
学術研究会 第16回研究発表会

- 学術研究会 第16回研究発表会
-
学術研究会 第16回研究発表会
本発表は、2025年6月にセネガル・ダカールで開催されたAfrica-Asia, A New Axis of Knowledge 3 ConFestにおいて報告した “The Second Life of Coffee: Ethiopia Reimagined in Seoul and Tokyo” を発展させ、日本を一つの重要な分析空間として位置づける。そのうえで、カフェ、スーパー、生豆・焙煎豆専門店、ロースター、教育機関、コーヒー企業、博物館、イベント、エチオピア大使館、さらに国際開発協力の現場にいたるまで、エチオピアコーヒーが現れる多様な消費・媒介空間を横断的に検討する。とくに、日本で独自かつ多義的に用いられてきた「モカ」という語の用法は、エチオピアコーヒーの第二の生涯を読み解く重要な手がかりとなる。
■報告者:ユン・オスン氏 韓国出身の文化地理学者
チオピアコーヒーツーリズム研究により一橋大学大学院社会学研究科修士号、英国エクセター大学地理学博士号を取得
■報告タイトル:「エチオピアコーヒーの第二の生涯:日本を事例として」
■日時: 2026年4月16日(木)14:00~15:30
■司会: 青木一能 アフリカ協会学術研究委員会委員長(日本大学名誉教授)
■概要:発表では、エチオピアコーヒーが生産地を離れた後、日本という消費地においていかに再解釈され、新たな価値と物語を与えられていくのかを、「第二の生涯」という概念から考察する。ここでいう「第二の生涯」とは、単に生産地の外で続くコーヒーの新たな段階を指すのではなく、第一の生を内包しつつそれを離れ、別の文脈のなかで再構成される存在のあり方を意味する講演概要は、機関誌「アフリカ」2026年夏号にて報告を掲載致しましたのでご参照願います。
また、講演内容は当協会HPに掲載しておりますので、ご視聴願います。
講演内容をご覧いただけますので、ご参照願います。
第1回講演会
- 2026年度第1回講演会
-
~的場JETROアフリカ総代表・ヨハネスブルグ事務所長 講演会~
「南部アフリカの現在~南アフリカを中心に」
6月1日、国際文化会館にて、標記演題の下、的場真太郎JETROアフリカ総代表(兼)ヨハネスブルグ事務所長による講演会が開催されました。的場所長からは、アフリカ及び南アフリカ情勢などについて、豊富なデータに基づくプレゼンテーションが行われ、アフリカ進出を検討中(あるいは進出済)の日本企業にとって有益な情報も多数紹介されました。講演に引き続き活発な質疑応答が行われました。概要は次のとおりです(会場 64名、 オンライン 20名参加)。
【講演要旨】
(アフリカ情勢)
1.政治情勢
2025年、アフリカ各国で大統領・議会選挙が行われたが、カメルーン、タンザニアでは高齢の現職大統領が再選され、両国とも若者(Z世代)を中心とした抗議活動が発生。また、マダガスカル、ギニアビサウ、ベナン(未遂)では、軍部だけでなく、野党や若者の反発によるクーデターが発生。
2026年も、多くの国で選挙が予定されている。指導者の多選や高齢化が進む中で、若者の人口増により平均年齢が20歳前後まで下がった国が多いため、指導者層と若者との世代間ギャップが拡大している。これが各国政治情勢にどのような影響を与えていくのかは注視する必要がある。
2.経済情勢
ビッグ4と呼ばれるエジプト、ケニア、ナイジェリア、南アだけでなく、多くのアフリカ諸国で2025年のマクロ経済指標は好調であった。但し、中東情勢による物価上昇圧力や経済全体への今後の影響が懸念される。ところで、アフリカとアジアを比較する場合、(1)南ア=タイ、(2)ナイジェリア=インドネシア、(3)エジプト=フィリピン、(4)ケニア=ミャンマーのGDPを例に挙げて比較されることがあるが、アフリカ・ビッグ4の経済規模は、アジア主要国と比べても遜色がない。
3.テロ情勢
