
第2回大使を囲む懇談会開催
- 福島駐ルワンダ大使を囲む懇談会
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6月5日、国際文化会館において福島功駐ルワンダ大使を囲む懇談会が行われました。概要は次の通りです(会場参加19名、オンライン参加13名)。
【講演の要点】
1.ジェノサイド30周年の年に当たった2024年7月に大統領選挙が行われた。2000年以降、大統領を務めるカガメ大統領が99%を越える得票率で再選され、安定したカガメ政権の基盤を内外に誇示する機会になった。憲法上、今後は5年の任期で2期まで大統領を務められるので、カガメ大統領が次の大統領選挙(2029年)でも再選されると、2034年まで任期が続くことになる。閣僚などの政府高官は能力主義で任命されており、皆勤勉である。政府全体の能力も高く効率も良い。汚職に対して非常に厳格で、清廉な行政運営が行われている。2.ルワンダは、高い経済成長率を維持し、「アフリカの奇跡」と称される発展を見せている。現在の一人当たりGDPは約1000米ドルであるが、2035年に中所得国、2050年には高所得国入りを目指している。具体的には、貿易・金融・ICTのハブへの転換、ICT分野の強化、海外投資の積極誘致、国際会議やスポーツイベントの積極誘致、観光開発等の経済政策を推進している。ブゲセラ新国際空港も、ヨハネスブルクやアディスアベバに並ぶハブ空港を目指して、カタール航空とルワンダ政府の共同出資で建設中。
3.他方で課題も多い。貧困率は高く、ジニ係数が0.4を超えるなど、無視しえない格差が存在している。教育や労働力の質も低いままで、国連の人間開発指数でも161位と下位に止まっている。優秀なトップ人材はいるが、それを支える中間層が弱いの。国家予算の約3割が援助由来で、政府債務の対GDP比は77.8%(2025年)であり、財政運営は他のアフリカ諸国と比較すると健全であるが、ブゲセラ新空港の建設によって政府債務の対GDP比が86%まで上昇するとの統計もある。
4.コンゴ(民)東部情勢については、複雑な経緯から30年も混乱が続いているところ、メディア報道でもあるとおり、本年初めより反政府勢力M23が活動を激化させ、北キブ州及び南キブ州の諸都市を制圧した。国連安保理の専門家グループは、ルワンダ国軍が越境してM23の支援を行っているとのレポートを出している他、G7としても非難声明を発出した。また西側援助国は、対ルワンダ援助停止などの制裁により圧力をかけている。従来はアンゴラが仲介を試みてきたが、最近になってカタールや米国が仲介に乗り出しており、今後、米国がルワンダ・コンゴ(民)両国に経済的インセンティブを提示することで和平合意を狙うものと見られている。
5.米国USAIDの活動が停止したことにより、今後、日本がルワンダにおけるトップドナーとなる可能性が高い。ルワンダ政府の日本に対する評価は、特に日本が植民地主義とは無縁なこともあって、非常に高い。日本の対ルワンダ経済協力は、水、電力、交通インフラといった「人間の安全保障」に直結した分野を中心としている。ルワンダにおける日系企業の動きについては、従来、農業分野を中心にスタートアップが活動してきたが、最近になって日本の大企業が駐在員を派遣する等の動きもある。
【質疑応答】
講演を受けて質疑応答が行われました。多岐にわたる質問が多数(時間の関係で合計11問に限らせて頂きました)途切れることなく続き、福島大使からは、ひとつひとつに丁寧な回答がありました。
(以上)
第1回大使を囲む懇談会開催
- 村田駐マリ大使を囲む懇談会
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6月3日、国際文化会館において村田駐マリ大使を囲む懇談会が開催されました。村田大使の講演要旨は次のとおりです。(会場参加16名、オンライン参加12名)
(【講演の要点】
1.内政
マリでは1990年代以降、民主化を推進する大統領が続き、同国は「民主主義の優等生」として高く評価された。しかし、2020年の国民議会選挙の結果を巡る暴動を契機とする軍事的政権奪取により軍人主導の政権が発足(20年8月)。この政権は、民政移管を目指したが、内閣改造で一部閣僚を排除しようとしたことから、軍部中枢との対立により二度目の政変(21年5月)が発生。結果、ゴイダ将軍が暫定大統領となり、現在に至っている。2.ゴイダ政権の外交
