フォーラム
2026年

第3回大使を囲む懇談会開催

  • 駐マリ村田大使を囲む懇談会
  • 4月17日、国際文化会館において、村田優久夫 駐マリ大使を囲む懇談会が開催されました。概要は次のとおりです(会場19名、オンライン10名参加)。

    【講演要旨】
    1.冒頭、歴代大統領の紹介とともに、2020年8月と2021年5月に相次いだ2回の軍事的政権奪取について、詳細かつ丁寧な説明があった。
    2.政治情勢:現ゴイタ暫定政権は、真の独立を目指す「主権主義」を掲げ、「新しいマリ」を建設するため、“Mali Vision 2063” に沿った取り組みを進めている。予定されていた全ての選挙は「透明で平穏な選挙が実施できるまで」延期され、政党活動も禁止された。暫定大統領の任期は5年だが、何回でも再任可能とされた。対外関係では、国連PKO部隊の撤退完了(2023年)、アルジェ合意破棄(2024年)、ECOWASからの正式脱退(2025年)があった。仏始め、欧米との関係は悪化する一方、露、中国、トルコには接近し、軍事支援や様々の経済協力を得ている。
    3.治安情勢:2025年10月から、テロリストによる燃料輸送車の襲撃が始まり、現在に至っている。テロリストは首都バマコを封鎖することを狙っており、一時市内では深刻な燃料不足に陥ったが、、燃料は国軍のエスコートで市内に届けられている。最近のイラン情勢に伴い、ガソリン価格は急騰している。
    4.サヘル諸国同盟(AES):AES3か国は、協力と統合を進めている。AES共同軍(5000人規模)は既に活動を開始しており、AES国歌も作成された。2025年12月には第2回AES首脳会議が開催され、議長国がマリからブルキナファソに引き継がれた。2026年2月、AES第2年ロードマップ作成のための国防、治安、外交、経済の大臣会合が開催された。
    5.経済事情:主たる輸出品目は金鉱石で、南ア、UAE、豪州が主な輸出先である。 経済成長率は5%であるが、15歳以上の識字率が35%と低く、対外債務のGDP比が46.8%に上る。なお、本年国防費は前年比で大きく伸び、総予算の15%を占めている。なお、2024年に「鉱山法」が改正され、金鉱山からの権益(マリの取り分)がこれまでの20%から35%に引き上げられた。今後金鉱山からの歳入増が見込まれる。
    6.開発の課題:資源(金、リチウム)は豊富にあり、農業も潜在性は高いが、付加価値を加えた輸出ができていない。優秀な人材は存在するが、頭脳流出のため国内は人材不足。インフラの未整備も開発のボトルネック。内陸国のため輸送費がかさみ、エネルギーコストも高い。なお、電力については、最近、小規模の太陽光発電の利用を独自に始める民間企業が増えている。
    7.日マリ関係の新しい流れ:①2025年8月、大阪で「日マリ・ビジネスフォーラム」が開催され、両国から300人が出席。②シュテイン(日本発の土壌強固剤)による道路整備プロジェクトが国際機関により実施(日本の補正予算を活用)。今後はODAでなくマリの国家ないし地方自治体の予算で実施するように働きかける予定。これは若者の雇用創出にも繋がる。③サコ教授(マリ人)と浦幌スタイル(若者を重視した町政)を発案した近江氏の創設したSackomiが活動を開始。将来的には、農業分野での若者の交流(浦幌町での農業研修後、マリで実践)をできればと考えている。④学術交流として、鳥取大学乾燥地研究所、都立大学、北海道大学との学術交流の準備をしている。
    8.最後に村田大使からは、日本とマリは共通点が多いとして、明治時代の日本と現在のマリを比較し、「主権主義」による真の自立を目指すマリに、当時の日本の経験が活用できる、との自説の紹介があった。その上で、明治時代の日本で「お雇い外国人」が果たした役割を改めて分析し、「日本こそが、マリの真の自立、自律を支援できる」旨述べた。

    【質疑応答】
    講演に引き続き質疑応答が行われ、参加者から多岐に亘る質問が相次ぎました。例えば、①政府の農業分野振興策、②現地電力事情、③金鉱山への外国企業(中国、ロシア)参入の現状、④金鉱山にテロ攻撃はないのか、⑤日本及び主要ドナーのODAの現状及び今後の見通し、⑥北部と南部との和平合意の見通し、などの質問があり、村田大使からは、ひとつひとつに非常に丁寧な回答がありました。


