合田真日本植物燃料株式会社代表取締役講演会
- 合田真 日本植物燃料株式会社 代表取締役 講演会
- 10月23日(火)午後、国際文化会館別館2階講堂において、2018年度第1回目の講演会を開催致しました。今回は日本植物燃料株式会社代表取締役合田真氏をお招きして「Information Platform for Everyone」と題して講演頂きました。合田社長はバイオ燃料の原材料となる植物の研究開発を重ね、その成果を事業化するために2012年モザンビークにて現地法人を設立、バイオ燃料の原料作物“ヤトロファ”の栽培・搾油精製・燃料販売を手掛けるなど幅広く事業展開を行われ、近年は収益型モバイルバンク事業にも進出しています。モザンビークでは、大部分が小農であるため、市場へのアクセスがなくその結果として余剰作物の30%がロスとなっており慢性的な国民の栄養不足を招いている状況で、これを解決するために「電子農協」プラットフォーム(AgriNET)を提供することで市場へのアクセスを容易にしサプライチェーンを構築することで農家の信用拡大、少額融資、資材共同購入などの農業技術の改善に繋げるシステムです。このシステムには参加者も強く興味を持ち、多数の質問が講演時間終了後もなされ大変盛況な講演会となりました。
第5回『世界一愉しいアフリカ講座』
- 第5回『世界一愉しいアフリカ講座~元駐アフリカ大使大いに語る~』
- 9月29日(土)午後、JICA地球ひろば2階国際会議場にて情報・サービス委員会(委員長:萩原孝一特別研究員)の企画による「第5回世界一愉しいアフリカ講座~元駐アフリカ大使大いに語る~」を開催致しました。今回は、昨年末東京都立中央図書館にてシリーズ開催した「世界中のことをもっと知ろう!第7回アフリカPart2編」にて講演され大変好評であった4人の元駐アフリカ大使にご自身のアフリカでの経験などを中心にお話を頂きました。
まず主催者として大島理事長よりのご挨拶の後、萩原委員長の司会により、高倍宣義元コンゴ民大使の「中部アフリカで見たこと、感じたこと」の講演から始まり、橋本栄治元モザンビーク大使の「アフリカ俯瞰鳥瞰~ザンビア、ケニア、モザンビーク~」、富田嘉孝元ギニア大使の「ギニア共和国の生活と文化」と続き、休憩の後、福田米蔵元ジンバブエ大使の「南部アフリカの人はどんな暮らしをしているか」の講演を行いました。最後に全講演者によるパネルディスカッション「それぞれのアフリカ」にてまとめた後、お開きとなりましたが、当日は生憎の空模様にも拘らず、予定していた140名を遥かに凌ぐ175名もの参加者で用意した資料が間に合わぬ事態となり、主催としても大変喜ばしいことの反面参加者の皆様にご迷惑をおかけすることになりましたことを申し訳なく思っております。
第9回フォーラム
「アフリカにおける金融と産業振興」
日時: 2018年8月6日(月)14:00〜16:00
場所:国際文化会館 別館2階講堂
参加者:当協会会員、政・官関係者、研究者・学生など 35名
司会:成島利晴 アフリカ協会事務局長
定刻となりましたので、アフリカ協会主催第9回フォーラムを開催いたします。皆様には、お暑い中、お運びいただき誠にありがとうございます。フォーラムの第1回目は、2012年11月28日で、「TICAD Vと民間連携」のタイトルで議論しました。その後アフリカが経済発展する中で、話題も地域経済振興から民間産業支援というふうに移り変わってきております。第9回目の今回は、「アフリカにおける金融と産業振興」をテーマに、討論を交わしていきたいと思います。
まず本日の講師の方々をご紹介いたします。モデレーターとしてアフリカ開発銀行アジア代表事務所所長、横山正様。パネラーとして、三菱UFJ銀行経営企画部情報産業室室長、近岡祐一様。もう一方、丸紅株式会社経済研究所シニア・エコノミストの常峰健司様です。
なお、本日は、理事長の大島が広島での終戦関連の諸行事があり不在ですので、代わりまして副理事長の淺野がご挨拶いたします。では淺野副理事長、よろしくお願いいたします。
挨拶:淺野昌宏 アフリカ協会副理事長
皆さん、お暑うございます。ラゴスかモンバサのような日が毎日続いておりますけが、このように暑い中ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。今の話の通り、理事長の大島は広島出身で、今日は8月6日、広島では平和記念式典が行われており、外国の要人に同行するため、本日出席することが出来なくなりました。私が代わりにご挨拶させていただきます。
今回は第9回目となり、今まで色々議論をやって来ましたが、金融面からアフリカのビジネスとか、アフリカの産業振興を議論したことはありませんでした。ぜひ今回は金融面から見てみようという企画でございます。皆さんもお感じになっておられるように、アフリカはどんどん発展して行く方向に動いており、ビジネス環境も良くなって来ています。それはアフリカ自身が以前に比べてより真剣に、経済発展に取り組んでいることに加え、欧米諸国、中国、インド、アジアなど多くの国々が支援をしようという動きになってきていることとにもあります。一方、国内に資本の蓄積が無いということがあって、これを金融面から、どう考えて行ったらよいのかという問題があります。
今日は、その方面に精通されている、横山さん、近岡さん、常峰さんに、この趣旨にご賛同いただきご協力いただくことになりました。ご三方には誠にありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします。また、つい先日TICAD 7の日程が発表され、来年の8月28日から30日の3日間と決まりました。その絡みも含めて、活発な議論をしていただくことを期待しております。よろしくお願いいたします。
司会:成島
ありがとうございました。ではフォーラムに入ります。議事進行は、横山様にお願いいたしますので、
横山様よろしくお願いいたします。
モデレーター:横山正 アフリカ開発銀行アジア代表事務所所長
本日はこのような機会にお招きいただきありがとうございました。それでは私から、開発金融機関の視点で、アフリカの金融と産業振興についてお話させていただくとともに、司会進行も務めさせていただきます。本日は、違うセクターの専門の方の参加があり、資料も非常に充実していて、いろいろな経済指標もありますので、私は開発金融機関からの観点から、私たちの認識している課題や、対応について考えをシェアさせていただければと存じます。
釈迦に説法なのですが、金融は、お金の足りない人に対して、お金に余裕のある、余剰のある方が融通する、というものです。アフリカには潜在的ビジネス投資機会が膨大にあると、これは皆様も色々仰っていて、先週も、TICADモニタリング会合があったり、NEPADのマヤキ長官が来日されたりして、そのような話がいろいろありました。ともかく投資機会、ビジネス機会が潜在的に膨大なのにもかかわらず、開発課題も広範にあります。従って、いかにアフリカの成長のボトルネックを取り除くか、取り除くためには膨大なお金が必要なのですが、それをどうやって動員するのかという事が、アフリカにおける金融面での課題となります。
アフリカの開発課題について細かくは申し上げませんけれども、私たちの視点からすると特に5つの分野が重要だと思っております。第1に電力・エネルギーへのアクセス、第2に農業・アグリビジネス、第3に産業化・工業化促進、第4に地域統合、これはソフトとハード両方ですが、最後に社会生活クオリティの向上です。この5番目には、雇用の促進、人材育成、教育、職業訓練、保健、栄養改善も入ります。5つの各分野で、民間セクターの促進も重要です、この5つの優先分野を重点的に対応していくというのが私たちのHigh-5という戦略で、この5つを私どもがきちっとやることによって、もちろんパートナーと一緒にやっていく訳ですけれども、UNDPさんの分析によると、アフリカにおいて、SDGsの90%が達成されるとされています。産業振興とひとえに言ってもいろいろなものが絡んでいて、例えば電力が無ければ産業振興なんかできないよと。産業についても、製造業だけじゃなくて、アフリカでは60%くらいの方が農業に従事されている、かつ女性の従事率というのは農業で非常に多いということで、色んな事を考えた場合、やはりアフリカの持続的、包摂的な成長には農業が非常に重要であると。工業化促進には民間セクターの成長も重要ですし、産業化するためにはそもそもモノや人の移動を含めた連結性の課題があります。例えば、よく言うんですけれども、アメリカ人がアフリカを旅行するのと、アフリカの人がアフリカを旅行するのでは、後者の方が、はるかに多くのビザがいるとか、あとは道路とかいろいろなハード面でのインフラが揃っていないというのがあります。
また、雇用の創出が産業振興の目的の一つであると思うのですが、そのためには必要な人材がしっかりといるかということで、教育、職業訓練も必要です。ただ、これら全てを行うには膨大なお金が必要だということです。色々な見積があるのですが、インフラだけでも年間1300億米ドル~1700億米ドルが必要と言われています。年間の資金のギャップについては、700~1100億米ドルくらい、要は、それだけの資金が足りないということです。かたや、世界の投資家の方に言わせると、お金はいっぱいあるといいます。つまり、問題は、受け入れ国側の投資環境の整備が行われていないとか、バンカブルなプロジェクトが少ないために十分な投資が行われないというのです。
この年間毎の大きなギャップをどうやって埋めるか、資金の出し手はいったい誰なのかという事なのですが、それは、一つは公的セクターです。例えば、アフリカの各国政府やその公的機関や外国政府やその公的機関、国際機関、ODAが典型的なものですけれども。ただし、国内資金を増やすのは容易ではありません。例えば財政をどうやって強化するか、じゃあ税をもっと取れるのかどうか、もちろん税制改革とか、税の執行を強くする、それも重要なんですけれども、そんな急激にやるのは容易ではないと。外国から入ってくる企業から税金を取ればいいかというと、そういう事をやるとかえって入ってこなくなる。また、ODAについては、先進国、国際機関のほうでもそんなにお金に余裕がない。ということで公的セクターからの資金動員にもこれ以上あまり期待できないという事になると、他を探さなければならないということになります。勿論、アフリカの政府においても、なるべく税収を上げようとしているんですが、特に近年一次産品価格が低迷しているということがあって、特に資源輸出国で財政事情が良くないということがあって、むしろ投資が伸び悩んでいるというか落ちているというところがあります。
では資金の出し手というのは何なのかというので期待されるのが内外の金融機関を含めた民間ということになります。これは当方でブレイクダウンして、例えばHigh-5分野でどのくらいお金が必要なのかということでお示ししているものですが、電力は65~90ビリオンとか、農業は32~40とか、トータルで113~186ビリオンドルが必要だと。おおよそ170ビリオンが毎年必要だということです。これらのお金を全部、民間で埋めるというのは難しいのでしょうが、そのためにはどうしたらいいのか。それは当然のことながら、アフリカの国が投資環境整備や資本市場の整備をしっかりとすることが重要ということとなります。例えば、お配りした資料の中にあるんですけれども、実はアフリカには、国内資金は結構あるということで、アフリカで今必要とされる金額を上回るようなお金がペンションファンドなどにあるということです。
結局そのお金はどこに行っちゃっているかというと、一旦域外の国際資本市場に出て、域外からまたアフリカの方に戻ってくるということになると。それはなんでかというと、やはり運用で考えればロンドンとかニューヨークとか海外のほうがいいと。国内では資本市場が未整備のためになかなか投資しづらいと。あとアフリカにはバンカブルなプロジェクトもそんなに無いので、なかなか投資しづらいと。一回外に行っちゃうと、アフリカに戻ってくる時にバンカブルなプロジェクトはないといって、戻ってこない。あと資本市場がなかなか整備されていないので債券とかも買いづらい。なので、アフリカの中の資本をどうやって域内で回すかというのが課題となります。アジアのASEANでも同じような課題があったわけですけれども。
