
- 岩藤駐ジンバブエ大使を囲む懇談会
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12月24日午後、国際文化会館会議室において岩藤俊幸駐ジンバブエ大使を迎え、同国の近況について伺う会を開催しました(会員企業等から出席者計32名)。先ず岩藤大使よりムガベ大統領退陣以後、ムナンガグワ新大統領は「ビジネスに開かれたジンバブエ」、「国民に開かれた政権」のスローガンのもとに、政治改革(自由・公正な選挙、汚職撲滅など)、経済改革(国営企業の整理他)、財政規律(公務員改革、延滞債務の解消等)、国際社会との関係の再構築などを目指すと発表したが、その後昨年8月の総選挙(大統領、国会議員他)以後の群衆への発砲事件の処理の問題があり、本件を調査するモトランテ調査委員会の勧告が出された、また汚職対策の試みが見られるが、具体的成果を上げるには、予算等も不十分とみられること、経済改革面では金融改革と大幅な緊縮財政を実施したが、外貨不足から送金障害が発生し、経済状況は困難な面を迎えていること、しかし同国は人的資源と自然資源(鉱物資源、農業、観光の可能性)に恵まれており、将来の発展の可能性は大であると思われるので、当初意図した政治改革、経済改革等が履行されれば、一部西側諸国による経済制裁の解除も見込まれると思われることなどについて説明があり、次いで出席者から水と電力の供給が不安定である首都圏の住民は通常の生活維持に困っているのではないか、新国内通貨(RTGS)が実際には機能していないのではないか、対外的に必要な、外貨による決済の履行状況はどうか、最近同国に出張したが、国民のポテンシャルを感じた、同国の政治・経済状況の改善をAUやSADCと近隣国は支援する動きがあるのか、最近は特にサイクロン等の災害も多いが、ハラレ首都圏で約47万件(今後10年間)の安全で低価格の住宅を供給する計画の有無、中国、ロシアなどの諸国の同国への開発協力の動向、解放闘争による独立後、当初は退役軍人への処遇と動向が注目されたが、現在の旧軍人の状況はどのようなものか、日本はジンバブエの開発がどのように進むべきと見ているのか、またそれをどのように支援していくことが望ましいと考えられるのか、などの諸点について質問やコメントがありました。(担当委員:鈴木優梨子)
第10回大使を囲む懇談会開催
- 軽部駐コンゴ(民)大使を囲む懇談会
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10月16日(水)午後、国際文化会館会議室において軽部洋・駐コンゴ(民)大使を迎え、同国の近況について伺う会を開催しました(会員企業等から出席者計16名)。先ず軽部大使より、同国の面積、人口、人口増加率、主要輸出品目と鉱業などの同国の基礎情報、同国の略史と1996年の第一次コンゴ内戦以後の状況、紛争終結と平和の定着への歩みを概観の後、最近の政治情勢、特に2016年以降カビラ大統領(当時)の任期終了後の政治空白期間中の国内および関係国の動向、その後のチセケディ大統領の就任(今年1月)と現在までの動き、同大統領の主な経済政策(鉱物資源開発におけるトレサビリティの強化、汚職撲滅、基礎的社会インフラの開発他)、同国のマクロ経済概況と主な鉱物資源(銅、コバルト、ウラン、ダイヤモンド、タンタル、原油他)の分布状況、貿易・投資状況及び日本の同国への協力状況(産業人材育成プログラム、経済インフラ整備プログラム、警察改革プログラム他)などの諸点について説明がありました。
次いで会員企業等の出席者から、銅をめぐる、周辺国との関係はどのようなものか、またコバルトとニッケルの生産状況はどうか、東部でエボラ熱が発生したという情報があるが、コントロールされたのか、同国はコバルトの他リチウムも産するが、国内で精錬することが可能なのか、或はそれを目指しているのか、タンタルの現在の生産状況はどうか、以前コンゴ東部に行ったことがあり、民間の小型飛行機で希少金属を簡単に密輸で国外に持ち出すケースがあると聞いたが、そのようなことが現在でも行われているのか、アフリカへの進出を考える日本の中小企業があるが、住宅、水処理、ごみ処理など社会インフラのニーズが大と思う,鉱業資源の採掘をめぐるトレサビリティがきちんとしているか、鉄道インフラが老朽化しているがその後改善策があるのか、マタディ橋は老朽化が進んでいるのか、などの諸点について質問が出されました。
(担当委員:鈴木優梨子)
第9回大使を囲む懇談会開催
- 浦林駐スーダン大使を囲む懇談会
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10月2日午後、国際文化会館会議室において浦林紳二駐スーダン大使を迎え、同国の近況について伺う会を開催しました(会員企業等から出席者計19名)。先ず浦林大使より、同国で昨年から今年にかけて起きた状況により、30年続いたバシール政権が崩壊したこと、すなわち昨年12月、砂糖・パンの値上げなどから経済困難に耐え切れなくなった民衆が平和裡に反政府デモを行い、その後治安当局と国軍が民衆側に着いたことから、TMC(暫定軍事評議会)が結成され、4月にバシール政権は崩壊した、その後国軍は旧政権との対話を行ったが、デモ側は「自由と変化宣言署名グループ」(DFC)を組織して、早期の文民政権樹立を求めた、その後6月のデモ隊虐殺事件が起こるなど、政情が不安定化した、またその虐殺事件の直後、インターネットの遮断も起こった、その後AUによるメンバーシップ停止という状況にも至ったが、6月30日の大規模なデモでは、民衆側が整然とデモを行った、その後AUとの間にIGAD議長国のエチオピアが入り仲介の結果、今後3年間を移行措置の期間とすることで合意が成立し、9月に主権評議会が発足し、新たな出発を開始、ハムドゥーク氏が首相の座についた、新首相は戦争の終結、経済危機への対応など10の主要政策を発表した、日本の外務省は6月スーダン全土の渡航危険レベルを3に指定したが、その後ハルツームの危険レベルを2に下げた、他方米国は2017年に対スーダン経済制裁を解除したが、議会によるテロ支援国家指定は以前継続している、全体には、確実に良い方向に向かっているといえる、またスーダンは我が国の対スーダンODAを高く評価している、などの諸点について説明がありました。
次いで会員企業等の出席者から、DFCは民衆の支持を得ているのか、主権評議会は反政府勢力とうまく対話していけるのか、旧政権下では、輸出は主としてUAR、輸入は中国からであったが、中国の新政権への影響力はどの程度か、トルコとの外交関係はどのようなものか?免税申請を旧政権下では申請しやすく、かつ許可も得やすかったようだが、新政権下ではどのようになっているか、ハムドゥーク新首相はエコノミストであると承知するが、経済の立て直しがある程度の期間内に可能とみられるか、スーダンで仕事をしていて、渡航危険レベルが2から3に上がったため仕事を中断して帰国したが、これからプロジェクトを再開するところである、諸機関の申請のやりかた等は、以前と大きくは変わらない見込みと見てよいか、現在のインフラ状況について知りたいが、特に電力供給の状況はどうか、6月に軽油とガソリンの価格が上昇したが、現在の状況はどうか、外貨準備が不足しているが、インフレはまだ続いているのか、今回の和平プロセスに、エジプト等の周辺国がかかわったが、今後も周辺国が介入する見通しか、また近隣国との関係如何、米国政府は現在のスーダンを評価していると見られるが。米国議会の理解を得る見込みはどうか、などの諸点について質問が出されました。
(担当委員:鈴木優梨子)
第7回在京大使との懇談会開催
- ウェヤ駐日コートジボワール大使との懇談会
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Country-Study Meeting with H.E. Mr.Jerome Kloh WEYA
Ambassador of the Republic of Cote d’Ivoire to JapanThe Society held its seventh Country-Study meeting on 19th September at the International House in Tokyo, with the presence of H.E. Mr.Jerome Kloh WEYA, Ambassador of the Republic of Cote d’Ivoire to Japan. (Number of attendants; 24 persons.)
The ambassador started his presentation using the power point, by explaining the overview of his country such as its population, land area, and its two capitals-that while the economic capital is Abidjan, the political capital is Yamoussoukro. He also explained that his nation is a member of both WAEMU (West African Economic and Monetary Union) composed of 8 nations : Benin, Burkina Faso, Cote d’Ivoire, Guinea-Bissau, Mali, Niger, Senegal and Togo, which share a common currency, namely CFA franc and also ECOWAS (Economic Community of West African States), which has 15 member states.
On the political outlook, the ambassador explained on its presidency and the two-houses system of its parliamentary structure, the number of delegates of both houses, adding that the next presidential election is to be planned to take place in October next year.
His presentation on the nation’s economic outlook included the fact that the country puts much importance on the private sector, and in the field of agriculture, it has many products which rank high in the world or in Africa, such as cocoa and cashew nuts (ranking first in the world) and natural rubber and tuna which rank first in the continent The production of coffee, cotton, sugar and cola nuts are also doing very well.
In the field of industrial sector, food industries, chemical industries and mining are doing well. In the mining sector, significant mineral resources were made known since the 1970’s and there exist high mining potential (nickel, iron, gold, manganese, bauxite, copper, oil and gas, etc). It was also mentioned that within its CEPICI (the Agency which deals with promotion of investment), a special unit, namely “Japan Desk”, has been created to deal with Japan-related cases only.
In the services and commercial sectors, several commercial banks and insurance companies are operational in the country. Another important fact to be remembered is the fact that the headquarters of the African Development Bank is located in Abidjan.
On its infrastructure, the ambassador explained as follows;
– In the field of marine transport, there are two major seaports in the country, namely the ports of Abidjan and San Pedro.
– National Development Plan 2016-2020, in the fields of infrastructure and transportation, there are some projects such as “Construction of the
Abidjan-San Pedro Highway”, “Financing, construction and operation of liquid waste treatment plant for ships and effluents from industries in the port area of Abidjan”On the nation’s bilateral relationship with Japan, the ambassador explained by showing photos taken at the recent TICAD7, Prime Minister of Japan Shinzo ABE meeting Prime Minister Amadou Gon COULIBALY, and some pictures of Japan-Cote d’Ivoire cooperation and Japanese investments in the country.
The questions and comments raised by the attendants after the presentation include (1) want to know more about the processing of cocoa, (2) CEPICI has a unit which deals with Japan only, and more information of the role of the unit is sought, (3) how does the ambassador see the recently held TICAD7?