アフリカでのテロ件数は2016年以降急増している。特にイスラム系組織によるテロが西アフリカ、サヘルを中心に増加している。先般マリでは暫定政権の国防大臣が家族ともども殺害されたが、マリは、ロシアのアフリカ部隊の動向などとともに注視すべき国である。
4.日本企業のアフリカ進出状況
アフリカに進出している日本企業(拠点)数は、約1000社と言われるが、エジプト(72)、ケニア(123)、ナイジェリア(52)、南ア(252)と、ビッグ4だけでも半数以上を占める。また、JETROでは各国に所在する日本企業に対し各社の「注目国」を調査したことがあるが、エチオピア、エジプト、コートジボワール、ガーナ、ナイジェリアなどでは、それぞれ所在している国を挙げる企業の割合が多かったのが注目される(海外進出日系企業実態調査 2025)。(南ア情勢)
1.経済概況
南アは、アフリカ唯一のG20参加国で、2025年は議長国を務めた。人口規模、経済規模、ビジネス環境の良さなど、進出のメリットは大きい。但し、近年経済は成長率1%前後と低迷している。その主因は、電力不足や物流事情の悪化と考えられる。また、失業率や犯罪率の高止まりといった問題に対しては、長年様々な対策が取られてきたが、ほとんど改善が見られない。
2.政治情勢
2024年5月の国民議会選挙の結果、民主化以来30年に亘り単独過半数を維持してきたアフリカ民族会議(ANC)が過半数を失い、得票率を40%代に落とした。この結果、連立政権による国民統一政府(GNU)が成立した。GNUが、白人中心の民主同盟(DA)などとの連立であり、ANCが分裂して再結成された新政党もそれぞれ主張を強めているので、今後南アでは、一党単独政権の成立は難しいのではないかと考えている。
3.産業構造
第1次~第3次産業まで多様な産業分野を擁し、特定分野に過度に依存しない産業構造を有している。アフリカの中では稀有な経済構造であり、かつ南ア経済の強靭性の源であるとも考えている。こうした産業構造の多様性の持つメリットは、企業が進出を果たした後に、現地でビジネスを支えてくれる「パートナーの層の厚さ」として現れてくるものと考えている。また、南アに拠点を構え、南アを越えて、周辺国とのビジネスまで視野に入れる場合は、南アに進出するメリットは更に大きくなる。なお、過去30年間の産業構造の変化を振り返ると、農業、鉱業、製造業が縮小する中で、第3次産業、特に金融部門が伸長しており、先進国型経済構造に転換している、とも言える。
4.日南ア貿易概況
輸出の主力である資源(貴石、貴金属,鉱石など)の輸出は堅調。資源を輸出して製品を輸入するという垂直貿易の基本構造は長年変わっていない。最近、日産自動車の工場が中国企業に売却されたという新しい動きがあったが、2025年の南ア貿易統計を見ると、輸送機械(自動車)について、輸出(前年比+21.3%)が大きく伸びたが、輸入(前年比+22.8%)も、中国からの輸入の急増に伴い急増した。他方で、鉄鋼製品の輸出は急減(前年比―40%)した。
5.電力、物流の問題
(1)電力不足:2023年は、ほぼ毎日計画停電による停電が発生した。政府は、2024年の選挙に向けて、発電設備の改修・改善、ガス発電の改善、原子力発電所の寿命延長などの取り組みを進めた結果、現在電力供給の状況は大幅に改善。
(2)物流の混乱:近年の港湾、鉄道の混乱により、年間80億円の経済活動が失われたとの報告がある。因みに、総陸上貨物輸送量は、過去10年間で21%増加したが、同時に鉄道貨物から道路貨物へのシフトが進み、道路貨物のシェアが全体の83%であるのに対し、鉄道貨物は17%まで低下。
6.経済格差
地域、性別、人種間で格差が大きい。因みに、白人グループの平均月収は、今でも黒人グループのそれの4.5倍である。黒人経済力強化政策(B-BBEE)導入後も、格差は一向に解消されないばかりか、昨今は同一人種間でも格差が拡大しており注視が必要。
7.政府債務
南ア財務省は、債務のピークは2025/26年度にGDP比78.5%に達した後、緩やかに改善すると予測しているが、昨今の中東情勢を受けて先行き不透明。なお、アフリカでは、ザンビア、マリ、ガーナ、エチオピアでデフォルトが宣言されており、ケニア、エジプトでも累積政府債務が問題となっている。また、セネガル、モザンビーク、マラウィについて、2年以内にデフォルトになるとの報道もある