もう一つは投資環境整備をして、いかにFDIを伸ばすかということです。
じゃあ資金の借り手の問題は何なのかということについては、例えばアフリカの大きな企業はすごくお金を持ち始めていると。例えば有名なのはナイジェリアのダンゴテさんとかそういう方たちですね、そういう方たちはお金、調達に困っているかというとあまりそういう話を聞かないと。彼らは自分の手金のお金とか、内外から調達したりしていると。そこで開発課題として特に重要なのは、やはり中小企業とか個人ですね。これらの主体が創業やオペレーションをやっていく上で必要な資金へのアクセスが難しいと言われています。特に中小企業については、大きな雇用も生んでいるため、これは大きな問題です。
あとは先ほど申したように、必要なインフラ事業は数も金額も非常に膨大なので、プロジェクトにお金が回らないという中で、どうやったらバンカブルなプロジェクトにできるのかというのが金融の周辺の問題として非常に重要です。バンカブルなプロジェクトにするにはどうやったらいいかということについては、一つは当然、受入国の投資環境をきちっと整備する、透明性を確保するとか、コラプションの問題に対応するとか、色んな課題があります。税制についても、促進的にする必要があろうかと思います。電力とか水の供給といった必要な基礎インフラ整備もしっかりと行う必要があります。そういうことを色々やっていくということです。民間金融機関はなかなか長期の資金を出し切れないということで、長期の資金の提供、現地通貨でのファイナンスも課題として挙げられます。
また、特に個人の金融アクセスも課題となっていますが、これについては、東アフリカのケニアにはM-PESAがあり、後で近岡さんからお話があると思うんですけれども、信用創造は図られないにしても、少なくとも資金決済機能という意味ではどんどん広がりつつあるということです。
日本的な発展モデルだとまず貯蓄をしっかりやって、それが投資に回るという構造なんですが、このアフリカのいろいろな国のデータを見ると、貯蓄率は60%あるとされている国もあるんですけど、一般的には、例えばアジアは貯蓄率が40%なのに対し、サブサハラは14%ぐらいということで低いということ分かります。貯蓄率の向上は、重要な課題です。
また、金融セクターの課題としては、金融サービスの浸透率が低いと。例えばフォーマルな銀行口座を有しているのは人口の4分の1にも満たないと。サブサハラで言うと20%ということです。北アフリカは若干サブサハラより高くて、約30%。西アフリカになると13%、かつナイジェリアを除いてしまうともう10%くらいしかないということです。
あと、サブサハラではATMの普及率が非常に低いということです。ATMでどのくらいの人間が大体サーブできるかについては、北アフリカでは比較的多くの人間がATMで対応できていると。ところが東アフリカではATMでほとんど対応できていない。これは一つには銀行口座が無いので対応できないということがあると思います。その一方、東アフリカではモバイルマネーが非常に進んでいると。これは相関関係があって、南アフリカのATMが26.7となっていて、要するにATMを一台あたりで使っている人口が多いのに対して、逆にいうとモバイルマネーはあまり必要ないということで、あまり使っていない。むしろ東アフリカなどは、銀行システムというよりはモバイルマネーを活用している。これは実際には、例えば携帯電話を活用したM-PESAという電子マネーで、携帯電話にバリューを貯めてやっています。
ではアフリカの金融セクターはだめなのかというと、左の図を見ていただくと分かるのですが、アフリカの金融機関のReturn on equityは高い。あとBanking revenue poolの年平均の成長率ですが、年間8%を超えるということです。もちろん規模は小さいのですが、非常に成長は早い。つまりアフリカの発展形態は日本とは違うということです。日本みたいに貯蓄を奨励したり、銀行もしくは郵便局による物理的な決済システムを伸ばしていって、そこで銀行口座ないし郵貯の口座を作ってもらって、どんどんつなげていくのではなくて、そういうハードインフラ無しに、携帯電話でどんどん電子マネーの流通圏を広げていく。特に銀行システムへのアクセスの低い国々では、そういうような特異な発展を遂げているということです。
ではアフリカ開銀の金融面での役割ですが、民間プロジェクトへの出融資等に加え、トレードファイナンスの支援も行っています。私たち銀行から直接トレードファイナンスを提供しているわけではないのですが、アフリカの金融機関を通じて、ツーステップローンみたいな形で支援をさせていただいたり、トレードファイナンスを民間がやられる時のリスク・パーティシペーション・アグリーメントを通じてリスクを分担しています。また、ソフト・コモディティ・ファシリティーということでこれもトレードファイナンスの一部なんですけれども、一次産品のココアとかコーヒーとか、特に輸出奨励のためのファイナンスをお手伝いしたりしています。中小企業プログラムを通じて中小企業ファンドを手助けする、中小企業を支援している金融機関のキャパシティ・ビルディングとか、流動性にご協力をしている、等々をやっております。
加えて政策アドバイスもやっております。一番右側は私どもがやっている民間セクター促進ということで、これは必ずしもトレードファイナンスだけじゃなくてプロジェクトへの参加もありますが、総額で年間大体5、6000億円くらいの規模の承認をしています。この中で若干ご説明したいのは、先ほど言った金融と言う意味でプロジェクトにお金が足りない、バンカブルなプロジェクトが無いために、お金がアフリカに来ないとか、必要なお金がプロジェクトに行っていないというお話をさせていただいたんですが、それに向けた問題解決の一助となるような私たちの新しいイニシアティブというのがこのアフリカ・インベストメント・フォーラムというものです。これは今年の11月7~9日に第一回フォーラムがヨハネスブルクにて行われる予定なんですけれども、年に1回大きな会合をやって、後は年を通じて色々プロジェクトをバンカブルに、また、資金ギャップを埋めて、実施可能にするようにするためのプラットフォームを提供するものです。機関投資家等にも入っていただいて、パイプラインのプロジェクトを特定して、それについて具体的にどこをどうすればバンカブルになるのか、また、資金ギャップを埋める、場合によってはその国の元首とか大臣にも入ってもらって、どこの規制をどうすればいいか、具体的にどの部分の投資環境整備を図ればよいのか、そういうことを詰めていき、一個一個のプロジェクトをバンカブルにし、資金ギャップを埋めていく、そういうことを考えております。
先ほど申し上げましたけれども中小企業金融において、どんなに中小企業が重要かということで、アフリカの雇用の約60%、GDPの33%がアフリカで中小企業によるものですが、中小企業金融に関しては需給関係のミスマッチがあって、金融機関は長期にはお金を出せないとか、貸付け能力に制約があり、融資に際して貸出先から担保を取ろうとしますが、中小企業とか個人には担保として取るべきものがない場合が多いということで、市場の失敗が生じている状態です。アフリカ開銀としては、一部の開発金融機関や中小企業金融に特化した金融機関に資金支援をしたり、技術支援を行う等、中小企業金融の円滑化に向けた支援を行っています。また、アフリカ開銀としては資本市場整備、育成支援も行っています。例えばアジアにおいては日本の財務省も協力して、ABMI(アジア債券市場構想)、要するにアジア域内において債権市場を発達させて、わざわざロンドンとかニューヨークに行ってからまた戻ってくるのではなく、より資金が域内で循環することにより、アジア通貨基金の再来にならないようにしようという取り組みを進めております。我々も、アフリカの内部で必要な資金が循環するように、また、アフリカの中で、現地通貨で調達ができるように、インデックスを設けたり、EDFを開発したり、市場に対してデータベースを提供するといった取り組みを進めています。これが私のプレゼンでございます。
(拍手)
では続いて、近岡様の方からお願いします。
パネラー:近岡 祐一 三菱UFJ銀行 経営企画部情報戦略室室長
今日はよろしくお願いいたします。今日は「アフリカにおける金融と産業振興」というタイトルの下でアフリカ金融取引の現状ということで15分、20分ほどお話申し上げます。アフリカの経済成長のためには、投資が必要だろうということは常々言われており、民間の銀行ももっとリスクを取れということも常々言われております。こうした主張に対して金融機関の側からの見方というのを今日はお話できればと思っています。
ストーリーの骨子を最初に申し上げると、アフリカでは国内での銀行が十分に育っていないのではないかということ、モバイルマネーの可能性と限界について、アフリカに必要なものは投資だけではなくて貯蓄も必要だろうということを、銀行の果たす役割を踏まえてお話したいと思っております。
資料のほう4ページ目は、口座保有率、含むモバイルマネーです。こちらのほうはワールドバンクのグローバル・インデックス・データベース2017から使用しているものです。まず成人の、大人の口座保有率の各国別の状況をマップでお示ししております。色の濃い方が、保有率が高いということになります。先進国では日本とか、アメリカ、ヨーロッパ諸国というところはほぼ100%に近い数字になっている一方で、アジアやアフリカでは20%、30%台の国がまだまだ少なくないという状況が分かります。ここでアフリカのケニアが82%という高い数字を示しているということについてはまた後ほどご説明を加えさせていただきたいと思います。
続きまして、5ページ目は、金融機関への貯蓄利用率という数字になります。ここでの貯蓄の定義がセービングアカウントになりますので、いわゆる日本で言う普通預金に預けているものは含まれるかというと必ずしもそうではなくて、貯蓄性預金ということで、定期預金ですとか投資信託ですとかそういった貯蓄に向けて設けられている決済性預金を除くものという定義になっています。こちらのほうは、日本では64%、アメリカでも62%という水準に対して、アフリカでは一桁、もしくは10%台、20%台。アジアについても同じような水準になっており、新興国一般的に申し上げると、新興国での貯蓄水準、金融機関での貯蓄利用というのはまだまだ低い水準ということがお分かりいただけると思います。
その次のページ、6ページ目は、今度は、預けるタイプではなくて、借りる際の金融機関からの調達利用率というデータをお示ししたいと思います。今まで申し上げたのは全部、個人の口座、貯蓄であり、借入れということです。こちらのほうは、日本で申し上げると54%程度、アフリカ、アジア、アフリカで言うとほとんど一桁もしくは10%台という水準になっています。当然分母は成人の、大人の人数になりますので、当然無借金の人は、金融機関から借りていない人は当然含まれないので、日本でも54%とか、そんなに高い数字ではないということだと思います。
次のページ、7ページ目は、個人の借入手段を棒グラフで示したものです。このグラフの高さが人口に占める、借入を行っている人の割合になります。左側のほうの棒グラフをご覧いただけると、先進国は6割超の人が、何らかの形で借入れを行っている、そのうちの大半が金融機関等からの借入れになっていると。その右側のデベロッピング・エコノミーズでは、借入を行っている人口自体は半分弱ですけれども、金融機関から借りている人口というのはそんなに高くなくて、むしろ親類縁者、友人からの借入というのが割合としては高いということが分かります。国別の棒グラフについては右側のほうに記してあります。次に、アジアとアフリカの新興国同士の比較をお示ししたいと思います。
