第4回『アフリカから学ぶー社会・文化編』
- 第4回『アフリカから学ぶー社会・文化編』
- 12月9日午後、日本教育会館704号室にて文化・社会委員会(委員長:勝俣誠理事)の主催による「第4回アフリカから学ぶ(社会文化編)」を開催致しました(参加者28名)。高倍宣義特別研究員(元駐コンゴ民大使)に司会をお願いし、講演者として、ギニア系アメリカ人で現在アメリカ国務省アフリカ部にてプレス・スペシャリストとして勤務されているウマル-・バリーさんにお出で頂き「アフリカの若者の今:脱出願望、希望、SNSについて」短編動画を交えながらお話して頂きました。コーヒーブレイクの後、パネラーとしてフランス社会科学高等研究院EHESS阿毛香絵さん、東京外語大学大学院総合国際学研究院准教授坂井真紀子さんに加わって頂き予定を30分オーバーするほどの活発な論議が交わされました。今回は特に参加者に若い人々が多くみられ高校生も2名参加するなどアフリカに関心を持つ若い世代が徐々に増えてきているのかと嬉しく思いました。
第12回大使を囲む懇談会開催
- 廣木重之・駐南アフリカ共和国大使を囲む懇談会
- 11月24日午後、日仏会館において廣木重之・駐南アフリカ共和国大使を囲む懇談会を開催しました(会員企業等より計20名出席)。廣木大使より同国の歴史、人種の多様性、政治情勢、資源と経済概況、経済成長率、技術革新、財政、教育事情、主要輸出国、日本との貿易関係、日本企業の経済活動状況、報道の自由が確立していること、今後の展望などについて説明があり、その後出席者より、法の支配とブラック・エンパワメントについて、都市の治安状況、BRICSの一角を占める南アの発展の図式は中国やインドの発展とは異なるのか、ズマ大統領の後継者について、南アは既に経済面ではアフリカのリーダー的存在であるが、政治的にもアフリカ全体のリーダーとなることを目指すのか、日本企業の活動はエネルギー開発関係が多いように見うけられるがその理由、南アの優秀な学生の海外留学先、観光資源としてのワイルドライフ活用等について質問が出されました。(担当委員:鈴木優梨子)
第11回大使を囲む懇談会開催
- 川村裕・駐コートジボワール大使を囲む懇談会
- 11月1日午後、国際文化会館会議室において川村裕駐コートジボワール大使を迎え、同国の近況について伺う会を開催しました(会員企業等から出席者計24名)。冒頭川村大使より同国の政治(憲法改正の実現、安定の中での「成長の分け前」を求める要求の顕在化、次期大統領選挙へ向けての動き他)、力強い成長を継続した経済の概況(カカオ価格は下落したが農業生産は好調、税制の見直し、良好な中期的見通し、国際金融市場における信任、雇用、貧困対策等)、日本との関係(要人交流、日本企業への期待と経済ミッションの来訪、経済協力等)などについて説明があり、出席者からは保健分野の協力可能性がある分野は何か、政治勢力は部族的背景や宗教の別と関係があるのか、大統領の多選についての憲法上の制約の有無、国際的にカカオの品質はガーナ産が良質とされているようだが、政府にカカオ品質向上への対策の有無、ゴマを輸出作物とし育成する動きはあるか、軍人の待遇と治安維持策、日本企業は仏語圏への進出に困難を感じている面があるが、中国企業はどのような工夫をしているか、日本企業の西アフリカ進出におけるアビジャンの戦略的位置はいかなるものか、仏語圏進出の際のパートナーの組み方、日本のODAの分野詳細などについて質問がありました。(担当委員:鈴木優梨子)
第10回大使を囲む懇談会開催
- 清水久継・駐モーリタニア大使を囲む懇談会
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10月25日午後、国際文化会館において清水久継・駐モーリタニア大使を囲む懇談会を開催しました(会員企業等より計10名出席)。清水大使より同国の位置と自然環境、国民(アラブ系とアフリカ系が混在)、政治情勢、古代都市の存在と文化遺産、経済と産業(農業、漁業、鉱物資源他)、労働と雇用、エネルギー概況、外交、日本との関係(たこの日本への輸出、ODA概況、水産業への支援、食糧援助、治安協力等)、近年の隣国マリからの難民流入状況などについて説明がありました。その後出席者より他国の船による水産資源乱獲被害の有無、アラブ系民族とアフリカ系民族の人口比、ベドウィンが遠いイエメンから来たとする考えがあるのは何故か、仏の植民地支配において、仏にとってモーリタニアとはどのような存在だったのか、米食は一般的か否か、優秀な子弟の留学先はどこか、内発的な(home-grown)テロリストは存在するのか、若者の就職状況、中国の進出状況、世界一長いとされる鉄鉱石輸送鉄道は人やモノも運ぶのか、砂漠化の進行程度、工業化を目指す政策の有無、シェイクスピアの「オセロ」に、オセロの出自をモーリタニアであるとする叙述があるが、16-17世紀から既にモーリタニアは英国に知られていた模様、などの質問やコメントがありました。(担当委員:鈴木優梨子)
第3回在京大使との懇談会開催
- アロテ駐日ガーナ大使との懇談会
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Country-study Meeting with H.E.Mr.S.J.K.Parker-Allottey,
Ambassador of the Republic of Ghana to JapanThe Society held its third country-study meeting on 13th October at the International House in Tokyo, with the presence of H.E. Mr.S.J.K.Parker-
Allotey, Ambassador of the Republic of Ghana to Japan. (Number of attendants; 21 persons.)Ambassador Allotey explained Ghana’s history, geographic position, natural resources, politics, infrastructure, economic situation and the outlook for this year. He also explained the general impression of Ghanaians about the Japanese people whom they describe as honest, hardworking, disciplined, respectful and producers of high quality goods. He also cited the long standing relationship existing between the two countries starting from the days of Dr. Noguchi’s activities in Ghana.
There was a comment that the recent decision by the Government of Ghana to join the group of Francophone African countries(La francophonie) seemed to be wise and pertinent, in view of the geographical situation of the country. On the question asking the possibility of utilizing special economic zones(free zones) for the purpose of training Ghanaian youths in the field of ICT and other areas, the Ambassador mentioned that since Ghana and other nations in West Africa have trainable manpower, it might be a good idea to search for the possibility to develop training facilities in the fields of maintenance and assembly of mobile phones, refrigerators, agricultural machinery, etc. He also mentioned that willing companies could contact GIPC (Ghana Investment Promotion Centre), to further explore.
There were some other questions on pesticides used in Ghana, practices of manpower training and recruitment, Ghana’s society in the face of changing international political scene, rules on the cases of allowing duty-free importation of agricultural machinery, etc.アロテ駐日ガーナ大使との懇談会
10月13日午後、国際文化会館において、駐日ガーナ大使をお招きし、ガーナ事情を伺う会を開催しました(会員企業等から出席者21名)。先ず大使より同国の歴史、地理上の位置、天然資源、政治、インフラ及び経済概況などについて説明するとともに、ガーナにおける日本のイメージ(両国の関係は野口英世博士のガーナにおける医療活動までさかのぼる)についても説明を行いました。
会員企業等からは、「近隣の仏語圏諸国との関係を深めているのは適切と思う」というコメントが出されました。
その後「ICT開発などの関連で、経済特区などを活用して技術革新に資するプロジェクトがあればよいと思う」との意見が出され、右には大使よりガーナのみならず、西アフリカ諸国には労働力はあるので、農業の技術開発も含め、例えば携帯や冷蔵庫などの生産と修理能力を高めるなどの試みが有用であろうし、そのような点に関心がある向きは、GIPC(ガーナ投資促進センター)に相談してほしい、というコメントがありました。その他、殺虫剤について、人財育成と雇用について、国際政治状況の変化の中でのガーナの社会状況について、農業機械を無税で国内活用する場合のルールなどについて質問が出されました。