(4) For the development of the nation’s economy and expansion of export, it is deemed important to develop transport infrastructure, especially the land transport before reaching the seaports. In this regard it should be essential to have skilled local partners (for foreign investors), (5) Japanese have a certain difficulty to operate in the French speaking countries. Does Cote d’Ivoire have any provisions to help solve the problem? (6)Are there any plans to move all the ministries and other government organizations to Yamoussoukro, as is the practice being done in Tanzania (from Dar es Salaam to Dodoma)? and (7) UNIDO (Tokyo Office) intends to promote its operation for the promotion of investment and development of relationship with Cote d’Ivoire. In order to improve its activities with the West African countries, it has recruited a Senegalese officer as the Investment Adviser.ジェローム・クロー・ウェヤ駐日コートジボワール共和国大使との懇談会
9月19日午後、国際文化会館において、ジェローム・クロー・ウェヤ駐日コートジボワール大使に同国事情を伺う会を開催しました(会員企業等から出席者24名)。先ずウェヤ大使より、同国の概況(人口、面積、経済上の主要都市はアビジャンであるが、首都はヤムスクロであること、8か国(ベナン、ブルキナファソ、コートジボワール、ギニアビサウ、マリ、ニジェール、セネガル及びトーゴ)から成るWAEMU(West African Economic and Monetary Union)
及び15か国から成るECOWAS(Economic Community of West African States)の一員でもあること等)と政治状況(大統領制、両院から成る国会と議員数、来年10月に大統領選挙が行われる予定等)及び経済概況(プライベート・セクターが重要な位置を占めること、農業面では生産量世界一のココア、カシューナッツ、アフリカ一の生産量のゴム、まぐろ、アフリカ2位のパーム・オイルの他、コーヒー、綿花、砂糖、コーラ豆他を生産、また工業部門では食品工業、化学工業、鉱業などが代表的であるが、1970年代から発展してきた鉱業分野では、ニッケル、鉄鉱石、金、マンガン、ボーキサイト、銅、石油、天然ガスなどの埋蔵が知られている、CEPICI(投資促進庁)内には、日本に専門的に対応する「ジャパン・デスク」を設置している、サービス・商業分野では、いくつかの銀行、保険会社が営業しており、またアフリカ開銀の本部もコートジボワールに置かれていること、などを紹介)について説明した後、インフラ概況についても、港湾ではアビジャン港とサン・ペドロの2つの大きな港を有すること、国家開発計画(2016-2020)の中の、インフラと運輸・交通面での開発計画(アビジャンとサン・ペドロを結ぶ道路の建設、アビジャン港及び周辺工業地帯の液体廃棄物処理プラント建設)も具体的に紹介されました。その他日本との2国関係については、最近のTICAD7開催時のコートジボワール共和国アマドゥ・ゴン=クリバリ首相と安倍総理の会談時の写真及び、同国における日本のこれまでのODA実施案件や投資案件の地域図や写真も示されました。
その後会員企業等から、(1)カカオのプロセス方法について、より詳しく知りたい、(2)CEPICIという機関があり、日本からの投資について専門に対応するとのことだが、どのようなサービスを提供するのか、(3)先月開催されたTICAD7をどう見るか、(4)経済振興と輸出拡大には運輸インフラが極めて重要と思われるところ、最後は陸送となるが、(外国からの投資を考える場合)ローカル・パートナーの育成が不可欠となると思われる、(5)日本からの進出にとり、言葉の点で仏語国には若干行き難いという問題があるが、何らかの対策を持っているか、(6)首都がヤムスクロだが、タンザニアの例のようにかなりの省庁をヤムスクロに移転させるプランはあるか、(7)UNIDO東京オフィスとしては、西アフリカへの投資促進のため、セネガル人の投資アドバイザーを擁しているが、今後も貴国への関係増進を心掛けたい、などの質問や意見が出されました。
(担当委員:鈴木優梨子)
第10回フォーラム
「TICAD 7 官民連携のあり方と進化について」
日時: 2019年6月24日(月)14:00〜16:30
場所:国際文化会館 別館2階講堂
参加者:当協会会員、官・産・学・メディア関係者など81名
司会:淺野昌宏 アフリカ協会副理事長
本日は、皆さまご多忙の中、アフリカ協会主催第10回フォーラムにご参集いただきまして、誠にありがとうございます。私は当協会副理事長の淺野と申します。よろしくお願いいたします。
本日のフォーラムは、2カ月後に迫りましたTICAD 7をテーマに、「TICAD 7 官民連携のあり方と進化」と題して議論を進めていきたいと存じます。今回のテーマは皆さんのご関心も高かったようで、申し込みが八十数名ございまして、いつものようにゲストを取り巻いてロの字になってのレイアウトが取れないものですから、やむなくこのような教室スタイルのレイアウトにさせていただきました。ご了解賜りたいと存じます。
そのために本日の進め方も、まずパネラーの皆さま方のお話を伺った後、パネラーの方々での議論や意見交換などを行っていただいて、その後で皆さま方との質疑応答や議論に入りたいと思っております。最初から平場での議論になりませんけれども、その点はご了承賜りたいと存じます。
本日お願いいたしました4名のパネラーの方をご紹介いたします。TICAD担当大使で外務省アフリカ部 参事官、紀谷昌彦様。経済産業省 通商政策局 審議官、柴田裕憲様。経済同友会 アフリカ委員会 副委員長、日本たばこ産業株式会社 代表取締役副社長、岩井睦雄様。JICAアフリカ部 部長、加藤隆一様。パネラーの皆さま、ご多忙にもかかわらず当フォーラムにご協力賜りますこと、深く感謝申し上げます。本日はよろしくお願いいたします。それから、モデレーターは、アフリカ開発銀行 アジア代表事務所長、横山正様にお願いしております。それでは開会に当たりまして、理事長の大島賢三よりごあいさつを申し上げます。
主催者挨拶:大島賢三 アフリカ協会理事長
アフリカ協会の大島でございます。今日はあいにくの雨天になりましたけれども、足元の悪い中、皆さま多数ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
TICAD 7まであと2カ月というところに迫ってまいりました。今日ご参集の皆さま方もTICADについてはいろいろな立場から大変強いご関心をお寄せのことと思います。ということで今回のテーマは官民連携ということに絞りまして、ただいまご紹介させていただきました4人の非常に代表的な方々にお集まりをいただいて、現在の検討状況等について詳しいお話を伺いたいものということで期待をいたしております。4人の代表の皆さま、本当にご多忙の中ご出席、ご参加いただきまして、誠にありがとうございます。それから、横山アフリカ開発銀行所長様にモデレーターをお引き受けいただきまして、厚く御礼を申し上げます。
官民連携についてはこれからいろいろな話が伺えると思いますが、最後に一言だけ、アフリカ協会のほうから宣伝も兼ねて一言だけ付け加えさせていただきます。アフリカ協会として、TICAD 7で提言を出しております。これがそのパンフレットでございます。
中身に簡単に触れますと、一つは、TICAD情報センターを官民連携の形でアフリカ連合の本部があるエチオピア、アジス・アベバに、新しい発想に基づいて立ち上げて、情報の発信、収集等々に役立てはどうかというのが提言の第1でございます。
第2の提言は、日本とアフリカ、特にアフリカ連合との関係を強化することを念頭に日本・アフリカパートナーシップ基金を、小さくてもいいから立ち上げて、今の体制では十分カバーしきれてない部分をこれから手掛けていってはどうかという内容でございます。これは日本とアセアンの関係にいろいろヒントを得ながら、アフリカにそろそろ参考になるべきことがあれば適用していったらどうかと、こういうことでございます。
この提言をパンフレットにまとめまして、当会の松浦会長、鴻池副会長(鴻池組名誉会長)、澤田副会長(エイチ・アイ・エス 会長CEO)、井田副会長(サンヨー食品 社長)、そろい踏みで河野外務大臣をお訪ねしてこの提言を説明させていただきました。河野大臣はこのパンフレットをご覧になって、この表紙が面白いねと。この表紙というのは、アフリカの大陸がいかに大きいかということを非常に分かりやすく図示したもので、アメリカと中国、インド、ヨーロッパ各国のそれぞれの国土をアフリカの枠の中に押し込めた非常に面白い地図でございます。ご存じの方もおられるかと思います。
河野大臣はこれをご覧になって、この表紙のほうに強い関心を示されて、中身よりもそちらのほうに関心が向いたのではないかと、もちろん冗談ですが。本日、終わりましたら、受付にこのパンフレットを置いてありますので、もし、関心をお持ちの方がございましたら、どうぞ手に取っていただいて、その上で表紙ではなく中身にぜひ強い関心を持ってご覧いただければ幸いでございます。
それではパネリストの皆さま、横山さん、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。(拍手)
司会:淺野昌宏
どうもありがとうございました。それでは、フォーラムに入ります。横山様、よろしくお願いいたします。
モデレーター:横山正 アフリカ開発銀行アジア代表事務所所長
ありがとうございます。ただいまご紹介いただきました、アフリカ開発銀行アジア代表事務所の所長をしております横山でございます。本日はアフリカ協会の第10回フォーラムにモデレーターとしてお招きいただきまして、誠に光栄に存じます。皆さまご存じのとおり、TICAD 7が8月28~30日に横浜で開催されます。2013年のTICAD 5以降、民間ビジネス、民間投資というものがTICADの中でも重要な議題の一つとなってきております。
やはり、民間のサステイナブルな投資とかビジネスがなければアフリカの広範な開発課題を克服できないと。また、民間にしても、アフリカには膨大なビジネス機会がありますので、それを利用しない手はないということでございます。その中でアフリカの開発の克服には、当然のことながらODAも重要なのですが、民間投資も重要であるということで、国際的にもODAについて、いかに民間のビジネス、投資を円滑化させるか、より促進させるかという観点から、どのように使ったらいいか、といった方向でいろいろな議論が行われていますし、実際、その方向でいろいろなものが動いてきております。
TICAD 7においても、民間ビジネス、民間投資をいかに促進していくのかが議論の焦点の一つになると思います。ただし、民間ビジネス、投資にアフリカへ行ってくれといっても、それは簡単に進むものではなくて、ODAないし官と民が手を携えながら、取り合いながら行くということもやはり重要だということになると思います。
その中で、TICAD 7に向けて官民円卓会議が開かれて、民間から重要な提言が今年の3月に取りまとめられ、4月に安倍総理に提出されております。こういうことでTICAD7に向けて、まさに本日の「官民の連携のあり方と進化」というテーマは非常に時機を得たテーマであると考えております。本日は、このテーマを語るのに非常にふさわしい方々にパネリストとして来ていただいております。
紀谷昌彦 アフリカ部参事官は、1987年に外務省に入省され、アメリカ、バングラデシュ、ベルギーを含め国内外のポストを歴任され、2015~2017年まで駐南スーダン大使をされておられます。現在はTICAD担当大使でもあられます。今回のTICAD 7を共催される立場で、アフリカ諸国と、また、日本国内の調整を行われており、その文脈で官民連携も担当されております。
お隣の柴田裕憲 経済産業省 通商政策局 審議官は、1987年に外務省に入省されまして、韓国、フランス、フィリピン、ドイツを含め国内外のポストを務められ、また、外務省、財務省両方に勤務されまして、外務省 JICAの無償資金、技術協力とか、円借款の政策立案のご担当もされております。現在は通商政策局審議官として日本の貿易投資推進を含めまして、日本の通商政策全般に携わっておられます。
そのお隣の岩井睦雄 経済同友会 アフリカ委員会 副委員長、また日本たばこ産業株式会社 代表取締役副社長でいらっしゃいます。1983年に日本専売公社に入社されまして、人事、経営企画部門で要職を務められ、2011年から2年間、海外たばこ事業子会社 JTインターナショナル副社長も歴任されております。2016年より現職で、まさに日本たばこの事業戦略、国際化戦略の策定および実施を担われてこられた方でございます。
最後に加藤隆一 JICA アフリカ部 部長は、アフリカ地域における日本のODA供与の実施に携わられております。アフリカ勤務では、コートジボワール事務所次長、セネガル事務所次長、所長を歴任されております。まさにアフリカのプロで、2017年から現職です。
それでは、まず紀谷様から本日のお題の、「官民の連携のあり方と進化」について、お話を頂ければと存じます。
パネラー:紀谷昌彦 外務省 アフリカ部 参事官(TICAD 担当大使)
ただいまご紹介にあずかりました、外務省の紀谷と申します。
今回、TICAD 7に向けての官民連携の在り方という、ほんとにタイムリーかつ重要なテーマについて設定いただいて、このような機会を頂きましてありがとうございます。まさにこの場にいらっしゃる多くの方といいますか、ほぼ全ての方々がこのテーマの下でのパートナーになると考えておりまして、この機会を最大限に生かして、これから実行に向けて取り組みたいと考えております。
私のほうからぜひお伝えしたいと思いますのは、TICAD 7に向けて、外務省も含めて政府が官民連携、ビジネスイノベーション推進に本気であるということです。これは、本日、経済産業省の柴田審議官もいらっしゃいますが、外務大臣、経産大臣、あと同友会、経団連のアフリカ委員長も含めての、つい今月初めの「アフリカビジネス協議会」の設立ということに目に見える形で現れていると思います。その経緯も含めまして、簡単にご説明したいと思います。
3点お話ししたいと思っておりまして、最初に官民連携が進んできた経緯。2つ目は、これをどういうふうに進めていきたいかという段取り。3つ目は、TICAD 7をどういう形で生かしていくべきかということについての考えです。
経緯を一言で申し上げると、外務省が通例どおり始めたTICAD 7官民円卓会議というプロセスが、結果として今年の4月に提出された民間からの提言では、もうともかく継続的に政府全体でやれという要望になり、その2カ月後に早速アフリカビジネス協議会が立ち上がりました。そこは外務省だけではなくて、外務省、経済産業省の両大臣が共同議長に入っているという結果になりました。