第2回大使を囲む懇談会開催

  • 駐コートジボアール胡摩窪大使を囲む懇談会
  • 4月8日、国際文化会館において、胡摩窪淳志駐コートジボワール大使を囲む懇談会が開催されました。概要は次のとおりです(会場21名、オンライン10名参加)。
    【講演要旨】
    1.内政について、1960年のウフェ=ボワニ初代大統領選出後の歴代大統領・首相について概観した後、昨年の大統領選挙で、ウワタラ大統領が再選され、任期4期目に入ったことが紹介された。選挙では、有力な対立候補と見られていたバグボ元大統領、ティアム氏ともに立候補が認められなかったため、現職のウワタラ大統領が得票率84%で当選した。ウワタラ政権は、足掛け15年に及ぶ長期政権であるが、これほど高い支持を得た理由は、国内が大混乱に陥った2010年には戻りたくない、と多くの国民が考えたことも一つ。か。ウワタラ大統領は、84歳と高齢なので、次の大統領選挙に向けては後継者問題が焦点となろう。既に何人かが候補者として取り沙汰されているが、今後与党RHDPから然るべき候補者が指名されるのか、あるいは野党が対立候補を擁立できるのか、現時点では予断できない。若い有権者の反応も気になるところ。今後引き続き注視していきたい。
    2.経済については次の諸点がポイント。①GDPは2012年以降、年平均6~8%の右肩上がり成長を続けている。規模では仏語圏サブサハラ・アフリカ最大。 ②信用格付けもサブサハラ・アフリカ第2位で、外貨建て国債発行も活発。JBIC保証のサムライ債も起債に至った。③主要産業は農業で、カカオ及びカシューナッツは生産量が世界一だが、石油も採掘されており、2027年には20万B/Dの生産が見込まれている。④人口の22%が移民で構成される多民族国家であるが、国内に宗教的な対立はなく、大統領が北部出身であれば首相を南部出身者にするなど、民族間のバランスもうまく取られており、安定している。⑤失業率は2.3%と低いが、人口の7割近くを占める35歳未満の若者については、多くがインフォーマル・セクター、あるいは非正規で雇用されている。人口増加に伴いいわゆる「分厚い中間層」が生まれることが将来的な持続的な成長に欠かせないと思われる。 
    3.政府は国家開発計画を掲げて開発を進めている。現行(2021-2025年)の開発計画は実行率70%以上の成果を挙げて終了。2030年までの次期開発計画(民間投資の促進、人的資本の開発など6つの柱からなる)が先日議会で承認された。国の経済構造転換を加速させ、2030年までの中所得国入りを目指す上で、この次期開発計画の成功が重要。
    4.治安の維持は、国内社会の安定、経済成長、海外投資呼び込みなどにとって重要であるが、当国治安機関のガバナンスはしっかりしている。現状、国内でテロやクーデターが発生する可能性は低いが、北の国境はマリ、ブルキナファソに接しており、サヘル地域からテロリストの流入に目を光らせている。即ち「サヘルに対する防波堤」の機能を果たすことが求められ、当国政府もドナーの協力を得て「国際テロ対策アカデミー(AILCT)」が設立されている。日本政府としても、国際機関と連携して、北部国境管理向上、警察能力強化、地方政府インフラ改善支援や市民社会保護など、平和と安定に貢献する様々なプロジェクトを実施している。なお、仏はAES諸国から完全撤退したが、当国からは完全撤退した訳ではなく、仏との軍事協力は継続している。米国についても、USAIDは閉鎖したが、軍事分野での二国間協力は強化されている。
    5.日本との関係については、安倍総理の当国訪問(2014年)始めTICAD9に至るまでの主な要人往来、更に主要な援助案件の概要ついても紹介があった。最後に、当国要人らのの関心事項として、①一村一品運動の導入、②コメの増産や内水面養殖の推進などによる食糧自給率の向上、③教育や職業訓練による人材育成支援等、また企業向けには、④知見の共有や技術移転、⑤欧州からではなく当地での(兼轄ではない)拠点や事務所の開設、などの案件を例示しつつ、可能なものがあれば是非検討願いたい、との発言があった。