(担当委員:鈴木優梨子)
第7回フォーラム
「地域シリーズ第3回・南部アフリカ-域内流通と産業振興-」
日時: 2017年6月5日(月)14:00〜16:00
場所:国際文化会館 別館2階講堂
参加者:当協会会員、政・官関係者、研究者・学生など 41名
注:南アフリカと南部アフリカの混同を避けるため、
南アフリカ共和国を「南ア」と表記します。
司会:淺野昌宏 アフリカ協会副理事長
フォーラムにご参集戴き、誠にありがとうございます。私は、当協会副理事長の淺野でございます。本日は宜しくお願い致します。
本日のフォーラムは、地域シリーズとして2年ぶりになりますが、第3回目として、南部アフリカを取り上げることに致しました。
2年前には「西アフリカも面白い」というタイトルで、西アフリカ全体の市場性を議論しましたが、今回はサブタイトルにあるように、そろそろアフリカ大陸でも域内流通が起こりつつあり、これからは議論の対象になっていくのではないかとの予想のもとに、先取りをした議論をしたいと考えました。その意味で実務的な議論が出来る様に、今日は現場に近い方々をパネラーをお招きしております。
アフリカ開発銀行アジア代表事務所次席・遠藤衛様、豊田通商株式会社アフリカ本部アフリカ事業開発部部長・鈴木健司様、JETRO海外調査部中東アフリカ課・高﨑早和香様、このお三方でございます。お三方にはお忙しい中、誠にありがとうございます。それでは開会にあたりまして、理事長の大島賢三よりご挨拶を申し上げます。
挨拶:大島賢三 アフリカ協会理事長
皆様こんにちは。アフリカ協会理事長の大島でございます。今日はこの第7回のフォーラムにご参加戴きまして大変ありがたく思います。ただいまご紹介させて戴きました、アフリカ開銀の遠藤様、豊田通商の鈴木様、JETROの高崎様には、パネリストとして参加戴き大変有難うございます。いずれもアフリカにおいては、長年にわたり重要な役割をそれぞれの分野で果たして戴いておりますので、今日のパネルディスカッションには大変に期待を致しています。それからモデレーターを務めて戴きますアフリカ協会理事の片岡先生には、今回もどうぞ宜しくお願い致します。
アフリカにつきましては改めて申し上げることもございませんが、一つだけ個人的に大変面白く思った本をご紹介します。ごく最近に出された本ですが、「アフリカで生きる。-アフリカを選んだ日本人たち」という題名で、ブレインワークス社が編纂・発刊したものです。このブレインワークス社は、今までは主として中小企業のアジア進出を支援する事業をやっていましたが、今回、最後のフロンティアとしてアフリカに注目をして、色々な形で中小企業レベルでの、あるいは個人レベルでのアフリカ進出を支援する手始めとして、現地で活躍をしている人を中心に50人を選びまとめたものです。私もざっと読みましたが、それぞれに面白く、非常に興味深い話が載っております。宣伝をするわけではありませんが、ご関心の向きは是非ご覧になって下さい。
この中で読み取れることは、中小・零細あるいは個人で進出しておられる方々がアフリカに注目して、ほぼ共通の目的を持って事業を興し、活動をやっておられる訳ですが、一つは雇用創出を何とか実現をしたい、二番目は農村地域、貧困地域の課題の解決に役に立ちたい、三番目にはビジネスとして投下した資本が上手く回ってゆくこと、この三点を大事にしながら事業をやっているという事です。言い換えれば、WIN-WINの関係での進出という事ではないかと思います。いずれにしても、広いアフリカの各地で、30歳くらいのOL生活を満喫していた女性がポンとアフリカに出て、ケニアのバラの事業をやるなど、色々な話が紹介されています。
ここに見られるように、伝統的なODAによる事業の展開、あるいはNGOなどの開発支援分野の仕事、最近増えているM&Aも含め従来型の企業の進出があり、それに加えて、個人のベースで小なりといえども現地で企業を興して、課題解決あるいは雇用創出に貢献したいという思いを持つ比較的若い日本の男女が多いということは、アフリカに関心を持つ我々としては、大変に心強い次第です。
その様な視点もありますが、今日は主として南部アフリカについてそれぞれの方々からお話を戴き、活発な質疑が行われる事をお願いしたいと思います。有難うございました。
司会:淺野
有難うございました。フォーラムに入りますがその前に、JICAの前アフリカ部長で現在専任参事をなさっております江口秀夫様にも、今日はご参加戴きましたのでよろしくお願致します。それでは本日のモデレーターは当協会理事で早稲田大学国際学術院教授の片岡貞治が務めます。片岡先生、宜しくお願い致します。
モデレーター:片岡貞治 早稲田大学国際学術院教授
本日は宜しくお願い致します。私が先ず導入になる様なお話をした後に、パネリストの方々にプレゼンテーションを行って戴きたいと思います。ご存じの通り、2年後には、TICAD VIIが日本(横浜)で行われ、この6月にはギニアのアルファ・コンデ大統領がAU議長として訪日し、さらに8月末にはモザンビークでTICAD閣僚会合、準備会合が行われるという中で、日本政府あるいは官民でのアフリカに対する熱い関心は、冷めるどころか、どんどん高まってきています。
このフォーラムの中で地域統合、あるいはRECsの話を取り上げるというのは非常に有意義なことだと思います。現在AUが認めている地域機構は8つありますが、その中でもGDP的には最も大きくて、さらに地域統合のレベルで言えば東アフリカのEACと同じくらい、発展しているSADCを取り上げて3人の分野の違う方々が議論をするというのは非常にタイムリーです。
この地域統合自体も現代いろんな方々が研究してきたのですが、現在、世界的はEUか反EUかという二分法の議論が巻き起こり、地域統合の将来に暗雲が立ち込めています。アフリカではAUか反AUとか、SADCか反SADCかというのはまず有り得ない議論です。なぜなら、昔からある地域統合理論で言うと、現在EUが地域統合論の第4段階にあり、最終段階である第5段階に入ろうとしています。その段階で、様々な問題が噴出して、今大騒ぎしている訳です。
古い理論というのは60年代にベラ・バラッサというハンガリー人の経済学者が書いた論文から始まっていて、彼は、1961年に発表した「経済統合の理論」にて地域統合を5段階に分類しました。現状では、経済統合の第5段階にまで到達している地域統合はまだ存在しません。EUが今第4段階にあり、AUの方は条約上、アブジャ条約が1991年に締結されて、1994年に発効していますが、2028年までにアフリカ経済共同体を作るという事になっており、2年ごとにモニタリングをしています。大体、ベラ・バラッサの議論だとアフリカの地域統合は第3段階と第4段階の中間ぐらいです。実際には各機関を見ると、SADCがせいぜい第2段階くらい、カスタムユニオンから共通市場になるかならないかというくらいのレベルにあります。EACは共通市場になっているが、いろいろな例外があって、まだ本当の意味の第3段階ではないという状況です。
そこで今日は、将来のアフリカ経済共同体(AEC)も含めてSADCの今後の展望、この大きなSADCをどう日本政府として、あるいは日本企業として、あるいはAfDBとして見ていくかという非常に興味深い議論が繰り広げられるとことになると思います。それでは、早速、AfBDの遠藤様からお話をお願いしたいと思います。それでは遠藤様、宜しくお願い致します。
パネラー:遠藤衛 アフリカ開発銀行アジア代表部次席
こんにちは。アフリカ開発銀行アジア代表事務所の遠藤と申します。本日は、南部アフリカにおける域内流通と産業振興についての、アフリカ開発銀行の見方をお話ししたいと思います。本日のサマリーを先に申し上げると、アフリカ経済全体としては、目先の経済成長はかなり厳しい局面にあると言わざるを得ないと思っています。一方で、アフリカは人口の増加の見込みが大きいので将来の成長は期待が持てるという事は、皆さんすでにご承知の通りだと思います。ただし、持続的な成長のためには経済構造改革が非常に重要な問題で、これ無しには次の経済成長にはなかなか行かないのですが、その辺の話をしたいと思います。その上で、地域統合というのは非常に重要な成長戦略なのですが、南部アフリカの域内流通と産業振興を図るという意味での地域統合は、それはそれなりの独自の課題があるという事もあって、簡単ではないだろうというのがアフリカ開発銀行の理解です。
地域の工業化、生産性向上がとにかく今後の経済成長における重要なカギになるのですが、アフリカにおける工業化は、アフリカ以外の地域との比較の中で状況が異なる所があり、この点が要検討です。そして、アフリカ開発銀行としてはインフラ事業を中心として資金提供および知識などを提供する役割があるという事を説明したいと思います。
それではアフリカ開発の状況を説明しますが、ここの部分については資料P4に記載の2つの文書を参考にしています。1つは、最近出たAfrican Economic Outlook これはアフリカ開発銀行、UNDP、OECDが毎年出しているアフリカの経済状況に関する統計文書です。もう1つはAfrica Competitiveness Reportと言って、ダボス会議をやっている世界経済フォーラムとアフリカ開発銀行で出している文書です。P5、P6の通り、日本からは1万キロ離れており、アフリカ自体はとっても広いので、順番から行くと、それぞれの地域でまずは統合していく事が重要であるという事です。広さは、3000万㎢あり、人口も現状では中国よりも若干少ないのですが、2050年の人口は中国の2倍近くになる見込みであると予測されているので、今後の人口の伸び代を考えるとアフリカのポテンシャルは非常に大きく、その観点ではアフリカの市場としての重要性というのは当然あるという事です。
一方P7で、アフリカの経済成長を見るとIMFの統計とAfrican Economic Outlookの予測で若干違いますが、IMFのほうが少し厳しめという数字です。これまでの状況を見ると、サブサハラアフリカの経済成長率は、全世界平均よりだいたい1%から2%ぐらい良い経済成長率を上げていますが、2016年にこれが大きく下がり、今年から来年にかけて復活するのではないかという期待があり、原因はほとんど原油価格の回復だという理解です。
原油価格およびその他のコモディティ価格は、全世界と比較するとどうなのかというのがこのP8のグラフですが、アフリカだけを見ると経済成長が2003年以降、ロケットが打ちあがるように非常に高い成長を遂げているように見えます。ところがこれを全世界と全く同じ土俵に並べたグラフが右側の小さい方で、アフリカは赤線で示してありますが、結局依然として這いつくばっているというのが現状です。世界の経済成長は、アフリカと比較してしまうと非常に大きな差があるというのが現状です。少なくともこれから先の伸び代をどういう風にきちんと回復していくのかというのがアフリカにとって重要なテーマであるという事です。