8.対米関係
米国共和党は、長年ANCを「テロ(支援)組織」と位置付け、伝統的に折り合いが悪い間柄。特に、トランプ政権の民主党嫌悪とも相まって、米国との対立が表面化。イスラエル・ハマス紛争に際し、南アはイスラエルを国際司法裁判所(ICJ)に提訴したが、これは「パレスチナ人の自由なしに我々の自由は不完全」とした、マンデラ元大統領の発言に裏打ちされたもの。なお、最近のポジティブな動きとしては、駐米大使に白人のロルフ・メイヤー元国民党議員(アパルトヘイト時代に閣僚経験あり)が指名されたことを挙げたい。対米関係の改善を期待したい。(JETROの取り組み)
1.TICAD9
昨年8月のTICAD9において、JETROは “TICAD Business Expo&Conference”を開催した。これには200社近くの企業・団体が参加したが、初出展が133社もあったことに注目している。
2.JETROビジネス・ミッション
JETRO事務所の置かれていない国に、日本企業等によるビジネス・ミッションを派遣し、訪問先で有力企業視察やネットワーキング・イベントなどを開催している。本年2~3月にはコンゴ民主共和国(DRC)、ザンビアに派遣した。昨今ナカラ回廊、ロビト回廊など、回廊プロジェクトが注目されているが、いずれの回廊もDRC、ザンビア両国にまたがる「カッパーベルト」が起点であり、鉱物開発/サプライチェーンに注目が集まる中で派遣したもの。今年度も同様に、日本企業の関心が高まり、比較的政治・経済状況が安定している国を対象にミッション派遣を企画したいと考えている。
3.海外進出日系企業実態調査
JETROは毎年「海外進出日系企業実態調査」を行っている。2025年版で、日本企業の黒字割合がアフリカ全体で61.6%と、2013年以降初めて60%を越えたことが明らかになった。世界全体では、UAE,オーストラリア、韓国、ブラジルなどで黒字割合は高いが、南アも76.2%と健闘しており、実は「アフリカビジネスは儲かっている」と言える証左でもある。
【質疑応答】
講演を受けて質疑応答が行われました。例えば、(1)南アにおける電力・物流問題のボトルネックは何か、(2)南アで、白人中心の政党が参加する新政権が誕生したことで、B-BBEE政策に変更はないのか、(3)南アにおけるヘルスケア分野でのビジネスの可能性、(4)イラン情勢の南アへの影響、(5)電力公社ESKOMの問題点、(6)エネルギー源の石炭回帰の動きはないのか、(7)鉱物資源の埋蔵量の見通しなど、多岐に亘る質問がありましたが、的場所長より、ひとつひとつに丁寧に回答がありました。
第6回大使を囲む懇談会開催
- 駐セネガル赤松大使を囲む懇談会
-
6月18日、国際文化会館において、赤松武駐セネガル大使を囲む懇談会が開催されました。赤松大使からは直近の政治状況の変化を含む詳細な説明があり、会場及びオンライン参加者と有意義な意見交換が行われました。概要は次のとおりです。(会場 25名、オンライン14名)
【講演要旨】
1.セネガルの魅力:セネガルは独立以来一度も軍事クーデターを経験していない西アフリカ随一の安定国家。軍の政治不介入が徹底しており、また穏健イスラム教が根づき原理主義的思想が浸透しにくいことがその理由。2.最近の政治情勢:2024年3月の大統領選挙での非エリート層出身のファイ大統領の当選は、独立以来「第二の革命」とも言うべき出来事。選挙前まで投獄されていた野党(当時)PASTEF党創設者のソンコ氏は事務局長だったファイ氏を大統領候補とし、当選後は首相に任命された。しかし2026年5月22日、ファイ大統領はソンコ首相を解任した。ソンコ首相はCFAフランからの離脱など主権主義的・急進改革的な政策志向を維持しようとした一方、ファイ大統領はやや合理的に対応しようとしていた。解任後、ソンコ氏は26日に国民議会議長に選出。PASTEF党が過半数を占める議会運営は難しくなった。解任当初は両者の対立の激化が懸念されたが、ソンコ氏は2029年の大統領選でファイ氏を打倒すると述べており、当面は制度内対立として推移する可能性がある一方、議会運営や経済改革をめぐる不透明感は残る。尚、ファイ大統領は内閣も解散したが、主要閣僚は留任、IMFと対立的だった経済大臣所掌の経済省は財務省に統合され、同大臣は閣外に去った。