ページで言うと9ページ目の棒グラフですが、これは2011年、14年、17年の3つの観測点における各国の口座保有率、最初にお示しした数字の変遷を示しているものです。一番上の棒グラフの折れ線グラフ、日本は98%程度ということで横ばい推移というところなのですが、この中で若干特筆すべきところは、若干ちょっと太目の線でお示ししますけれども、マレーシア、タイに次ぐところに、ケニアの口座保有率というのが2011年の42.3%からぐっと81.6%ということで、タイに並ぶ水準まで口座保有率が高まっているというところです。同様に、ここではインドの、太線では示していないのですが、35%から70%近くまで上げていると、いうことで、ケニア、インドここらあたりが、サブサハラアフリカですとか東アジアの平均を押し上げているということです。モバイルマネーの口座拡大についてということで、こちらの左側の図、先ほどの図にもありましたけれども、これをいくつかの国をピックアップして棒グラフにしたものが右側になります。例えばケニアで申し上げると、2014年、棒グラフの長さ全体としては8割弱だったのが8割強に2017年には増えています。その内訳で銀行、金融機関にしか口座を持っていない人の割合がそもそも10%くらいで、大半がモバイルマネーもしくは両方持っているという形で、モバイルマネーの、モバイルの口座が果たす役割というのが非常に高まっているということが言えるかと思います。逆に南アフリカは元々金融インフラが整っているということもあって、銀行の口座を持っている人の絶対数というのはすでに5割、6割を超えているというところかと思います。
先ほどから時々、色々出ていますけれどもM-PESAです。ケニアのモバイルマネーの代表格はM-PESAですが、ケニア中銀のデータ、これは毎年アップデートされているデータですけれども、この10年間のうちに急速な発展を遂げて、一番左がエージェントの数、キヨスクの数が足元で18万件を超えており、契約者数は3700万人で、国民のほぼ8割に相当する人がもう契約していると。人口の中には当然子供も赤ちゃんも含まれていますので、そういった意味で言うと成人、大人の人に勘案するとほぼ全員がM-PESAもしくはモバイルマネーにアクセスするという状況が言えるかと思います。この取引金額、取引件数と取引金額というのを右の人口ですとかGDP対比で割り戻しますと、ケニアにおけるモバイルマネーの取引金額はGDPの5割弱、モバイルマネーの取引件数は契約者一人当たりで言うと年間41件と、そういう形で取引が急速に拡大しているというのがM-PESAの今の状況です。ただここで注意しなくてはいけないのは、M-PESAすなわち、モバイルマネーというものが、銀行ではないということなのですね。M-PESAの仕組みというのは皆さんご存知かと思いますけれども、手元にあるリアルのキャッシュもしくは口座にある残高をM-PESAの口座に振り替えて入金します。そこからスタートするのですけれども、預けられたお金というのは信託勘定に預けられるものですので、そこから銀行のように、お客様から預かった預金をもって貸出しを行う、という信用創造の機能が働きません。信託勘定の中でAさんが持っている100円をBさんに振り替えるというのがM-PESAの基本的なコンセプトになりますので、信託勘定自身にあるお金がマックスで、それから乗数効果をもたらすような信用創造というのは行われない、ということになります。
信用創造というのは、お手元の資料の19ページ目に簡単な概念図をお示ししていますが、簡単に申し上げると、例えばある人が銀行から100のお金を借りましたと。そのお金は銀行の口座に振り込まれます。銀行は預かった100のお金を中央銀行への準備率(例では10%)を留保した上で、90の部分を今度は貸し出しに回します。この90が誰かの借入となり、借り入れたお金はまたどこかの口座にまた入金になるということで、どんどん繰り返していって最終的には乗数効果が働いて100が1000になるというのが概念図になります。、実際にそのスピードというのが問題になるので、いきなり銀行が介在したからといって信用創造が急速に行われる訳ではなく、あくまでも銀行の機能というのは、預金から貸出を通じて、民間に資金を供給するという機能があるのですが、M-PESAにはその機能がないというのが一番大きな違いです。逆に言うと、銀行はそういった機能を持っているという事もあるので、厳しい自己資本規制とか、中央銀行のコントロールとか、ガバナンスとかシステム投資とかそういったものをやらなければいけないという意味で、今はもしかしたら旧態依然とした産業になりつつありますが、なかなかそこの束縛からは逃れられない状況かなということです。つまりモバイルマネーは急速に発展していて、ケニアの人口の大半に非常に大きく貢献して、決済という面では大きく貢献しているのですが、これはあくまで決済ということですので、貯蓄ですとか貸出しという機能に結びついていないということだけちょっとご留意いただければと思います。
次に、今申し上げたような、要は信用供与、信用創造がどういう風に民間銀行によって行われているかという各国別、地域別のグラフです。12ページのほうの表、グラフ、これは地域別になります。発展、成長著しい東アジア、太平洋州というところでは赤い棒グラフで年々着実に増加して、GDP対比194%とか、左のグラフで申し上げると。右側でいくと142%に相当する信用供与が行われていますが、サブサハラ平均で申し上げると、残念ながら民間銀行による信用供与というのはGDP対比で5割、6割のところで低迷している、右側ですと3割程度ということで、必ずしも民間銀行の信用供与というのは伸びているわけではないというのが実際の状況です。
続きまして13ページ、これが各国別の数字になります。南アフリカの数字がダントツに高いのは別として、実はケニアの数字というのはM-PESAがあって決済が進んでいてモバイルマネーの口座数もほぼ成人全員に行き届いていますが、信用供与といった面ではここにお示ししているとおり42.6%で横ばい推移ということで、必ずしも決して高くないというものである、ということです。
これに比べて14ページ目がアジア諸国です。こちらですとタイ、マレーシアというところが100%を超えている。他の国も総じて50%近辺、もしくは50%を超える水準で推移しているということが分かります。ということで申し上げると、GDP対比で言うとやはりアジアのほうが、民間金融機関がより機能しているということが言えると思います。
次に16ページ目のところで、今度はちょっとまた違った、まとめ的な見方をお示ししたいと思います。これはアフリカとアジアの国々のマクロ経済のデータになります。一番上の行がGDPのドルベースの実数、後は、歳入、歳出うんぬんというところが全てGDP対比のパーセンテージの数字になります。例えばナイジェリアで申し上げますと、GDPが4050億ドルありますが、歳入規模、政府の歳入規模、税収規模はGDP対比で5.3%、歳出規模は10%ということで財政収支はマイナスの4.7%です。政府債務がGDP対比で17.6と、実はそんなに高くないのですが、ただ歳入基盤も小さいということもあって、実は政府債務を歳入で割ると3.3倍ということになり、この数字自体はアジアの国に比べても、そんなに低い訳ではないということが分かると思います。一方でナイジェリアは産油国ですので、経常収支はGDP対比0.7の黒字です。その下が総投資、総消費、その差額であるISバランスの形で続いています。例えばケニアは、歳入で言うと18.8%に対して27.5%の歳出規模ですので、この国は政府が拡張的な財政支出をしておりますので、かなり財政赤字の幅が大きく、経常収支も5.2%の赤字になっています。マクロ経済で言うと経済の主体というのが政府と、企業と個人と3つの経済主体がありますので、政府の赤字を企業と個人で吸収できないと、結果、経常収支が5.2%の赤字になってしまうということになります。こうした比較を通じて、ざっと見てイメージでお分かりいただけるとおり、アジアの諸国も、実は財政収支は赤字の国は多いですけが、経常収支は黒字の国が比較的多いと。これは企業部門が育ち輸出を担う産業多角化がある意味成功している国が多いということがと言えるのではないかと思います。
こうした比較でいくつかの点を指摘しておきたいと思います。4点ありまして、1つ目は相対的なことで申し上げると、アフリカ諸国は歳入基盤に対して歳出規模が大きい国が多い。財政収支の赤字が大きい国が多いと。これは裏を返せば政府主導による経済成長に振り向ける余力が乏しいということなります。2つ目は先ほど申し上げた、経済主体というものは政府、企業、家計の3つなのですけれども、政府の赤字を企業と家計が補填出来ていないということがアフリカの国に総じて言えるかと思います。3つ目が、総投資と総貯蓄を比較したISバランスのところになるのですが、総投資の水準自体がGDP対比でどういう実数になっているかということです。ナイジェリアは12.6%ですとか、比較的数字の高いモロッコで32%となっているのですが、アジアの国を見ていただくと、総投資のGDPに占める割合が3割、2割の後半とか、総じて3割を超えています。この総投資の水準自体、もっと言うと固定資本形成というのは、将来のキャッシュフローを稼ぐ礎になるものになります。経済活動が将来への投資ではなくその場限りの消費に使われていると、逆に言うと持続的な産業育成ですとか経済成長は実現しませんので、そういった意味でやはりアフリカとアジアというところではちょっとここで差が出来てしまったと言えるかと思います。最後に経常収支と、一番下のISバランス、ご覧いただければ分かると思いますけれども、若干統計に差があるのかもしれませんが、基本的に一致します。つまり経常収支の赤字というのは総貯蓄を上回る総投資の結果ということも言えるかと思います。アフリカは投資が足りないと良く声高に言われるかと思うのですけれども、それ以上に貯蓄が足りないというのが実は現実ではないかと思います。国内の貯蓄不足というのがひいては海外からのファイナンスに依存せざるを得ない状況、歳出を生み出している。そこに政府部門の債務が限界まで近づいている状況を勘案すると、持続的な成長のためには、貯蓄というのが実は最も重要なファクターなのではないかと思っています。
最後のスライドになりますが、国家規模対国家の強さのグラフです。左側にある縦軸、これが政府の有効性指標と呼ばれる数値で、横軸のほうが先ほどのスライドで申し上げた歳入のGDP対比になります。右肩上がりの破線で傾向値を示し大体その線上にプロットされるのですが、そこから抜きん出ているところでいうと例えばシンガポールは、より小さな政府でより効率的な政府が実現できているとか、デンマークは大きな政府と効率的な政府を両立しているとか、そんな感じのことが見て取れると思います。こうしたデータを色々見てもお分かりのとおり、アフリカを一つでひとくくりにするというのはなかなかできないことであり、アフリカの国々が置かれている状況は様々で、今日のテーマである産業振興に向けての処方箋も各国別に必要になると思います。その中でアフリカの民間銀行が十分に育っていないのではないかとか、モバイル端末マネーの可能性と限界ということと、それからアフリカに必要なものは投資より貯蓄というキーワードに対して、いかなる効果的な対策を立てられるかが、金融面から見た時に最優先に必要なことではないかと思っています。
最後に「可能性」ということで申し上げると、モバイルマネーがケニアの金融リテラシーを劇的に改善した例もありますので、この銀行という旧態依然とした制度を介することなく国民の貯蓄を産業育成やインフラ整備のための投資に振り向ける画期的な仕組みが出来れば、アフリカでもゲームチェンジが出来るのではないかと思っています。例えば、M-PESAを使ったクラウドファウンディングみたいなプラットフォームが出来ることによって、まあ出来るかどうか分からないのですが、ここ10年であっという間に国民の間に浸透したこういう新しい新興のプラットフォーム、銀行という重いシステムを使うことのないプラットフォームでファンディング、資金供給ができるということができれば、これはアフリカにとって、画期的なことになりうるのではないかとも思っています。ご存じのようにM-PESAはモバイルマネーでありますけれども、スマートフォンを使っているものではなくてガラケーで十分機能します。SMSを送って決済するというシンプルなものなのですが、そういった国民のすみずみまで行き渡ったプラットフォームを使って、結果として経済活動の活性化につながるという仕組みが新しいアイデアとして考えることができれば、アフリカにとっても良いことになるのではないかと思う次第です。私の方のプレゼンは以上でございます。