アフリカの現状をもう一回おさらいいたしますとP9の通り、2017年では2.6%、2018年では3.5%というのがIMFの見込みです。IMFでも上り調子と見ているので、希望は持てるのではないかとは思っています。希望の1つは、天然資源がまだ豊富にあり、価格が回復する事が、経済成長が回復する非常に重要な要因であると言えます。もう1つは人口の増加と、若年人口が多い事がもう1つの希望だという事です。それとともに、大都市が今後次々と出てくるので都市の需要が膨らんでゆき、マーケットが大きくなるという期待があります。その意味で、中長期に亘って消費マーケットとして、また製造・サービス提供の拠点として、アフリカの重要性は今後ますます増えるのではないかという事です。特にビジネスをやっている皆様には、今後アフリカ抜きに世界のビジネスは成り立たないのではないかと考えて、アフリカ市場をお奨めしています。
ただ、アフリカ開発銀行のAfrican Economic Outlook 2017の提言をもう一度復習してみますとP10の通り、原油価格の低迷で、コモディティ価格が下がり、アフリカ経済は低迷したわけです。それがポンと持ち直すという見込みがあり、アフリカ経済も回復すると言っているわけです。要するにアフリカの経済は依然として、天然資源を中心とした収入に頼っているという事です。もう一方は、アフリカの資金の流れを見てみると、アフリカ大陸が外から得ている収入の内、半分近くは送金収入だという事です。投資もこれからグリーンフィールドなども中心に増えていく見込みもあり、コモディティ価格に頼った税収の構造からは脱却する必要があるんだろうという事です。
その中で、若年層が多いという観点からは、人材へのさらなる投資を積極的に進めているところですが、P10の最後の所が問題なんですが、アフリカの工業化はアジアとは異なって、多くの人口を背景としたアジアの様な工業化では無いという事です。ここの所が面白いのですが、African Economic Outlook 2017では、南米型の資源中心の成長を目指すのが一つの考え方ではないかと提案しています。もう一方では、工業化だけに頼るのではなくて農業やサービスの生産性を高めて、全体としての成長を目指すのはどうかとアドバイスをしいます。経済をやっておられる方には、疑問を差し挟むような内容かと思いますが、これを言わなければいけないくらい、実際の状況がかなり切羽詰まっているという事だと思います。
P11の図はAfrica Competitiveness Reportで分析したアフリカ大陸とそれ以外の地域のPetty-Clarkの法則を分析した図です。Petty-Clarkの法則というのは、経済成長が進化していくに従い、農業セクターのGDPが減り、工業セクターのGDPが増え、就業人口も増え、サービス産業はそこから先の時代になるとまた増えてという、順番議論なのです。第一次産業、第二次産業、第三次産業がそれぞれ順番を追って増えていくという事を示しています。ラテンアメリカとASEANを比較して見ると、グラフの上の方が時代が古く、下の方が新しくなります。緑色は農業で、赤色が工業で、青色がサービスセクターです。これを見ると、ASEANはかなりはっきりしていますが、1965年から2010年に行くに従って農業セクターのGDPへの貢献度が減って、工業セクターがぐっと増えています。これによってASEAN諸国の工業化、それから持続的な成長に向けた形が出来上がったわけです。先進国でもこうでした。またラテンアメリカは元々農業セクターのアウトプットが多い訳ではないのですが、同じような形を示しています。
ではアフリカはどうかというのが次のP12のスライドにあるのですが、サブサハラアフリカの農業は明らかに減っています。サービスセクターも増えていますが、工業セクターはどうかというと、増えていません。この、工業セクターが増えていないというところが、アフリカを分析している経済学者にとって大問題あり、工業セクターが伸びていなくて工業化がこれから進むのか、工業化が進まないと生産性が上がらない、生産性が上がらないということは持続的な成長ができないという事で、非常にネガティブな結果になってしまうわけなのです。それを乗り越えて、工業セクターが伸びるために、何をしなければいけないのかというのが次のテーマなのすが、先行きがなかなか見えないので、農業セクターも頑張り、サービスセクターでも頑張ると言う理屈が出てくる事になります。
以上を理解した上で、P13からは南部アフリカの状況について説明します。P14は2008-12年から2018年までの経済成長のパーセンテージを示したものですが、赤い太い線が南部アフリカを示していて低いのですが、緩やかに下がってまた上がると見込まれています。アフリカ大陸の中で一番調子が良いのは、ここで見る通り、東アフリカ地域が一番状況が良いという事になります。
P15にまとめた通り、その意味では南部アフリカ地域はもうちょっとがんばらないといけないのですが、やはり原油の価格というのが非常に大きな要因を成しています。南アの低迷が非常に問題になっていますが、電力供給、労使関係、物価安定、こういうものが良い方向になっていますから、若干未来は明るいと考えられます。アフリカは、アントレプレナーシップを推進することで工業化を進めようとしています。
P16は南部アフリカの説明ですが、「地理上の南部アフリカ」に加えて、SADCまで広げて考える場合と、もっと小さい地域を指す「国連の規定する南部アフリカ」と言うのもあります。COMESAまで入れるとエジプトまで入りますので、もっともっと広い領域が南部アフリカと関係しているという事になります。
P17は、この地域の特徴を簡単に説明したものですが、南アの生産力が非常に強いために、他のアフリカ地域と比較すると域内貿易の割合が比較的多くなっています。2008年くらいまでの状況では約15%、アフリカ全体で言うと10%あるかないかすので、その比較で言うと南部アフリカの域内貿易は非常に高いのですが、ただ2003年以降見えてきたことは、その南アの生産力をインド、中国、ブラジルという中進国が補完し始めて、南アで作れるものは他の中進国でも作れる状況になって来ています。ですから南アが、その他の中進国と比較して工業化、それから生産性を、維持していかないと南部アフリカ地域での多様性を維持できない可能性があるという難しい状況があります。
P18/19は、アフリカ南部地域内のそれぞれの輸出入の相手国を記載してあります。簡単に言えば英語圏はほとんど南アとの輸出入であり、英語圏以外では、モザンビークやマダガスカルを中心として他の国との関係が強いことを示しています。
アフリカ開発銀行としては域内貿易を積極的に推進したいので、貿易協定をもっと推進する事をこのP20で説明しています。基本的には域外に対して一次産品を輸出する割合が多くて、域内では工業製品のやり取りが比較的あり、ここに着目しようというのが、アフリカ開発銀行が推奨しているところです。先ほど申し上げたように、南アが他の中進国との競争の中で工業化のアドバンテージが薄れていくと、ここの所もあまり上手くいかないという事になります。われわれが公的機関として出来る事は、この輸送コストを低減するという事が、数少ない具体的な政策の中で現実性を持った提案であり、回廊整備とか、電力・通信インフラの整備を進めていきたいという事で、このOutlook 2040にもあるこのPilarを中心にして大きな地域内の国境を越えた、大型プロジェクト案件を進めており、皆さんすでに馴染みのある名前もあるかと思います。
P27がPIDAの輸送ネットワークで、特に道路、それから港湾を中心としたもののプランです。
P28は、アフリカ開発銀行の役割ですが、私どもは資金を提供する団体ですので近年ここのところ、非譲与的な資金の提供を積極的に進めており、特に民間企業が実施するような事業への投資を増やしています。私どもHigh 5sと言ってアフリカの電化、食糧増産、工業化、地域統合、それから人々の生活の質の改善、そういう事を図っています。
このスライドP33が私どもの具体的な実現したい目標を示しています。すみません、以上、駆け足でご説明させて戴きました。有難うございました。
モデレーター:片岡
遠藤様、大変ありがとうございました。AfDBが南部アフリカおよびSADCに対して何を行っているのかを、手短にお話し戴き、更に最新のAfrican Economic Outlook 2017の政策提言とか、本質的な問題もお話されて、非常に意義深かったと思っています。後程その議論を深めていきます。それでは、2番手の豊田通商の鈴木健司様、宜しくお願い致します。
パネラー:鈴木健司 豊田通商(株)アフリカ本部アフリカ事業開発部部長
こんにちは。豊田通商の鈴木でございます。豊田通商がアフリカでやっている事は、スライドのP2にありますハウスモデルの通り、モノの売買による事業創造、それに加えて人材育成、それから社会貢献、これを3本の柱としてアフリカで事業をやっています。
どこでどういう事をやっているのかはP3のアフリカ大陸の図で、車のマークが車の事業をやっている所、カプセルのマークの所が薬品をやっている所、それから東側でプロジェクト物を結構やっているという事、逆に西側に目を移して戴きますと、ショッピングモールなどのリテール関係が多く、南部アフリカは、南アの車のマークのちょっと上に工場の絵がありますが、トヨタ自動車が生産工場を持っていて、豊田通商はその工場の生産支援事業として物流、あるいは生産の一部、例えばエアバッグの生産とかアルミの再生とか、色々な生産関係の周りの仕事をやっています。それと南部アフリカでは、全ての国に車のマークが付いていますが、アンゴラ、ザンビア、ジンバブエ、マラウィでは100%子会社を持って車の販売をやっております。最近では、ザンビアで農業を2年半くらい前から取組んでおり、アンゴラのカプセルのマークは医薬の販売をやっています。
P4が私どものアフリカでの歴史ですが、左側の豊田通商の歴史の中では、2000年にアフリカの統括拠点を南アに設置し、2001年に英国のロンロー社から南部アフリカでの自動車事業を買収しました。このあたりから南部アフリカで本格的に投資をして事業を開始しました。一番下に黄色い枠で、2017年4月、当社初の地域を軸とした営業本部、アフリカ本部を設立と書いてありますが、弊社は、商品別本部でずっとやってきましたが、伸び行くアフリカではマーケットインのアプローチがより効果的であろうという事で、初めて地域軸での営業本部を作りました。我々としてのアフリカビジネスへのコミットメントとご理解下さい。
P5が本部の組織図で、Strategic Business Unit(SBU)が4つあり、私のほうの事業開発部では車以外は何でもやっています。