これには河野大臣自身の強いリーダーシップがありました。円卓会議の第1回会合の場で、前例に倣った形で会議を始めたところ、大臣から「違う」と言われまして、具体的な注文は2つあり、「大企業だけでは駄目だ、中小企業、スタートアップ企業も入れろ」ということ。もう一つは、「偉い人ばかりじゃなくて、まさに現場でハンズオンでやっている実務者にしっかりと議論してもらえ」という、この2点です。
その指示を受けまして、円卓会議自体ではなくてワーキンググループを2つに分けて、3月が第1回で、6月、9月、12月と十分に準備した上で、3回実務者レベルで議論を重ねました。私も全て出席しました。その結果取りまとめられたのが、この提言書というもので、3月に採択され、4月頭に安倍総理に直接提出されました。総理は「次のTICADはビジネスTICADにする」ということを具体的に明言されまして、その総理の指示の下で進んでいるということです。
具体的にどういう形で進めることが大事かといいますと、提言をできる限り迅速に実施することです。ビジネス協議会に加えて、優先国を対象にした2国間のビジネス環境改善委員会、JETROを中心にこれまでやっていた取り組みがありますけれども、大使館、JICAも含めて企業の方もしっかり入った形で、先方政府のしかるべきレベルにしっかりコミットしてもらって、やる気のあるところを中心にビジネス環境を改善してもらうということなどが提言に入っています。それをやっていくということです。
今は、具体的な実施の段取りを走りながら考えている中で、特に企業の方から問題提起を頂いて進めていることが幾つかあります。1つ目はオールジャパンの確保ということです。官民連携の前に、まず官の中身が一緒にならないといけないという厳しい指摘を受けまして、同じ説明をさせられてはたまらないと言うものです。
前回、前々回のTICADで、各会社のトップの人がどこのイベントにどういうふうに出ればいいのかという情報も十分知らない上に、政府部内でもお互い調整できてないじゃないかという、まさに担当レベルの悩みを去年の過程で率直に頂きました。それはそうだなということで、もう全部同じプラットフォームに乗せるということ、まず官の中をしっかりとオールジャパンにするということをやりました。
それに加えて、民の方にも協働で、同じ資格で入ってもらうということ。さらに、並行して、与党自民党からも提言を頂くプロセスの中で、政も入れてくれと。政治もリーダーシップを発揮することで民の企業に貢献できるということがあります。また、研究者の方々もTICADに向けてやりたいということで、そういう日本のいろんなアクターにやってもらう、それが大事だと思います。
ただ、その次に、みんなが集まったところで結構目的が違ったり、イメージが違ったりするということがありますので、2つ目の課題として,共通の目標は何なのかということについて、しっかり認識を一にするということが大事だと感じました。
これはSDGs、あるいはアフリカの場合はアフリカの開発目標である「アジェンダ2063」というものがあり、それを達成する中で、JICAも含めて、先方、アフリカの国民にもしっかりと喜んでもらえるような日本企業の活動を確保するということが、結局は有意義になるということです。今、SDGs時代ですので、SDGsに取り組まれている方もいらっしゃると思います。そういう目標を常に見ながら、お互いに有意義になるところを進めていくということが大事だと感じます。
3つ目は、インパクトを出すためのスケールアップです。そのためには、まずはご本人たち、アフリカでビジネスをするということ、あるいは官民連携の事業をするという場合に、まずアフリカの主体性を大事にしないといけないので対話をするということで、つい先週金曜日に、このためにアフリカ側の提案を受けて、日本の民間企業の方にもご賛同を得て、在京アフリカ外交団と日本の民間企業代表の対話の場を外務省でアレンジさせていただきました。
その場に、経産省もJICAもいらっしゃって、官も聞いている中でアフリカと民の率直な対話があり、私自身、印象深かったのは、日本企業にとってアフリカはあまりなじみのない場ということが多いので、そこは政府側のいろんなサポートも含めて、あるいはアフリカの側は大使館や大使が上から目線ではなくて、アフリカに投資すべきだとか、しないのはおかしいとか言うのではなくて、むしろ、勉強してやりたくなるような雰囲気づくりをアフリカ側もしていかないと、良い結果にはならないなということや、そんなことを言ってもやはり難しいんだとか、日本の企業は、あっちの会社が行ったから自分も行かなきゃとかいう発想があるから、そういうのを使ったらとか、そういう率直なやりとりが、アフリカ側と進む中で物事が動いていくのかなという感を強くしました。
更に、経産省、JICAにもやっていただいていますが、第三国、例えばヨーロッパや、インドなど、ノウハウを持っている所との連携の推進や、あるいは国際機関、UNDP、世銀、アフリカ開銀等々、既に相応のノウハウを持っている国や機関、企業との連携を推進して、あるいはアフリカ側の企業を買収するとか、まさに、第三のアクターの巻き込みということもスケールアップやインパクトには大事だという議論が重要ではないかと思います。
そして、段取りとしては、あれこれ進んでいるものについて、まさにこういう場でなるべく知ってもらう。今お話ししていることはウェブになかなか載らなくてすみませんが、これからなるべくいろんな形でメディアを通じて、ウェブサイトを通じて情報発信をすることが極めて大事だと思います。知ってもらって初めて世の中に存在するということがありますので、これをどうやって伝えるのかというコミュニケーション戦略が、もっと改善したいということを痛切に思っております。
最後に、TICAD 7の機会をどう使うかということについてお話しします。逆説的かもしれませんけれども、TICAD 7をイベントに終わらせてはいけない、イベントとして考えてはいけないというのが過去の流れを見ていての、私自身も含めての感じです。今回の民間からの提言も、これまでは、TICADが終わったらみんな解散して、またTICADが始まるとやるという、そういうのではなくて継続性が大事だということを強く提言されました。その思いは民も共有していただいていると思います。
ですから、今回のTICADはイベントとしてではなくて、プロセスの重要なポイントとして位置付けて、そこで何かをやって終わったら忘れるのではなくて、そこから物事が始まって、1年後、3年後にしっかりと発展できる計画を作って、そこで発表し、そこでコミットをする、そこでMOUを結ぶというような場にするのが、インパクトを出す上では非常に大事なことだというふうに思っています。
TICADの枠組み自体、他のインド、中国、韓国、ヨーロッパ、アメリカのアフリカとの枠組みと違って、まさに国際会議の中で日本がリーダーシップを取るという立て付けになってきています。今回は日本の政府ということではなくて、日本の官民連携が世界の官民連携をリードするという形で、日本の官民連携が世界のアフリカ開発のための、アフリカの発展のためのベストプラクティスとなるようにそれを承継していくというのがアンビションといいますか、われわれに求められていることだと思います。そのために全力で取り組みたいと思いますので、これからよろしくお願いいたします。(拍手)
モデレーター:横山正
紀谷大使、どうもありがとうございました。それでは、次に柴田参事官、よろしくお願いいたします。
パネラー:柴田裕憲 経済産業省 通商政策局 審議官
経済産業省 通商政策局 審議官の柴田でございます。本日はこの協会の会合に経産省にもお声掛けいただきまして、誠に光栄です。本当にありがとうございます。アフリカにおける官民連携についてはまさに今、私の前の紀谷大使も、その前の理事長も皆さまご紹介あったとおり、ちょうど次のTICADに向けてまさにタイムリーなタイミングでこの会合が開かれてると思いますし、私ども経産省としましても、この場で私どもの取り組みを紹介させていただけるというのは非常にタイムリーな会合であったというふうに考えております。
資料に入ります前に、まず2つ申し上げておきますと、一つは経済産業省という省の役割から来るもので、アフリカの開発現状にも関係はしておりますが、経済産業省はよりビジネス、具体的には貿易とか、投資とか、そういったものを推進するにはどうしたらいいか、これは、世界全体とアフリカとの関係においても、よりビジネスの観点に比重を置いてアフリカを見てるという、そういう役所だと思います。
それから、2点目は私自身の経歴ですが、私はアフリカで勤務したことはございません。アフリカは出張で数回、この20~30年ぐらいの間に行ったことはございますが、そのぐらいしか経験はございません。アフリカの問題を考えるときに、私も今のポストに来て、去年の9月に着任しておりますが、いろんな会議に参加させていただいて勉強させていただくと、アフリカにいかにビジネスチャンスが広がっているかということが分かるのですが、恐らく、私自身ができることはアフリカがものすごく大好きだとか、アフリカで何年も何十年もやってますという方とはまた違った視点から、より客観的に、少し距離を置いてアフリカの重要性ということを場合によっては説明できるものではないかと思います。
この2点を前提として資料に入らせていただきますが、今日の話は大きくくくりまして、最初はアフリカで何が起こってるかということが一つ。2つ目は、経済産業省として最近どういった取り組みに力を入れているかということを2つ目のくくりでお話ししたいと思います。
最初の点につきましては、今アフリカで何が起こってるかということは、恐らく本日ここにいらっしゃる方々の多くの方にとってはもうよくご存じのお話だろうと考えておりますが、アフリカの今の重要性を述べる前提として、まず若干触れさせていただきます。
ご案内のとおり、人口が非常に増えるということが見込まれています。これは2018年と2050年の比較ですが、大まかに言えば30年後どうなりますかということですが、アフリカは、今は17%ぐらいの世界人口を占めているのに対して26%ぐらいまで上がっていく。アジアの比率は相対的には落ちていきます。国別のアフリカの人口、今でもアフリカはかなり人口が多い国もあるのですが、2050年、30年後にはトップ10に入ってる国もあります。それから、トップ20まで入れますと、ここにあるぐらいのかなりの数、ナイジェリア、コンゴ民、エチオピア、タンザニアをはじめかなりの国がトップ20に入るぐらい人口が増えていくというふうに公的に予想されています。
それから、GDP成長率ですが、これはもう少し短い、過去はだいぶ前から取っておりますが、将来予測はあまり先のものが取れてませんが、このようになってます。これは全体的に言うと、世界全体の成長率と比べるとアフリカは少し高いところ、それから、フェアに言えば、アジア太平洋地域は引き続き高い成長率が見込まれてる地域。もちろん先進国は、世界全体の平均よりやや低いという、そういう成長率ですが、さらにブレークダウンしていきますと、幾つかの国では高い成長率の国もあれば、低い成長率の国もあると。ただ、全体として言えば、アフリカはまだまだこれから、5年あるいはその先も、人口の増加も含めて言えば、20年、30年と成長を続けていくであろうと考えられていると思います。
次に、諸外国がアフリカで何をやってるかですが、これをご覧いただきますと、貿易と投資の数字を皆さんご存じと思いますが、ここに参考までに出しております。貿易については2006と2016の比較、投資残高については2009と2017の比較をしておりますが、左側は2006年時点の数字で、日本は第9位に位置しています。16年になると、少なくともトップ15には入っていない。もう少し下のレベルに落ちています。
それから中国が伸びているのはもちろん、2006年の時点でかなり上のレベルにいましたし、さらにそれを伸ばしてるという状況ですが、特にわれわれも注目しているのはヨーロッパの日本と経済規模が、あるいは経済力といってもいいのかもしれませんが、そう変わらない国が、例えばフランス、ドイツ、イタリア、イギリス、あるいはスペイン、オランダ辺りよりは日本のほうが上じゃないかと思えるような国も貿易額を伸ばしていたり、あるいは、そのシェアを伸ばしてるというのがこの10年の間に起ってきていることです。
最初に思うことは、植民地の旧宗主国との関係もあるかもしれませんが、じゃあ、ドイツはどうなんだというと、ドイツだって4位から4位という移行で貿易額は伸びてると。もちろん、日本からの距離よりはドイツからの距離のほうがはるかに近いので、そういう距離的な面もあるかもしれませんが、こういう数字が実態として表れています。それから、アフリカ直接投資の残高、これは残高の比較ですが、フランス、イギリスに比べ日本は小さい。横ばいであり、かつ絶対値の値も小さいという状況になっています。
今のものを見て何が言えるかというと、2つ大きなくくりで言いますと、2つの課題あるいは問題があるんだなと思います。一つは、こうした事実が日本国内ではあまり知られていない。特に、国際的な仕事をしている組織あるいは人の間でも必ずしもよく知られてなくて、私自身そうでした。ずっと30年間国際的な仕事はしてきておりますが、やはりどうしても、恐らく1990年代や2000年代をすぎてから10年間ぐらい、2000年代1桁辺りのアフリカの混乱とか、戦乱とか、そういった不安定性のイメージは払拭されていることはなくて、今でもそういうことが起こってるんじゃないのという感じのイメージを日本国民や、あるいは日本国内で国際的な仕事をしている方でもそういうイメージを持ち続けているということ。これを変えていかなきゃいけないだろうというのが、恐らく一つの課題だと思います。
それからもう一つは、今のような現状を見ますと、日本のビジネスチャンスは失われている、他の国にビジネスチャンスを取られてるという状況がありますので、これを解決していかないといけない。そもそも何が問題なのかというところから始まって、これをどうやって解決していったらいいんだというのは、これは短期的に1年とかで答えが出るものではありませんが、これに取り組んでいかなければいけないというのが2つ目の課題だと思います。
この2つ目の課題との関係で一つ立ち上げたのが、先ほど紀谷参事官からもご紹介ありましたビジネス協議会というのを6月の初めに立ち上げておりますが、そのもう少し前にさかのぼりますと、「日アフリカ官民経済フォーラム」というのを南アフリカで開催しております。これは2016年、前回のTICADのときに安倍総理が表明したものを去年の5月に南アフリカで開催したもので、アフリカでの日本企業のビジネス活動促進のためにやろうということで行われました。
これが日アフリカ官民経済フォーラム、去年やったものですけれども、日本企業の方からも約100社、それからアフリカ企業約400社にも参加いただいた。もちろん、経済産業大臣、世耕大臣が現地に入って多くの人と会って、できるだけ日本のビジネスを売り込もうということで、アフリカの企業の方も400社、このうちかなりの数は南アフリカから来てるということですが。それ以外にアフリカの別の国からも半分ぐらいでしょうか、参加して、この会議を開いたというのがあります。これはまた引き続き開きますが、これは去年の5月に開いたものです。
それから、アフリカビジネス協議会の設立。これは先ほど紀谷参事官からも紹介がありましたが、まさに外務省と一緒になって設立したものです。この経緯は、一つはもちろん外務省の円卓会議での議論で、民間の皆さまから頂いたいろんな意見を参考にしましたし、経産省からもその会議には出席するようにしていました。それから、経済産業省もそれとは別に独自に多くの企業の方々から多数ヒアリングさせていただいて、いろんな問題点が分かってきたというのがこのビジネス協議会につながっています。