3.最近の経済情勢:セネガルの1人あたり所得は1,700ドル。2024年10月に発表された「セネガル2050」では、2050年までに経済的自立、社会的公正、環境の持続可能性、強固なガバナンスの実現を目指すととともに、全国を8つの経済拠点に分散し、各地域のポテンシャルを活かして社会・経済的な格差の是正を図るとしている。サル前大統領時代の対外債務(GDP比132%)の隠蔽が発覚したが、政府はIMFの債務再編要請を拒否、地域金融市場からの資金調達で凌いでいる。近年コロナ禍期を除けば堅調な経済成長が続いていたが、債務問題を機にIMFは2026年の成長見通しを2.2%と、2025年の7.9%から大幅に下げた。一方、石油・ガス開発はプラス要素としている。
4.日本企業を取り巻くビジネスの課題:セネガルに進出している日系企業にはスタートアップ企業もあるが、総数は限定的。人口が1,900万人、かつ購買力の低い若年層が中心なため、市場規模が小さいことがその要因。またサヘル諸国の不安定さや国間の連結性の弱さも課題。フランス由来の行政手続の不透明さも障壁。近年主要貿易相手はフランスから中国に移りつつある。
5.ビジネス関係強化に向けた官民連携:2025年のTICAD9において、セネガル政府と日本企業の間で11件のMOUが締結された。その中でも5社は、40年の歴史があるセネガル日本職業訓練センター(CFPT)及びJICAとの間で奨学金や日本語教育など人材育成に関するMOUを締結。またTICAD9に合わせて来日したファイ大統領も投資機会の紹介や魅力的な投資環境の約束などにより、日本からの投資を呼びかけた。
6.ユース・オリンピックの開催:2026年10月31日から11月13日までに間、アフリカ初となるユース・オリンピックが開催され、日本からは18競技に46人が参加する。大使館としては救急車の寄贈などを通じて協力する予定。
【質疑応答】
講演に続いて行われた質疑応答では、地域別開発戦略の対象となる分野、ユニバーサルヘルスカバレッジの進捗状況、債務返済のための資金調達先、日本の投資促進策、欧州企業の進出状況、金を含む鉱物資源の開発状況、製造業の実態、外交政策など、多岐にわたる質問が出され、大使からは一つ一つ丁寧にご回答いただきました。
第5回大使を囲む懇談会開催
- 駐ガーナ義本大使を囲む懇談会
-
6月2日、国際文化会館において、義本博司 駐ガーナ大使を囲む懇談会が開催されました。義本大使からは、力の籠ったプレゼンテーションが行われ、白熱した懇談会になりました。概要は次のとおりです(会場22名、オンライン10名 参加)。
【講演要旨】
1.外交関係樹立70周年
2027年は、①日・ガーナ外交関係樹立70周年、②野口英世博士のガーナ渡航100周年、③JICA海外協力隊派遣50周年の、3つの記念年に当たる。日本大使館としては、この機会に日本文化を紹介するイベントを集中的に開催し、ガーナとの友好関係の一層の増進を目指している。ガーナ側も、この記念すべき年を共に祝いたいとの意向であり、鋭意準備を進めている。
2.内政
民政移管(1993年)後、大統領選挙が8回実施されたが、政権移行は常に平和的であった。ガーナは「民主主義の優等生」と評されているが、ガーナ人自身、このような評価を誇りに思っており、維持したいと考えている。しかも与野党を超えたコンセンサスになっている。マハマ大統領は、2024年の選挙で当選したが、過去に一期大統領を務めているので、今回で2期目となる。憲法上、大統領の任期は2期までであり、2028年の選挙には立候補できない。マハマ大統領自身、(憲法を改正するなどして)3期目に立候補することはないと宣言しているが、次回大統領選挙でも、権力移行が円滑に進むかどうかは、民主主義の試金石でもあるので、その観点からも注視していきたい。