次のP6が重点事業領域になります。上側にWith Africa, For Africaのロゴマークがありますが、これは昨年のTICAD VIの時に新たに作った標語で、やはりアフリカと共に、アフリカのために仕事をやっていきたいという意思を表すためです。弊社の子会社のCFAOでも、同じロゴを入れてやっています。この自動車・ヘルスケア・食品・機械の4つのSBUでは、モロッコで医薬品の生産事業を開始して、現地の会社を買収しました。この件は、ヨーロッパではもうプレスリリースしていて、日本でもすぐに出る筈です。食品生活産業のリテール事業として、コートジボワールのアビジャンで、先週の木曜日にショッピングモールの2号店が開店しました。
P7の南アにおける自動車生産支援事業では、車を組み立てること以外はほとんどの事をやっています。もちろんこの生産支援以外にも、出来た車を自分たちの子会社である南部アフリカの代理店に供給したり、あるいは独立系の代理店向けに輸出業務もやっています。
P8が先ほどから出ておりますRECsの俯瞰図ですが、SADCは国の数から言うとECOWASと大体同じ規模ですが、我々の感覚では、やはりかなり進んでいるなというのが1つ、一方では、「南ア」と「その他の国」というような図式になっており、他のRECsとはちょっと違います。南アは、アフリカと言うよりもどちらかと言うとオーストラリア、アルゼンチン、アメリカ、そういうようなイメージがあって、気候も似ていますし、産業構造的にも、農業も工業も進んでいる。一方南部アフリカの他の国は、その南アの衛星都市的な位置づけになっているのではないかと感じています。
南アは、出来た製品を、サービスを含めて、もちろん南部アフリカに出してはいますが、アフリカの英語圏の国全てが彼らのターゲットです。例えばリテールは、ショップライトという大手のリテールチェーンがあり、これがケニアに進出したり、ガーナに進出したり、あるいはナイジェリアに進出したりして、彼らの動きを見るとパンアフリカ全体の動きの中での話だという風に感じ取れます。P9で数字的に見ても、南部アフリカの中での南アのGDPは絶対的です。南アは人口を見るとそれほど多くありませんが、産業が興っているため、その他の南部アフリカ諸国は南アからの供給を受け、自国の中では産業が興りにくい構造が出来てしまっているのではないかと思います。後ほど課題として改めて指摘したいと思います。
我々がビジネスをやっている中で感じている南部アフリカの課題ですが、まず物流で言うと、インフラが老朽化しているという事。例えば鉄道では、南アから周辺国への線路はありますが、運搬の質、コストという観点から、例えば我々が車を出す時には、車本体、それから部品の運搬には不適切な状況にあります。それから道路では、P10右側の写真の通り、道路に穴があいていて、トラックやトレーラーのタイヤの痛みが激しいとか、事故が起こりやすいとか、あるいは運搬している貨物が、揺れで傷が入ってしまうとか、色々な問題が発生しています。港はキャパシティが不足していて、滞留する状況が頻繁に起こっている。それから通関手続きも、ものすごく時間がかかり48時間くらいかかるケースもあって、他の地域に比べるとそれだけ道路の運搬が難しくなってしまっている。さらに盗難、あるいは治安の問題もあります。2番目が、域内の関税の問題です。共同体としての規制が弱いために、各国の方針次第では共通関税が享受できないという事がある。そういうシステムがあったとしても現地調達比率の数え方が違うとか、細かい所での各国によっての差異があるために域内の物流がスムーズに行かないというような問題もあります。
その次にP11の課題2では、産業構造として資源依存が大きく、多角化がなかなか進まないこと、もう一つは、南アの中で産業が進んでいる一方、周りの国は南アへの依存が進み、南アのサテライト的な国、南アから供給を受ける国、力のある人たちは南アに行ってしまい、人材面でも国内に留まらないという部分もあります。それから二次産業、製造業が育ちにくい環境にあること、人件費が高く、生産効率が低いという事もあります。もう一つの課題としては、政治・社会的な背景です。独裁、汚職、暴動、違法ストライキ、などが発生します。
次はコンペティターとの比較ですが、中国のような即断即決の国と比べると、日本は遅れをとってしまうケースが多いという事があります。それから優秀な頭脳の流出もあります。黒人の優遇政策のために、外国企業はなかなか良いランクを取れず、FDIのランクを取れないという事で、うちの会社も、最近南アの方針の変更によりランクが1つ下がり困っているところです。現地の資本を受け入れないとだめとか、構造的に我々として対応しにくい部分も出てきています。
P12課題の3、域内関税の事例と実態ですが、南部アフリカ各国このような輸入税の体系がある中で、SADC加盟国で製造されたもの、製造プロセスにおいてSADC加盟国で加工を施されたもの、車輌の場合40%の現地調達比を満たしたものについてはDuty Freeとなっていますが、いずれも南アから南部アフリカ周辺国への輸出であり、逆の動きは一切ありません。ある意味では域内の双方向の貿易を進めるような状態には全くなっていないという事があります。
最後に今後の展望ですが、産業の振興の可能性としてはP13の通り、南部アフリカ各国間経済回廊の開発、電力の開発、資源開発に伴う物流・建設事業の拡大、中間層台頭による消費者層の拡大、都市インフラと農業事業などに大きな可能性があると考えます。もちろん課題は沢山ありますが、可能性はあると考えています。
モデレーター:片岡
鈴木部長、大変ありがとうございました。現場でのアフリカにおける豊田通商のプレゼンスならびに、南部アフリカで何をやっていて、その中で多くの課題や、様々な問題に直面しているというお話でした。その中で、色々と建設的な提言がありました。先ほどの遠藤次長の発表も踏まえて後ほど議論を深めていきたいと思います。3番目に政府機関の代表として、JETRO海外調査部の高﨑様、宜しくお願い致します。
パネラー:高﨑早和香 JETRO海外調査部 中東アフリカ課
皆さんこんにちは。JETROの中東アフリカ課の高崎と申します。私は7年ほど南部アフリカに滞在した経験がございます。本日は「域内貿易と南アフリカ企業の展開事例」ということで、域内貿易の概要をご説明した後に、その経済の中心を占めている南ア企業の動向についてご紹介できればと思います。
まずJETROのネットワークですが、P2に記載の通りアフリカには7事務所ありまして、南部アフリカはヨハネスブルク事務所が管轄しています。今年度中には、モザンビークのマプトにアフリカ8か所目となる事務所を開設する予定で、引き続き南部アフリカでの日系企業のビジネス支援に力を入れて参るところです。
P3のSADCの状況については先ほど来ご説明ありますが、現在の加盟国は15か国で、1980年にアパルトヘイト体制下の白人政権による経済的支配からの脱却を目的にボツワナが提唱して立ちあがった組織ですので、当時南アは加盟していなかったのですが、アパルトヘイトが撤廃された後、94年に南アも加盟して現在に至っています。SADC域内ではFTAが発足していますが、実際に手続きを行っている物流会社によると、国やその時々の状況によって運用状況は異なるとのことです。SADCの加盟国のうち、南ア、ボツワナ、レソト、ナミビア、スワジランドは世界最古の関税同盟と言われる南部アフリカ関税同盟(SACU)に加盟しています。SACU域内では無税でモノが取り引きされています。
次に P4はSADCの対世界との貿易額です。長期でみると増加傾向がみられますが、2007年と2016年とを単年で比較してしまうと、合計額がほとんど変わっていなくてミスリードなのですが、これはアンゴラの貿易額が石油価格の下落によって2016年は大幅に減ったことが要因です。注目して戴きたいのは、2011年、2012年頃の数字でして、そこと2007年を比べると、域内貿易額が1440億ドルくらいだったのが2200億ドルくらいまで増え、これにあわせて物流インフラの開発が急ピッチで進められているという事です。ちなみにUNCTADの別の統計で、貿易量の伸びを指数で示したものがありますが、それによると同じ期間に貿易量は2007年の100から2016年には133と増加していますので、SADC加盟国の対世界貿易は、数量ベースで着実に増加しています。
次にP5の域内貿易比率ですが、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)と東アフリカ共同体(EAC)を比較したものです。ECOWASの域内貿易比率は2000年以降、大体8%から10%の間であまり変わっていない状況です。EACは2000年頃から17~18%、大体この比率を保っています。一番動きが大きいのがSADCですが、2000年は11.7%だったのが、2015年には20%くらいまで域内貿易の比率は上昇しています。
ただ、こちらのP6の表でその中身をみて戴くと分かりますが、赤い枠で囲った南アの部分、つまり南アの各国への輸出、、それから各国の南アへの輸出、この両方のラインの貿易額が膨らんでいるのが実情です。ですからSADC域内貿易比率20%といっても、ASEANでみられるような補完関係にあるという事ではなくて、南ア対その他の加盟各国との二国間の関係になっているというのが特徴です。
GDP規模で見ると、P7の通りSADC域内の経済規模の半分は南アが占めており、残りを14か国で分け合っているような状況ですので、貿易の流れも当然そのようになっています。具体的に南アがSADC諸国から何を輸入しているかと言うと、原油、銅、ダイヤモンド、砂糖とか、ニッケル鉱、クロム鉱といった原材料です。逆に南アがSADCに輸出しているものは自動車、工業製品、化学品、それから食品といったものをかなりの割合で輸出しています。ですので、南アが他のSADC加盟諸国から原材料を輸入して完成品を輸出するという垂直貿易の関係になっています。
P8の次のスライドは、南ア企業の広域展開を紹介してますが、具体的な事例の前に左下のグラフを見て戴きたいのですが、アフリカの年間収益5億ドルを超える企業数は、南アフリカ共和国の企業だけで300社に上ります。「北アフリカ」はマグレブ諸国、それからエジプトも含めて133社、ナイジェリアは56社、それから南アを除く南部アフリカは43社、西アフリカはナイジェリアを除いて40社、東25社、中部19社となっていますので、いかに南アフリカ共和国に大企業が集積しているか、どれだけ厚みがあるかというのがお分かり戴けるかと思います。