ほんとに問題はたくさん山積みなんですが、民間企業の方の立場によっては、1社ではリスクが大き過ぎて出ていこうと思っても出られないとか、相手国政府と話をつけなきゃいけないけれども相手国政府の中に入り込めないという話とか。どうもビジネスチャンスがあるという話はいろいろ聞くので関心は持っているけども、そもそもアフリカの情報がないと言うことがあります。アジアと比べると、例えば東南アジアでも、中国でもそうだと思いますが、情報量があまりにも少ないということとか、あとは、先ほど紀谷参事官がおっしゃったような、官の中が必ずしも、A省に説明して、B省に説明して、C省に説明してと、何度も同じ説明をしなきゃいけないこの体制も改善できないかというようなご意見とか、そういったようなことを頂きました。
それからあとは、紀谷参事官からこれもご紹介ありましたけども、やはりTICADがあるときに、その1年ぐらいの間わっと盛り上がるけど続かない。もっと継続的に恒常的にしてほしいという話がありまして、その辺りを全部できるだけ取り込める形で設立したつもりです。一番上に書いてありますように常設の協議会であり、継続的に協議、協力、支援等をいたします。
前のページにちょっと、この見出しの所に書きましたけど、アフリカビジネス協議会常設でTICAD 7からTICAD 8へということで、TICAD 7を念頭にまずは置いてますが、TICAD 8も見据えて、7までにもちろん成果は出せることは出しますけど、やっぱり継続的にやっていくことが大事なので、TICAD 8まで考えながら協議会の運営をやっていくと。機能、例えば情報共有、ネットワーキング、マッチング、ビジネス環境改善促進、個別ビジネスの案件を支援といったようなことを柱としてはやっていこうと思います。経産大臣も外務大臣も両方とも大臣自身がコミットしている会議になります。
次の課題は今、ワーキンググループをいろいろ立ち上げて実務レベルで、いってみれば集まれるときに関心がある人たちが集まるという形でワーキンググループを開いていきたいと考えておりまして、これは、6月6日に大臣も出た本会議が開かれましたが、ワーキンググループをTICAD 7が開かれる前までには幾つか立ち上げていきたいと考えています。どれが早くできるかは分かりませんが、そもそも情報共有をするワーキンググループとか、スタートアップ企業を主に対象としたワーキンググループ、分野別でいえば、例えばヘルスケアとか、農業とか、インフラとか、そういった分野別のワーキンググループも、どれが先にいつできるかというのは今まさに全て同時並行で動かしてるとこですが、こういったことを立ち上げていきたいと考えています。
それから、今の協議会の中でやることでもあるし、あるいは協議会とは別の場でも考えていかなきゃいけないことなんですけども、全ての国に対して万遍なく取り組んでいくってことは非常に難しくて、経済産業省のビジネスを主として見ている立場からも、やはりなかなか日本企業がビジネスで入っていくのが難しい国っていうのも結構多くあるんじゃないかと思います。
これは、例えばということで挙げた国ですけど、人口が多い国とか、人口増が大きい国とか、政府の体制が比較的整ってる国とか、それから割とビジネスをする自由度が高い国とか、それと関連しますけど、スタートアップがかなり、例えばナイジェリアやケニアの話は有名ですけれども、そうした国、それから、例えばいわゆる経済水準は必ずしも高くないけども天然資源がある国もビジネスチャンスがあるだろうということです。
例えばこういう国辺りは考えてますけれども、他にもこういう国がいいのではないか、行くべきなのではないかというのもあるかと思います。会社によってもいろいろあり、例えば小さな企業から、その国に関心があったのかと思うような国を挙げられたケースもあります。従って、必ずしもここに挙げた国だけではないけれど、逆にある程度は濃淡付ける必要もあるだろう、といったことを考えていかなければいけないと思ってます。
それから、あとは繰り返しになりますけど、スタートアップ。これは、当省の世耕大臣が5月9日に参加した、日経新聞によるTICAD 7のプレビューイベント「アフリカビジネスの新戦略-新たな連携で実現するビジネスモデル-」でもスピーチをしておりますのでご覧いただけたらと思います。特にその中でスタートアップを支援すること、第三国を活用した人材育成については力を入れていきたいということを話しておりますので、ここでもご紹介させていただきます。それから、あとはアフリカにおけるスタートアップ。多くの方はもうご存じだと思いますが、例示的に外国の企業も日本の企業も両方入れましたけれども、例示的にスタートアップ企業というのを入れさせていただきました。
最後に結びですが、アフリカ協会の皆さまに、一つは、今こうしたようなビジネス協議会の活動にこれからも一緒に協力しながらやってまいりたいと思いますし、ご支援いただけるところ、あるいはわれわれが支援することがあればいろいろお話しいただけるとますます活発にこの協議会を運営していけると思いますので、ぜひその点ご協力いただきたいと考えております。
また、もう1点だけ申し上げますと、冒頭申し上げた、やはりアフリカがこれだけ変わってきてるとか、そこにビジネスチャンスがあるとか、昔のアフリカとは、20年前、30年前とは違うんだということの発信はアフリカ協会の皆さま、会員の皆さまはアフリカのことをよくご存じでいらっしゃいますので、そういったことを私どもも努力しますけれども、会員の皆さまにもぜひそうしたことを、国際的な仕事をしてる方とか一般の方々に発信していただく点、ご協力いただけるといっそうよくなっていくのではないかと思います。よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。(拍手)
モデレーター:横山正
柴田審議官どうもありがとうございました。それでは、次に岩井経済同友会 アフリカ委員会 副委員長、よろしくお願いいたします。
パネラー:岩井睦雄 経済同友会 アフリカ委員会副委員長
(日本たばこ産業株式会社 代表取締役副社長)
よろしくお願いいたします。本日こういう形でTICAD 7が間近に迫る中で、このようなタイミングで機会を頂きましたことにまずもって御礼申し上げたいと思います。ありがとうございます。本来であれば、横井委員長が伺うところですが、所用がありましたので、副委員長をしております岩井の方で、話をさせて戴きます。
まず一つは、先ほどのお二方の話と重なるかもしれませんけども、ビジネスの側ということで、経済同友会がどんな問題意識を持って提言をさせていただいて、今、TICAD 7、それから8に向かって進んでいるかというところのお話。2点目は、1つの具体的な事例ということで、弊社のアフリカでの経験を踏まえて今後の官に対する期待というところ。それから、3点目はまさにTICADに向けて官民連携を進捗していく、今までの経緯と今後の期待というところについてと、この3点をお話ししていきたいと思います。
まず、スライドの3は、これはもうほんとに釈迦に説法で、ビジネスの側から見てもまさにこれから人口が伸びる、そして若い若年層の人口が非常に多いこのアフリカという所は、まさに最後のビジネスとしてもフロンティアだという、そういう認識であるということです。
次のスライド4、これも柴田審議官からご説明ありましたとおり、諸外国と比べますと、欧州、米国は絶対量において直接投資が非常に大きいわけですし、また、インド、中国も非常に伸びております。また、その後、アセアンの諸国と新興国も新しい成長機会と市場を求めてどんどんと進出をしているという状況の中で申し上げると、日本の直接投資というのは絶対量も伸び率も含めて非常に後塵を拝している。このまま日本にとどまってアフリカの環境が改善されるのを待ってからというような、そういった余裕は今あまり残されていないのではないかというのが私どもの認識でございました。
次のスライド5ですが、そういった中で経済同友会のアフリカ委員会として、最後のフロンティアであるアフリカ、ここが成長していくことを、アフリカを通じて日本自体の成長の糧にしていくと同時に、日本の企業の進出がアフリカの変革を促進することによって、アフリカの経済成長を加速化する。と同時に、社会の課題を解決するところに日本の企業が貢献できると考えております。
また、左の下の部分ですが、投資を積極化している欧州とか米国、中国、アセアン、そういった所との競争に打ち勝つためにもタイミングが大切で、待っているということでは駄目なのだろうと。「いつなのか」と言われれば、まさに「今でしょ」という形で投資を促進していかなければいけないという認識です。そして、下の右側ですけれども、今までの私どものイメージとしては、アフリカに対してインフラを経済援助の形でという視点、これは今でもニーズとしてはあるわけですけれども、一方で、現在はアフリカがイノベーションの起点になっている。起業も活発になっていますし、また、先進国のいろいろな規制がある所ではできないような実験をアフリカという地でやって、逆に先進国へリバースイノベーションしていく、そういった拠点にもなっているということからしても新しい技術、それから新しいビジネス、などで日本の企業も貢献できるということではないかと思っています。
また、そういった日本に対する技術、それから、技術だけではなくていろいろなビジネスの倫理観とか、経済的な価値だけではなくて人材を育成するとか、勤労観だとか、職業倫理だとか、長期的な関係を築ける、信頼できる相手だというところで、アフリカの企業からも非常に信頼または期待が大きいのではないかなと認識をしています。
ただ、次のスライド6ですが、そうは言っても、日本企業にとってアフリカ進出にはいろいろな壁があるのではないかと思っています。後ほど私どもの例で少しお話もさせていただきますが、人材が不足していることや、制度とか規則が非常にフラジャイルなところがある。それから、政府のガバナンスもなかなか整備をされていない。腐敗なども結構問題になることがある。そういったところで、やはり個々の民間企業が独力で進出するにはいろいろコスト面、リスク、時間の観点、情報の絶対的な足りなさとか、ネットワークの足りなさなどもあってハードルが非常に大きい。ですから、官民の連携というのが鍵を握ることになるのだろうなというふうに思っております。
そういった観点で今回、同友会からもTICADのモデルチェンジを提言させていただきました。まさに、これからのアフリカの変化に対して民間企業がいかに関与を増やして、アフリカの開発に関し、アフリカからの期待にきっちりと追い付いていかなければいけない。
今までのTICADでは、民間セクターは参考人的な位置付けであり、アドホックにしか参加ができていなかったということもあります。また、アジェンダの設定とか、政府のコミットメントの策定に民間は深く関与できていたとは言えないこと。それから、TICADのときだけ一過性で終わってしまうということもあったので、これをきっちりと継続的なものにしていきたいということもあって、昨年の9月に同友会として提言を公表いたしました。円卓会議の中でもいろいろな意見をくみ上げていただいたものと考えています。
次のスライド8ですが、民間起点でアフリカの戦略に向けた国内の体制をきっちり整備をしていこうということで、アフリカビジネス協議会が6月6日に設置をされて、既に動き始めています。また、いろいろな企業の実体験を踏まえて、今後の日本企業の進出促進につながるような具体的な施策を提案できる形にしていきたい。それが今回のTICADのアジェンダにも反映されるようにしていきたいと考えていて、同友会としてもいろいろな形で参画をさせていただいています。
ここで話は変わりますが、私が今属しているJTのアフリカのビジネスをちょっと紹介させていただいて、その中で捉えているいろいろな問題点についてお話をさせていただきたいと思います。スライドで言いますと10ページです。
JTグループはたばこの事業がメインの会社で、1999年、20年前にRJRナビスコという会社、アメリカの会社なんですが、そこからアメリカ以外のグローバルなビジネスを買収しまして、その時点からアフリカについていろいろなビジネスをやっています。
アフリカは、たばこの原料になる葉タバコの重要な産地です。マラウイ、ザンビア、南アフリカ、タンザニア等に葉タバコの購買の事務所を持っています。マラウイには大きな、葉タバコを処理をする工場も持っています。たばこを製造する工場のほうはエチオピア、タンザニア、スーダン、エジプトに工場がありまして、合計で30カ国ぐらいにはたばこを何らかの形で販売をしているという状況です。雇用では、5,000人ぐらいアフリカで直接雇用しいて、先ほどの葉タバコの耕作農家とかも含めればかなり広範囲に経済にも貢献しているという状況です。
11ページですが、この10年ぐらいで初め20カ国ぐらいから始まり、10カ国以上進出も増えてきましたし、販売数量も4倍、利益も約5倍にということで、先行投資的な部分もあって他の地域に比べての利益率ではまだまだですが、着実にビジネスが根付いてきて将来大きな投資の成果を上げられる市場として期待をしています。
ただ、ビジネスとしてという観点だけではなくて、次のスライドの12では、アフリカはやはり社会的な課題というのもいろいろあります。また、ここでサステナブルなビジネスをしていくためにも、これは一例ですけれども、特に葉タバコの耕作地でも児童労働の問題が結構大きな問題になっております。
こういったことについて業界としても取り組んでおりますが、会社としてARISEというプログラムを実施し、ウィンロック・インターナショナルというNGOなどと一緒に組んで活動をしながら農家の方々に啓蒙する。それから、その土地での生産性を上げる。それから、タバコ葉の処理では木材なんかを燃やして乾燥などもするのですが、森の再生などもきっちりとやってもらう。そういったことを通じて生産性を上げて、お子さんが働かなくても学校に行けるように、そして、その学校に対する校舎の建築とかの、支援もしていく。このような形で、その地域がサステナブルになっていくような、活動をしっかりやっていこうとしています。
次のページの中では、弊社の事業において直面している問題があり、ここに5点ほど挙げていますが、一つは、今、外貨不足が非常に大きな問題になっていて、いろいろなインフラ投資等で外貨がままならないということもあって、原材料を輸入したいがお金が回らないという事態が出てくるなどもあります。
また、2点目として規制とか税制、それから知的財産の保護などを含めていろいろなところで非常に不安定で、突然法律が変わってしまうようなケースも非常に多く見受けられます。例えば、葉タバコを購入する価格の決定権が、急に他の所に移り、この値段でしか買えないよなどと言うことが起こってしまうこともあります。
また、3点目として行政手続き。これも、法の問題と手続きの問題の遅延です。これはエチオピアの事例ですが、エチオピアの専売公社を買収したのですが、非常に古い工場なので新しい工場にして、生産性を上げて、国の雇用を増やしていこうという前向きな投資ですけれども、移転場所の工場用地の許可がなかなか下りない。1年以上かかってもなかなか下りず、先週やっと許可が下りたということです。これも在京の大使館に行ったり、現地の日本大使館からも何度も働きかけていただき非常にお世話になりました。
4点目は非正規品の問題です。これは、たばこや、FMCG系のお酒とか、特殊例かもしれませんが、日本のような島国とは異なり陸続きですので、税金のかけ方によっては密輸品が入ってきたり、にせ物があったりします。これもエチオピアの例なのですが、市場に流通している約4割が非正規品。それだけ私どももビジネスとして痛手ですが、政府としても、たばこ税を徴収できないという意味においては非常に大きな問題です。こういった問題も含めて非正規品をどうやって撲滅していくのか、これも一企業だけではなくて政府の税当局、警察当局、そういった所と連携をしないとなかなかできない問題と思っています。
5点目は政情不安で、これも先ほどの外貨不足も含めてなかなか不安定な状況です。スーダンで弊社は80%以上のシェアを持って、工場も近代化して順調に事業は伸ばしていますが、ここ何カ月はクーデターの影響で工場を動かすことができない。日本人が工場長ですが、その場にいることができなくて、いったんドバイのほうに待避をしている状況です。こういった状況で、大使館のほうからもタイムリーにセキュリティーの情報等を頂けるのは非常に大切だと思っています。