    【質疑応答】
    講演に引き続き質疑応答が行われました。参加者からは多岐に亘る質問がありました。具体的には、①仏の影響力の変化やロシアとの関係、②実施中のプロジェクトの進捗状況を問うものの他、③ローカル・コンテンツなど実際のビジネスに必要な情報に至るまで様々な質問があり、胡摩窪大使からは、ひとつひとつに丁寧な回答がありました。


第1回大使を囲む懇談会開催

  • 駐ジブチ大河内大使を囲む懇談会
  • 4月7日、国際文化会館において、大河内昭博 駐ジブチ大使を囲む懇談会が開催されました。概要は次のとおりです(会場参加 11名、オンライン参加 4名)。

    【講演要旨】
    1.冒頭、ジブチ概況について紹介があったのに続けて、次のとおり説明があった。ジブチは、周辺国が不安定な中にあって、政情は安定、治安も良く、それぞれエチオピア、ソマリア、イエメンにルーツのあるアファール系、ソマリ系、アラブ系から主に構成される多民族国家である。その地政学的重要性に鑑み、仏、米、日、伊、中国(開設順)が基地・活動拠点を置いているが、基地・活動拠点の受け入れから得られる収入も国家財政に大きく寄与している。米国基地には約4000名の兵士が駐屯しているが、日本の自衛隊拠点で活動する自衛隊員も約200名に及ぶ。GDP成長率は6%(2024年)と好調。一人あたりのGDPも約3500米ドルで、アフリカでは14位、アジアで言えば、ベトナムとカンボジアの中間ぐらいに当たる。但し、若者(15-24歳)の失業率が76.3%と極めて高く、これが将来に向けての懸念材料である。
    2.来る4月10日に大統領選挙があるが、現在5期目を務めるゲレ大統領の再選は間違いないと見込まれており、政治は極めて安定している。因みに、2028年は日・ジブチ外交関係設立50周年の記念すべき年に当たる。
    3.日本のODAについては、①経済社会基盤強化、②人材育成、③地域安定化努力の支援、を重点分野として実施されている。具体的には、①道路の改修、旅客フェリーの供与など、②小中学校建設や学校運営支援、産業多角化に向けた人材育成、③沿岸警備強化のための巡視艇整備など、様々な案件が実施されてきている。 政府要人からは、日本のODAに対して機会あるごとに謝意が表明されているが、民間企業に「もっと進出してほしい」との要望も繰り返し表明されている。
    4.ジブチ政府としては、経済多角化を目指して「DJIBOUTI VISION 2035」を掲げ、輸送物流、電気通信、エネルギー、観光、漁業の振興を目指している。特に、物流については、ジブチ市周辺には4つの港と3つのフリーゾーンがあり、コンテナ港パーフォーマンス指標(CPPI)(2022年)によれば、サブサハラ第1位(世界第26位)である。因みに、ドラレ多目的港は「積替えのハブ」として、日本企業にも活用されている。電力については、現状はエチオピアからの輸入に依存しているが、2035年までに100%再生可能エネルギー由来に転換することを目指している。
    5.ジブチ投資の利点として、①地域海上交通の要衝であること、②治安の良さは地域随一、③為替リスクの低さ(米ドル固定相場制)、④外資規制が緩いこと、⑤フリーゾーン内では様々な優遇措置があること、などが挙げられる。フリーゾーンの投資環境を周辺諸国と比較しても、ジブチのDIFTZは、エチオピアのSEZやケニアのEPZより規制が緩く、自由度が高い。
    6.最後に、本年2月に、アフリカ、中近東に拠点をもつ日本企業を対象にジブチ市内で実施された「ジブチ投資関心促進ツアー」について紹介があった。

    【質疑応答】
    講演に引き続き質疑応答が行われ、参加者からは多岐に亘る質問が途切れることなく続き、インタラクティブなやりとりが行われました。主要な論点としては、①緊迫するイラン情勢による影響、特にイエメンとの間のバル・エル・マンデブ海峡封鎖の可能性、②若年層の高失業率が社会に与える影響、政府の対策、Z世代の動向、③対中債務の現状、④港湾物流拠点における中国企業の現状、⑤ジブチ大学学生の卒業後の進路、⑥地熱発電、リチウム資源の開発可能性、などについて質問があり、大河内大使からは、ひとつひとつに丁寧に回答がありました。