それから実際に広域展開を行っている企業の事例をP9でいくつかご紹介します。ショップライトというスーパーマーケットは、南部アフリカを含め西、東アフリカにも展開しています。それからマスマートという量販店やフェイマスブランドというファーストフードを展開する企業とか、衣料品を扱う企業などが広域展開しています。また、こうした企業が進出したのにあわせて、その企業に対する会計システム、広告、通信システム、物流などのサービスを提供している企業についても必然的に広域展開を始めているいう事で、加速度的に南ア企業の広域展開が進んでいます。これはもちろん南アの市場が飽和してきたという事であり、収益源を他に求めなければいけないという事で、2000年代に入って広域展開はさらに加速しています。
JETROでもこういった企業に現地でヒアリングをしていますが、南ア企業にとって南部のアフリカ諸国というのは何となく、隣の県にあるような、そういう感覚だという事なんですね。それで資源ブームで隣国の消費市場がどんどん拡大している中で、進出しないというのはあり得ないということのようです。それでも簡単に進出できるわけではないという事で、トライアル・アンド・エラーというか、現地市場に進出してみて、法制度や土地開発などで問題があればその場で解決して、次々と開発を手掛けていくようなスタイルで、とにかく先行利益を狙っていくんだという事です。法律も無いような所から、政府に入って金融の法律を整備したり、それから土地のディペロッパーがいないとなれば、南アから建設業者を連れて行ってどんどん作ってしまう、といった感じです。
それで一つちょっとヒアリングの中で意外だったのは、汚職や賄賂についてヒアリングをして、まともに答えは返ってこないのですが、何となく土地の取得とか、許認可を取るところに関しては、何となく政府と親密な関係を築いたとか、汚職を想わせるような発言もあるのですが、通関に関する賄賂の話では、一度賄賂を払ってしまうと、次からは払わずには通してもらえなくなるという事で、絶対に払わないという方針を示した企業が多くありました。ある大手スーパーマーケットは、例えば南アフリカからモザンビークにトラックで輸送する時は、750品目くらいを持って行くらしいのですが、そうすると1600枚くらいのドキュメントが必要らしいのですね。それを一つ一つ手で書いて、何か指摘があれば何回も何回も税関にかよって担当者に説明をして、理解してもらうことで、賄賂はその中では払わないようにしているという話でしたので南ア企業もやはり試行錯誤しながら手間をかけているのだなという印象でした。
次にP10ですが、実は最近そういった広域展開する南ア企業を買収して、結果としてアフリカ広域でビジネス展開をするという日系企業の動きも結構目立ってきています。例えばNTTは南アにあるディメンションデータという大きなシステムの会社を買収した事で、南アだけではなくて、アンゴラ、ボツワナ、ナミビア、ザンビアでビジネスを展開するという事になっています。同じような事例で、関西ペイントも南ア大手の塗料会社を買収、そのほか味の素、ロート製薬、LIXILなどの企業が並んでいます。
それからP11で、こういった企業の動きと並行して、SADCがどういった産業政策を目指しているのかという紹介なのですが、最近発表されているロードマップで「産業化戦略ロードマップ」という2063年までの計画があり、ここで打ち出しているのが従来の空間的開発構想という南アが打ち出した構想の流れを汲む回廊開発です。やはりこの地域の中のインフラ開発を進めていくという事で、ヨハネスとモザンビークのマプト港をつなぐマプト回廊が成功事例としてよく紹介されますが、幹線道路が通って、マプト港にはアルミの製錬所が出来、そこには南ア政府や日系企業も関わって、大規模な投資が行われたという成功事例です。第2のマプト回廊を目指して回廊開発計画を進めています。
それから産業化のための3つの優先戦略が定められていますが、トップは農業となっています。農業主導で成長していく、その手法としてバリューチェーンを形成するというので、肥料、農業資材、冷蔵技術などが求められていますが、JITROとしてもこうしたところに日系企業、中小企業のビジネスチャンスがあるにではないかと考えています。プロジェクトそのものに関わるというやり方もあるかと思いますが、その過程で必要となる、こういったバリューチェーンの形成の段階で必要となるサービスや技術が日系企業の、特に中小企業の貢献できる分野ではないかと見ています。それから2つ目は資源主導の成長で、これも鉱石処理とか加工を含めたグローバルバリューチェーンとの連結を図っていこうという構想です。3つ目には、このグローバルバリューチェーン自体が優先戦略として掲げられています。
最後にP12に、こういった南部アフリカの流通、それから産業振興に係る動向の紹介ですが、日系企業のこれからの進出においてヒントになるのではないかと思ったところをちょっと書かせて戴きました。1つは先ほどより紹介している南ア企業の広域展開の加速で、色々な形でこの南ア企業との連携という視点から、この地域に進出する可能性あるのではないかと思っています。
それから戦略的な成長分野として、南ア企業がどういった分野に注目しているかを見ると、ある南アの物流企業は、鉱業、インフラ、電力、農業、自動車、物流といった分野を成長分野と分析していて、こうした分野は引き続きJETROでもウォッチしていきたいと思っています。
それから日系企業の広域展開という事で、JETROはアンケート調査を行っていますが、この結果によると、南部アフリカに進出している日系企業128社から回答戴いたのですが、30社はSACUまたはSADCのFTAを利用しているという答えになっています。それから今後の利用を検討している企業もプラス29社ありますので、やはり広域展開というのはこれからの動向として注目されているところかと思います。
それから先ほどの農業サプライチェーンの動きですが、具体的に日系企業がどう関わっていくかという点では、1つの切り口として、南ア系のスーパーなどが現地調達という事を始めていますので、今はほとんど南アから調達している食料品を、今後は現地で生産していく方向になると思います。実際、南アのスーパーは進出先の現地政府とMOUを結んだりして農業振興という事をやっておりますので、ここに何か日本政府または日系企業として関わっていけるかも知れません。
それから産業全体の流れとしてEコマース、それからデジタルエコノミーの進展も見られますが、こういったIT技術は欧州などからどんどん入っては来てはいるのですけれども、それに対応できる人材がいないという事ですので、日本の支援の分野としてもそういったデジタルエコノミーに対応できるような人材育成も必要になってくるだろうというところです。
それから鉄道システムに関しても、今はSADC地域では道路での輸送量が多いのですが、これからどんどん鉄道にシフトしていきたいという計画を出していますので、そういったところにもビジネスチャンスがあるのかと思います。
それから最後ちょっと唐突で申し訳ないのですが、ガス産業のバリューチェーン構築の動きで、南部アフリカ全体で採れた資源を共有化しようという動きもあり、例えばタンザニアとかモザンビークで大きなガス田が発見されている訳ですが、これを南アに持ってきて上流・下流まで開発しようといった動きもありますので、そういったところにも注目してこの南部アフリカの広域の産業振興に係る情報を今後収集していく必要があると感じています。
モデレーター:片岡
高﨑様、大変ありがとうございました。以上ご三方それぞれ立場が異なりまして、遠藤次席はアフリカ側から日本に来てくれという立場で、鈴木部長は実際に既に行っている企業の代表であり、B2B、B2Cビジネスも両方やっており、現場での様々な課題を抱えている立場、最後の高﨑さんは、むしろ、日本の企業にアフリカに行けという立場と、それぞれご三方の立場は違いますが、共通の課題が浮き彫りになったのかと思われます。それはやはり南アフリカ共和国のことです。南アがカギを握っているのです。BRICsの一角と言われて久しい南アが、今日SADCのみならず、アフリカ全体を引っ張っていかなければいけないのですが、現在政治的にも経済的にも低空飛行で様々な問題を抱えているという点です。
それからSADCそのものも、ペーパー上ではカスタムユニオンを成し遂げているはずなのですが、どうも話が違うというような事が多くて、FTAをやっているはずも現場では些か違うという状況があります。それから、やはり物流インフラの問題や農業の問題など、諸々な指摘がなされましたので、これらを踏まえて、フロアの方々からのご意見を頂戴したいと思います。
簡単なコメントとか質問があれば、挙手戴きご所属とご芳名を仰って戴いて、パネリストのほうに振りたいと思います。何方か、いらっしゃいますでしょうか。それでは、橋本大使にお願いします。
質問者:橋本栄治 アフリカ協会特別研究員 元モザンビーク大使
私は3年前までモザンビークにおりましたが、その頃と大分様子が変わってきているようです。当時はBRICsも大変元気が良く、アフリカ開発銀行と日本政府との協調融資がありナカラ回廊やマプト回廊、それ以外も着手していて大変ポテンシャルの高い地域でしたが、それにもかかわらずなかなか流通の問題と産業振興の問題とが結びつかないで、もがき苦しんでいる姿を6年前くらいから見ておりました。しかし乍らTICAD VIの前に安倍総理の訪問があり、大変南部アフリカを元気づけるという政治的な動きと、モザンビークの投資保護協定の締結がありました。この投資協定は、アフリカ大陸の中ではエジプトに次いで第2号ですが、日本の企業が投資してもそれが守られるような方向でないと物流や産業振興に寄与しません。いま、この動きはどの様になっているのか、分かればお教えて戴きたい。
もう一つ、JETROが第8番目の事務所を開設するとの事ですが、モザンビークはポルトガル植民地時代の法律と、独立して以降の新しい法律とが2階建てになっていて、弁護士の解釈の仕方も違っているという生々しい話を色々聞いていました。投資保護協定が締結された事によってそれが一本化されたのか、その辺の状況が分かれば教えて戴きたい。
モデレーター:片岡
橋本大使から、非常にジェネラルなお話がありましたので、ご三方それぞれに回答あるいはコメントを戴きます。では遠藤様お願いします。
発言者:遠藤
モザンビークと日本の個別の事については十分な知識がないので、回答を出来ない所がありますが、アンゴラも含めポルトガル語圏の国は、国際的な基準で理解される法律体系とは違う状況があるという事を聞いていて、やはりビジネスを国際化していく上でハードルになっています。アフリカ開発銀行だけではなく、JICAでも取組んでいると思いますが、世界銀行は、ドナーが纏まってそういう国の法律体系の近代化や行政の仕組みの改善についての色々な技術支援等を鋭意行っており、時間はかかると思いますが、それなりの事はいずれは期待できると思います。