(1)欧米、特に仏・EUとの関係が悪化する一方、露、中国、トルコとは関係強化。露とはアフリカ部隊(旧ワグネル)派遣、戦闘機供与などの軍事協力を強化、中国とは鉱山開発、太陽光発電、農産物加工などの分野で協力強化。ゴイダ暫定大統領自身、マリにとって重要な国は、露、中国、トルコであると明言。
(2)ECOWASとは、軍事的政権奪取に際して制裁が課せられるなど関係が悪化。25年1月に正式脱退。国連(MINUSMA)にも撤退要求(23年12月撤退完了)。アルジェ和平合意(北部武装勢力との和平合意)も破棄(24年1月)。3.「新しいマリ」の建設
軍事的政権奪取に対する国民の支持は強かった。30年間の見せかけの民主主義に対する国民の失望を反映。4月末に国家開発計画Mali Vision 2063を策定し、「主権主義」に基づく真の独立 国として63年までの新興国入りを目指す。23年7月、新憲法が公布。但し、大統領選挙(24年2月に予定)、国会選挙、地方選挙は、「透明で平穏な選挙」が実施できる環境が整備されるまで延期されることとなった。4.治安情勢
北部では(国軍+露アフリカ部隊)vs武装勢力等の戦闘、中部ではテロリストによる断続的攻撃、南部でもテロ攻撃が散発している。国内避難民は33万人を超え、人道状況は悪化している。5.サヘル諸国同盟(AES)(マリ+ブルキナファソ+ニジェール)
23年9月AES設立。24年1月にAES諸国はECOWASからの即時脱退を宣言。その後24年7月、AESは連盟(Confederation)となり、今後更に連邦(Federation)を目指すこととされた。25年1月にはAES連盟投資銀行が設立。同月AES共同軍(5000人規模)が創設。また3月にはAES軍が対テロ共同作戦を実施するなど、AES諸国間の連携が強まっている。本年4月には露・AES外相会議を開催。軍事・経済分野での露との協力が強化された。6.経済
マリの主要産品は金、綿花などであるが、本年中国がリチウムの採掘(50万トン)を開始する予定。穀物も年間1000万トン程度生産しているが、日本のKR食糧援助が2年に1回程度供与されている。 主要輸出品目は金鉱石。マリの主要輸出先国は、南ア(45.9%)、スイス(29.1%)、豪州(9.6%)。一方主要輸入先国は、セネガル(22.2%)、コートジボワール(16.5%)、中国(13.4%)。7.大阪・関西万博への参加
8月2日に万博会場でマリ・デーを実施予定。マイガ暫定首相の他、閣僚が多数来日予定。ドゴン仮面ダンスや音楽など、マリの文化を披露。また、8月1日には「日マリ・ビジネスフォーラム」が大阪ホテル・ニューオータニで開催される。【質疑応答】
講演を受けて質疑応答が行われました。広範にわたる多数の質問が途切れることなく続き、白熱した時間となりました。村田大使からは、ひとつひとつに丁寧に回答がありました。(以上)
「アフリカの感染症を知る」シリーズ第14回講演会

- 「アフリカの感染症を知る」シリーズ第14回講演会
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アフリカ協会文化・社会委員会主催「アフリカの感染症を知る」シリーズの第14回講演会です。
今回お話を頂く藤田則子先生は、長年国立国際医療研究センター国際協力局に所属され、カンボジア・アフガニスタン及びフランス語圏アフリカでの保健分野の国際協力活動に長年携わり、現在は長崎大学大学院熱帯医学・グローバ ルヘルス研究科にて教鞭を執っていらっしゃいます。
フランス語圏での感染症対策の現状と課題や感染症対策に関わる人材育成などについてお話を伺いました。大変興味深い講演に、多数の皆様にご参加頂きました。概要
日時: 2025年4月17日(木) 14時から15時30分
場所: オンライン(ZOOM)
テーマ: 「フランス語圏における感染症対策の現状と課題」
講演者: 藤田則子 長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科 教授
