フォーラム

第9回大使を囲む懇談会開催

  • 志水駐南アフリカ大使を囲む懇談会
  • 9月8日、国際文化会館において、志水史雄 駐南アフリカ大使を囲む懇談会が開催されました。概要は次の通りです(会場:18名、オンライン:18名参加)。
    【講演要旨】
    1. 政治情勢:2024年5月の総選挙で、これまで国民議会で常に多数を占めてきたアフリカ民族会議(ANC)が初めて過半数割れし、民主同盟(白人・カラードを中心とする政党)を含む10政党による連立政権(GNU)が成立した。ANCが支持を失った原因として、貧困や格差(注:ジニ係数0.67)、高い失業率(33%、若年層では63%)、公共サービスの質の低下など、国民の不満の高まりが挙げられる。しかしながら、選挙結果を受けて暴力沙汰などは発生せず、平和的に連立政権への移行が行われた。このことは南アでは憲法に基づく民主主義が定着しており、市民社会も強力であることの証左として特筆される。GNUの政権運営については、連立内での調整が難航することもあるが、総じて前に進んでいるように見える。
    2.南ア大統領:大統領は、国民の直接選挙ではなく、国民議会で選出される。南アではANC総裁の任期(次回総裁選は2027年)と、大統領選出に直結する総選挙(次回総選挙は2029年)のサイクルのズレから生じる問題がある。憲法上大統領は3選禁止なので、現在2期目のラマポーザ大統領の任期は2029年までだが、 2027年の総裁選で(ラマポーザではない別の)新総裁が選出される場合には、現大統領の任期中に大統領が交代する可能性があり、注目される。なお、南ア民主化後の歴代大統領の中で2期の任期を全うした人物はいない。
    3.経済情勢:昨年の名目GDPはアフリカ第一位であった。GDPの6割はサービス業が占め、ダイヤモンドや金の採掘による資本蓄積を背景に、金融業が発達。産業バリューチェーンも、アフリカ諸国の中では発展している国。他方、国営インフラ企業の過去の腐敗、非効率、累積債務等により、エネルギーや物流にかかるコストが高く、政府の国営企業支援などによる多額の財政赤字の継続、といった問題もある。
    4.外交:ネルソン・マンデラの「非同盟を旨とし、敵対国を作らず、どの国とも仲良くする」外交方針は継続。かつてアパルトヘイト解放闘争を支援してくれたロシア(旧ソ連)や中国との関係は今日も強固。最近ではBRICSの枠組みでの協力を重視し、多極化世界を志向。南アは、いずれかの国に自国の安全保障を依存するような同盟関係を構築しておらず、また実際に南アの安全保障を直接脅かす国が存在しないことから、現在の国際秩序・国際情勢に疑義を認めた場合、それをはっきり主張する傾向がある。例えば、ガザ情勢については、イスラエルがジェノサイドを行っているとしてICJに提訴するなど、国際法を重視した外交を展開している。ウクライナ問題については、直接のロシア非難は避けつつも、ウクライナの領土一体性は支持しており、また、ロシアからのウクライナの子供達の帰還についての決議案には賛成した。
    5.対米関係:2025年5月、ラマポーザ大統領がトランプ大統領と会談を行った際、「南アで白人農家に対してジェノサイドが行われている」という批判がプレスの前で展開された。これに対して、南ア側から同席していた白人の閣僚などが相次いで反論したこともあり、その場は収まったが、トランプ大統領の持論は変わっていないと思われる。米国による関税措置についても、AGOAによる貿易優遇措置は、南アに対しても適用されることとなったが、12.5%の追加関税は課されている。
    6.G20:昨年南アはG20の議長国を務め、11月の首脳会合には高市総理も出席。他方、米国は、首脳会合には出席せず、本年議長国として開催するG20の会合に南アは招待していない。
    7.日・南ア経済関係:凶悪犯罪が日本と比べて非常に多いなどの問題はあるが、アフリカ大陸へのゲートウェイとして、現在260の日本企業拠点が設置され、約1000名の日本人が長期滞在。南アにとって日本は第5位の貿易相手国であり、第7位の投資国。日本からは自動車等を輸出、南アからはプラチナ、マンガン、クロム等の鉱物を輸入。日本からは様々な技術協力を実施してきているが、最近ではエネルギー移行、脱炭素化を推進するための官民連携の各種協力も実施中。
    【質疑応答】
    講演を受けて質疑応答が行われました。参加者からは、例えば、①計画停電の現状、②電力公社ESCOMの抱える問題と政府のエネルギー政策、③水道などの生活インフラの現状、④先般発生した不法滞在外国人退去を求める大規模デモの在留邦人への影響、⑤ANCと労働組合との関係など、多岐に亘る質問が途切れることなく続きました。志水大使からは、参考情報にも種々言及しつつ、ひとつひとつに非常に丁寧な回答がありました。

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