3.外交
首都アクラは、ラゴス・アビジャン回廊とアクラ・ワガドゥグ回廊の結節点に当たる。そのような場所にあるガーナとしては、西アフリカの経済的・政治的ハブを目指している。同時に汎アフリカ主義(アフリカ大陸全体の繫栄を重視)の立場を明確にしており、ガーナ外交はアフリカ全体を意識して実施されている。
4.外債格付けの改善
2025年に入り、インフレが低下傾向となり、GDPも堅調(6.3%)に成長している。更に現地通貨の対ドルレートも改善するなど、マクロ経済指標は良好。その主な要因は、金価格の高止まりである。財政についても、IMFの勧告を受け、財務省がきちんと関与するようになり、財政規律も堅持されている。既にデフォルト状態からは脱却しており、格付会社による格付も改善した。IMFは、現状が続けば、本年中にも債務持続性評価(DSA)が”Moderate”に改善されるとしている。そうなれば、円借款再開や大型インフラ案件の実施も視野に入ってくる
5.経済
経済を概観すると、比較的安定した政治情勢や投資促進策、近年の人口増加・都市化による市場拡大が進む一方、政策変更やインフラ整備の遅れといった課題がある、と言える。この関連で、PEST分析(ビジネス環境を政治、経済、社会、技術の4つの視点から分析する手法)でガーナについて分析した結果が紹介された。
6.金及び貴金属
金は主要輸出品であるが、中央銀行が国内で生産された金の一定割合を買い取ることとした他、GOLDBODという公的機関を創設し、金及び貴金属の取引・評価・輸出を統括する体制にした。この結果、金保有量、外貨準備高ともに大幅に増加した。最近の中東情勢により、石油製品価格は高騰しているが、高騰している金価格と相殺しあい、国内経済への影響は比較的小さい。
7.マハマ大統領の新イニシアティブ
マハマ政権は、①24時間経済、②アクラ・リセット、③大西洋奴隷貿易の賠償、④サヘル地域との橋渡し、の4つのイニシアティブを表明している。①は、生産性向上と輸出能力強化による経済構造変革を目指すものであり、②は、援助依存から脱却し、主権の確立を目指すものである。また③については、奴隷貿易を「人道に対する最も重い罪」とする決議案として結実し、本年3月、国連総会にて賛成多数で採択された(日本は棄権)。④については、マハマ大統領は、ECOWASを脱退したAES3か国との関係修復も視野に、これら3国を就任後の初外遊先に選んだ。
8.日本文化紹介事業
(1)ガーナの「よさこい祭り」は、2025年で22回を数え、日本文化紹介とともに高校生による「よさこい踊り」が披露された。この他、「アニメ・マンガによる文化交流」や「日本とガーナの大学との連携交流」、「義本大使によるガーナ大学レゴン国際関係・外交センターにおける講演」などについても紹介があった。
(2)日本語教育については、①アニメなどを入口にした日本語・日本文化の学習者と、②日本での技術習得のために必要な日本語能力の習得者の2つに分けて対応している。①についてはガーナ大学に「日本センター」が設置予定であること、②については職業訓練学校に日本語学校を併設していることなどの紹介があった。【質疑応答】
講演に引き続き質疑応答が行われました。参加者からは、(1)ガーナ向け輸出品に対する関税、付加価値税の扱いに関するもの、(2)ガーナ大学「日本センター」の詳細内容に関するものなどの他、(3)ガーナでは、予測不能で突然の政策変更により苦労している日本企業は多い、日本政府(大使館)から先方政府に対し善処方申し入れてほしい、また日本政府には「租税条約」や「投資協定」の締結についても検討してほしい、との要望がありました。義本大使よりは、ひとつひとつに対して丁寧な回答がありました。
第4回大使を囲む懇談会開催
- 駐ナイジェリア鈴木大使を囲む懇談会
-
5月22日、国際文化会館において、鈴木秀雄 駐ナイジェリア大使を囲む懇談会が開催されました。概要は次のとおりです(会場18名、オンライン16名参加)。
【講演要旨】