司会 : 池上清子 アフリカ協会副会長、
公益財団法人アジア人口・開発協会副理事長講演会の概要は、協会HPにて講演内容を視聴できますので併せてご参照願います。
「アフリカの文化と芸術を知る」シリーズ 第3回講演会

- 「アフリカの文化と芸術を知る」シリーズ 第3回講演会
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「アフリカの文化と芸術を知る」シリーズ 第3回講演会
アフリカ協会では、文化・社会委員会の主催で、2016年から「アフリカから学ぶ」シリーズとして、音楽や食文化あるいはアフリカの若者の考え方などアフリカの社会・文化に関するさまざまなテーマを講演会や映画上映などにより7回に亘りご紹介してまいりました。その後新型コロナの感染拡大を機に、保健・衛生面に焦点を当てた「アフリカの感染症を知る」シリーズとして2022年より2025年まで全15回に亘ってご紹介するシリーズを現在開催中で、既に9回を実施致しております。
今般、感染症シリーズと並行して、新たに「アフリカの文化と芸術を知る」シリーズを開始することと致しました。広大なアフリカ大陸の文化は多種・多様であり、それぞれがアフリカ大陸に特有の特徴を持っているさまざまな部族を持つ国々の混合物で構成されています。文化の表現はアフリカ内で豊富であり、またその独特な美術の形態と豊富な文化遺産によっても世界中から高い評価を得ています。皆様にとり非常に興味深いシリーズとなると期待しています。概要
日時: 2025年2月20日(木) 14時から15時30分
場所: オンライン(ZOOM)
テーマ: 「アフリカへの美術品返還とその背景-脱植民地化過程の新局面」
講演者: 武内進一
東京外国語大学大学院総合国際学研究院 教授
司会: 井谷善惠
東京藝術大学グローバルサポートセンター非常勤講師、帝京大学医学部客員教授、
日本コーヒー文化学会会長、アフリカ協会文化・社会委員会委員講演概要は、機関紙「アフリカ」〇号にて報告いたしますが、内容をご視聴されたい方々は協会HPにて講演内容をご覧いただけますので、ご参照願います。
学術研究会 第11回研究発表会

- 学術研究会 第11回研究発表会
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学術研究会 第11回研究発表会
今般、第11回研究発表会として、東京大学未来ビジョン研究センター(IFI)特任講師である華井和代先生をお招きして、オンラインによる研究報告をお願いすることになりました。
華井先生は長年アフリカにおける鉱物資源を巡る紛争問題に関して研究をされてきました。今回はコンゴ民主共和国(以下コンゴ)における紛争についてご報告いただきました。
報告者:華井 和代 東京大学未来ビジョン研究センター(IFI) 特任講師
報告タイトル:「コンゴ東部紛争にみるアフリカ大湖地域の政治力学
~紛争鉱物問題と地域機構介入の現状」日時: 2025年1月23日(木) 14時から15時30分
司会: 青木一能 アフリカ協会学術研究委員会委員長(日本大学名誉教授)講演概要は、機関誌「アフリカ」2025年春号にて報告を致しますのでご参照願います。
また、講演内容は当協会HPに掲載しておりますので、ご視聴願います。
機関紙「アフリカ」春号にて報告いたしますが、内容をご視聴されたい方々は協会HPにて講演内容をご覧いただけますので、ご参照願います。
JICA安井民間連携事業部長との懇談会

- JICA安井民間連携事業部長との懇談会
- 2月7日午後、国際文化会館において安井毅裕・JICA民間連携事業部部長囲む懇談会を開催しました。(会場参加者:27名)
1.JICAの民間連携事業
開発途上国に流入する資金を見ると、民間資金がODAをはるかに上回っており、開発とビジネスとの連携が益々重要になってきている。例えば、SDGs達成に必要な資金は3.9兆米ドルとされているが、世界全体のODA資金は年間1900億米ドルに過ぎず、この巨大な資金ギャップを埋めるには民間資金の活用が鍵となっている。他方、民間企業の側においても、開発についての考え方がCSRからビジネスに転換してきており、JICAと民間企業の目指す方向性は一致してきている。こうした中、JICAとしても「民間連携事業」に力を入れるようになった。本日は「海外投融資」と「中小企業SDGsビジネス支援事業」を中心に紹介する。2.海外投融資