もう一つは、モザンビークは十分な資源がある国であり、法律や行政が整備されてビジネスができるようになる事が必要であり、そういう意味でのドナーからの支援は非常に重要であると思っています。
モデレーター:片岡
ありがとうございます。鈴木部長、何かございましたら。
発言者:鈴木
モザンビークでは、私ども投資はやっておらず、アウェ-に近い状況なので、あまり情報はありません。
モデレーター:片岡
分かりました。では高﨑さん、よろしくお願いいたします。
発言者:高﨑
実際にJETROに相談にくる企業も、そもそも法の解釈が色々あって困っており、弁護士を紹介して欲しいというような相談もあります。それからその関連で言うと、雇用の、クォータ制の問題があります。例えば日本人1人の駐在員に対して9人雇わないといけないとかですね、そうした制度の解釈や、規制そのものの情報が政府側、投資促進庁(CPI)の窓口によってそれぞれ異なっているという事で弁護士を紹介して欲しい、しかも複数の見解を聞いてみないと分からないという相談が絶えない状況です。
モデレーター:片岡
高﨑さん、ありがとうございました。では引き続き、モザンビークに限らず、南部アフリカ、あるいは南アなどについてご質問があればどうぞ。
質問者:大島
域内流通の問題に関連した質問です。豊田通商のスライドの中にOSBP(One Stop Border Post)の実効力が不明と書かれています。今日は、JICAのアフリカ部からもお越しになっているので、併せてお答え戴ければと思いますが、私もJICAにいた時に、南部アフリカ地域でOSBPのプロジェクトに非常に大きな期待をかけていたんですが、その後どうなっているのか、豊田通商の方が実効力が不明と言うのは、要するにワークしていないのか、それともまだこれは建設途上でこれから一体どうなるのかという事なのか、実態を伺いたい。それからJICAのほうからも現状について伺いたいというのが第1点です。
それからJETROから鉄道システムの話があり、これは南部アフリカに限らずアフリカ全体を通じてインフラ改善という時に、道路に加えて鉄道システムの改善や拡充が大きな課題になりますが、南部アフリカについても同じような問題があるという指摘でした。最近、東部アフリカのケニアで、モンバサからナイロビの鉄道システムの改良プロジェクトがありました。私もJICAにいた時に関心があり、日本が単独でやろうと思ってもなかなか難しいので、例えば東部アフリカ地域でプレゼンスが高い鉄道大国インドの企業と組んで、鉄道のモダナイゼーションを出来ないのかという話をしたのですが、あまり掘り下げた検討まで出来ませんでした。しかし、あっという間に中国が名乗り出て、3年半かけてモンバサ-ナイロビが完成し、これから南スーダンとかコンゴとか、さらに西のほうに延ばす計画があり、大変に大きな経済的な効果のあるプロジェクトだと思います。この様な例がありますが、南部アフリカ地域において鉄道インフラの改良を、例えば日本がインドと組んでできる余地があるのかどうか、あるいはJICAでそういう事も検討されているかどうか、教えて戴きたい。
モデレーター:片岡
ありがとうございます。OSBP、鉄道インフラという事で、鈴木部長、それから高﨑様、それから江口前部長の順番で、宜しくお願い致します。。
発言者:鈴木
車あるいは部品を南アで作って、それを南部アフリカにトラックで出しています。その中で、物流を速める非常にポジティブな施策としてOSBPをやっていると聞いておりました。しかし、以前と比較して良くなったかと言うと、時間がかかる所は依然として時間がかりあまり変わっていないと認識しています。鉄道については、先週モンバサにいましたが、丁度その時ケニャッタ大統領がモンバサに来て開通式をやっていました。木曜日が貨物の、金曜日がパッセンジャーの開通式で、盛大にやっていました。南部アフリカの鉄道建設をインド企業と日本企業が組んでやるというのは、ビジネス面から言うと想像がつきにくいという印象です。
モデレーター:片岡
高﨑さん、よろしくお願いいたします。
発言者:高﨑
はい、鉄道の話で、ちょっとスライドで書かせて戴いていた、トランスネットという南アフリカの運輸公社があるんですけれども、例えばこうした大規模の公社は大きな調達案件を持っていますが、そういった大型案件を中国企業が落札するような動きが最近みられるようになってきました。インド企業との連携という事は、そういった事をこれから探っていかなければいけないというのがJETROの問題意識でありまして、第三国連携ということで、日本企業とインド企業が連携してアフリカ市場を攻めようという事があります。それから第三国連携ではフランス、イギリス企業もアフリカ諸国と歴史的に深い結びつきがあることもあって、日本企業にとっての有望な連携相手になると考えています。
モデレーター:片岡
江口前部長、宜しくお願い致します。。
発言者:江口秀夫 JICA専任参事 前アフリカ部長
JICAの江口と申します。機会を戴きまして大変ありがとうございます。One Stop Border Postがキーワードとして挙げられ、その実効性に疑問があるという意見あり、その点がちょっと気になるのでお話します。
アフリカに関して、今日はいくつかキーワードも出ていて、例えば回廊という言葉とか、JETROからも空間的開発構想による回廊開発という言葉が出ています。アフリカという大陸を国だけではなくて地域として、あるいは近隣国等も含めて生産とか消費とか色んな面で考えてゆくというのは非常に重要なコンセプトだと思います。こういった回廊開発が、物理的に道路や鉄道でつながるだけではなく、経済的に結びつくためには、物理的インフラ、制度、人材など色々な面があると思います。制度の面で言えば、国境を越える時に普通トラックが止められて、いたるところで国境を越えるのに3日も4日もかかっているのが実態で、非常に障害になっています。
JICAは2003年ごろから、One Stop Border Postとして、国境の通関を円滑化、迅速化、そして共通化していこうという取組みを始めて、特に南部アフリカはザンビアとジンバブエの国境のチェルンドで、モデル的に始めて、今までそれぞれの国にあった国境の施設を共通にして、必要な建物も建て、通関の手続きを標準化して、速やかに出来るようにやっています。上手くいっている所もいくつかありますが、これを広げるというのはなかなか大変で、それを広めていく為にNEPADという機関と連携して、いくつかの国の国境の税関を担当している部署、あるいはインフラの関係者を集めてセミナーをやったりワークショップをやったりして進めてきています。
南アの場合は非常に一国が経済的にも大国で、そこから近隣国に行くには色んなルートがありますが、ジンバブエの国境にはベイトブリッジという町があり、ここでOne Stop Border Postの展開の可能性もあるのではないかと数年前から議論はされているものの、担当する省庁や実施組織などまだ南アの体制が整っていないなどの事情があって進んでいない状況です。
このOne Stop Border Postという制度作りには、JICAとしてもアフリカ各国と協調しながらやっていきたいので、イニシアティブを取りましたけれども、ワールド・カスタム・オーガナイゼーションなどの関連する機関も含めながら、アフリカの中で広めようというのが今の取り組みになっています。ですから、10年かかってもまだできないのかというご批判もあるかも知れませんが、粘り強く、そういった地域統合のところの制度作りに向けては支援をしていますし、そこだけ点が出来ても上手くいかない訳で、やはり道路とか鉄道とか様々なインフラが出来ないとつながりません。
インフラには投資が必要なので、アフリカ開発銀行、世銀、それからJICAも含めて色々なところがやっています。中国もインフラ開発はアフリカ各国でやっていて、ケニアではモンバサからナイロビまでを中国が3500億円ぐらいの資金を提供して実施しましたが、ケニアは大統領選挙の年で、その政治日程にあわせて完成を急がせたといった事情もあったと思います。アフリカの軌道は、以前はイギリスが作った狭軌だったのですが、それを標準軌に替えるというのがアフリカ大陸の共通コンセンサスになっていて、鉄道が廃れたところは早く標準軌にして新しく作りたいと考えています。南部アフリカは比較的鉄道網が最近まで良かったので、まだ使えるとやや抵抗しているようですが、輸送インフラに関しては道路ばかりではなく鉄道も大きなインパクトを与えると思います。
日本がアフリカで鉄道インフラに取組むことは、長距離となるので非常に大きな資金を必要とし難しい点もあります。逆に、都市型の交通システムの可能性が日本にはあるのではないかという事で、ナイジェリアやモザンビークなどで調査をしています。いわゆる都市型交通システムですから、モノレールやゆりかもめとなど都市部での日本の技術の導入の可能性があり、日本の強みを活かせるのではないかという観点で、バイの関係としての案件の発掘とか案件の形成をやっています。
モデレーター:片岡
詳細なご説明大変ありがとうございました。では、江口さんの意見も踏まえ、更にご意見を頂戴したいと思います。それでは第2ラウンドで、伊藤さん宜しくお願い致します。
質問者:伊藤邦明 BNPパリバ銀行東京支店シニアアドバイザー 元アンゴラ大使
BNPパリバの伊藤でございます。ADCが大きく発展するかどうかという事を考える時に、アンゴラの立場というものが非常に大事になるのだろうと思います。それで、昨年の12月まで現地におりました経験を踏まえて申し上げますと、やはりアンゴラというのは一筋縄ではいかない国であり、特にその南アとの関係が極めて微妙です。今はたまたまその大統領2人とも仲良いですけれども、歴史を紐解けばアンゴラの内戦の時に、南アが今の政権の敵側についたという事に対する民衆の不満というのがいまだにあります。内戦が終わってもう15年になりますけれども、まだまだ実は、南アの物は買いたくないという人はいっぱいます。例えば数字で申しますと、アンゴラ人は結構ワインが好きなのですけれども、輸入ワインの65%はポルトガルからですし、24%がスペインで、あれほど近くてあれほど美味しいワインがあるのに南アのワインというのは5%しか入れてないのです。それをアンゴラの人に聞くと、彼らの作った物なんか飲みたくないのだという事を、明確に言う人が複数おりましたので、非常にびっくりしました。
第三国との協力という話が先ほど出ていますけれども、アンゴラの場合ですと、東からインドが来るという事はあまり考えられなくて、すでに極めて強い経済貿易関係があるのは、やはりブラジルとポルトガルなのです。従ってアフリカに進出する時に、何でもかんでもインドと協力するという事はあり得ないのであって、特にアンゴラのような国だと、ブラジルとポルトガルとどうやって組むかという事を、日本企業は考えなければいけないのではないかと思います。