1.基礎情報:経済規模は西アフリカ最大。人口は現在2億3000万人であるが、地域大国として、地域の平和と安定に積極的に貢献。近年、安保理常任理事国入りを標榜・明言している。人口増加が顕著で、毎年700万人のこどもが生まれており、年齢中央値は18.1歳。人口は、2050年に4億人、2100年には6億人に達すると推計されている。2.内政:民政移管(1999年)以降、7回の大統領選挙を含め、政治的安定は維持されており、「アフリカにおける民主主義模範国」とされる。ティヌブ大統領の政権運営も、上下両院で圧倒的多数の与党勢力に支えられ、安定している。就任後に実施された経済改革(燃料補助金撤廃、二重為替廃止、税制改革など)が功を奏し、マクロ経済指標は回復基調にある。インフレ率は、33%(2024年)をピークに低下傾向にあるが、依然16%(2026年)と高い水準にある。MFからは、10%以下に抑えるよう勧告が出ており、政権にとっても克服すべき課題。
3.次回大統領選挙:次の大統領選挙が2027年1月に予定されているが、今のところ与党APCが圧倒的に優勢で、かつ野党勢力が分裂しているので、このままの状況が続けば、現職のティヌブ大統領再選の可能性が高い。
4.治安問題:治安問題は国民生活に甚大な影響を与えており、内政上の最重要課題。政権のアキレス腱と言っても良い。最近、米国の軍事協力により、200名の米軍部隊が派遣され、北部地域のIS武装勢力に対する空爆が行われた。また、英国からも軍事協力を得て、テロ対策に全力で取り組んでいる。
5.対外関係:米国は、従来のUSAIDを通じた援助から、国益に直結する戦略的投資にシフトしている。重要鉱物のサプライチェーン構築やエネルギー分野などに、米国輸銀を通じた融資が行われている。BRICSについては、昨年パートナー国となり、伝統的に友好関係にあるブラジル、インドとの関係強化に取り組んでいる。
6.対中関係:中国は最大の輸入相手国であり、一帯一路関連の建設契約総額では世界最大。中国の融資・技術で、ラゴス空港新ターミナルやレッキ深海港などの大規模インフラプロジェクトが完成した。
7.ナイジェリアのポジティブな面として大陸有数のGDP規模(40兆円)や人口ボーナスが挙げられる。原油については、アフリカ最大(世界14位)の産油国であり、現在150万B/Dを生産。精製国内化のために設立されたダンゴテ製油所も、現在65万B/Dでフル稼働しているが、これを140万B/Dにまで拡大する計画がある。また、天然ガスについても、アフリカ最大(世界9位規模)の確認埋蔵量を有し、アフリカ有数の産出国である。この他の天然資源も豊富にあり、重要鉱物としては、リチウム、すず、タンタルなどが、中国企業の技術で採掘されている。
8.反面、不安材料としては、(1)国内燃料価格が国際原油価格や戦争の影響を受けやすく、ダンゴテ製油所の稼働後も国内燃料供給・価格が不安定であること、(2)インフレ率が依然高い水準にあり、企業経営や家計を圧迫していること、③2024年、個人所得が800米ドルまで急落し、そのため貧困率も63%に急上昇したが、回復が遅々として進まないこと、などが挙げられる。
9.最後に、持続的成長を実現していくための「処方箋」として、鈴木大使のアイディアの披露があった。即ち、①短期的課題として、農生産性向上とインフラ整備を直ちに行う、②中期的課題として、産業多様化・工業化など産業基盤の形成に取り組む、③長期的課題として、教育・人材育成に取り組む、とのことである。
【質疑応答】
講演に引き続き質疑応答が行われ、参加者からは多岐に亘る質問がありました。例えば、①日本企業の進出が期待される分野は何か、②諸外国の投資の狙い目はどのような分野か、③エンタメ産業への期待はどの程度か、④ECOWAS主要国ナイジェリアとサヘル同盟(AES)との関係、⑤ダンゴテ製油所の将来像、 といった質問があり、鈴木大使からは、ひとつひとつに丁寧な回答がありました。
第3回大使を囲む懇談会開催
- 駐マリ村田大使を囲む懇談会
-