(1)日本政府が開発分野における「官民連携」を主唱し始めたのは2010年前後であったが、JICAが海外投融資を立ち上げたのが2011年である。円借款が政府間援助であるのに対して、海外投融資は政府以外の民間企業等を対象にしており、これが大きな違いである。2015年以降承諾額は毎年1000~1500億円のレンジで増加傾向にあり、累計では1兆円を越えた。日本のODA予算が削減され続けている中で、海外投融資の主たる原資は市場での債券発行により調達されており増額できている。
(2)対象地域として、東南アジア地域のボリュームが大きいが、ラ米とアフリカ(マグレブを含む)に注目している。その手法としては、IFC、ADB、DFC(米国国際金融開発公社)などと連携して協調融資案件を発掘・組成している。信用力の高い銀行や企業を通ずることにより、円借款が供与できない財政状況の途上国に対しても融資や投資が可能となる。アフリカ地域における具体的案件として、①現地企業支援案件(南部アフリカ農業案件、ナイジェリア気候変動対策案件)、②地域金融機関融資案件(アフリカ輸出入銀行向け、東部南部アフリカ貿易開発銀行向け)、③スタートアップ支援案件(LEDランタン案件、ケニア廃棄物バイオリサイクル事業、アフリカ新興企業イノベーション支援事業)について紹介があった。3.海外投融資・協力準備調査
これは民間企業からの提案に基づき、海外投融資を活用したプロジェクトの事業計画策定にJICAが協力するスキームである。協力準備調査では予備調査と本格調査の2段階に分けて実施する。具体的案件として、ガーナでの道路PPP案件などについて紹介があった。案件採択のためにはJICAとの緊密な意思疎通が重要なので、早めの事前相談をお勧めする。4.中小企業SDGsビジネス支援事業(通称JICA・Biz)
海外投融資事業が主として大企業向けのスキームであるのに対して、JICABizは中小企業向けが多く、これまでに採択された案件の88.5%が中小企業によるものであった。 対象地域もアフリカが全体の15.1%を占めている。この支援事業はJICAコンサルタントが「伴走しつつ支援する」のがポイントである。ビジネスモデルの検証を目的とする「ニーズ確認調査」と、事業計画の策定を目的とする「ビジネス化実証事業」の2種類のメニューから成り、各企業による対象国ビジネス環境の確認状況やビジネス準備段階に応じて、選択が可能である。具体的案件として、①南アにおける鉄道脱線防止技術案件、②マダガスカルにおけるカカオ・バリューチェーン構築案件、③ケニアにおける道路維持管理案件、④南アのタクシードライバー向けファイナンス案件などが紹介された。このスキームにおいても、案件採択にはJICAとの緊密な意思疎通が重要なので、JICAとの早めの事前相談をお勧めする。5.「企業共創促進」 Private Sector Engagement(PSE)
これまで説明した民間連携スキームに留まらず、JICAのあらゆるスキーム・活動において企業との共創を促進する取組(PSE)を推進中。基本的には受発注以外の関係で、相互にメリットを認識しながらパートナーとして連携していく。JICAとしては支援対象プロジェクトが終了後も企業の活動に引き継がれ持続性を実現していく、企業のノウハウや情報により効果を高めるというメリットがある。企業にとっては、JICAのプロジェクトの成果をビジネスに活用するなどのメリットがあると思う。なお、」ステークホールダ~同士での情報交換や交流のために「企業共創プラットフォーム」が作られているので是非活用してほしい。具体的案件として、①セイコーエプソン社、②楽天グループ、③UCC上島珈琲(エチオピア)、④豊田通商(アンゴラ)との事業につき紹介があった。JICA内でタスクフォースを立ち上げて、全部署的に推進しており、ぜひ、日頃お付き合いのある各部署や民連部にアプローチ頂きたい。(質疑応答)
講演を受けて質疑応答が行われ、参加者から様々な質問が出されましたが、安井部長からは、ひとつひとつに丁寧な回答がありました。