(拍手)
パネラー:常峰健司 丸紅経済研究所 シニア・エコノミスト
私からは「金融政策正常化の影響と今後の可能性」というタイトルでアフリカにおける金融と産業振興についてご説明できればと思います。皆さん錚々たるアフリカのプロフェッショナルの方がお集まりの中で大変僭越ですが、商社の社内のシンクタンクとしてどのようにアフリカの金融と産業動向を見ているかという事をお話しようと思います。私自身は丸紅入社以来、調査業務に携わっていますが、2014年から17年にかけて南アフリカのヨハネスブルグに駐在し、3年間、南アからサブサハラ諸国を見ていました。
では早速ですが、まずアフリカを取り巻くマクロ金融情勢、特に最近ですと、米国の利上げ、欧州の金融政策正常化に伴って、世界の金融環境が変化する中でどういった影響が出ているのか、ということを提起します。その後、アフリカの経済発展が進む中で、投資環境は成熟してきたのか、改善しているのかところを確認し、最後に、産業振興という観点で何があるか、具体的には最近非常に注目されているのがスタートアップですので、スタートアップについて簡単にご紹介させていただきたいと思います。
まず資料の1ページ目に、サブサハラアフリカの成長率のグラフを記載しております。こちらのグラフは皆さんよくご覧になったことがあるかと思います。実はこれは名目価格と伸び率の比較で、本当に資源価格と成長率が相関しているとは厳密には言えないですが、改めてGDP成長率と資源価格をみると、どちらもIMFの予測ですが、18年以降もサブサハラの成長率は3%後半~4%程度を見込んでいます。その意味するところは、大きな環境変化が無ければ、つまり、資源価格の大幅な下落や、金融危機のようなことが起こらなければ安定した成長が続くであろうと考えられています。もしかしたら楽観的かもしれませんが、IMFは引き続きアフリカの成長を見込んでいる、という状況です。
その背景にある一つの要因は、右のグラフの「財政収支と政府債務」というグラフで、こちらもIMFの予測になりますが、2016年は赤丸、2023年は青丸になっており、主要国では総じて改善していくだろうという風に予測されています。この前提が、IMFや民間も含めて、アフリカに対する関心、見通し、期待を支えていると考えられ、逆に言うと、財政や債務が改善することが成長の大前提になると考えられます。
先に3ページ目の資金環境について、もう少し見ていきますと、先ほどのお二人のご説明でもありましたが経常収支の見通しを示したのが左のグラフです。こちらは16年から23年の見通しですが、総じて大半の国において経常赤字となっています。このグラフは全てマイナスの目盛りで経常赤字を示しており、赤字額の対GDP比になっていますが、8年かけて緩やかに改善していく国が多いだろうと見られています。右のグラフは主要国の外貨準備高です。やはり2015年、16年の資源価格下落局面において、資源国を中心に為替や外貨準備が大きく影響を受けたところですが、足元の状況を見ると、総じて底打ち、改善傾向にあるところがお分かりいただけると思います。具体的には南ア、ナイジェリア等では持ち直しの傾向にあり、ガーナも水準が大きく持ち直しています。アンゴラについては、引き続き外貨準備が減少傾向にあって、こちらは後でまたもう一度触れますが、新しい大統領の下で経済財政改革が進められ、非常に痛みを伴っている最中であり、未来に向けた痛みを感じている瞬間ですが、それ以外では各国総じて外貨準備高は改善傾向にあると考えられます。そういった中でGDP成長率は今後数年、堅調に成長していくだろうという見通しになりますが、そうすると死角はないのかと考えると、やはり冒頭に申し上げた米国の金融緩和正常化や欧州の金融環境の変化、ではないかと考えています。
2ページ目、左のグラフが米国の長期金利のグラフ、右側が南ア、ナイジェリアの長期金利のグラフですが、こちらのグラフでお伝えしたいことは、やはり直近だと今年の4月に入って、米国の長期金利が3%を上回って上昇し、マーケットが金利上昇を警戒する状況がありました。2015年12月から米国が利上げを始め、2006年以来低金利が続いてきた金融緩和がいよいよ終了する流れになりましたが、一方で2014年夏以降のアフリカ諸国の金利の動きを見ると、必ずしも米国の金利の動きとは連動するわけではない状況でした。そして、足元でいよいよ米国金利が3%を越えて来ましたが、直近の南ア、ナイジェリアの金利の動きを見ると、若干米国の金利の動きに連動して上昇しているかな、というところです。このまま金融緩和の縮小が続いて南ア、ナイジェリアの金利が上昇していくのか、というところがポイントですが、参考になるのが、同じグラフで、米国の長期金利が2013年5月に急上昇しているタイミングです。こちらはFRBのバーナンキ議長が金融緩和の縮小を示唆したということで、金利が急上昇した、テーパータントラムのタイミングでした。同じ時期、アフリカを見てみますと確かに南ア、ナイジェリアとも金利が若干上昇しており、同じような動きが見られますが、今回は2013年ほどの大きな動きは見られていない印象です。従って、すでにFRBの利上げというものがコンセンサスとなる中で、徐々に徐々に織り込まれており、結論から申し上げると今回の利上げというのは急激なショックを引き起こす可能性は低いのではないかと考えております。
こちらのグラフは手元にはお配りしていないですが、先ほど米国が金融緩和の縮小を始めたと申し上げましたが、一方でECBや日銀はずっと金融緩和を続けていました。日銀は、先日の金融政策決定会合にあったとおり、引き続き長期の金融緩和を続けるとコミットした一方で、欧州に関してはECBが2018年で資産の買い入れをストップし、利上げは来年の夏以降に始まるかと言われる中で、いよいよ金融緩和の正常化に着手したという状況です。FRBの利上げに関してはある程度市場も織り込んで対応できているかなという中、今後ECBの動向というのが一つ市場のかく乱要因になりうるかと考えています。
5ページのグラフ、こちらはアフリカ主要国の国債償還時期のグラフでございます。横山所長、近岡室長からもご指摘がありましたが、2010年代に入りましてアフリカでも独自に国債を発行するようになってきました。赤い線が国債合計で、いわゆる自国通貨建、及びCFAフラン圏でユーロ建も含んだもので、一方で青い線は外貨建ての国債となっています。どちらも借金であることには変わりありませんので、どちらの償還も注意しておく必要がありますが、やはり外貨建て国債は為替の影響により支払負担が大きくなる可能性があります。このグラフを見ると2020年、2024年に償還の大きな山が来ることを示しており、注意しておくべきかと考えています。より細かいところでは、国別の償還グラフが次のページです。こちらは先ほどの外貨建ての国債償還時期を国ごとにブレイクダウンして、左から南部アフリカ、東部アフリカ、中央アフリカ、西部アフリカという形でまとめた図ですが、南部アフリカでは南アが2020年ごろに償還の山を迎えます。続いて東アフリカではケニアが2024年に償還の山を迎え、中部アフリカでは2027年にナイジェリアが大量償還を迎えます。一番右側の西アフリカは2024年にコートジボワールで償還時期を迎えるというところで、こういった年にそれぞれアフリカの金融環境で問題が起こる可能性を注意しておくべきタイミングではないかなと考えます。国債は借り換えができれば問題なく、発行した時期と同様の低金利での借り換えが続けられれば問題はないのですが、先ほどから申し上げているとおり、米国の利上げや、欧州での金融緩和縮小が進む中で、それぞれのタイミングでの国債の借り換えがきちんとできるかというのが一つの課題になってきます。
続いて6ページは為替の動向です。金融緩和が終了し、米国が利上げを続ける中で、非常に懸念されるのが為替の下落で、金利の高い通貨に引っ張られる、というご指摘が横山様からもあったと思います。米国が利上げをすると、相対的にリスクの低い米国資産への資金移動、新興国からの資金逃避が如実に表れるのが為替分野でしが、こちらのグラフでお伝えしたい点としては、現状、為替はそこまで利上げのショックを受けていないと考えられます。左右両方とも2017年1月を100とした場合のグラフになっており、左の南ア、ケニア、ザンビアについては為替が急落するような状況は回避できているのかなというところです。右側、ナイジェリアについては管理相場制度の下、切り下げが行なわれて対応しており、外貨不足も解消しつつあります。アンゴラに関しては先ほど申し上げたように新政権の下で改革が進められている中で痛みを感じているところです。因みに他の新興国の状況をみると、トルコやアルゼンチンで為替が急落しています。トルコは2017年1月から約45%、アルゼンチンは約7割下落しているという状況に比べると、アフリカでは短期的なショックは回避できていると考えて良いかと思います。次のページは各国がどういった為替制度を採用しているかの一覧でご参考までですが、南アやケニアは変動相場制を採用しているので当然為替は大きく変動する一方で、左上のCFAフランというユーロペッグの通貨制度を採用している国は為替の急変動は回避できます。これは国際金融のトリレンマと言われる問題で、自由な資本移動を重視するか、金融政策の自主性を尊重するか、若しくは為替ルートの安定を重視するかで、各国がどれを重視するかで判断が分かれます。CFAフランについては為替ルートの安定を重視した結果、それぞれの国における金融政策を放棄していますが、一方で南アやケニアは各国の経済情勢に合わせて金利政策を検討できます。すなわち景気が悪ければ利下げし、インフレ率が上昇すれば利上げで対応でき、どちらが望ましいかはなかなか答えが出ないですが、為替制度の違いが経済にも影響を及ぼすことは大いにあります。
8ページのグラフはIMFの資金安定化レポートで、昨年10月に出されたものですが、これは米国の金融緩和の影響がどれだけあったのかをIMFが分析したものです。こちらで申し上げたいのは、アフリカを含む新興国全体でみると、投資機会が魅力的であったり投資制度が整えられたりしたために新興国に投資しようという動きがみられた訳ではなく、やはり低金利下における金余り、投資先不足が背景となって、新興国に資金が流入していったと考えられます。裏を返すと、こういった状況が終わると資金が巻き戻す可能性が否定できないという状況です。その資金流出規模については、同じくIMFのレポートですが、8ページ右側のグラフ、新興国のうち、中国、インド、ブラジル、トルコ、メキシコ、南アフリカという経済規模の大きい国をピックアップしていますが、南アについては2019年末にGDP比約1.5%程度の資金が流出するのではという試算もあります。従って、先ほど申し上げましたが、金融政策の正常化で中長期的には資金の流出の可能性は大いにあるということが考えられます。
世界の金融情勢とアフリカに対する影響を申し上げましたが、続いて、ビジネス環境と今後の可能性についてご報告したいと思います。こちらは皆さんも良くご存じのDoing Businessのランキングで、ランキングが下がっている国を青色矢印、上がっている国を赤色矢印にし、改善が続いている国の国名にシャドーをつけています。これを見ると、2016年、17年、18年という直近3年では、ケニア、マラウイ、コードジボワールといった国々で改善が続いていて、直近2年だけで見ると、ルワンダ、ベナンといった国々でビジネス環境の改善が見られています。あくまで相対的なものですが、やはり投資を考える上では相対的に投資環境を見極めて意思決定すると考えるので、ある程度一つの参考になるかと考えます。上述の国を含めて、アフリカの投資環境は徐々に改善しているかと考えますが、背景の要因としては国家元首の交代、政権交代があります。2015年以来、国家元首が交代した国々がいくつかあり、有名なところはアンゴラやジンバブエで長期独裁政権が終焉しました。アンゴラではその結果、新しい大統領の下で経済財政改革が進んでおり、信用を回復するために対外への支払いを優先する結果、外貨準備が減少したり為替が下落したりというような状況にありますが、IMFの見通しでは2018年は低成長続くけれども、それからはある程度回復すると見込まれています。アンゴラの改革がこのまま進むかは予断を許さないところですが、長期独裁政権が終焉したことによって投資環境を含めた国内の環境が改善していくことが、多くの国で期待されています。11ページは腐敗度指数ですが、こちらを見るとあまり改善がみられておらず、引き続き腐敗がアフリカにおける課題となっています。