その点で申しますと、ぜひJETROにも、ポルトガル拠点、あるいはブラジル拠点の方に、自国のみならず、そういうアフリカのポルトガル語圏との関係の情報というものも努めて収集して戴いて、各会員に配っていただけると大変参考になるのではないかと思います。それでモザンビークに事務所を開かれるのは大変結構な事だと思います。何と言っても言葉の壁というのはありますので、南アにいらっしゃる方がどれだけがんばっても、なかなかポルトガル語の情報というのは取りにくいと思いますので、直接ポルトガル語の情報をモザンビークで取って戴けるのは大変結構だと思います。ただやはり経済規模とか、アフリカ全体での発言力とかいう事を考えると、アンゴラにもぜひ作って戴いた方が良いと思いますので、お願いをして、コメントといたします。
モデレーター:片岡
大変ありがとうございます。ルアンダ(アンゴラ首都)に作るという話はあるんですかね、分かりませんけれども、高﨑さん、よろしくお願いいたします。
発言者:高﨑
JETROはアフリカの事務所を増やす方向で進めていますが、その候補先国としてもちろんアンゴラについても議論しておりますが、どうしても法整備が非常に遅れているという事で、手続きの面からも非常に困難であるという事情があります。
ポルトガルからの情報収集というご提案もありがとうございます。過去にJETROのリスボン事務所から出張して情報収集したこともありますが、そのときに聞いた話として、ポルトガルで弁護士をしている知り合いがいて、その内の顧客の3分の2くらいはアンゴラに進出しているといったような事も聞いていますので、その辺からの情報収集というも強化していきたいと改めて思いました。ありがとうございます。
モデレーター:片岡
ありがとうございました。今のアンゴラの話、それからもちろん先ほどの、昔の戦争の傷跡と言いますか、UNITAはずっと南アから支援されていましたから、そういう内戦時代の問題が残っているのは事実でしょう。確かにアンゴラにおける内戦の傷跡は未だに大きくて、意外と忘れさられているような部分があります。さてそのアンゴラの話も含め、南ア、それから経済インフラの問題、それから農業の話も出てきましたけれども、それらを踏まえて後20分くらいですが、2、3人の質問かコメント等、是非、何かここで話したいですとか、聞きたいというような方がいらっしゃれば、遠慮なくご意見を頂戴したいと思います。
質問者:渡辺幹夫 (株)オリエンタルコンサルタンツグローバル
オリエンタルコンサルタンツグローバルの渡辺と申します。私、モザンビークの支店長もしていて、日本と行ったり来たり、アフリカ全土を行ったり来たりをしている訳なんですが、お三方に伺いたいのは中国に関してです。
アフリカの経済成長を考える上で中国の影響と言うのはもう無視できない。AIIBの進出というのはもう無視できないところだという認識でおりますが、それぞれのお立場で、中国の影響力をどういう風に認識しておられるか、我々、民間投資あるいはODAでアフリカに出て行っている者が、中国にどう対抗していったらいいのかというのは一つ大きな悩みだと思ってますので、ちょっとご意見を伺いたいと思います。
その前に先ほどの法律2階建てのお話がありましたが、私どももモザンビークの法律では非常に困っておりまして、色んな法律が出来て、実際施行されました。ではその通り、コンプライアンスという事もありますのでやりましょうと言って色んな省庁の窓口に行くと、実際問題は、「うーんいやあ法律はあるんだけどさあ」というような話はよく聞くきます。実はコンサルタントとしてライセンスを取らなきゃいけないんですが、法律ははっきりそう書いてあるのですが、具体的な手順を誰も知らないというような事実がございまして、弁護士と、困ったねというのが実は1年近く続いております。ですから2階建ての弊害ですとか、窓口レベルでの浸透というのはまだまだ図られていないのが現状かなというのが私の印象でございます。
モデレーター:片岡
ありがとうございます。ここにいらっしゃるほとんどの方がそれに関して長々と多分議論できるかと思いますけれども、それではパネリストの順番順でよろしいですかね。では遠藤様、宜しくお願い致します。。
発言者:遠藤
全般的に、アフリカ開発銀行の立場から申し上げますと、中国政府も私どもの株主でございますので、中国政府も含めて地域外メンバー国がアフリカのメンバー国に対してより良く貢献をして戴きたいと、そういう願いを持っているというのが基本的な立場でございます。
あともう一つは、中国側からのアフリカへの投資の色々な仕組みですとか中身については、やはりなかなか非中国系の人々にとっては分かりづらい部分がありますので、アフリカ開発銀行のような国際機関と一緒に仕事をしてい戴くことで、透明性を高められる可能性があります。国際機関などと関係することによって、そのプロジェクトがより透明性を持って、色んな方々に知って戴くようになるので、中国側からしても他の人たちに何かされるとか恐れを抱くことなく、また外部の人にしてみても中国のプロジェクトが一体何を目指しているのかという事がより分かりやすくなって、それが中国のためにも、アフリカのためにもなるんじゃないかというそういうような事で色々お奨めしております。
私どもの、アフリカ開発銀行の観点で一つ具体化できたのは、AFDG(アフリカ・グローイングトゥギャザー・ファンド)という信託基金のようなものができました。コ・ファイナンスのファシリティですけれども、これは一昨年に稼働を始めたもので、アフリカの大きなインフラの開発の際にそういうファンドを利用させて戴くということで設置をさせて戴いております。ちょっと数字がすぐに出てこなくて恐縮なんですが大体1000億円レベルだったかと思っていますが、その資金を、一番最初にエジプトの空港の拡張案件につかったり、確か3つか4つプロジェクトがあったかと思います。この様に、大きなインフラプロジェクト案件に中国のコ・ファイナンスをもらって、アフリカ開発銀行が一緒にやるというような事をやっています。
こちらの南部アフリカ地域の話のコンテクストでは、先ほどちょっとご紹介いたしましたけれども、南アがやはり、中国との輸出入の関係を非常に強めている状況です。中国の輸出力、それから輸入力、中国が輸入するとなるとどちらかというとアフリカの資源ですが、そういうものを購入する力が中国のほうについていますので、非常に関係が深くなっているという事です。
アフリカ開発銀行が見ている中では、中国のような中進国がアフリカ、特に南ア向けの工業製品の輸出力が高まっていますので、そうすると南アが、中国製品よりも良いものを安い価格で作れるようにならないと、やはり南アを中心として、南部アフリカマーケットというものが、中国市場に食われてしまうという事です。アフリカ開発銀行としてはアフリカ全体の工業化を進めたいという観点から言うと、ただ外国から物を買うだけではやはりアフリカの、例えば雇用の創出とか、アフリカの工業製品の付加価値を高めるという観点からも、望ましくないという見方がありますので、なるべくアフリカの生産力をつける事を勧めていますが、なかなか上手く行きません。もちろん我々としては全力で色々支援はしているというところが現状です。
モデレーター:片岡
ありがとうございます。ちなみにFOCACには招待されているのですか、AfDBは。
発言者:遠藤
一応オブザーバーでは呼ばれておりますが、あまり重要なオブザーバーという事ではないようなので、ちょっとそこら辺のところが悩ましいところです。
モデレーター:片岡
では鈴木部長、よろしくお願いいたします。
発言者:鈴木
中国がモンバサからナイロビまでの鉄道をSGR(スタンダード・ゲージ・レーン)で作った事によって、コンテナのモンバサからナイロビまでの輸送費が1コンテナ当たり確か500ドルくらいで、従来トラックで運んでいたよりも3割くらいは安くなったという事です。物流コストを低くして経済を刺激していくという意味では、非常に良い事であり、影響力はあります。
それと今回のSGRについては、想像を超えたスピードで作られたという話も聞いています。日本の建設会社からのコメントですが、使えるレベルでのクオリティを維持して、このスピードで作るというのは多分日系企業ではできなかっただろうと聞いています。従って、簡単に、中国のものは、安かろう悪かろうとか、後で問題が起きるというようなことを言えないのは事実だと思っています。我々として、インフラ関係の案件の仕込みとかで、中国勢が出てくると、これはG-Gベースの話なんですが、中国が近寄ってきて相手国政府とMOUを結びたがっているなどという話も耳に入ってきたりします。そういうレベルでの競争です。
それから例えば港の機材の入札のケースでは、日本製よりも中国製のほうがものすごく安いのは確かなので、我々としては、「メンテナンスの費用がかかりません」とか、「デュラビリティがあります」とか、価格以外の面で色々アピールをしなければいけません。これはなかなかアピールしにくいところで、価格は非常にシンプルな話なので、簡単ですが、そうでない部分をアピールするために色々苦労している部分があります。
対抗策として、TICAD VIの時には質の高いインフラをという話が出てきましたし、それから、現地への技術トランスファーとか、現地の雇用創造とか、中国と日本の差別化をするような単語がキーワードとなって出てきました。まさしくその通りだと思っていて、我々のレベルの、デイ・トゥ・デイのビジネスの中でもやはり同じようなことなのかな思っています。
モデレーター:片岡
ありがとうございました。それでは高﨑様。
発言者:高﨑
中国企業のアフリカ進出に関して、注目されたニュースがあるんですが、2007年にスタンダード銀行という南アの銀行がありまして、そこの資本の20%を中国工商銀行が買ったという事がありました。このスタンダードバンクという南アの銀行はアフリカ最大の銀行で、昔からアフリカ全土に出ていて、アフリカのビジネス情報を一番持っているような銀行です。そうしたアフリカのビジネス情報、企業情報を中国が入手できるようになったということで、投資において競合が激化するのではないかと言われました。ただ実際には、先ほどご紹介しましたように日系企業も企業買収(M&A)などを通じてNTT、味の素、関西ペイントなど進出しましたが、そういった企業の動きを見ていると意外と中国企業とはバッティングしていないように見受けられます。日本企業の強みを活かしてビジネスチャンスを確実に取っている動きもみられます。
一方、中国のアフリカへのインフラ投資によって日系企業がメリットを得られている部分もあるという声もきかれます。それから中国企業が請け負った何かの工事の中で、どうしてもある一部のシステムは日本の技術がないとだめなんだという事で二次的に請け負ったりするケースでビジネス機会が増えているという声も企業から聞いていますので、そういったところで日本の技術というのは活かせる部分がまだまだアフリカにあると思っております。