このように、いろいろな課題があります。そういった中で在外の日本大使館、JICA、JETRO、いろんな所からの情報も頂きながら対応している状況です。こういったところも一企業だけではなくて、官民で連携ができれば、改善、それから整備につながっていくのではないかと思っています。
最後のスライドです。今回のTICADに向けて、今まさに官民の連携が非常に具体化されてきているという点は非常に評価をしています。円卓会議の後、安倍総理に提出をさせていただいた提言書を積極的に取り入れていただいて、先ほどからお話がありましたアフリカビジネス協議会というものも、まず第1回が開催されました。これからまさにTICADに向けてどういうふうにしていくか、また、TICADで終わりにしない、継続性をどうやって持っていくかは、まさにこういうお膳立てもしていただいた中で、民間のほうもしっかりとやっていきたいと思っているところです。
また、先ほど申し上げたようないろんな政府間や、向こうの政府の問題等もあります。これを、「二国間のビジネス環境改善委員会」を立ち上げることによって、日本の企業がいかに、「こういうところで困っています」、「こういうことがあればもっと投資が促進されます」というところをアピールしていく、そういった場も早期に立ち上がってくるといいと思っています。
自由で公正、透明性があって予見可能性の高いビジネス環境を実現するために、官民で協力していくことは非常に大切なことだと思っており、この「二国間のビジネス環境改善委員会」を早期に立ち上げていただきたいなと思っています。
またTICAD 7、ビジネスセッションの設置という方向で調整が進んでいると承知しています。8月末までですので、時間は非常に限られていますが、民間がオブザーバーということではなく正式なメンバーとして参加できることを期待しているところです。
また、今後の期待ですが、モデルチェンジをしたTICAD 7をきっちりと具体的な形で示すことは非常に大切と思います。アフリカの諸国も日本に対する期待が大きいだけに、その期待が逆に、何もなければ失望に変わってしまうということですし、その場合には他国も非常に競合は激しいということだと思います。
また、一時的ではなくて国内でもビジネス協議会をきっちりとフォーマットを持って継続して、次のTICAD 8につなげながら、具体的に日本の直接投資とか貿易を通してアフリカとの関係が発展していくという形になることも期待をしており、それを実現するために努力をしていきたいと思っています。私のほうからは以上です。ありがとうございます。(拍手)
モデレーター:横山正
岩井副委員長、どうもありがとうございました。それでは、加藤部長、ご説明をよろしくお願いいたします。
パネラー:加藤隆一 JICAアフリカ部 部長
あらためまして、JICAアフリカ部の加藤でございます。今日はこのような非常に貴重な機会を頂きまして、ありがとうございます。
さて、今日私のほうからは、TICAD 7に向けたJICAの官民連携の取り組みということでお話しさせていただきたいと思っております。内容につきましては、2点であります。1点目が官民連携の観点からで、JICAにとってTICADプロセスがどんなものであるのかということであります。2点目が、具体的にTICAD 7に向けてどのような官民連携の取り組みを今検討しているか、あるいは既に始めているかといったようなことを、イノベーションと民間連携というキーワードを基にご紹介したいと思っております。
まず、TICADがJICAにとってどのようなオケージョンなのかということなのですが、前回からはTICADのインターバルが3年になりましたけれども、3年なり、5年なりの中長期の開発協力を計画策定する機会ということです。ここに挙げていますのは、産業人材育成のイニシアチブでありますが、このような形で各分野における協力というものをイニシアチブとして策定をいたしまして、それを3年なり、5年なりかけてしっかり実現していくということで、予測性の高い事業を展開できるというメリットがあります。
アフリカ協会の皆さま方には釈迦に説法になりますが、TICADも26年ということで、これまでの官民連携あるいは民間連携という視点から振り返ってみますと、TICADのIからIIIぐらいまでは、まさに援助の議論が中心であり、当時の日本の民間の関心は、非常に低調であったといえるかと思います。
他方、強調しておきたいのはTICAD Iから III、この時代においても、アフリカ側からは非常に日本の民間投資に対する期待は高かったということです。このトレンドが変わっていくのがまさにTICAD IV、Vというところでありますが、TICAD IVにおいては、それまでの社会開発から経済開発へのシフトが起こってきまして、JICAもこれに合わせてコミットメントの内容が変わっていきます。TICAD V、2013年がまさにターニングポイントで援助から投資へとメインテーマが大きく変わったというふうに理解しています。これに合わせてODAも民間連携や投資促進の役割が重要となってきました。前回のTICAD VIは初めてのアフリカ開催ということで、まさにアフリカのオーナーシップが向上したということなのかと思っています。
2013年のTICAD Vで、援助から投資へとメインテーマが変わってきたと話をしましたが、例えば、JICAの取り組みとしては、回廊開発があります。ここに赤く囲ってあるのが5大成長回廊の整備で、主に投資の前提となるインフラ整備とインフラ整備に伴う産業振興ということであり、この5大成長回廊、TICAD VIにおいてはさらに3大成長回廊に絞り込みました。まず、、ケニアからウガンダ、それからルワンダに抜ける北部回廊。次に、モザンビークのナカラ港から内陸国であるザンビア、マラウイにつながるナカラ回廊。それから、コートジボワール、ガーナ、ブルキナファソ、トーゴといった国々を結ぶ西アフリカ成長リング。こうした回廊の整備に取り組んできています。それから、産業人材育成としてのABEイニシアチブも、2013年のTICAD Vの際に打ち上げられています。
これまでにどのような成果があったのかという点ですが、回廊開発について言えばケニア、ウガンダ、ルワンダを結ぶ北部回廊については、港湾開発であったり、港湾の周辺の道路開発といったインフラ整備、あるいは、地熱を通じた発電計画といったようなものをケニアで展開しております。さらに、ウガンダにおいても首都のカンパラでインフラ整備、送変電網の整備等に取り組んでおります。、TICAD 7官民円卓会議の提言においてもインフラ整備の重要性が謳われておりますが、我々としてもこのように着実に貢献させていただいています。
それから、ABEイニシアチブですが、1,200人以上の若者をアフリカの54カ国全てから受け入れました。既に700人強は帰国しておりますけれども、水先案内人ということでさまざまな貢献を頂いています。ここに挙げた例はそのうちの一例ですが、ルワンダから来ていた学生が、ルワンダでは落雷の被害が大きいという点に目を付けて、日本の避雷針のメーカーと、ビジネスマッチングし、現地調査を実施したケースです。このようなケースが数多く出てきており、これからさらに成果を挙げていきたいと考えています。
さて、TICAD 7に向けた取り組みということでは冒頭でも申しあげましたが、特にイノベーションと民間連携を、重視して取り組みたいと考えています。アフリカがリープフロッグの場として注目されているということもありますが、SDGsの達成においても、これまでのようなビジネス・アズ・ユージュアルな手法では達成ができないということで、さまざまな分野、インフラであったり、農業であったり、保健、教育等においてSTI(サイエンス・テクノロジー・イノベーション)の活用が期待されているということだと思っています。
われわれの具体的な取り組みを幾つかご紹介いたします。ルワンダはジェノサイドを経てカガメ大統領のリーダーシップの下、ICT立国として国を引っ張っていってるわけですが、JICAは「ICTイノベーションエコシステム強化プロジェクト」を通じてICTの戦略策定であったり、人材育成ということを支援してきております。
その中で若手の起業家の育成を支援するため、テックハブと呼んでますが、投資家であったり、企業家であったり、研究者であったりという方々が集う共同の作業場みたいなものがあり、ラボをつくって、そこでインキュベーションの役割を果たしていくといったような取り組みを行っています。
例えばこのシートにあるように、カードをタッチしてバス運賃を支払うとあります。これはまさに日本のSUICAとかPASMOみたいなものですね。バスに乗るときにそういったシステムを導入するとか、さまざまな取り組みが既に行われているということであります。
それから、いわゆるオープンイノベーションと呼んでますが、ファイナンサーであったり、大学、政府、企業、NGOといったさまざまな方々が一所に集い、共にアフリカの社会課題の解決に向けてアイデアを出し合うワークショップ、アイデアソンと呼んでますけれども、そういったものをわれわれとしても今、展開しています。
それから、民間企業との関係では、新しい取り組みとして課題提示型公示を行っています。これまではどちらかというと、民間企業から自由にアイデアを出していただく形で公示をしていたんですが、対象課題や対象国を絞ってアイデアを出してもらう。これもJICAと一緒に解決策を考えていこうという取り組みの一つです。
例えば、セネガルの保健分野でこういう課題があるがどうしたら解決できるかと言うテーマを提示し、皆さんに現地にも来ていただく。その上で参加企業から提案書を作っていただき、よいものを採択するという形で、これまでとはちょっと異なった公示の枠を設けてやっています。このときも、新しいイノベーティブな発想という点が大切で、必ずしも科学技術の要素がなければいけないということではありませんが、これまでにない発想を用いてということが条件となります。そういったアプローチを設定してやってきています。
それから、農業セクターでの取り組みですが、注目いただきたいのは下のほうの「JICA食と農の協働プラットフォーム」というものであります。これは、立ち上げたばかりのものですが、発想はある意味で同じであり、JICAが場の設定をさせていただくということです。関係省庁、大学、メディア、さまざまな民間企業、さまざまな方々にプラットフォームに入っていただき、そこで課題解決のための活動を促進する緩やかなネットワークをつくっていく。その中からさまざまな協働活動を見いだしていくことを考えているものです。
最後になりますが、これもまだ議論している最中ですが、3機関連携ということで、パートナーシップを拡大していきたいと考えています。JICAだけではできないところを他の機関のさまざまな知見を合わせながら一緒に考えていこうということであって、これは、JETRO、JICA、UNDPで、それぞれ特徴、強み、弱みがあるので、この3者が集うことにより連携して強みを、手厚い支援を、民間企業にご提供できるのではないかと考えているものです。このような形でパートナーシップの拡大強化、あるいは、先ほど申しましたプラットフォームを立ち上げて、さまざまな情報や場を提供させていただくといった形でアフリカの開発に貢献していきたいということです。JICAからのご説明は以上とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
モデレーター:横山正
加藤様、どうもありがとうございました。4人の方々からいろいろとお話を頂きまして、どうもありがとうございました。4人の方々のお話を伺って感じたことは、一つは、やはりアフリカにはいろいろ成長の機会が多く、潜在性が大きいということで、日本とウィン・ウィンの関係を享受し得るということです。貿易投資関係を見ても世界の中で相対的に日本の地位がアフリカの中で低下しつつある、乗り遅れるな、時機を逸してはいけないという、そういうような危機感があるということだと思います。
あと、アフリカの方では、日本に強みがあるということで、期待もしているということなのですが、やはりいろいろ課題はあるということです。その中で、民の役割は重要なのですが、ただし、それを促進していく官の役割というのも引き続き重要だということです。先ほど、紀谷大使からご指摘がありましたけれども、官民連携に日本政府は本気であるということで非常に喜ばしいことなのですが、その官民連携というものは、当然のことながら継続性をもっていかなければならないということです。TICADを通じたアフリカ開発への日本の取り組みについては、TICADを3年ごとの単なる単発のイベントとするのでなく、継続性をもってやっていくべきもので、そのために、例えば官民協議会というような恒常的な組織をつくって関与していくということだと思います。それは、TICADプロセスに民間も継続して関与していくということを意味していることだと思っております。
あとは、官の役割としてJICAの加藤部長からご指摘がありましたけども、一言で言うとハード、ソフト面での基礎インフラの整備支援だと思います。もちろん回廊構想を通じた物理的な連結性の整備支援もありますし、また人材育成とか、STIの推進といったものもあり、なかなか民ではできないものについて官がやっていくことがあると思います。そういうことについて4人の方々からいろいろご指摘がありました。どうもありがとうございました。
ここでアフリカ開発銀行の立場で申し上げますと、当行もやはり同じような目的意識を持っております。アフリカ開発銀行の株主は、80ヶ国の政府でして、基本的に各国のODA予算を頂いて運営されている銀行です。当行としても、アフリカ諸国政府にお金を貸したり、民間セクターにお金を貸したり、投資したりしているのですが、やはり、重点はいかに民間と一緒にやっていくか、民間の力をより活用することができるかということで、民間投資、ビジネスの促進にも軸足を置いてきております。
私たちの戦略としては、「High 5s(ハイ・ファイブズ)」といって、1) 電力アクセス・エネルギーアクセスの改善、2) 食料増産、農業の付加価値の向上、3) 工業化の促進、4) 制度的・物理的連結性の向上、市場の統合、5) 生活の質の向上、この5つに重点を置いています。この5つの分野において、やはり民間の力が必要で、特に、より日本の力添えがあれば大変有難いと思っております。
先ほど紀谷参事官、他の方からご指摘がありましたように、アフリカの課題は、SDGsを2030年までに達成するということと、あとは、アフリカ連合(AU)による2063年アジェンダというものがあり、2063年までにこのようになっていたらいいなというビジョンを実現することです。このハイ・ファイブズを追求することによって2063年アジェンダ、及び、アフリカにおけるSDGsの90%は達成されることとなっていますので、私どもとしても、いろいろな外部パートナーと協力しつつ、いろいろなツールを使ってこれらを達成しようとしております。
私たちが民間セクターとの協働に向けて貢献できるのは、第1に、資金をお貸ししたりしてインフラ整備などをやっていく。それによって連結性を高めたり、あとは投資環境整備に貢献するというものです。第2は、アフリカ開銀の支援プロジェクトについての調達において、日本の民間の方が受注できる場合があると思いますし、また、民間事業、事業体に対して直接融資とか出資もしていますので、民間の企業の方々と一緒にアフリカで事業を行うことです。
私たちが、例えば官として民間の方々にお助けできるのは、私たちが何分の1かでも事業に参加することによって、日本たばこの岩井様からご指摘ありましたけども、規制がいきなり変わるなどのポリティカル・リスクに対し、また、政府、規制当局との間に何かあったときに、メリットがあるということです。私どもは54カ国のアフリカ政府の全てが株主ですので、アフリカ開銀が関与しているプロジェクトについては、先方の政府も相当注意を払い、事業が失敗しないように配慮しますし、常に対話のチャンネルは持っていますので、民間の方々と一緒に働くことによって、参加された民間の方々もある程度コンフォートが得られると思います。