最後に、産業振興に結びつけるわけではないですが、アフリカは色んな課題があり、先ほどからご指摘があるとおり産業育成が進みづらい中で、何か明るい材料と考えると、一つはスタートアップの存在が挙げられます。既に有名な企業や、非常に新しい企業もありますが、Eコマース関連、デジタルマーケティング、ロジスティクス、モバイルペイメント、モビリティ、ユーティリティーサービス、農業、ヘルスケア、教育など、様々な分野でのスタートアップが乱立しています。我々商社としてビジネスチャンスがあると考えられるのが、Eコマースやデジタルマーケティングかなと考えています。モバイルペイメントはすでに普及しつつあると思いますが、ヘルスケア、教育といったところでは商売が難しいかなと思う反面、これらの分野がもっともアフリカにおいて改善が進んでいないのも実態です。アフリカの国民の大半を占める地方に住む農村の人達の生活を改善できるようなスタートアップの育成が、アフリカの底上げ、経済成長に繋がるとも考えています。長くなってしまいましたが、私からのご報告は以上となります。
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モデレーター:横山
それでは近岡さんと常峰さんどうもありがとうございました。大変興味深いプレゼンテーションでございました。皆様に質疑応答ということで色々お伺いしようと思いますが、その前に私のほうからお二人にちょっとお伺いしてよろしいでしょうか。
まず三菱UFJの近岡様に一つご質問ですが、アフリカの金融市場には非効率性があるということだと思いますが、資金の需要は多いのにもかかわらず供給サイドは必ずしも多くなく、特に銀行セクターにおいては成長性も高いし収益性も高い、ということですが、その主な原因は何であると考えられますか。例えば競争が制限的であるとか、あとは非常に特殊なマーケットで、当然リスクは高いけれどもそのリスクに対応できるだけのエキスパーティーズはそう簡単に構築できないために参入障壁が高いとか。やはり市場において収益性が高くて持続的に成長しているのであれば、それなりに新規参入が出てくるとか、もうちょっと業務を拡大するなりして、そういうような動きがあってもよろしいかと思いますけど。
後もう一つ2番目の質問としては、色々世界の成長、特に新興国の成長とか発展途上国の成長を組み入れていくことが日本の民間に求められていると思いますが、日本の金融機関として、アフリカの金融セクターにおけるそういう成長を取り込むために、どのような分野があるのかとか、どのような事をして取り込むことが可能なのかというのを、難しい質問かもしれませんが、ご質問させていただければと思います。
それから、常峰さんにおかれてはどうもありがとうございます。テーパリングの件について色々お話されまして、やはり日本でテーパリングの話というと普通は東南アジアで、またアジア通貨危機が起きないかといった観点から議論がありますが、東南アジアに限らずインドでもいろいろなことを言われていたり、アフリカでもそういうことが起こり得ると、考えてみれば当たり前の事なんですけど。例えばテーパリングについては、アメリカがやられることなのでどうしようもないんですけれども、それに対してアフリカ諸国としてどのようにしてゆけばよいか、要するに一般的に考えれば、プルーデンスを強くすべきだとかそういう事だと思うんですけれども、どうしていけばよいのかを教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
パネラー:近岡
今のご質問は2つあって、1つは民間の金融機関として何が、アフリカのマーケットにアクセスする上でのバリアとなり得るかという事だと思うのですけれども、いくつかあると思います。最大のバリアは情報量の不足、経験値の不足というところが、海外から見るとやはり挙げられるのではないかなと思います。アフリカの、先ほどから色々バンカブルかどうかというようなお話が出ているかと思うのですけれども、やはり融資をするにあたってリスクを分析するのに必要な情報がローカルのところにあるかないかという所が最大の要因かなと思います。私どもの銀行の中でも、やはり分からないからリスクが高いというふうに見られている節がなくもない、という現実がございます。リスクの分析を一歩深めてゆくにはやはりそれ相応の情報の蓄積ですとか、信頼性の高いデータというのがやはり必要になってくるのではないかなと。国という単位ではIMFですとか世銀とかが情報を公開していますけれども、その情報の確からしさにもちょっとクエスチョンが付く場合もあるのですけれども、それを産業ベース、企業ベースに掘り下げた場合、プロジェクトベースに掘り下げた場合、やはりリスクとして分析しなくてはいけない情報が十分手に入らないという事は一つ大きなバリアじゃないかなと思います。あとローカルカレンシーというバリアもございます。
それから2つ目の、アフリカの成長を取り込むためにどうしたら、バンカブルという言葉がありましたけれども、成長を取り込むためには何をしたら良いかというところですけれども、民間の金融機関に出来ることというのは実はちょっと限界がありますと、いう事しか申し上げられないところもあります。我々の預金者からお預かりしたお金を貸出しに回すという中で、リスク分析、審査をして、初めて融資を行うというプロセスの中で、リスクの分析のポイントとしては、まずお金を貸出す時の基本原則として、まず資金使途、2つ目が返済原資・キャッシュフロー、3つ目が担保価値、4つ目が取引履歴、つまり今までのヒストリーですね、そういった4つのポイントが大きく挙げられるかと思います。資金使途という事で言うと、インフラ投資ということになると、それはもう使い道は明確ということでいいと思いますが、続いて一番大きな障害となるのはやっぱりキャッシュフロー。キャッシュフローはどうかと、しかも我々が持っているのはローカルカレンシーではなくてハードカレンシーベースで現地でのキャッシュフローが回るのかどうかというのが一番大きなポイントになるかと思います。日本国内でしたら担保ということが1つ重要な点ですが、残念ながら海外での融資において、担保というのはあまり考慮されないというのが正直なところです。借金を返せなくなったから港を取ってしまう、山の権利をもらってしまうという事は、日本にはできないと思います。
最後は取引履歴という事で申し上げると、日本でもそうですけれども、今までの長い業歴の中で、やはりデフォルトした履歴のある国、企業というとやはりどうしてもリスクが高いと思われざるを得ないという事もあります。これら4つの原則に照らし合わせて、バンカブルな案件があるかということになります。ちょっと答えになっていないかもしれませんが、やっぱり成長性を取り込んで、海外からの融資を引き受けるためにはこの4つの事をクリアに示してもらうことが必要なのではないかと思います。
パネラー:常峰
アフリカ諸国が、先進国が進めるテーパリングについて、どのように対処すればよいか、というところですが、まず2008年の金融危機の時期においてアフリカ諸国はダイレクトにそんなに直接影響を受けなかった、これはやはりアフリカ諸国というのが金融市場から若干切り離されていたところがあると思われます。間接的には先進国の需要が落ち込んでアフリカの成長も落ち込んだということがありますが、金融に関しては直接的な影響は少なかったかなと考えています。一方で足元の2018年の現段階においては先ほど国債を各国が独自で発行しているというお話を申し上げましたが、国際的な金融市場と結びつきが高くなってきています。まだまだアジア諸国と比べたら低いかもしれませんが、以前と比べて高くなってきており、注意すべき点かと思われます。そういった中で市場が注目するのは財政や債務の状況で、これらの状況を改善しておくことが重要かと考えます。先ほどトルコやアルゼンチンの例を申し上げましたが、そういった国々はマクロ経済環境が悪いだけでなく、政情不安を抱えていたりするため、そういったところから非常に資金が流出しやすくなっているということを考えると、政治面での安定性も重視しておくことが重要かと思います。
もう一点はやはり魅力的な市場の育成、これにどの国も苦心しているというところですが、その裏には、繰り返しになりますが投資環境の整備が必要で、そういったところを遅々としてでも改善し続けていかないと投資資金というのは呼び込めないと思われ、地道な努力を続けていくことが必要かなと思っています。
モデレーター:横山
どうもご丁寧なご回答をありがとうございました。それでは、お二人のプレゼンないし今のご回答、あと私のプレゼンも踏まえて、これからご参加の方々との間で自由闊達な議論、質疑応答をさせていただこうと思います。どなたかコメントないし質問、何でもよろしいですので、おありの方は手を挙げて。
質問者:坂梨正典(コンサルタント、前丸紅株式会社ナイロビ支店長)
個人会員の坂梨と申します。今年の3月までケニアに駐在、4月に帰国しましたが、ケニアがらみで3つお聞きします。最初にM-PESAですが、ケニアの現地商人がガラケーでちょこちょこやっていて、びっくりしました。彼らは個人取引や、友人あるいは知人への送金、公共料金の支払いに使っており、スーパーマーケットでも使っています。口座を開けない貧しい人だけではなく、裕福な人にも広がっていると思いますが、これが投資に向かうにはちょっと時間がかかると思います。先ほどアイクラウドの話が出ましたが、なかなかそこまでいくのは難しいと思いますが、どの様に考えておられるか伺いたい。
2つ目は、私が駐在していた頃、社内の投資基準に合うようなバンカブルな事業や案件がなく、苦労しましたが、一方でプライベート・エクイティ・ファンドというのがあり、アフリカ市場を対象とした国際会議が内部的に開かれて、非常に活発な議論をしている。残念ながら日本人はいないが、世界中から投資家や投資家を仲介する人が集まってやっています。そういう中で話を聞いていると、投資をして5年、7年で十分な利益を上げてエグジットしており、かなりの規模でファンドが活躍できるような所もあるのではないかと思います。土地開発案件は当然バブルっぽいところがあるがまだまだ多く、一方、農業とか製造業を含めたポートフォリオを持ったプライベート・エクィティへの投資も非常に活発です。何れにしても彼らは儲けていて、目の付け所や、目利き力や、コツを掴めば、日本としてもやりようがあるのかなと思います。
3つ目は、ケニアディアスポラ協会という組織があり、ディアスポラとは海外に出て稼いで送金をする若者達で、海外から送金したり、将来帰って起業したり、親戚や親がやっている会社を大きくするなどをやっています。彼らは1000億円くらいの送金が毎年あると言っていますが、これはかなりの金額ですが、統計としては何処に出てくるのか、先ほどのケニアの資金調達の中で、知人からの借入れとありましたが、このお金は単に家族や知人の生活費になるのか、あるいは何処かで投資に使われているのか、ご存じであれば教えて戴きたい。
パネラー:近岡
M-PESAの可能性ということで、最後にクラウドファンディングのような事ということで、夢物語と申し上げたんのですけれども、多分足元の状況で言うと、画期的なブレイクスルーがないと正直ちょっと難しいのかなと思います。M-PESAは途中でも申し上げた通り銀行ではないので、ただ決済手段という事で画期的な事を生み出したのですが、それが今アフリカの抱えている貯蓄不足、国内での、国内資金の資金供給不足というのを抜本的に解消できる魔法の杖になるのかどうかというのは、ちょっと今の段階では正直難しいとは思います。ITの進展とか、若い人達のインキュベーター、起業家の方々によって、何か従来の銀行では考えられないようなアイデアが出てきたら、もしかしたら5年10年の内に何か起きるのではないか、という期待を込めて申し上げたような次第でございます。