第9回大使を囲む懇談会開催

  • 駐ウガンダ佐々山大使を囲む懇談会
  • 3月6日、国際文化会館において、佐々山拓也 駐ウガンダ大使を囲む懇談会が開催されました。概要は次のとおりです(会場参加19名、オンライン参加8名)。

    【講演要旨】
    1.本年1月に実施された大統領選挙は、事前には 前回選挙の時と同様の暴力や衝突が危惧されていたが、実際には何事もなく、予定通り行われた。選挙監視を行ったAU、EU、英国などからも、選挙は平穏無事に実施され、問題はなかったと評価されている。選挙の前後5日間、国内のインターネットは遮断され、軍も動員されて警戒に当たった。期間中、国外退避する外国人も少なくなく、多くの住民が投票のため帰省した(注: 国民は登録地で投票する制度になっている)こともあり、首都カンパラでは人通りが途絶えた。
    2.選挙結果は、ムセヴェニ候補が得票率72%で大統領(7期目)に選出された。投票率は52%であった。高市総理からはムセヴェニ大統領宛書簡で祝意を伝えて頂いた。就任式は5月12日に予定されている。
    3.ODAの関係では、昨年は、カンパラ・フライオーバー(LOT1)、信号システムといった大型案件が完成した。本年も、カンパラ・フライオーバー(LOT2)、新カルマ橋、送電線網整備、上水道整備など大型案件が目白押しである。JICAの協力で「カンパラ首都圏都市開発マスタープラン」が策定され、今後これを実施に移していくことになる。日本としても、このマスタープランに沿って大型インフラ案件を検討していくことになる。最近では、EUや英国などのドナーも、ビジネス支援のためにインフラ案件に力を入れてきているが、日本も、世銀、AfDBなどの金融機関とも連携しつつ、ウガンダの経済開発に協力する方針である。
    4.東アフリカ共同体(EAC)は、設立以来、共同通貨、共同航空会社、共同鉄道、共同郵便による経済統合を目指してきた。このうち共通通貨は2027年の設立を目指している。また鉄道については、ケニアが中国の協力で、タンザニアがトルコの協力で完成させた。そこに連結するウガンダ側の鉄道は、トルコの協力で建設中である。もっとも英国植民地時代の鉄道基盤は残っているので、それをリハビリして活用していくことになる。日本も、鉄道運営の人材育成について期待されている。
    5.マクロ経済はムセヴェニ政権の成長政策により今後も安定が見込まれる。経済面で特筆すべき点として、①主要輸出産品である金の中東向けの輸出が増加していること、②コーヒー生産も伸びており、今や生産量アフリカNo.1となったこと、③原油の輸出が本年中に開始予定であること、④鉄道リハビリ事業が、今後数年かけて本格化していくこと、を挙げたい。
    6.昨年は日本でTICAD9、万博が開催され、ウガンダからも副大統領、首相など多くの要人が訪日した。TICAD9以降、日本企業のウガンダに対する関心も高まっており、現地を訪問する日本企業関係者も増えている。大型案件では、アサヒビールがDIAGEO社を買収して販路拡大を目指している他、水関係、医療関係、スタートアップなどで、日本企業によるビジネスが拡大している。
    【質疑応答】
    講演に引き続き質疑応答が行われ、参加者からは多岐に亘る質問が途切れることなく続きました。例えば①新内閣の顔ぶれ予想、②国会議員選挙の結果、③交通インフラ(鉄道、道路)の現状と問題点、④金の採掘・生産の現状、⑤若い世代の雇用の展望、⑥原油輸出のためのパイプライン敷設の現状などについて質問があり、佐々山大使からは、ひとつひとつに丁寧な回答がありました。


学術研究会 第15回研究発表会

  • 学術研究会 第15回研究発表会
  • 学術研究会 第15回研究発表会

    本報告は、西アフリカにおける初等教育段階の留年・退学問題に対し、教育行政および学校自身が有効と認識する対策を起点として、日本のNGOであるル・スリール・ジャポンがそれを実装してきた実践を比較・分析するものである。
    2015年から2019年まで活動を行ったブルキナファソと、2021年から活動を開始したベナン共和国を対象とし、いずれも家庭学習が問題解決のために重要であると指摘された点は共通していたが、その実現のためのアプローチは異なる。両国での実践から、留年・退学問題は児童や家庭の意識の問題に還元できず、学習を可能にする地域包括的な条件整備の重要性がある。