あと、第3として私たちができるのは、セミナーの開催を含めた、いろいろな手段での情報提供です。例えば、TICADの事前・事後に、TICAD関連イベントとして、いろいろなナレッジイベントとか、ビジネスイベントをやっています。例えば、直近では、「アフリカ・インベストメント・フォーラム(AIF)」のロードショーを今年の7月の第1週に日本でやることを想定しています。AIFは、インフラプロジェクトを進める取引市場、プラットフォームです。その立ち上げイベントを昨年の11月に南アで行ったのですが、第2回を同じ南アで本年11月に行う予定です。これは、民間、国際機関、アフリカ政府等にいろいろなプロジェクトを持ってきていただいて、市場関係者、機関投資家にも参加してもらい、次々とバンカブルなものにしたり、資金をコミットしていただいてプロジェクトを前に進めるものです。
また、2017年にTICAD VIのフォローアップ・ビジネスイベントとして比較的大きな、「日本・アフリカビジネスフォーラム」の第2回目を東京でやりました。また、TICAD 7の後、翌年の2020年に同じような、第3回目の「日本・アフリカビジネスフォーラム」を行おうとしています。
なお、紀谷大使、その他の方からご指摘ありましたが、取り組みの継続性が重要でして、今申し上げたAIFというのは単なる単発のイベントに終わらせずに、プロセスとして継続的に行われる取り組みです。AIFイベントについては、年に1回、お披露目式とか、コミットメントを得るモメンタムとして行うこととしており、この面でTICAD首脳会議と似ている面もあると思います。しかし、AIFは取引自体を目的とした恒常的なプラットフォームで、継続的に運営することとなっており、もしも日本の企業の方がもっと参加していただければ、これもTICADに貢献できることになると思っております。そういうことで、アフリカ開発銀行のご紹介をさせていただきました。
これらを通じて、TICADに私たちも貢献してまいりたいと思っております。あと、TICAD 7には、その重要性に鑑み、私どもの総裁のアデシナが参加いたします。世界でアフリカと行っているイベントはいろいろとありますが、明らかに当行のTICADに対する意気込みは非常に強いものがあます。これは、いかにTICADというものが開かれたものであり、かつ非常にアフリカの開発に対して期待ができるものかということを示しているかと思います。
ということで、これから、4人の方々の貴重なご説明を踏まえて私のほうから、各々の方に1問ずつ質問させていただいて、そのご回答を頂いてから、フロアの皆さま方にご質問をいただこうと思っております。それでは、今回、TICAD 7は「民間ビジネスTICAD」と外務大臣がおっしゃったとおり、やはり中心は民間の方ということで、岩井副委員長のほうにまずご質問させていただきたいと思います。
岩井副委員長からは、経済同友会の取りまとめの文書である円卓会議のご提言に基づいてご発言いただきましたが、JTとしてもいろいろアフリカで課題があったと、お話がありました。この取りまとめに当たって、それ以外にもいろいろな論点、課題等々についてご指摘があったと思うのですが、具体的に他にはどのようなものがあったか、ご紹介いただけますでしょうか。
パネラー:岩井睦雄
ありがとうございます。私ども提言をするに当たり、アフリカに現在進出している企業30社ほどとその周りのいろいろな関連した所も含めて、どんな声があるのだろうかということをまとめさせていただいたものです。これは、多分ウェブに行けば見れるものだと思いますけれども、まさにどういうところで悩んでいるか、先ほど私どものJTの部分を少しご紹介させていただきました。
それ以外の部分で申し上げると、まずは、企業としてアフリカにどうコミットするかというときに、いわゆる海外部署だけではなくて、トップのコミットメントをいかに取るか、内部的な問題もかなりいろいろな指摘がありましたが、今日のテーマの官民連携で申し上げると、一つは現地のパートナーが、特に新たに進出する所では非常に大切です。
ただ、誰と組んだからというようなところで失敗するリスクもある中で、既存の進出している企業なり、JETRO、JICA、それから大使館なりから、「ここは信頼できて組める所だよ」とか、「前にこういう企業でこんなことがあったから気を付けたほうがよい」というような情報がうまく回るようにしていただくと安心できます。そういったところも踏まえて海外進出を、特にアフリカの進出ができるんだろうなと考えます。そんな現地のパートナーが必要ですね。
それからもう一つは、やはり日本とその国だけではなくて、第三国とも連携していく必要が、多分これから先いろいろ出てくるだろうと思っています。私どもでケニアの事例なんかを調べても、インドの企業またはインドの実業家の方が現地に入り込んでかなりビジネスをされていたりとか、あとはインドネシアの財閥系の所が入っている。そういったところで、日本は東南アジアにおけるいろいろなネットワークもある中で、どうやって第三国の企業も踏まえた広範な連携をしていくか、個別の企業としても当然情報収集はやっていくわけですが、そういったところがサポートされるといいなという意見がございました。
あとは、ABEイニシアチブとかで、日本を理解してくれている人材がまさに次の進出のときの一つの架け橋になって欲しいところですが、なかなかこれは個別の企業ではできないところなので、こういったところも継続的にやっていただきたい。
他には、向こうにどんな課題があるかなかなか分からない部分がありますので、特に新規で進出を考える所に、ここの国に課題があってニーズがあるということが、先ほどのお話にあったような場が継続的にあれば、進出することに対する後押しをしていただけるんじゃないかなと思っています。
モデレーター:横山正
岩井副会長、どうもありがとうございました。それでは次に、紀谷大使にご質問させていただきたいと思います。紀谷大使のほうからはTICADについて3点、経緯とか、段取りとか、TICADをどう生かすかといろいろご説明がありました。その中で官民円卓会議や、在京アフリカ大使と日本の民間との対話の場も設けられ、そのインプットも踏まえ、アフリカ側も投資環境を整備していかなくてはいけないし、日本側も官民で一体となって対応していくということが必要だということをご指摘いただきました。
また、TICADを日本として官民連携の在り方のショーケース、国際的なショーケースとしていくことが重要だと思われますが、TICAD 7に向けて具体的な成果のイメージを共有できるものがあればしていただきたいと思います。
その中でちょっと私も先ほど申し遅れたのですけれども、アフリカ開発銀行とは、民間セクター支援のために「EPSA(エプサ)」という、JICAの円借款を活用した枠組みがあります。近年のTICADの際には、EPSAについて新たな資金のコミットメントが行われております。EPSAについても円卓会議から改善の要望も出ていますので、そういうものも含まれるかもしれません。また、人材育成ということもあるかもしれません。このように、もしも具体的なイメージを共有していただけたらということです。
あと、そもそも、JICAの資料にもありますが、TICAD以降、いろいろと類似の会議が出てきていまして、その中でどういうふうにTICADが他のものと差別化されて、そして、国際的なモデルになり続けていくのか、そこら辺のイメージも共有していただければと思います。
パネラー:紀谷昌彦
有意義な質問をありがとうございます。最初に成果のイメージですが、一つは、これまでのTICADでも出していますけれども、大きなところは経済成長、そういったテーマの下で具体的な成果といいますか、日本の貢献策のようなものは、政府、関係省庁、関係機関が、一致団結して官邸の下で作っているところです。今年はその中でも官民連携の要素は多々盛り込まれることになるだろうと思います。
先ほど、例えば市場志向型農業では、SHEPの関係で企業と進めているものがJICAからご紹介ありましたけれども、それぞれこれまで動いているようないろいろなイニシアティブを含む人材育成、どういう形で官民連携を強化していくのかという要素がそれぞれにぶら下がってくるというのがあると思います。
それに加えて、新機軸とはいわないまでも、これまでよりも強い形でされるものとして、ビジネスTICADといいますか、アフリカと日本のハイレベルなビジネス対話というのがあると思います。そこの対話自体も一つの成果ということかもしれませんけれども。あるいは、それプラスビジネス関係のサイドイベントも含めて、アフリカビジネス協議会の枠組みの下でワーキンググループもやろうと言っていますので、まずは短距離走、これから2カ月の中で目に見える、本気度を示せるような成果を出せれば政府と民間部門一緒になって考えていきたいと思いますし、具体的な発表までできないとしても方向性について、いわゆるODA的な貢献策とはまた別の意味で、ビジネス面で具体的な協議会発の進展というものができればいいのではないかなと思います。
また、他の会議との差別化ということですが、これまでにもまして官民連携の時代、ビジネスイノベーションの時代、あるいは、科学技術イノベーションの時代、SDGsの時代になったからこそ、多くのアクターがダイナミックに参加するTICAD 7の枠組みとなります。これは、中国のFOCACをはじめ、多分、他のあらゆるパートナーシップの枠組み、あるいはアフリカ連合の枠組みとも違う意味で独自のものだと思いますし、世界を今、眺め回してみても、TICADのような形でアフリカ開発を主題に置いて、なおかつ、単に国際機関主催ではなくて特定の国がそうとうコミットメントを示しながら国際機関も巻き込んで、国と国際機関が車の両輪になって成果を本気で出すという、この枠組みは独自のものだと思います。
25年前も独自でしたけれども、25年たった今も独自であり続けるとこだと思いますので、それはむしろわれわれが自信を持って官民連携の新しい時代の下で成果を示し続ける決意っていうのは、日本自身が生き延びていくための方策ではないかと思います。
モデレーター:横山正
どうもありがとうございます。アフリカ開銀や、他のアフリカの人と話してみても、やはり知っている人はTICADに対して、他の枠組みに比しても非常に評価しているところがあります。金額ではなくて、本当に開発効果が高いという観点からです。そういう意味で、国際社会において、引き継ぎのリーダーシップの役割をTICADには期待させていただきたいと思います。
それでは、次に柴田審議官にご質問させていただきたいと思います。資料のご説明で官民協議会の中にワーキンググループを各種立ち上げるとのことでしたが、具体的にどういうふうにこれが機能して運営されていくのか。より具体的にイメージをお示しいただけるのであればお願いしたいと思います。
例えば東南アジアの場合だと既に企業が進出しているので、具体的に問題点を指摘し、政府といろいろ協議を行っても、それでも厳しいところがあります。アフリカの場合は、アフリカの在京大使も言っているのですが、日本の企業はいろいろ投資環境の整備、改善が必要と言うが、「じゃあ、整備したら来るの?」と聞くと、「行くかどうかは検討が必要。」といって、慎重なところがあます。やはり、東南アジアのように、向こうに既に行っている人たちの段階と、アフリカのように、これから行こうという人たちの段階では、違いがあるかと思います。
もちろん既に現地で事業を行っている人たちの要求というのはそれなりに相手国政府にとりあってもらえるのかもしれないのですが、アフリカについては、まだ数が少ないことなどがあって、東南アジアでの日系商工会議所と現地政府との関係、協議よりも、アフリカについてはやや難易度が高い部分があると思うのですが、そういう状況も踏まえつつ、お考えを共有していただけたらと思います。
パネラー:柴田裕憲
どうもありがとうございます。幾つか課題があって、ビジネス協議会を設立するまでのプロセスでも、協議会本会議が行われたらできるだけ早いタイミングでワーキンググループを幾つか開催しようということで進めてきているところです。課題は一般的に横串のような情報共有、そもそも情報がないんだっていうような話とか、資金的に政府の公的なバックアップのメカニズムをもう少し使いやすくしてくれとか、そういう横串的な話と、それから、先ほどイメージで記しましたけど、ヘルスケアとか、農業とか、インフラとか分野別の話の両方があります。
ここにイメージで書きました情報基盤というのは情報共有、アフリカで何が起こってるのかの情報を、官から民の他に、民と民の間の共有も含めてやっていくとか、それから経産省として力を入れたいと思ってるのはスタートアップや、中小企業の支援で縦串と横串の両方、複数のワーキングを立ち上げていきたいと考えています。
関係省庁も幾つもありますが、内閣官房、財務省、農水省、国交省、環境省には、前回の協議会にも、今回の協議会にも参加いただき、ご発言も頂いてます。既存の取り組みも、新たに立ち上げたビジネス協議会のワーキンググループとうまく連携して、あるいは一部は同じものにつくるような形にするとか、そういった形で作っていきたいと思います。
もう一点は、アフリカ側へのビジネス環境の整備の要望ですが、幾つかの国について、実際に出て行こうとしている複数の企業からそういう問題点を頂いていて、幾つかの国で立ち上げていく必要があると思います。先ほど来、話が出てますように、これも大使館とJETRO、JICAなど現地に出ている事務所との協力、もちろん民間の現地の商工会があれば商工会との全体的な、一体的な協力関係ができればと考えています。
横山所長がおっしゃっていたように、アジアの国に出て行くときは、「政府はもう口出ししないでください」というケースも結構あるように私も聞いていますが、アフリカについては、政府と民間と一体になって行かないとまだまだ十分出て行けないということもあるので、アジアの場合とは状況が違うということを企業のほうからも何社かから話を聞いてきており、そういうことも踏まえて一体になっていくということです。
それから、ビジネス環境整備もいろいろな例があり、進んでいる所では、例えばEPAが締結されている国や法律に基づくビジネス環境整備委員会というのが設置されている国もあります。条約に基づくビジネス環境整備委員会もありますし、そうではなくて、実際上、つくって継続しているビジネス環境整備委員会を持っている国、貿易投資委員会と言っているような国もありますが、法律には基づかないけど実態的にはある国もありますので、そういったちょっと先に進んでいる国の例も見ながら、アフリカでも幾つかは作る必要があり、早急に作りたいと考えています。
モデレーター:横山正
柴田審議官、どうもありがとうございました。それでは最後にJICAの加藤部長に質問させていただきたいと思います。TICAD 7に向けて官民連携の取り組みとして、ショーケースとなるべき事例がいろいろあるということですが、今回のTICADに向けて、さらに官民連携を進めていくという観点から、TICAD 7で求めるものは何であるかということについて何か共有していただけるアイデアなり情報があれば、よろしくお願いいたします。
パネラー:加藤隆一
ありがとうございます。まず、先ほど岩井副委員長から「アフリカ進出のすすめ」という報告書のご紹介がありましたが、未だご覧になっていなければ、ぜひ一度ご一読いただきたいと思います。非常に感銘を受けた報告書であります。
実際にアフリカに進出している会社、企業からいろいろ聞き取りをされて取りまとめた報告ですが、本当に高い志を持って、現地に貢献したいという思いを持って、現地に寄り添って目線を現地にそろえてやること、そういう日本流のビジネスのアプローチが非常に有効であるということを結論的に述べられていて、私もまさにそのとおりだなと思うのです。ODAにおいてもわれわれは目線をそろえる、寄り添った形の協力ということを言っていますが、ビジネスもODAも同じということで非常に感銘を受けたものです。いろいろと参考になることがたくさん書いてありますのでぜひお読みいただければと思います。
