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- 「世界賃金報告書 2018/2019: 性別格差の要因」
- 【月刊アフリカニュースNo.74掲載】
本報告書は、世界136か国のデータを元に、①世界における性別の賃金格差とその推定
方法、②政策立案者、企業、及び労働者に、賃金格差の原因と政策課題、を提案して
いる。大部の報告書であり、貴重な統計と分析が展開されている。本報告書で、数値等で示されている箇所を、以下のとおり幾つか抜粋する。
(1)2017年の世界賃金上昇率が、2008年(*)以降、最も低い。物価上昇率を調整
した実質ベースで、世界金融危機以前の水準を遥かに下回る1.8%(2016年2.4%)
にとどまっている。また、大きな人口と急速な賃金の伸びを記録している中国を
除く、賃金上昇率は、2015年1.6%、2016年1.3、2017年には1.1%である。
(*)2008年は、ニューヨーク証券取引所の史上最大の株価暴落(9月)で、
一気に世界金融危機が顕在化した年である
(2)日本の賃金上昇率は、2016年の0.9%、2017年は0.4%で、新興・途上国は、
2016年4.9%、2017年4.4%の領域で推移している。
(3)G20の先進国では、過去20年間でわずかに9%の上昇で、フランス、ドイツ、米国
の賃金下落が影響している。一方、新興・途上国は、G20諸国に比して、3倍の伸び
率を示している。
(4)アジア・太平洋地域では、労働者は世界最高の実質賃金の伸びを2006~17年の間に
享受したが、同地域でも、2016年と2017年の伸び率は前年より低い。
(5)アフリカでは、始めて賃金伸び率の統計が多数の国で集計された。2017年の実質
賃金の伸び率は、2017年には3.0%の減少を記録している。
これは2大国、エジプトとナイジェリアにおける賃金の減少が影響している。
この2大国を除くと、2017年には1.3%の上昇を記録している。
(6)世界における性別賃金格差は、73ヶ国(世界の労働者の約80%)の時間給の中間値
で比較すると、男女で16%の格差が見られる。中間値には各国で大きな差が記録され
ている。例えば、パキスタンでは34%の格差があるが、フイリピンでは、-10.3%の
格差、即ち、女性の賃金が男性よりも10.3%高い。
また、高所得国における性別賃金格差を見ると、高額所得層で格差が大きく、
低・中所得国では、低賃金層での格差が大きい。
(7)中間値、平均値、時間級、月給などの数値を使うと、世界的な格差は16%と22%の
間を変動する。本報告書は男女の賃金格差の特集であるが、多数の変数を含む事
から、統計上の問題も多く、簡単な要約は間違った印象を読者に与える危険がある
ことをご承知願いたい。 - 資料名“Global Wage Report 2018/19:What lies behind gender pay gaps”
ILO,2018年11月26日: ①https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/—dgreports/—dcomm/—publ/
documents/publication/wcms_650568.pdf 要約版) ②https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/—dgreports/
—dcomm/—publ/documents/publication/wcms_650553.pdf(本文)