2つ目のバンカブル、プライベート・エクイティ・ファンドのことがありましたが、ファンドがどうやって儲けているのかという事かと思いますけれども、私もちょっとどういう例があるのか、あまり分からないのですが、アフリカでファンドが投資するプロジェクトがあるとしたら、当然ファンドというのはローン、Debtを組み入れてレバレッジを効かせて投資のリターンを稼ぐという事が通常行われると思うのですけれども、であればそこにはバンカブルと言いますか、金融家のDebtプロバイダが入ってやることがおそらく往々にしてあるかと思います。ファンドだけで要はDebtプロバイダが入らない案件で、ファンドを提供した人だけがプロジェクトで儲かったという話は私は心当たりがなく、ピンと思いつかないところがあります。このEquityとDebt、この両方がかみ合ってプロジェクトって回るのかなという印象を持っているのですけれども、ただ仰るとおり欧米のほうがやはりアフリカでのビジネスの知見があるので、多分上手いやり方を絶対どこかに、ヒントになるようなものがあるんじゃないかなと思います。ただ残念ながら日本の金融機関の立場で言うとそういった見えていない世界のほうがあまりにも大きくて、なかなかビジネスチャンスをつかみきれていないというのが正直なところです。
最後の質問の、ケニアディアスポラ協会、これは海外に行かれた方が、本国に資金を供給するということで言うと、統計上は経常収支のところの、その他移転収支のところで多分数字が捉えられるんだろうと思います。それがGDPという観点でどこに貢献するかというとちょっとそこは私も不案内なところがありますが、資金の動きというところではそこの経常収支のところには入ると思います。それがどうやって国の成長等に寄与するかというところまではちょっと勉強不足、分からないというところです。
パネラー:常峰
私からも3点について。まず1点目の、M-PESA等のモバイルマネーの投資化というところですけが、これも近岡室長のおっしゃるとおり、M-PESAを通じて金融リテラシーというのが少し改善したのかなと感じます。そこから間接金融の育成が上手く進めば投資に回りうるかなと。ただこれは制度的に難しいでしょうけがM-PESAそのものがいわゆる間接金融とコラボレーションといいますか、金融機関に変化していって投融資を行なえる、ということが実現すれば、非常にバンカブルで魅力的かと。ついでに間接金融が新興国にとっては重要だというところで言うと、やはり現地通貨建てのファイナンスがなかなかできなければ、日本企業がプロジェクトを行う上で支障をきたし、やはり現地通貨建てのファイナンスが必要となります。長期のPPAですとか、PPPの事業においても、収益が現地通貨建てで入ってくる中で、ファイナンスも現地通貨で対応しないといけない、とはいえ国内での調達は難しいというという事がプロジェクトを進める上で非常に大きな課題となっているので、是非こういったところが改善されればよいなと感じています。
2点目のPEファンドとの比較のところですが、近岡室長が仰ったのと別の視点で言うと、やはり日本企業特有の意思決定の遅さや、コンプライアンスの問題でなかなか投資決定ができず、その内に欧米にさらわれていくというような場合もあると考えます。さきほどスタートアップのところでも出てきましたがDMMさんとか、非常に活発に投資を行われていて、トップダウンで意思決定がされるところは違います。一方で商社のもそうですが、日本の大企業はそういった機動的な意思決定ができないため、動きが遅れている気もします。
最後につきましては、やはり国際収支に表れるはずですが、その資金がどう使われているかは不明で、家族の生計に回されている場合が多く、まだまだ投資という部分には至っていないのかなと考えています。
モデレーター:横山
1点だけ私のほうから、坂梨さんの2番目の点で、前のお二人が言われたことに加えて言わせていただくと、儲かるようなプロジェクトは沢山アフリカにあると思いましす。驚くほど金持ちもいっぱいいます。ただし、やはり公共性の高いインフラの場合ですと、収益性もそんなに高くないし、かつ規模が大きいので大きなお金がいると。かつそういうようなものについては関係省庁の認可が必要であるとか、パブリックセクターの関与がどうしても深く必要なものが多くなります。そういうものについてはやはりそう簡単にはプロジェクトは進まないので、そういう意味で、個別具体的に見ると儲かるプロジェクト、儲かる小さなプロジェクトはいっぱいあると思うんですけれども、だからと言ってそれがアフリカの開発で全体の底上げにつながるようなプロジェクトまで数が足りるか、規模が足りるかというところで課題があるということだと思います。
次にどなたかコメント、ご質問何でも。
質問者:堀内伸介(アフリカ協会顧問、元ケニア大使)
不手際があり、録音が不明瞭で記録できませんでしたが、質問の要旨は次の3点でした。
① MPESAは何故投資資金に廻せないのか。
② ナイジェリアの投資資金は高い利回りの国債に向かっているのではないか。
③ アフリカから流れ出る膨大な資金について
パネラー:近岡
最初にM-PESAのところをちょっと、ご説明申し上げます。M-PESAは、確かに皆さんがキャッシュを入金してということで、信託勘定になっていると申し上げたのですけれども、信託勘定をリスクのないものに多分運用されている。そこまでです。したがってリスクマネーにはならないんですね。ですから、国債を買ってその金利部分は信託勘定を原資として生み出されているのですが、利益部分は信託している人に帰属しなくて、私がサファリコムで聞いたときは、その資金を使って寄付みたいなことをやっているということのようです。要はその資金はあくまでもお預かりした金なので、1%たりともリスクを背負ってはいけないという運用だけしかなされていないというのが私の理解です。ですから残念ながら、信用創造といいますか貸出には回せないのが今の仕組みの限界になっていると思います。
パネラー:常峰
ナイジェリアの資金が、民間投資、産業投資よりも国債投資に向けられているのではというところですが、確かに国債の利回りが高いというところは今でも変わっていないかなと。最初の4ページでご紹介しましたが、国債の発行を見ても、やはり国内の投資に回っている分が多いと思われます。ただし、外貨建て国債が買われている側面を見ても、依然として旺盛な需要があると考えられます。アフリカの方のマインドというのが保守的かどうか、国によって非常に違ってくるかと思いますが、依然としてある程度お金がある方が国債で回しているのが実態かと思っています。やはり金融市場が拡大する中で、国債発行、消化も助長されているかと思います。不正な資金の利益ですけれども、ちょっとこれはよく分からないところです。
モデレーター:横山
最後のご質問なんですが、多くの資金が不透明な形、不正にアフリカから流出しているのは、大きな問題です。採掘産業について、そのような問題に対応するために、国際的に透明性を高めるイニシアティブが進行しておりまして、私どもとしてもそういうような問題意識を持っております。もしもこういうようなものが透明になって、アフリカ諸国の国庫に入るようであればアフリカで必要な資金のかなりの部分が国内資金で賄われるということで、おっしゃるとおり引き続き非常に重要な課題となっております。
それでは次のご質問どうぞ。
質問者:松山良一(アフリカ協会顧問、国際大学理事、前国際観光振興機構理事長)
私は、2011年までボツワナに勤務しておりましたもので、最近の金融情勢はあまり存じていませんでしたが、いろいろご説明戴きありがとうございました。
それを踏まえて1-2点質問しますが、横山さんの資料の5ページ目で、経済多角化のための課題というのがあり、貧困層のエンパワーメント、雇用創出、投資の3つが課題となっており、逆に言うと資金ニーズがそこにあるということだと思います。その中で2011年までの感覚で言うと、インフラでは中国が席巻していて、相当多くを受注していました。そういう点を踏まえて、この3つの資金ニーズに対する日本企業のこれからのチャンスはどういう所にあるのかという事です。貧困層、これはマイクロファイナンスなどを使ったり、いろいろな新しいビジネス、産業が出来ていますけれど、たとえばそういうところに日系企業が行くチャンスがあるかどうかを伺いたい。インフラ投資は、ファイナンスによる場合は政府補償がないとダメだということで、当時はなかなか前に進まず、そこに中国がどんと出てきたという事例がありました。それを踏まえまして、日系企業の3つの課題におけるビジネスチャンスはどういう所にあるかと言う質問です。
もう一つは最近の情勢で、中国がインフラ投資に重点を置いているのはそれなりに理解していますが、この貧困層、それから本当の金融ニーズがある雇用創出、この分野において今の中国の動向は如何なのか、その2点を教えて戴きたいのでよろしくお願いします。
モデレーター:横山
ありがとうございます。日本のビジネスチャンスということなんですが、アフリカのインフラ需要は膨大ですし、多岐にわたります。日本企業の観点からすれば、日本企業の強み、ここだったらいけるという所に出て行かれるのかなと思います。アフリカ側の観点から言うと、幅広い分野で大きなビジネスチャンスがあるということになります。具体的には、先ほど私のプレゼン資料でありましたHigh-5ということになります。その中でも、電力というのはやはり大きなセクターで、電力はアフリカの開発課題の一丁目一番地です。例えば農業分野でもポンプを動かすために、水を動かすためにも電力が必要ですとか、産業化するためには必ず安定的な電力供給が必要だとか、教育、医療でも電力が不可欠ということです。その中で例えば、日本でIPPやEPCでどんどん入っていこうとされている商社さん達がいます。あと、国は限られるんですけれども地熱蒸気の出ているところについては、地熱発電所関係のビジネスチャンスがあります。地熱発電所のボイラーとかタービンとかについては、世界の6、7割は日本企業のタービン、ボイラーが入っていますので。地熱蒸気が出るところは大地溝帯といったところに限られるのですけれども、一番今進んでいるのはケニアです。あとエチオピア、ジブチ等でも地熱発電を開発しようとしており、そういうところは日本企業のビジネスチャンスの可能性が非常にあるのかと思います。後は既存、新規の石炭火力発電所で、脱硫装置などとかはあり得るかと。鉄道等の交通インフラについても、他の国が協力した事業で評判が良くないものも出てきているので、今後日本に対する期待は高まってくると思いますし、ビジネスチャンスもチャンスもあろうかと思います。もちろんスペックを先方の需要に合わせつつ値段を安くする事ができるかとか、そういう課題はあろうかと思いますが。
あと電力関係のグッズでは、先のTICADのモニタリング会合の後のJETROのセミナーで仰っていたのでここで言ってもよろしいかと思いますが、例えば東芝80%、中国20%の合弁会社が、日本クオリティでより低価格の生産を行い、アフリカに出ていくことも考えていると承知しています。また、インドの子会社を通じてアフリカに進出している例もございます。このような第三国協力も利用しつつエネルギーセクターでアフリカに出ていくことも可能だと思います。
農業分野でも、トラクターとか、いろいろな可能性はあろうかと思います。先ほど近岡さんのお話にもありましたけれども、バンキングで出ていくとなるとそれなりに相当ハードルが高いんですけれども、ただ一方でEマネーとかモバイルマネー的なものだと、日本に比べて規制が緩やかなので日本ではできない実証実験的なこともアフリカで出来るので、チャンスはあろうかと思います。この分野でタンザニアに出ておられる方もいます。また、医療分野で、小型のレントゲンといった医療診断機器を持って行って、かつそれをネットにつないで、遠隔地から情報を送れるようにするとか、色んなビジネスのチャンスがあると思います。特に貧困層が多く、人口密度の低い地域が多く、連結性が良くないアフリカにおいて、ICTを活用した貧困層向けのビジネスについてもチャンスがあろうかと思います。日本企業が、現地の代理店等を通じて単に製品を輸出販売するのでなく、本格的に進出するということになれば、当然、雇用創出効果、技術移転効果は大きいですし、アフリカ側はこれを期待しております。中国が関与するインフラ事業について、雇用創出効果、技術移転効果については、評判は宜しいとはいえないプロジェクトが散見されるという印象を受けております。
