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- 「生物多様性とパンデミック報告書」
- 【月刊アフリカニュースNo.98掲載】
- “Workshop on Biodiversity and Pandemics”
Intergovernmental Platform on Biodiversity and Ecosystem Services(IPBRS)
IPBRS、10月30日https://ipbes.net/sites/default/files/2020-10/20201028%20IPBES%20Pandemics%20Workshop%20Report% 本文
https://ipbes.net/sites/default/files/2020-10/IPBES%20Pandemics%20Workshop%20Report%20Executive%20Summary%20Final.pdf サマリー
・報告書によれば、 パンデミックは予防戦略がなければ、より頻繁に出現し、より急速に広がり、より多くの人々を失い、これまで以上に壊滅的な影響を世界経済に与えるであろう。
自然界に見られる微生物の多様性からパンデミックが出現する。
・大多数(70%)の新たな疾患(例えばエボラ、ジカ、ニパ脳炎)、およびほとんどすべての既知のパンデミック(例えばインフルエンザ、HIV/エイズ、COVID-19)は、人獣共通感染症である。
・現在発見されていないウイルスは、170万種と推定され、多くは哺乳類と鳥類の宿主に存在すると推定されている。このうち、540,000~850,000が人に感染する能力を持つ可能性がある。
・パンデミックの可能性を持つ病原体の最も重要な宿主は、哺乳類(特にコウモリ、げっ歯類、霊長類)といくつかの鳥(特に水鳥)だけでなく、家畜(例えば、豚、ラクダ、家禽)である。
人間の生態学的混乱と持続不可能な消費がパンデミックのリスクを促進する。
・パンデミックのリスクは急速に高まっており、毎年5つ以上の新しい病気が人々に出現しており、そのうちの1つが広がり、パンデミックになる可能性がある。
・人間の活動とそれが環境に及ぼす影響によって新しい病気が引き起こされるので、病気の出現で野生動物を非難することは、誤りである。
・土地利用の変化、農業の拡大と強化、野生動物の貿易と消費、およびその他の社会の動きによる環境の利用は持続不可能であり、野生動物とその微生物間の自然な相互作用を混乱させ、野生動物、家畜、人々、および病原体間の接触を増加させ、ほとんどすべてのパンデミックにつながる。
・COVID-19が世界経済に与える真の影響は、ワクチンが完全に配布され、その伝染が無くなった後にのみ正確に評価することができる。しかし、そのコストは2020年7月までに世界で8〜16兆米ドルと見積もられており、2021年の第4四半期までに米国だけで16兆米ドルになる可能性がある。(ワクチンがそれまでにコントロールに効果的であると仮定)。
・保護地域の保全と、生物多様性の高い地域の持続不可能な利用を減らせば、野生動物と家畜の接触を減らし、新しい病原体の波及を防ぐのに役立つであろう。
土地利用の変化、農業の拡大、都市化が新たな疾患の原因である。
・土地利用の変化は、パンデミックの原動力であり、1960年以降に報告された新しい疾患の30%以上を引き起こしている。
・土地利用の変化には、森林破壊、主に野生動物の生息地における人間の居住、作物や家畜の生産の増加、都市化が含まれる。
野生動物の貿易と消費は、世界的にパンデミック出現の重要なリスクである。
・野生動物の貿易は人類の歴史と共にあり、多くの国の人々、特に先住民族や地域社会に栄養と福祉を提供している。
・全ての野生の陸上脊椎動物の約24%が世界的に取引されている。国際的な合法的な野生動物取引は、過去14年間で価値は5倍以上増加しており、2019年には1,070億米ドルの価値があると推定されている。違法な野生動物取引は年間7~230億米ドルの価値があると推定されている。
地球環境変化を減らすことはパンデミックリスクを減らすかもしれない。
・パンデミックリスクは、責任ある消費を促進し、持続不可能な消費―野生生物と
野生生物由来の製品、および家畜からの肉の過剰消費―を削減することで減少する。
・保護地域の保全の対策として、生物多様性地域からの過剰な収穫、野生動物と家畜の接触を減し、新しい病原体の波及を防ぐ。
現在のパンデミック戦略は病気が出現した後に病気をコントロールすることを目指す。
・この戦略は多くの場合、生物多様性に依存し、それに影響を及ぼす可能性がある。
・バンデミックに対する今までの対応は、病気の後の封じ込めとコントロールを目指し、
ワクチンと治療開発へのアプローチであるが、病気が発生する前にパンデミックのリスクを減少することが期待される。
・ワクチンと治療開発は、自然界に見られる微生物、分子、遺伝子の多様性へのアクセスに依存している。
・多くの重要な治療は、先住民族の知識と伝統的な薬から得られている。
結論
この報告書は変革の必要性を主張し、学問的証拠を用いてパンデミックを防ぐための政策のオプションを提示している。政策の多くはコストが高く、実行が困難で、その効果が不確かに見える。しかし、経済的な分析から見れば,COVID-19の何兆ドルの影響に比べれば、僅かなものである、ましてや将来の疾病を考慮に入れれば、尚更である。