モデレーター:片岡
ありがとうございました。まだ10分くらいあるんですけれども、もし補足のご質問、あるいはご意見、それからサジェッション等あれば、折角の機会ですのでご発言下さい。坂田さん如何でしょうか。
発言者:坂田泉 一般社団法人OSAジャパン 会長
私はケニアで仕事をしてまして、良く泊まるホテルがアッパーヒルにあるフェアビューホテルに隣接したホテルで、それが数年前に南アのシティーロッジグループというチェーンホテルに買収されて、サービスの質が非常に変わってきています。その従業員と、南アから来ている新たな経営陣の人たちとのやり取りを、遠間から見ていると、そこに通常のアフリカの人たち同士とは何か違う雰囲気を何となく感じるんですね。南アの人がケニアの従業員を見る視線や、ケニアの従業員が南アから来ている経営陣を見る目と、双方にあります。
そういう点で南アに詳しい方にお聞きしたいのは、我々が南アの人たちと組んで、例えば東アフリカで仕事をするような時に、今の例の様に、他のアフリカ諸国から見た南アの人たちに対しての何か特殊なバイアスのようなものがあるんでしょうか。そういう非常に曖昧な質問なんですが、ちょっとそこら辺が心配なので、お聞きしたいと思います。
モデレーター:片岡
ありがとうございます。最後にもう一人くらい何かありましたら。無いようでしたら、また非常にジェネラルな話なのですけれども、最後のコメントも含めてご三方それぞれ一言ずつということで。では遠藤様、よろしくお願いいたします。
発言者:遠藤
私も個人的にはタンザニアに3年間住んで、ボツワナの研究をしましたので、何となく南アの印象はありますが、おそらく先ほどJETROの高﨑様から説明があったように、やはり南アの歴史的な背景があります。アパルトヘイトというのは、とにかくあの辺の人びとには強烈な印象があります。モザンビークで聞いた話ですが、ポルトガルつながりで日系企業が、モザンビークに行った時に、自社の南ア出張所の白人スタッフを伴って商談を始めたところ、途中でモザンビークの人からあの南ア人を外に出してくれと言われたそうです。なぜかと言うと、やはり先ほどのアンゴラのケースと全く同じで、独立戦争時代の南アとの関係をどうしても思い起こしてしまうので、南アの人と直接商談はしたくないということです。もちろん実際に直接商売している人は山ほどいるはずですから、そんな事ばかりではない筈ですが、話しやすい別の人がいると、そちらの人と話をしたくなるという可能性があります。そうではなくても、同じブラックアフリカン同士でも、南アの人が出てくると、大国の出身という事で、どうしてもお互いに何となくコミュニケーション上の障害になってしまうという事はあると聞いています。以上は、私の個人的な意見ということで、組織の意見でありませんので、ご留意ください。
いずれにしても、歴史的な関係をそれなりにご理解戴いて、その方々とのコミュニケーションを上手に図れるように配慮をされるとそれなりに上手くいくし、上手くいかなくなる場合は何かその辺に問題があるという事ではないかと思います。これは個人的な経験プラス推測でしかありませんのでご了解ください。
モデレーター:片岡
ありがとうございます。では鈴木部長、よろしくお願いいたします。
発言者:鈴木
私どもはケニアに東アフリカの統括拠点があり、ヨハネスブルグとダーバンに南部アフリカの統括拠点があります。一時、南アの統括拠点の、経理、財務、人事、ITなどのアドミ・サービスをケニアと共有にしようという話がありました。色々と調査し検討したのですが、ケニア側で、南アの人たちを受け入れることはちょっと感情的にできないだろうという事で、プロジェクト自体がストップしたという例がありました。背景については遠藤さんが仰ったような事だと思うのですが、南アの人がケニア人を受け入れられないというよりも、ケニアの人たちが南アの人たちを受け入れられないという事です。要は指図されたり、特に人事管理などは難しいというところがあるようです。
モデレーター:片岡
ありがとうございます。高﨑様、よろしくお願いいたします。
発言者:高﨑
お二方が仰ったとおりなんですが、黒人対黒人ということで付け加えますと、南というと黒人の国家として初めて先進国になろうというような意識を持った、非常にプライドの高い黒人が多いということを耳にすることがあります。その点からも他のアフリカの黒人とは違うんだという意識が若干あるのかもしれません。
モデレーター:片岡
ありがとうございます。それでは大島理事長。
発言者:大島
先ほど、南アという国を考えるときには、むしろオーストラリアと似てるという話がありましたけれども、かつてオーストラリアに勤務した者としては、非常に納得がいきます。比べてみるとどちらも大きな国であり、南半球にあり、それから英語のアクセントがちょっとお互いにおかしいという事があります。それからユーカリが、オーストラリアにも南アにもあり、ワインが美味しいし、ラグビーも強い。色々ありますが、南アは南部アフリカの地域大国で、その動向が非常に大事です。
経済については一次産品価格の問題がありますが、南アについて報じられる時に、最近よく出てくるのは政治です。ANCの腐敗が相当にひどくなり、長期政権でもあり、デモが起きたりして政治的な安定の問題がマスコミで報道されています。お三方と片岡先生から、南アの地域大国、リード国としての南アの政治的な安定に関し、どういう問題を抱えているのか、将来どうなるのか、簡単に教えて戴けたらと思います。
モデレーター:片岡
では私が簡単にしゃべった後に、ご三方のご意見を伺います。先週末くらいに、ANCの全国執行委員会が開かれ、ズマに対する反対決議というのは出さないという事になっています。反ズマ運動がかなり盛り上がっていて、大変なことになっているのですが、意外と色々な思惑があって、最大野党のDAは、人気の無いズマがいたほうが、かえって2019年の選挙が戦いやすいとも考えているようです。2017年12月にズマはANC議長を辞めなければいけなくて、ANCの議長は辞めてもらって、ズマが大統領のままのほうがいいんじゃないかというDAの考え方もあり、それからEFFというおかしな極左集団の若者グループのリーダーであるマレマ(元ANC)が反ズマの急先鋒で運動を盛りあげています。
ANC内部でも、反ズマで勢いづいている人たちがいて、意外とラマポーザ副大統領なんかは急先鋒になりつつありますが、対抗馬のズマの元3番目の奥さんで、AUC前委員長のドラミニ・ズマがズマ大統領の後継になるとも言われています。それぞれが色んな思惑を抱えていますが、今のままズマを残しておいた方が得策という人たちが多く、おそらく2017年12月まではズマは辞めないのではないかなと見られています。その後2019年の選挙が、比例代表制なので、その時が勝負だと見ている人たちが多いのではないかと、私は個人的に思っています。
いずれにしても、政治的にも問題を抱えており、経済的にも低空飛行です。先ほどのお話のように、引っ張るべき大国が不安定というのは良くないのですが、それでもズマはANCの重要な部分は押さえているのではないか思っています。最後にご三方のズマ政権に対するご意見を伺って、終わりにしたいと思いますが、宜しくお願い致します。
発言者:遠藤
アフリカ開発銀行の株主である南ア政権に対しては、なかなか何とも言い難いのですが、本当にご指摘の通りです。やはり南アは非常に重要なリーダーなので、そこの政治が安定する事によって経済もきちんと進展するという事を、とにかく願っています。南アは、今でもリーダーシップを取っている状態ではありますが、本当に、きちんと色んな意味でリーダーシップを取って欲しいと思います。経済が資源頼みでないところに、移行して行ってもらうという事を期待しています。
モデレーター:片岡
ありがとうございます。では鈴木部長、お願いいたします。
発言者:鈴木
選挙については、何とも申し上げようがなくて、ちょっと分かりません。南アのリーダーシップについては、それしかないという事は当然経済のストラクチャー、規模から言っても言わずもがなです。
一方、ジンバブエとかザンビアとか、割と面積が大きくて、かつ農業国で、かつて農業産品を輸出していたような国と言うのは、ものすごくポテンシャルがあると思っています。今市況が悪いとか、たまたまジンバブエの場合は政治的な不安定があるとか、多分時間が解決できるような問題もあって、もし一次産業が復興できれば、多分SADCの中でボイスも今以上に大きくなってくると思っています。この2つの国がポテンシャルとして大きいんじゃないかと思っています。
モデレーター:片岡
ありがとうございました。高﨑様、宜しくお願い致します。
発言者:高﨑
南アの政治と言うことで、ズマ大統領が二期目に入って2019年に次の選挙がある訳ですけれども、今のズマ大統領は南アの最大民族であるズールー族の出身ですので、同じ民族からの人材登用が目立つようになっています。それが対外的に批判されている状況です。
また、急進的経済改革といって格差を是正して富の分配を進めるという改革のなかで、例えば白人が所有している農地を黒人に無償で返還させるというような過激な考えもきかれるところ、ビジネス界からも懸念が示されています。それで片岡先生が2019年の大統領選が勝負になるのではと仰いましたけれども、今のシナリオとして大きく2つ考えられている訳ですが、ズマ大統領の利権を引き継ぐ形で、前妻のドラミニ・ズマ氏が大統領になる。もしくは今の副大統領でビジネスの経験もある、またズールー族の出身ではないラマポーザ副大統領が大統領になるという、2つのシナリオです。
いずれにしても最大民族のズールー族が利権を多く握っていますので、どちらの結果になったとしても長期的に不安定な状況は変わらないのではないかというので、格付け機関もこの数か月前に南アフリカの長期の投資格付けを揃って格下げしましたし、長期の見通しについてもなかなか厳しい状況であるというのが現状かと思います。
モデレーター:片岡
高﨑様、大変ありがとうございました。本日は南部アフリカを中心に、南アも中心にですね、彼らとの経済関係、日本企業の進出を目指して、すでに進出されている方もいらっしゃるんですけれども、今後の日本と南部アフリカとの関係の強化に向けてより良い議論が出来て幸いと思っております。では遠藤様、鈴木様、高﨑様のご三方に盛大な拍手をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
司会:淺野
本日はありがとうございました。コーヒーとクッキーが準備できておりますので、お時間のある方は名刺交換、意見交換などどうぞなさってください。本日はありがとうございました。
以上(編集責任者:淺野昌宏)