パネラー:近岡
1点目の、中国が席巻しているインフラビジネスにおける日本企業のチャンスのところでですね、少し加えさせていただきますと、インフラ投資という言葉の定義自体が非常に広範ですと。つまり本来政府が供給すべき公共財、道路とか橋とか教育、これはキャッシュフローを生まないインフラ投資になります。これについては残念ながらアフリカの国がPPPと声高に叫んでも、これはどうしても民間は無理です。公共財というのはあくまでもその国の税収によって賄われるべきものであって、そこにファイナンス付けて借金をすると残るのは借金だけになりますので極めて危険だと思います。そういった資金使途をあまり考慮せずに、もしかしたら中国という国、特定の国で申し上げてあれなんですけれども、ファイナンスをしているのかも知れませんし、先ほど横山所長が仰ったとおり、ファイナンスは付けるけれども結局鉄もセメントも人も中国から持ってくるということですと、結局お金が戻り戻って残ったものはインフラと借金だけと。しかもキャッシュフローを生まない借金だけと、いうことになりかねないので、そういったキャッシュフローを生むものと生まないものをまず明確に分ける必要があるかと思います。キャッシュフローを生むものというと例えば交通インフラ、それから電力。そういう点については日系企業も、先ほど横山所長が仰ったとおりチャンスはあると思います。ここでやっぱりキーになるのは返済原資とキャッシュフローになるのかなと思っております。
パネラー:常峰
インフラ投資の部分で、やはり中国がどんどん投融資しているのは実態です。日米欧と比べてルールに縛られずにどんどん、即座に支援をしているところがアフリカ諸国にとっても重宝されているのかなと考えます。必ずしも金利等の条件が良い訳ではなく、インフラの質も良くないと常々言われていることですが、そういった状況でも即座に支援してくれるところが非常に受ける側としては便利で、そこから抜けられない状況になってしまっているというのが続いていると考えられます。その結果、債務の拡大という点では、今までは国際金融機関やパリクラブのようなところからの資金借入れが中心でしたが、足元で債務が増えているのは中国やパリクラブ以外の融資による、と言われています。雇用創出の部分に関しまして、一番雇用を創出できているのは製造業ですが、製造業を含めて自国単独では出来ず、支援を受けながらすすめる訳ですが、とは言ってもやはりインフラが整っていないため、なかなかニーズは大きいけれどもうまく行かないという問題も抱えています。
モデレーター:横山
それでは最後に何名かの方に、どうぞ。
質問者:吉田志保(豊田通商株式会社 アフリカ事業開発部 アフリカ企画グループ)
大変分かりやすいご説明をありがとうございました。質問が2つあって、1つ目は近岡様で、2つ目は常峰様にご質問致します。
1つ目はプレゼンシートの9ページ目で、重箱の隅をつつくようで恐縮ですが、先ほど口座保有率のケニアとインドについて触れられましたが、その下に69.6%の2017年ということで、南アジアとありますが、これはインドを除いた場合でしょうか。
パネラー:近岡
インドを含んでいます。
吉田志保
あーなるほど、分かりました。ありがとうございます。
2つ目の質問に関しては、こちらもプレゼンシートの7ページ目でユーロとのペッグということで、CFAフランの流通について触れられていたかと思いますが、西アフリカのWAEMUの各国以外にもECOWASを含めた形で、将来的には2020年くらいに導入するとか、一部のレポートに書かれています。このユーロ建てとも連動した金融政策を採った場合、先ほど少しご説明戴きましたが、もう少し具体的にプラス面と、もしマイナス面があれば、短期的、長期的な部分を教えて戴きたいと思います。
短期的に考えると、自国通貨が不安定なので、やはりCFAフランのような、流通している、ユーロともペッグと言うんですか、担っている通貨が共通通貨として域内の経済の共通通貨として流通すれば、それは西アフリカや中央アフリカの経済のプラスに働くんじゃないかなと単純に思ってしまいます。
一方で自国経済の独自性とか、いやいやそうではないというような意見を、ご説明戴ければ有難く思います。
パネラー:常峰
はい、ありがとうございます。今のご質問、ユーロにペッグしたCFAフランの短期的、長期的なメリット、デメリットですが、ご指摘いただいたとおり、為替の安定というのは投資をする上でも非常に重要です。かつ、CFAの制度上、外貨不足の懸念が軽減されるのであれば、やはりエチオピア、アンゴラ、ナイジェリア等で一時期外貨が非常にタイトになって、トレードさえできないというような状況から比べると、経済の安定という側面で非常にメリットがあると思われます。一方で、これはユーロの例を見てもお分かりになると思いますが、各国それぞれの経済情勢を反映できない、独自の金融政策を採れないというところが、今後、発展が進んだ段階においては問題になるかと考えます。世界全体を見回してみますと、各国の発展段階に合わせてペッグ制から変動相場に移行してきている国が多い中で、今の経済規模であれば南アフリカぐらいでしょうが、非常に先進的な国であれば変動相場が望ましいと考えます。西アフリカの国々でも各国の発展段階の違いを踏まえると、もしかしたらCFAフランからの離脱という状況も中長期的には有り得るかなと考えております。
質問者:伊藤邦明(BNPパリバ東京支店シニアアドバイザー、元アンゴラ大使)
大変クリアにお話し戴き、良く分かりました。ちょっと実務的な面からも質問をさせて下さい。仮に先進国の金融機関が、どこかに良い民間事業プロジェクトがあって融資をしようとした時に、色んな実例がありますが、いわゆるイラン、スーダン、北朝鮮に関連しないかとか、あるいは政治的にエクスポーズドされた国会議員とか元大使とかが絡んでいないかを調査するので極めて時間がかかって、途中で止まってしまう事も多い状況です。それの一つ解決方法として、現地で政府出資の開発銀行をきちんと育てて、それをツーステップローンの窓口として使えるんじゃないかなと思っています。その点についてご見解をお聞かせ下さい。
パネラー:近岡
そうですね、今のご質問で言うと、例えば南アフリカですとDBSAのような開発銀行がすでにありツーステップローンという仕組みというのは既に存在します。ご指摘のとおり借入人のKYCですとか、そういった経済制裁チェック等の関係で、本当にすみずみまでシロでなければプロジェクトにファイナンスできないというのも確かに事実です。ただ地場開発銀行を使ったツーステップローンだったらそれが解決するかという事で申し上げると、地場開発銀行がプロジェクト全体のリスクを取ってくれて民間金融機関は、そのファンディングだけするのであればありえると思います。ただ残念ながら開発金融機関一行では、金額の大きなプロジェクトでなかなかファイナンスできないということになってシンジケーションで民間銀行も参加せざるを得なくなるというと、債務者を徹底的に調べるというのは避けては通れない道ですし、そこがシロという結論が出ない時には、今のOECDの先進国ガイドラインに沿った銀行からファイナンスできないというのは、これはもう仕方がないのかなという状況ではございます。
モデレーター:横山
開発銀行というのが、国レベルとか、ECOWASなどの地域レベルといったところなのか、それとも当行のようなパンアフリカ的なところも入ってくるのかよく分からないんですけれども、例えば当行の場合だと、民間の金融機関と一緒に協調融資、それはパラレル融資でやることもあり得ますし、民間の金融機関にとってはあまりうまみが無いのかもしれませんが、Aローン、Bローンという形でうちのPCS(Preferred Creditor’s Status)の恩恵を得る形での融資ということもあります。
パネラー:近岡
Know Your Customerやマネーロンダリングの規制は大変厳しいので、とにかく徹底的に表に出てくる情報を調べるというのが今のトレンドですので、そこは省略できないプロセスなのかな、ということかと思います。
モデレーター:横山
まだお時間が許されるということなので、最後にどなたか、もしもお聞きになられたいこと、その他コメント等おありでしたらどうぞ。
もしもなければ、お二方どうもありがとうございました。
(拍手)
司会:成島
議論はまだ尽きないようでございますけれどもお時間になりましたので、この辺りで第9回フォーラムを終了させていただきます。2時間に亘る講演及び討論にご参加いただきまして大変ありがとうございました。
では改めまして、モデレーターをお務めいただきましたアフリカ開発銀行横山所長様、パネラーとしてご講演頂きました三菱UFJ銀行近岡室長様、丸紅経済研究所常峰様に拍手をお送りしたいと思います。よろしくお願いいたします。(拍手)
ありがとうございました。それではこれをもちまして終了いたしますが、会場の後にコーヒーを用意してございますので、もう30分ほど、コーヒーをお飲みいただきまして、ご歓談いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
第4回在京大使との懇談会開催
- イサ駐日ナイジェリア大使との懇談会
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Country-study Meeting with H.E.Prof.Mohammed Gana Yisa
Ambassador of the Federal Republic of Nigeria to JapanThe Society held its fourth Country-study meeting on 22nd August at the International House in Tokyo, with the presence of H.E. Prof. Mohammed Gana Yisa, Ambassador of the Federal Republic of Nigeria to Japan. (Number of attendants; 34 persons.)
The Ambassador explained that Nigeria has the biggest population and economy in Africa, and its economy is the strongest in the continent. It enjoys direct freight access to North and South America, Europe and Asia.
At independence, its economy was dependent on mainly agriculture such as cocoa and rubber, but later with the oil-boom in the 1970’s, its crude oil became the important engine of its economy. Against the background of declining prices of the crude oil in recent years, the Government took deliberate steps to change the situation not to rely on oil resources only, and decided the new blue print known as the Economic Recovery and Growth Plan (ERGP: 2017-2020) and has been trying to realize the plan. For the plan to be fully operational, development of such sectors as energy, transport, agriculture and health is deemed essential under a PPP (Public Private Partnership).