4月17日、国際文化会館において、村田優久夫 駐マリ大使を囲む懇談会が開催されました。概要は次のとおりです(会場19名、オンライン10名参加)。
【講演要旨】
1.冒頭、歴代大統領の紹介とともに、2020年8月と2021年5月に相次いだ2回の軍事的政権奪取について、詳細かつ丁寧な説明があった。
2.政治情勢:現ゴイタ暫定政権は、真の独立を目指す「主権主義」を掲げ、「新しいマリ」を建設するため、“Mali Vision 2063” に沿った取り組みを進めている。予定されていた全ての選挙は「透明で平穏な選挙が実施できるまで」延期され、政党活動も禁止された。暫定大統領の任期は5年だが、何回でも再任可能とされた。対外関係では、国連PKO部隊の撤退完了(2023年)、アルジェ合意破棄(2024年)、ECOWASからの正式脱退(2025年)があった。仏始め、欧米との関係は悪化する一方、露、中国、トルコには接近し、軍事支援や様々の経済協力を得ている。
3.治安情勢:2025年10月から、テロリストによる燃料輸送車の襲撃が始まり、現在に至っている。テロリストは首都バマコを封鎖することを狙っており、一時市内では深刻な燃料不足に陥ったが、、燃料は国軍のエスコートで市内に届けられている。最近のイラン情勢に伴い、ガソリン価格は急騰している。
4.サヘル諸国同盟(AES):AES3か国は、協力と統合を進めている。AES共同軍(5000人規模)は既に活動を開始しており、AES国歌も作成された。2025年12月には第2回AES首脳会議が開催され、議長国がマリからブルキナファソに引き継がれた。2026年2月、AES第2年ロードマップ作成のための国防、治安、外交、経済の大臣会合が開催された。
5.経済事情:主たる輸出品目は金鉱石で、南ア、UAE、豪州が主な輸出先である。 経済成長率は5%であるが、15歳以上の識字率が35%と低く、対外債務のGDP比が46.8%に上る。なお、本年国防費は前年比で大きく伸び、総予算の15%を占めている。なお、2024年に「鉱山法」が改正され、金鉱山からの権益(マリの取り分)がこれまでの20%から35%に引き上げられた。今後金鉱山からの歳入増が見込まれる。
6.開発の課題:資源(金、リチウム)は豊富にあり、農業も潜在性は高いが、付加価値を加えた輸出ができていない。優秀な人材は存在するが、頭脳流出のため国内は人材不足。インフラの未整備も開発のボトルネック。内陸国のため輸送費がかさみ、エネルギーコストも高い。なお、電力については、最近、小規模の太陽光発電の利用を独自に始める民間企業が増えている。
7.日マリ関係の新しい流れ:①2025年8月、大阪で「日マリ・ビジネスフォーラム」が開催され、両国から300人が出席。②シュテイン(日本発の土壌強固剤)による道路整備プロジェクトが国際機関により実施(日本の補正予算を活用)。今後はODAでなくマリの国家ないし地方自治体の予算で実施するように働きかける予定。これは若者の雇用創出にも繋がる。③サコ教授(マリ人)と浦幌スタイル(若者を重視した町政)を発案した近江氏の創設したSackomiが活動を開始。将来的には、農業分野での若者の交流(浦幌町での農業研修後、マリで実践)をできればと考えている。④学術交流として、鳥取大学乾燥地研究所、都立大学、北海道大学との学術交流の準備をしている。
8.最後に村田大使からは、日本とマリは共通点が多いとして、明治時代の日本と現在のマリを比較し、「主権主義」による真の自立を目指すマリに、当時の日本の経験が活用できる、との自説の紹介があった。その上で、明治時代の日本で「お雇い外国人」が果たした役割を改めて分析し、「日本こそが、マリの真の自立、自律を支援できる」旨述べた。【質疑応答】
講演に引き続き質疑応答が行われ、参加者から多岐に亘る質問が相次ぎました。例えば、①政府の農業分野振興策、②現地電力事情、③金鉱山への外国企業(中国、ロシア)参入の現状、④金鉱山にテロ攻撃はないのか、⑤日本及び主要ドナーのODAの現状及び今後の見通し、⑥北部と南部との和平合意の見通し、などの質問があり、村田大使からは、ひとつひとつに非常に丁寧な回答がありました。