    ■報告者:石田純哉 氏  特定非営利活動法人ル・スリール・ジャポン 理事長、事業責任者
    ■報告タイトル:『「正解」を持たずに始めた学びの場の支援~留年・退学問題に取り組んできた西アフリカの小学校から~』
    ■日時: 2026年2月3日(火)14:00~15:30
    ■司会: 青木一能 アフリカ協会学術研究委員会委員長(日本大学名誉教授)
    ■概要:『なぜアフリカ諸国は、ロシアや中国に傾くようになったのか。なぜ現地では、国際ロマンス詐欺や西側諸国を批判する陰謀論が台頭してきたのか。2003年より西アフリカを行き来するなか、SNSの普及を背景に人びとは「先進国」や「経済大国」との関係に疑念を膨らませるようになった。世界のパワーバランスが揺らぐ今、人びとの声に耳を澄ませることで、国際協力と日本の対アフリカ外交のありかたを問い直す。』

    講演概要は、機関誌「アフリカ」2026年春号にて報告を掲載致しましたのでご参照願います。
    また、講演内容は当協会HPに掲載しておりますので、ご視聴願います。
    講演内容をご覧いただけますので、ご参照願います。


第7回大使を囲む懇談会開催

  • 前駐マラウイ大矢大使を囲む懇談会
  • 2月12日、国際文化会館において、大矢洋一・前駐マラウイ大使を囲む懇談会が開催されました。概要は次のとおりです(会場参加15名、オンライン参加8名)。

    【講演要旨】
    1.現在マラウイは、世界でボトム5か国に入る最貧国である。最近の急激な物価上昇(年率30%)や燃料不足に加え、汚職の蔓延など、深刻な問題を抱えている。 他方で現在2200万人の人口が、2030年には3000万人にまで増加すると推計されている。現時点では人口増加に伴い、ひとり当たりGDPは下降を続けているが、将来は人口ボーナスの恩恵を大いに受けることが期待される。
    2. 2025年9月に実施された総選挙(大統領、国会、地方議会)を中心に、最近の内政動向を取りまとめると次のとおり。
    (1)前回(2019年)の大統領選挙では、選挙結果に対する野党の異議申し立てを憲法裁判所が認め、再選挙が実施された。マラウイでは、かねてより「法の支配」や「民主主義」が重視されてきたが、今回も司法判断により再選挙が行われたことから、「法の支配」が実践されているとして評価されている。
    (2)今回の大統領選挙の前哨戦は、2024年に始まった。選挙運動がヒートアップするにつれて、政党間の駆け引きも激しさを増し、一時的に暴力的な応酬も見られた。最終的には、選挙管理委員会が認めた17名の候補者による争いとなった。選挙当日、自身も投票所を視察したが、平穏かつ整然と投票が行われていた。投票率は約60%であった。
    (3)選挙戦についての現地外交団の事前予想は、与党MCP(マラウイ議会党)のチャクウェラ大統領と 野党DPP(民主進歩党)のムタリカ前大統領の一騎打ちになるというものだったが、選挙結果はムタリカ候補(85歳)が57%の得票率で当選し、大統領に返り咲いた。チャクウェラ候補の得票率は33%であった。 ムタリカ候補については、ほとんど選挙運動らしいことをしていなかったので、この57%という数字は、外交団の間では驚きをもって受け止められた。
    (4)新政権の公約は712件にも及び、中等教育の無償化、農業補助金の拡充など巨額の財源を必要とするものが含まれており、実現可能性を疑問視する向きもある。また、主要閣僚の中には、かつて汚職で訴追された人物も含まれており、この新内閣が国民の信頼を得られるのかも重要なポイントである。なお、新政権の発足以降、旧政権幹部への、いわば「復讐」が始まっている。彼らの過去の行状についての調査が警察権力を使って行われているようである。

    【質疑応答】
    講演に引き続き質疑応答が行われました。参加者からは、多岐に亘る質問が途切れることなく続き、①空港近代化の可能性、②日本からの投資が期待されている分野は何か、③中国、ロシアとの関係、④USAID撤退後の欧米との関係、⑤電力供給の現状、⑥Z世代と呼ばれる若者たちの動向、⑦タバコの生産・日本への輸出の見通しなど、合計13問に及びました。これに対して大矢大使からは、ひとつひとつ非常に丁寧な回答がありました。