さて、今のご質問「TICAD 7に求めるもの」ですが、6年に一度の日本開催になりましたので、日本の国内でアフリカに対するアウェアネスが相対的に上がることがまず大事かと思います。特にJICAの役割も、開発協力大綱が2015年に新しく制定されて、触媒としての開発協力であるとか、民間セクターとの連携ということが明示されて、それ以降われわれもこれまでの考え方を大きく変えてきたという部分があります。
例えば国内に眠っているさまざまな技術を持った中小企業に、ぜひアフリカにも出て行っていただきたいということで、その進出の支援もし、また、そういった人材を育成して、将来的には水先案内人なり橋渡し役として活動いただきたいと思ってます。ということで、今回のTICAD 7が国内のアフリカに対するアウェアネスを上げるような形の会合になればいいなと思いますし、さらに言えば、志の高い日本の企業が一社でも多くアフリカに進出していただきたいと思っています。
その際に一言申し上げたいのは、ぜひJICAを使ってくださいということなのです。つまり、われわれ現場に30ヶ所以上の事務所や拠点があります。それから、協力隊員を入れると2,000人以上の関係者が現地におりますので。アフリカ開銀さんが現地に根を張っていると同じように、われわれもネットワークを持ってます。アフリカ開銀ともいろいろ連携させていただきながら、日本企業へのご支援も多分できると思いますので、ぜひ使っていただきたい。決して敷居は高くありませんので、ぜひ使っていただきたいということで私からのコメントにさせていただきます。
モデレーター:横山正
加藤部長、どうもありがとうございました。加藤部長から今、JICAの敷居が高くないというお話がありました。アフリカ開発銀行はアフリカ大陸に約40ヶ所拠点がありますが、やはり国際機関であるが故に、日本企業だけのために何か狙い撃ちでやるというのは非常に難しい組織である一方、JICAがカバーできないところはうちがカバーできるということもあります。その辺は柔軟に考えていただき、JICAに行かれて、もしも不足前(たらずまい)のところがあれば、アフリカ開発銀行や、世銀も含め国際機関にもご相談いただき、ともかくアフリカ開発のためにはどこを使っていただいてもよいので、ぜひとも日本の方々にアフリカに来ていただきたいとお願いしたいと思います。
残りの30分をフロアからの質疑応答に当てさせていただきますが、女性の方の積極的な参加を期待いたします。ご質問がある方は挙手をいただきお名前と肩書をお願いします。
質問:竹内靖典 スタンダードチャータード銀行 東京支社 CEO
スタンダードチャータード銀行の竹内と申します。本日は貴重なパネルディスカッションをありがとうございました。私自身、TICAD V、VIとわずかながら関わってきまして、TICAD VIではナイロビのほうに行きまして商社、メーカーを含めて多くの日本企業の多々方とお話をさせていただきました。それで、アフリカの情報が足りない、もっと発信をというのは全くそのとおりだと思うんですが、ナイロビで感じたのは東京からのデリゲーションの他に、アフリカを地域として見ている責任者、例えば、商社のロンドンの責任者や、ドバイから、あるいはインドから来られたメーカー方々もありました。
情報発信ということで言いますと、マクロあるいはアフリカの魅力という非常にハイレベルなものをトップの方に発信するとか、本社に発信するというのも大事なんですが、もっと個別具体的な情報を、ビジネスを発掘して本社に提案するという立場の地域の責任者、ロンドンの方とか、インドの方とか、というのがもう少しあったらいいんではないかなとおもいます。TICAD、26年の流れの中で、TICAD 7が民間投資のいっそうの加速という目標があるのであれば、まさしく現場でのオポチュニティーの発掘、この辺をどうするかというのが一つポイントじゃないかと思います。
質問は岩井様と柴田様に、先ほど貴重な30社の声ということで、パートナーの選定で悩んでるとか、第三国の連携でどんなことができるかとか、まさしく個別の入り口のところだと思うんですが、経済同友会の加盟企業から、そういうような情報を欲しているというような声があるのか、ないのか。柴田様には、ワーキンググループでそういったことをつなげるような観点というのはおありになるのか。この辺をちょっとお伺いできればと思います。
パネラー:岩井睦雄
どうもありがとうございます。この議論の中で、おっしゃるように、一般的な「この国はこんなんですよ」という部分というよりは、「もうちょっと入り込んでみたら実はこういうふうな問題がある」みたいな情報こそがまさに価値のあるところだなと思います。それを個別の企業のノウハウにしてしまわずに、どうやって共有するかというところがキーになっていると思っています。
例えば、JTの中ではロンドンにMENEATという地域があり、アフリカも含めた中東アフリカの地域を担当する所があります。そこにビジネスデベロップメント部隊がいてディストリビューターを経由してビジネスをしながら、そこからどういうふうにそこの実態のデータを取って、それを分析して、ディストリビューターモデルから自分たちが本当に進出できるかを考えています。そこでは継続的に生データも取るようにはしているのですが、それをいかに、その会社の中だけで抱え込まないで、JICAやJETROが介在していただくと、そういうものも流通しやすいのではないかと思っています。今回の協議会でも、先ほどの情報の、まさにインフラ整備の中で、生々しい情報も共有できるか否かが大切なのかなと思っております。
パネラー:柴田裕憲
ご質問いただきましてありがとうございます。ご指摘いただいたように、このワーキンググループでどういう形で情報共有していくかというと、ご指摘いただいたようなマクロの全体像の、アフリカで一体何が起こっているか、アフリカはどういう所なのだというような情報が一つは必要ではないかと思います。次の段階で考えているのは、もともとはJICA、JETRO、大使館がそれぞれの国において持っているビジネスの情報で共有できる限りの情報をご説明する、共有するということは考えています。
ただ、さらに、ほんとのビジネスにつなげていくには、それに加えて個別具体的な話をしていかないといけないと思いますので、先ほど申し上げ述べた2つ目の所までは、皆さまを前に共有していけるのですが、その個別具体的な情報をどこまで、どういうグループで共有していくかというのは、その段階で工夫も必要ではないかと思います。これは、検討課題にはなっており、個別具体的な話を情報共有できるような仕組みや場をできるだけ作ろうと考えておりますが、今はまだ検討している途中です。どうもありがとうございます。
モデレーター:横山正
どうぞ。
質問:安永裕幸 国連工業開発機関 東京事務所 所長
今日はどうもありがとうございました。非常に勉強になりました。UNIDOの東京事務所長の安永と申します。日ごろ、私ども、アフリカへの投資促進のお手伝いをやらせていただきながら、先ほど横山代表がおっしゃいましたことが非常に気に掛かっております。というのは、私は以前経済産業省におり、1997年のアジア経済危機のときに、タイ・マレーシアを中心として日本の産業界が非常に現地で苦境に陥ったときに、いろんな形で外務省と相談しながら協力策を打ち、かなり役立った部分があると思っています。特にタイで中小企業金融の仕組みを作ったときなどは、JICAのご協力も頂きましたし、AOTSがいろいろ、実際の現場の人の協力面でもお手伝いいただいたと記憶しております。
横山代表がお話しになったように、アセアンの場合は当時から車と家電で日本の企業が出て行ってたわけです。特に大手の組み立て系の所が出ていって、それに釣られる形で部品系の産業も出ていってたと。そういうところが恐らく人材面などでご苦労されて、政府もいろんな形でサポートしました。これがかなり機能した部分があると思いますが、アフリカはそういう前提では、あまりない国が多いので、国によってだいぶやり方を変えないといけないと思っています。
例えば、3週間前にエチオピアの貿易産業大臣が日本に来て、私は、3日間ご一緒して日本の産業政策ツアーの訪問先として、中小企業金融の世界的プロの所や、大田区の中小企業を訪れました。従業員数名で、車の部品とか、航空機用のねじを作っている工場に案内したら非常に驚いて「こんな企業がこんなことをやれるなんて」と言っていました。
エチオピアは、国策として「2025年までに中進国になりたい」、「国内の1次産品に付加価値を付ける軽工業のハブをやりたい」と言ってるので、比較的日本の中小企業政策のノウハウが役立つのではないかと思っています。ただ一方で、ルワンダは、ICTをキーにしていますから、昔ながらの日本のものづくり振興的なやり方ではない別のやり方が良いと思います。
一方で、モロッコは非常に外資政策もいいし、ヨーロッパに近いので市場もあり、かなり日本企業も大手が出ています。このようにいろいろ違った形で発展をしていると違った協力が要るのではないかと思っています。この辺りについてJICA、それから、経済界も同じような印象をお持ちではないかと思いますが、何かヒントを頂けたらと思っております。よろしくお願いいたします。
パネラー:加藤隆一
ありがとうございます。今、所長がおっしゃられたとおり、国によってアフリカの状況はかなり違ってきてるのだと思います。ですから、個別のアプローチが必要だということはおっしゃる通りだと思います。その中で、今、エチオピアとルワンダの話をされましたけれども、エチオピアにつきましては、われわれもエチオピアにおいては対話を通じた産業政策策定に関わってきております。
併せて、その中から出てきたものとして”カイゼン”というものがありまして、カイゼンのいわゆるムーブメントを、カイゼンセンターというものをつくって、そこをベースにしてエチオピアの国内の製造業に展開をして、彼らの生産性を上げていくというようなアプローチを取っていますが、エチオピアのような国は他のアフリカにはないかもしれません。人材の問題、労働賃金の低さの問題など、いろんな意味でエチオピアは恐らく製造業としての可能性が高い国の一つで、そのような形でわれわれもアプローチをしています。
一方、ルワンダについてはむしろICTということで、先ほどご紹介したような形でエコシステムの整備と、スタートアップです。スタートアップについてはルワンダ人のスタートアップもそうですし、日本人の若手の起業家の方々もかなりルワンダには進出しています。他の外国の若手の起業家、あるいはルワンダの起業家さんたちと切磋琢磨してやってる部分がありますので、そこはそこでそういう支援をすればよいと思っています。54ヶ国ありますので、それぞれ全てについてできないかもしれませんが、いかに各国の事情を踏まえた支援をしていくのかということは、おっしゃるとおり重要なことかなと思います。
パネラー:岩井睦雄
どうもありがとうございます。民間サイドからは、私もそう思います。個々の企業自体は、まさに自分たちはどこの国でならという、そういうアプローチだと思います。経済同友会の立場で言えば、どういうニーズ、どういう社会的な課題だとか、ビジネスチャンスがあるのかというところを、やはり個々を少し違った形で見ていかなければいけないという点と、また、それをどれだけ向こうの政府がきっちりとそういうものを促進するために法整備とか、ルールなりをきっちりと、それも明示的にできるのかどうかがキーだと思っています。そういった辺りを、整備をしていく段階で日本の官民も協力していかかなければいけません。
例えば、政府の中でも各省庁ごとに、ある問題が起きて一つの省庁で解決したはずのものが、他の所からは違う法律を適用して、また違う罰金を掛けようとすることが往々にして起こります。やはり、外資に対してまとまった窓口を作っていただく、そういった働き掛けを政府からもしていただき、各国が、どういう国になっていきたいかという産業政策を見ながら進出していくといいのかなというふうに思っています。
モデレーター:横山正
ありがとうございます。どうぞ。
意見:向井宏之 トランスコスモス株式会社 副社長執行役員
ありがとうございます。私はトランスコスモスというBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のカンパニーで、アフリカはまだ出ていませんが、同友会の、案内で今日参加しました。コメントとレコメンデーションをお伝えしたいと思います。
私は、経済同友会でアジアと中東委員会のほうをやっていて、JETROの方を含めていろんな形でわれわれの委員会と議論しており、ここ1年はもうほとんど現地の、例えばサウジアラビアの大臣クラスの方たちと、われわれ同友会のメンバーと具体的にディスカッションをしてます。
岩井さんがおっしゃった、向こうのインフラ整備とか、支援というのは官民でやるしかないのですが、それと並行して直接、インターンシップで来られてる日本企業の社員の方ともディスカッションしたりして続けています。私自身、TICADを全然知らなかったのですが、このような形の進め方、即ち企業と向こうの大臣クラス、あるいは政府機関、先日は、企業のトップの方も入れて具体的にディスカッションするというようなことをやりましたが、正直言って、地域で議論しても全く意味がない、国ごとに全く違うので、国ごとも、さらに業種によってまた違ってきます。いわゆる、カントリーリスクをとっても、もうこれは議論にならないので、意味がないので、一步でも進めるとすると具体的にどんどん進めていこうというふうに、われわれ中東の委員会ではやってます。
そして、アフリカ委員会も、私はもちろんその報告書を読んでますが、もっと加速しないといけない。中東と違ってまだまだ我々としてやるべき点が多い。つまり、日本がいてほしい国になりたいと考えるなら、我々のミッションとしてはすごく重要な地域だと思います。そういう意味では、単なる市場が大きいとか、どこかに負けないようにとか、そういうつまらない次元での話ではなくて、2050年に世界人口の4分の1をしめる、そのぐらいのマグニチュードのある地域に対してわれわれ日本がどうするかという観点からどんどん議論を深めて、ビジネスの成功だけじゃなくて、世界的にどういうことを日本がやっていくのだという中で、われわれ企業はどうするかというような議論を、ぜひこのアフリカ協会主催のフォーラムで進めればよいのではないかと思います。どなたへの質問というより、そう思ったのでお伝えしただけです。
意見:大島賢三 一般社団法人 アフリカ協会 理事長
どうも今日はコメントをありがとうございました。アフリカ協会を代表してということではありませんが、かなり個人的なコメントになりますけど、やや辛口なコメントになるかもしれませんがちょっと申し上げたいと思います。
一つは、TICADの共同開催者の中にアフリカ開発銀行が入ってないですね。アフリカの開発について中心的な役割を果たしてるアフリカ開発銀行がこの共同開催者になっていないというのは、ちょっと変だと思います。世界銀行、UNDPがなっているのは、それぞれ意味があると思いますが、アフリカについて開発を議論する、その場に開発銀行が正式に共同主催者になってないというのは、非常に不自然で、できれば早く是正したほうが良いと思います。これがコメントの第1点です。
第2点。今日いろいろお話を聞いていまして、いろいろ戦術的な話は見られるのですが、どうも戦略が見えてこない。日本はアフリカに対して何を戦略と考えて、それをどうやって実現していくのかという、その先の、最初の戦略のほうが見えてこないのです。官民連携、これはもちろん結構なことだと思います。官民の連携を通じて大きな目標として一体何を達成するのですかと。民間をできるだけ多く進出するように手助けをする。それはそれなりに、ちょっとした戦略になるかもしれませんけど、私はもうちょっと高い所に何かあるんじゃないかと思うのです。