To promote such sectors , investment promotion will play a vital role and the
ECOWAS trade liberalization Scheme (ETLS) will also have roles to play. He also mentioned the Nigeria-Japan trade relations and mentioned the importance of such area as the development of 8 important mineral resources. The Ambassador also said that his government has been trying to simplify
business registration procedures so that it will become easier for businessmen to start business in Nigeria. Lastly he mentioned that the militant Boko Haram forces are not so influential and many regions in the country are free from its operations, and that under such environment, 40 Japanese companies have been operational in Nigeria safely.From the members of the Society, such questions were raised; (1) What are the policies of the Government on the use of insecticides against Malaria and other communicable diseases? (The Ambassador explained that there are certainly infection of the Malaria disease, but the Government has been increasing the number of treatment centres and the diseases-control staff for educating local people. For the prevention of diseases such as Ebola Fever, control at the air and sea ports has been strengthened.)
(2) Japan has been assisting Africa’s efforts to increase production of rice through CARD (Community of Africa’s Rice Development), and what are the plans the government has on the ways to reduce the amount of post harvest loss and other shortcomings in relation to rice cropping? (The ambassador replied that due to several reasons, such loss are made, but the Government has been trying to develop rice production by giving low-interest loan facilities for the farmers, or to help develop seeds, fertilizers, agricultural machinery, transport, technical education courses , etc)
(3) It is deemed important to develop alternative sources of energy supply in Africa. There is a Japanese company making efforts to introduce solar energy in the rural parts of Nigeria. (The Ambassador said he knows such cases and mentioned that for small-size communities, there would be much room left for developing solar and other means of alternative energy resources.)
(4)What do you think of the Naira/US dollar rates after the coming general election of Nigeria next year? Will it change? (The Ambassador said that the recent rates between the two currencies were rather stable, and therefore there are no reasons to believe there will be big changes after the election next year.)
(5) On the present congestion in and around the Lagos Port Area, has the Government any plans to resolve the issue? (The Ambassador said his Government has plans to solve the issue.)イサ駐日ナイジェリア大使との懇談会
8月22日午後、国際文化会館において、モハンメド・ガーナ・イサ駐日ナイジェリア大使に同国事情を伺う会を開催しました(会員企業等から出席者32名)。先ずイサ大使より同国がアフリカ最大の経済と人口を有しており、また地理的にはギニア湾に面し、米大陸、欧州方面への空と海の便もよいこと、経済面では独立当初はココア、ゴムなど農業中心の経済であったが、その後1970年代に石油資源が開発されるとともに、原油生産が同国経済を牽引したこと、また近年の原油価格の下落と不安定な状況を踏まえ、政府は石油依存からの脱却を図り、他の産業をバランスよく発達させるため、ERGP(経済回復及び成長計画:2017-2020)を策定し、現在その実施に努めていること、そのためにはエネルギー、運輸、農業、厚生面での開発が重要であり、プライベート・セクターと公的セクターの密接な協力(PPP)を図る必要があること、このために投資が必要であるが、ECOWASの通商自由化計画とも関係があること、現在の日本との貿易関係と、今後投資が見込まれる分野、特に8つの鉱物資源の開発などについても説明がありました。更に、同国でのビジネスを始めることがより容易になるための種々の計画を政府が有し、実施に移していること及び、近年ボコ・ハラムの影響があたかもナイジェリア全土に及ぶかのような誤解があるが、ごく少数の州であり、ナイジェリア国内で活動する40の日本の会社は通常に活動を続けていることについても説明しました。
会員企業等からは、マラリア対策の薬品使用についての政府の考えと他の疾病予防と治療の対策(大使から、長い雨季があることなどからマラリアが存在するが、コントロールセンターの設置、地域住民への教育等を行っており、また近年のエボラ熱の蔓延に際しては、衛生スタッフの増員、入国時の対策強化などの手も打っていることの説明がありました)、日本はアフリカにおけるコメ増産計画(CARD:アフリカの稲作振興のための共同体イニシアティブ)などに協力してきたが、農産物の収穫後のロスを少なくすることを含め、ナイジェリアのコメ増産に対する考えを知りたい(大使より、いくつかの理由から収穫後のロスが生じているが、政府は米増産のための、農民への低利のローンの供与など、種々の対策を講じており、その他種子、肥料、農業機械、加工、輸送などの点でも技術指導などの支援を行っているとの説明がありました)小口電力供給の為の開発を進めることは重要と思うが、日本の会社で太陽光発電に関心を有し、既にナイジェリアで活動を始めている企業がある(大使より、小規模の共同体では特に太陽光発電などが有効であると思う旨のコメントがありました)、来年の総選挙がナイラ(同国の通貨)の対ドル交換レートに影響をもたらす可能性があると考えられるか否か(大使より、最近ナイラの対ドルレートは安定しており、来年の総選挙によっても大きく変動することがあるとは思われないとの説明がありました)、現在のラゴス港の混雑緩和への解決策はあるのか(大使より、いくつかの案がある旨の返答がありました)などの質問が出されました。
(担当委員:鈴木優梨子)
第9回フォーラム
「アフリカにおける金融と産業振興」
日時: 2018年8月6日(月)14:00~16:00
場所:国際文化会館 別館2階講堂
参加者:当協会会員、政・官関係者、研究者・学生など 35名。
モデレーター: 横山 正 アフリカ開発銀行アジア代表事務所 所長
パネラー: 近岡祐一 三菱UFJ銀行 経営企画部情報戦略室 室長、常峰健司 丸紅経済研究所シニア・エコノミスト
淺野副理事長による開会の挨拶のあと、アフリカ開発銀行横山所長にモデレーターとなって頂き、その後パネラーのお二方からお話しを頂いた後、フロアーと意見交換を行う形式で進行しました。
まずアフリカ開発銀行横山所長から、“アフリカの金融情勢の現状“に関するプレゼンがありました。アフリカでは、銀行口座の保有が少なく金融サービスの浸透率が低い、他方銀行口座を必要としないモバイル・バンキングが東アフリカを中心に広がっている、銀行セクターは急速に伸びており利益率も高いがまだまだ伸びしろはある。課題としては必要な資金と供給される資金にギャップがあり、特にアフリカ全体で500万社あると言われる中小企業は、雇用の58%、GDPの33%を占めているが、融資を受けているのは22%に過ぎず、金融機関との需給関係にミスマッチがある。今後海外からの公的援助が減少する中で、アフリカ側にも海外の民間投資を誘致するために、経済多角化を推進するなどの構造改革が急務となる、例えば規制環境の改善・賃金の助成等により貧困層のエンパワーメントや雇用創出、持続的な成長の為のインフラ投資などが求められるとのことでした。
三菱UFJ銀行近岡室長からは、“アフリカ金融取引の現状~問題点と可能性”
についてのプレゼンがありました。まずモバイル・マネーを含む金融口座の保有率は、ほぼ50%前後とそれほど低くはないが、金融機関の貯蓄利用率は低いこと、従い金融機関からの資金調達利用率は非常に低く借り入れ手段は親類・友人などからの借り入れが多いことが述べられました。さらに金融取引に関してはモバイル・マネーを中心に口座開設は拡大しているが、金融セクター・民間銀行による信用供与は他の地域と比較するとアフリカは南ア・モロッコなど一部の国を除くと余り増加していない傾向となっている。これらから見て、モバイル・マネーの普及は銀行ATMの少ないサブサハラ地域であくまでも簡便な決済手段としての利用であり、産業振興に必要な信用供与の創造には繋がっていないとのことでした。
丸紅経済研究所の常峰シニアエコノミストからは、“金融政策正常化の影響と今後の可能性”と題してアフリカのマクロ金融環境に関するプレゼンがありました。
アフリカの経済は資源市況に左右されると言われるが商品市況が伸び悩む現状でもサブサハラは3%を超える成長を継続している、2023年にかけて多くの国で財政収支・政府債務は改善すると思われ外貨準備はアンゴラを除き改善傾向にある、但し赤字基調は変わらず、資金調達環境の改善に伴い自国通貨建ての国債発行が進み、特にナイジェリア・南ア・ケニアなどでこの割合は大きくなる。米国の金利が上昇するにつれ各国の金利も上昇傾向にあるがそれでも為替への影響は限定的、新興国への資金流入は米国金融環境の緩和が加速要因で国内要因は少ない。ビジネス環境は徐々に改善してきているが世界的には未だ評価は低い。2015年以降国家元首が相次いで交代し、特に長期独裁政権が終焉したが特に大きな混乱はなく総じて安定的な権力移行が進んでいる。他方腐敗認識指数は顕著な改善は見られず、今後の課題となっているとのことでした。
その後、参加者の皆様との質疑・意見交換に入り、M-PESAが投資に向かう可能性(現在は決済手段であり投資には行かない)、海外居住者からの送金の主な使途は日常生活費か(経常収支で言えばその他移転収支に分類されていると推測される)、日本企業のアフリカに進出する機会及び分野は何か(電力インフラ分野であり、地熱発電用タービン・石炭火力脱硫装置・交通インフラなどが期待される)、中国企業の動きはどうか(国家企業であり資金返済が難しい場合は資源で回収できる強み、日本企業にも協調の動きがある)、アフリカ内部の資金をうまく活用できるか(株式市場の育成に尽くす人材が少なく、equity providerがいないなどの問題点がある)、など多くの分野について議論が交わされ、活気のあるフォーラムとなりました。
フォーラム終了後の茶話会では、コーヒーカップを片手に議論の続きや意見の交換を5時近くまで行い散会致しました。
第7回大使を囲む懇談会開催
- 柳沢・駐マラウイ共和国大使を囲む懇談会
- 7月25日午後、国際文化会館会議室において柳沢香枝駐マラウイ大使を迎え、同国の近況について伺う会を開催しました(会員企業等から出席者計18名)。冒頭柳沢大使より同国の基礎的な概要、内政と主要政党の概要、来年の総選挙を控えた動向、選挙の争点と考えられるものは何か、経済状況(マクロ経済指標、電力開発計画、貿易投資状況、主要投資国、最近の国際観光エクスポ開催、マラウイ投資フォーラム開催、中国の動向、日本との経済(日本マラウイ投資セミナーの開催、マラウイ投資フォーラムへの日本企業の参加、進出している日系企業の実例他)などについて説明があり、次いで出席者から、マラウイ湖のタンザニアとの国境問題の現状、来年開催予定のTICAD7への関心、国土が狭いので水資源への期待が大と思われるところ水不足などがあるのか?魚の養殖は開発されているのか、製造業のポテンシャルの有無、一時日本の一品一村運動に関心を有したと理解するがその後の状況如何、世銀のDoing-Businessの順位が上がったと聞くが外国送金の規制や金融引き締めはあるのか?第3回投資フォーラムで鉄道開発を重視する議論はあったか?他の西側諸国の今後の対マラウイ開発援助の動向、日本に対して特に期待するものは何か?ウラン開発の現状などについて質問がありました。(担当委員:鈴木優梨子)