例えば日本ができることは、中小企業も含めて科学技術の力、AIの力、日本が持ってるそういうものをアフリカのコンテクストにおいてどういうふうに役立てることができるのかと。例えば農業の重要性、これは先ほどからいろいろいわれている通り、明らかにアフリカの人口は増えていく。食料自給率は8割以下のアフリカで、農業の基本的な重要性はますます大きくなることはあっても減ることはない。
そのときに、例えば日本でもドローン技術の応用がいろいろいわれてますけども、国内の一部ではドローンとAIを組み合わせて害虫対策を効果的にやるとか、あるいは、収穫の季節をきちっと判断するとかというような、そういう分野で既に利用が始まってると聞きます。もし、そういう技術の応用が日本のどこかにあるのであれば、それをアフリカに展開する。それを組織的に大きな規模できちっと組み立てて、一つの戦略にして、それを進めていく。そのために官民連携をしたり、ビジネス協議会を開いたり、ワーキンググループを作るというのは、それはいいのですが、どうも大きなところの戦略が見えてきません。今日お話を聞いた限りでは。
例えば、人材育成の話もあります。ABEイニシアチブで既に1,200人を超えるアフリカの有望な青年が日本に来て、いろいろ教育、実務経験をして帰ってる。彼らのフォローアップはどうなってるのでしょうか。こういう人たちを架け橋として活用し日本の投資、ビジネスのアフリカ進出に役立てる。では、それをどうやって実現していくのかが見えてきません。何人日本に呼びました、教育を受けて帰りましたというところまではあるのですが、そこから先が見えない。同じようなことが、ABEイニシアチブに限らず、JICAの研修生だって何千人というアフリカ人が既に日本に来て訓練を受けたり、文部科学省の国費留学生、これも来てるわけです。
こういう人たちの人材情報をフォローアップして、それを役立てていく。そのためには、では、どうすればいいのか。どこで何をやるのかといったような話が見えてこないわけです。このまま今までどおりのやり方をやってるのであれば、あまり大きな進展は残念ながら期待できないというのが、私の非常に個人的な、やや悲観的、クリティカルなコメントになります。このような問題意識で、せめてTICAD情報センターのようなものをアフリカの地につくる。官民連携でつくる。民間の人もそこに行く。
それから、そのセンターをつくったら、ABEイニシアチブで、日本で経験を積んで帰ったアフリカの人を何人かそこに入れる。そこで共同して発信材料をいろいろ作る。あるいは情報収集の手先としてうまく使っていくというようなことで、大きな戦略に沿った、情報に役立てていく。帰国したABEイニシアチブの人材のフォローアップとして、いい情報があれば、関心のありそうな日本の民間企業にそういう人材情報を提供していく。いろいろできることはあるのではないでしょうか。何かそういうことを、具体的に、戦略を立てて、その上で官民連携をやっていくという、その戦略のレベルの話をもうちょっと詰めてやったほうがいいのではないかと思います。
アフリカ協会が提言してる人材情報センターをアフリカの地にというのは、その一つの手段であるわけです。そういった、もっと具体的で実践的なところの議論を進めていかないと、立ち後れそうになっている日本のアフリカ対策というものが、このままでは力強いものに生まれ変わっていかないのではないかとおもいます。ずいぶん競争が激しくなっており、中国のみならず、他の国のアフリカ進出もどんどん出てきてる。
TICADは26年の歴史を持ってますけれども、このままではやはりどんどん押されていって存在感が薄くなっていくんじゃないかという懸念もあります。いろいろあるので、ぜひもうちょっと具体的な、コスト・エフェクティブで、それから官民連携でやること、オールジャパンでやること、アフリカ人材も巻き込んで何ができるか真剣に考えていく必要があるのではないかという気がいたします。ちょっとそういう印象を持ちました。やや辛口過ぎるかもしれませんけど。(拍手)
モデレーター:横山正
どうもありがとうございました。ちょっと一点だけ、よろしいですか。先ほどご指摘いただいた点で、あまりご説明しませんでしたが、先ほど私からご説明いたしましたAIF(アフリカ・インベストメント・フォーラム)では、ボードルームミーティングという場があります。具体的な個々のプロジェクトの取引についてボードルームで議論するものもありますが、政策対話をやるボードルームもあります。例えば、前回の場合ですと、ガーナの大統領も参加して、投資家サイドからは、実際問題、投資の障害はこれであるとか、これをやってくれるのだったら投資してもいいとか、投資環境改善についての個別具体的な議論を行って、実際トランズアクションが進んだというのが幾つかあると聞いています。
第一回AIFには、約2,000人、300の投資機関家が53ヶ国から来たのですが、参加者からは、「アフリカの大統領や担当閣僚に対して、ここの規制のここが問題で、ここがこうだったら投資してもいいと、こんな議論をやったのを初めて見た。これは画期的だ。」といった声が聞かれました。もしもTICADのプロセスないしワーキンググループの延長として、今おっしゃったような丁々発止の議論ができるような場ができればよろしいのではないかと私も思っております。
時間も押していて申し訳ないのですが、この後まだ、コーヒーと共にいろいろ歓談する時間はあるので、よろしいでしょうか。
それでは、淺野副理事長にマイクをお返しいたします。どうもありがとうございました。
司会:淺野昌宏
横山さん、どうもありがとうございました。今日はちょっとスタートが遅れまして、ご迷惑をお掛けしましたが、4方のお話を頂きまして、時間的にもっといろいろご議論いただきたいところではありますが、時間もまいりましたので、ここまでとさせていただきます。
それでは、最後に、今日お話戴きました皆さま方に感謝の意を込めて、拍手でお礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
この後、お時間のある方はコーヒーを準備してありますので、コーヒーを飲みながら意見交換、ご歓談いただければと思います。本日はどうもありがとうございました。(拍手)
第6回在京大使との懇談会開催
- ムティティ駐日ザンビア大使との懇談会
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Country-study Meeting with H.E. Ms.Ndiyoi Muliwana Mutiti,
Ambassador of the Republic of Zambia to JapanThe Society held its sixth Country-Study meeting on 27th February at the International House in Tokyo, with the presence of H.E. Ms.Ndiyoi Muliwana Mutiti, Ambassador of the Republic of Zambia to Japan. (Number of attendants; 36 persons.)
The ambassador started her presentation by explaining that Zambia is known for peace and stability, and so far it never had any wars or upheavals. Its political system is multi-party democracy and there are more than30 active political parties. She also briefly introduced its population, climate, country size, languages and religions.
On political and economic outlook, the ambassador explained that Zambia is centrally located with market access to SADC, COMESA and soon entire Africa. Deregulation and liberalization of the economy has given the private sector freedom of operation. The country enjoyed rapid economic growth over the decade and the economic growth rate in 2018 was 5%.
Zambia has abundant natural resources and the production of copper is the second largest in Africa. But “Vision 2030”, which aims at becoming a prosperous middle income country by 2030, sets its target to transform and diversify its economy with priority areas of agriculture, manufacturing, infrastructure, tourism and energy. Various sectors for investment were also shown.
On the bilateral relations between Zambia and Japan, the ambassador mentioned the famous episode that it was during the Tokyo Olympic Games in1964, when Zambia got independence. She also mentioned these two countries enjoy decades of economic cooperation, as are shown by JICA’s cooperation in the agricultural and infrastructural sectors. Kaizen is also being appreciated in the country. The current thrust is to increase Japan’s private sector participation in Zambia’s economy.
The questions and comments raised by the attendants after the presentation include (1) what are the most crucial points Japanese enterprises wishing to deal with Zambia should learn (the person who asked this question added that he himself lived in Zambia for 9 years and knew very well the nation’s attractive points.),
(2) how she sees China’s “One Way, One Belt” policy, which seems to be good but at the same time there could be danger of resulting in incurring huge debts on the part of African countries? (3) in case of Japanese companies find difficulties in getting into the Zambian market, what could be the advice to overcome such difficulties? (4) how many Zambia students are studying in Japan?(post-graduate level). And (5) there are a lot of small-scale manufacturing companies in Japan which show much interest in Zambia.
(6) Out of the sea-ports of Dar es Salaam, Nakara and Durban, what is most important to Zambia? (7) UNIDO has invited Zambians to attend the “Delegates Programme” to be held in Japan and this year it expects to invite Zambians for that programme, with the specific emphasis on the renewable energy.ムティティ駐日ザンビア大使との懇談会
2月27日午後、国際文化会館において、ンディオイ・ムリワナ・ムティティ駐日ザンビア大使に同国事情を伺う会を開催しました(会員企業等から出席者36名)。先ずムティティ大使より、同国は平和を保ち安定しており、内戦や混乱は経験しておらず、また政治面では多数政党制の民主主義国家であり、現に30以上の政党が活動中である旨述べました。大使はまた、ザンビアの人口、気候、面積、言語、宗教などについても説明しました。政治と経済の概観について、ザンビアはSADCとCOMESAにマーケット上のアクセスを有しており、また近年の経済面での規制緩和と自由化により、同国のプライベート・セクターは自由に活動することが可能となっています。近年の経済成長は目覚ましく、2018年の経済成長率は5.0パーセントでした。
資源面では、ザンビアは豊富な天然資源を有しており、特に銅の生産量はアフリカで第2位ですが、同国が2030年までに活発な経済力を有する中所得国家となることを目指す「ヴィジョン2030」は、経済を多様化し、農業、製造業、インフラ開発、観光業とエネルギー開発の5つの分野を主要分野とする経済開発を進めることを目指しています。今後の投資が見込まれる分野についても、説明がありました。
日本との2国関係について、大使は有名な東京オリンピック(1964年)の時ザンビアが独立したことを紹介しつつ、両国はこれまで数十年間、緊密な協力関係を継続してきたと述べ、また日本発の「カイゼン」がザンビアでも歓迎されていることに触れつつ、昨今の重要なテーマは、ザンビア経済への日本のプライベート・セクターの関与を増やしていく事であると述べました。
その後会員企業等から、(1)ザンビアに入っていこうとしている日本企業が学ぶべき、最も肝要な点は何か(質問者は、ザンビア在住9年の経験を有しおり、個人的には同国を十分理解していると述べました)、(2)中国のい「一帯一路」構想は、優れた点もあるが、同時にアフリカの国の債務を増やす面もあると思料されるところ、どう見るか、(3)同国のマーケット参入を目指す日本企業に、いかなるアドバイスをするか? (4)日本で学ぶザンビア人大学院生はどの位いるのか? (5)ザンビアに関心を有している日本の中小企業は多いと思う、(6)海への出口として、ダルエスサラーム、ナカラ、ダーバンなどの港のうちで、最も重要な港はどこか?(7)UNIDOはザンビアから「デリゲーツ・プログラム」(投資促進担当者の招へいプログラム)で代表を呼び、民間相互の会合を開いているが、今年も再生可能エネルギーなどの分野の会合を開くことを予定しているので協力していきたい、などの質問や意見が出されました。
(担当委員:鈴木優梨子)